導きの青い星と蒼い絆の物語   作:MAMYU9

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激突

 強風が吹き荒れる陸珊瑚の台地を抜ければそこは生と死が混じりある混沌の地、瘴気の谷へ出れる。空の航路も安全なんかではなく舞い上がる綿のようなのが視界を覆い、迫り来るレイギエナの認知を遅れさせられた。

 しかしリオレウスの機動力は気球とは大違いで難なくレイギエナの攻撃を回避し続けることは出来ていたが谷が近付くにつれて次第に体力の消費も激しくなる一方でレイギエナの攻撃を回避しながらの移動ではなく被弾覚悟での最短ルートの直進であった。

 下に見えるのは間違いなく地獄。此処では焦げたような煤を全身に浴びたようなレイギエナの死体しか見たことがない。その出所も死んだレイギエナが落ちてきているのかはたまたそこで死んだからこそあれ程までに汚れているのかは私も知らない。

 

 「ミーナ、そろそろ目的地です。此処の真下と言ってもいいかもしれませんけど……」

 

 私の前に座っているミコトが顔を合わせずに声だけで私に報せてくれる。下を覗き込めば隕石でも落ちて穴でも空いたかのとうなドーム状の地形がうっすら見える。そのドームを完全に包み込み日光を遮断しようとしているのは牙のような形の岩というべきだろうか壁は反り返っていて大きく口を開けてるみたいだ。

 

 「地獄か…恐いわね。あの学者の言葉がまだ記憶の片隅に残ってる…これから狩りへ向かうハンターを恐がらせて何が楽しいのやら…」

 

 「僕にも分かりませんよ…人の楽しみなんてそれぞれバラバラですからね。だからと言って悪趣味だとは思いますよ?」

 

 私は不意にも笑ってしまうとそれにつられミコトも笑い出してしまう。笑えることも幸せに感じられるこの瞬間が何よりも幸せだった。

 ミコトが息を呑み首元に掛けてあったゴーグルを装着すると「降りますよ」と合図を出す。その合図を聞き取るとスリンガーに閃光弾を装填し不安定なソラの背中で立とうとする。何とかミコトの背中を掴んで屈むことは出来たがこれ以上は出来そうにない。

 すると一気に掠れていた視界がぱぁっと晴れる。今まで私達が飛んでいたのは霧の中。追ってきていたレイギエナの姿も見えなくなっていて間違いなく真下へ急降下しているという実感だけが私を襲う。

 だんだんと呼吸元に苦しくなっていく中、気付く。霧に見える細長い竜のシルエットを発見する。どうやらレイギエナは私達と距離を取った所に位置しているのが。しつこいことにヤツはまだ私達を着けている様子。

 

 「ミコト!まだレイギエナは追っかけてきているわ!急いで着地しましょう!」

 

 振り替える度にレイギエナとの距離が縮まっているのが確認できる。空の王者とはいえ陸珊瑚の主には若干劣るか。そう思っている間にソラは地面すれすれの所まで降下していて私は身体を回転させながら着地すると目の前には片目を淡く光差す空へ向け、もう一方は自分の縄張りに侵入した不届き者を睨む『武神を宿すディノバルド亜種』が仁王立ちしている。

 私は睨まれたことに気付くとすぐにスリンガーをディノバルド亜種に向けてもう片方の手で太刀を構えるがディノバルド亜種は私を無視して空を飛び回っているソラとレイギエナに目をつけた。

 

 『────────‼️』

 

 「っ─!!」

 

 するとディノバルド亜種は金属音混じりの咆哮を轟かせてレイギエナの狙いをソラから自分へと仕向けさせた。私は耳を塞ぐことしか出来なかったがあれだけ離れていたレイギエナは臆すことも怯むこともなく一直線にディノバルド亜種へと急降下し砲弾のような体当たりを喰らわせたかと思えばそれは一瞬にして終わった。レイギエナの体当たりなんぞよりも何倍もの素早さで尾でレイギエナを叩きつけて地面へ引きずり落とす。レイギエナはそれでも翼をはためかせ体勢を整えようと必死こくがディノバルド亜種は嘲笑うかのように頭部に尾を突き刺す。意図も容易く命は消え去った。脳天を貫通した刃は血みどろながらもきらりと結晶の光沢が輝き続ける。

 

 「下がれってこと…?さもなければレイギエナみたいに殺す…って言いたいの?」

 

 ディノバルド亜種は殺戮的な尾に、強靭的な爪に、冷徹的な牙に、その(まなこ)に武神を宿していた。悪魔なんぞ趣味の悪いものではなく立ちはだかる者全てを鏖殺(おうさつ)する“鬼”。

 レイギエナの首に牙を突き刺し自分の後ろへと放り捨てる外道。まさしく死体にすら慈悲を与えない“骸殺し”。

 吹く風すらも怯え冷たくなる。此処は完全に彼の独壇場。全て彼有利に物事は進み鏖殺。虐殺。彼が他へと与える死は救済。玩具はその骸。骸にして尚、遊び足らず玩具とかし彼の糧となる。

 私は招かれた客なのだと気付く。レイギエナへの攻撃はあったものの私への攻撃はまだ無い。此処へ来たものは天秤に掛けられるのだろう。遊びがいがあるものと無いもの。あるものは彼の鏖殺を受けて無いものは虐殺を。二通りの地獄が待っているのだこの地では。

 そして私は偶然か必然かは分からぬも前者を引き当てたらしい。 

 

 「やっぱ運良いみたいね私…」

 

 私はスリンガーから閃光弾を放つと眩い光が拡がり目を開けるのも困難にさせると放つ前に頭に叩き込んだディノバルド亜種との間合いを思い出しながら目を瞑りながら詰める。音、臭い、感触だけが今の全てだが風は確実にディノバルド亜種へと私を導いてくれてる。だからヤツの位置も手に取るように把握出来ている。

 そしてその閃光のフラッシュが切れる丁度に互いの視界が回復すると私の刃はディノバルド亜種の首を捉えていた。今さら対応は不可能。

 私は一発反るように切り上げて比較的肉質の柔らかい部分を斬り、追撃の横一線を顔面に喰らわせようとしたが相

手の噛みつきからの尾での回転攻撃と柔軟な反撃を避けるのに必死でそのチャンスを失ってしまう。

 更にディノバルド亜種は距離を取った私の目の前に尾を突き刺す。ギリギリ距離が足りなくて助かったが抜くときに何やら巨大な矢じりのような結晶を残していった。

 結晶は瘴気に似たような煙を発していてその黄色にはいささか嫌悪感を覚える。

 ディノバルド亜種は尾を地面に擦りつけてその鋭利さを保とうとしていた。ギリギリと歯ぎしりのような鈍い音が響いて彼の刃は火花を散らす。そして勢いよく───

 

 「なっ!?」

 

 ヤツの刃が目と鼻の先まで迫る。

 『大回転斬り』、ディノバルド種の得意とする大技の一つ。普通なら口に咥えて牙で切れ味を底上げしながら放つ大技の筈。ディノバルド全体を通して牙の存在は大技いや、技全てにおいてなければならない存在。牙を使わない『大回転斬り』は間違いなく最大火力ではない筈。ならこの迫り来る感覚は何なのだろう。細胞レベルまでが私に避けろと叫んでいるのだ、この技は危ないと必死に叫ぶのだ。

 私は屈んで背を低めることで間一髪、その攻撃を回避することが出来た。ディノバルド亜種の刃はそのままぐるっと一回転して周りの全てを凪いだ。

 すると結晶の塊は凪がれたと同時に四方八方へと飛び散って地面に突き刺さる。その様子はまるで天井から氷柱が落ちたようだった。

 ディノバルド亜種のこれはハンター達が扱う投げナイフやスリンガー弾薬等の投遊びがげ物を真似してるように見える。賢いってのは本当らしい。

 

 「近付けない…!」

 

 これが何よりの問題だった。あの飛び散った結晶は近づけば必ず私にとって不利なことが起こると勘が言っている。黄色の煙を放ちながらディノバルド亜種を守っている。酸の煙だ。迂闊に近づけば防具は溶けて皮膚までももっていかれるだろう。

 そんな酸の煙に近付けないままじりじり距離を離しているとディノバルド亜種は身体をぐるんと捻って尾を伸ばして叩きつける。

 危ないと危機一髪で避けるも一瞬、ヤツの尾から目を離しただけでそこにあったはずの尾が消えていて空を見上げてみればディノバルド亜種の尾がすぐそこまで迫っていた。

 

 「クソッ!!」

 

 息を飲んで正面から太刀で防ぐ覚悟を決めるとヤツの尾の先端と刃を交えて足で何とか踏ん張りながら受け流すことに成功する。しかし腕が相当やられた。圧倒的力量差の前に虚しいが張り合うことは出来ず、無理矢理受け流すことで精一杯だった。

 ぶらんと腕から力を抜ききることで痛みを最小限に抑え込みながら相手の出方を探る。受け流すことにもう一度は無いのだ。

 するとディノバルド亜種は力強く踏み込むと地面を蹴り飛ばして跳んで攻撃を仕掛けてきた。当たれば一撃必殺の渾身の技だろうがその大振りな予備動作が目立っている。

 だから私はヤツよりも一歩先に動けた。短いこの時間で頭をフルで働かせ今とれる最善の手段に転じる。

 私は堂々とディノバルド亜種の前には仁王立ちをして勝ち誇った顔で言い放った

 

 「喰らいなさい」

 

 そうやって私はスリンガーを付けてる腕を空に掲げて二発目の閃光弾を放った。

 さぁ、徹底的にこちらが攻める番だ。

 

 

 ▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 灰色の空に日光の代わりと言わんばかりに離れていても眩しい閃光が散っていった。これで二回目。

 この二回目の閃光はミーナからの作戦実行の合図で、僕はソラを真下に滑空させて行動を本格的に作戦へと移す。

 作戦は幾つかあるが今はミーナの体制を安定させる為、二回目の閃光弾の合図でソラと共に低空飛行から火球での攻撃を開始しようとしていた。

 下の様子を伺えばディノバルド亜種は先の閃光弾で転倒していて多分、起き上がるまで時間が掛かる筈であろうからそれまでに位置を取りに急ぐ。

 

 「ソラ!此処で止まって!」

 

 ソラをある程度ディノバルド亜種の近くまで寄らせるとそこで移動するのは一旦終わりで苦しいだろうがソラにはこの位置でホバリングをしてもらう。翼を細かく上下に動かして些細な位置調整も済ませる。

 僕らの視線の先ではミーナが太刀を物凄い素早さで振るい身体にありったけの赤黒い血を浴びている。けれどミーナが斬れているのは比較的柔らかい部位、特に腹部等で強固な甲殻に振るえば確実にダメージの期待は薄い。

 するとミーナはしかめ顔をしながら後ろへと下がる。成る程。もう起き上がるのかいくらなんでも早すぎる気もするが彼は常識はずれだ(特別だ)

 その身体との比率をみればあまりにも小さすぎると感じてしまう脚を動かし地面につけてディノバルド亜種は復活する。

 

 「今だっ!!ソラ、ミコト!!」

 

 その次の瞬間、ミーナが僕らを信頼しきった様子で叫ぶ。攻撃の合図だ。

 

 「ソラっ!!」

 

 ソラは口から煮えたぎる太陽をディノバルド亜種に向けて放った。パチパチ音を立てながら進んでいく火球は僕の位置でも肌を焦がすように熱いのだ。少なくとも直撃すればただでは済まない。

 そして、ソラの火球は見事ディノバルド亜種に直撃をしたのだった────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読了ありがとうございました‼️
いよいよディノバルド亜種最終決戦に突入です。
ではまた❗
導きの青い星が輝かんことを…

第二回 人気投票

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