燃え盛る小太陽は今、確かに目の前の標的であるディノバルド亜種に直撃した。リオレウスの火球は人であれ竜であれ有無を言わさずに束の間、業火で焼き苦しみから解放されるように短時間で想像を越えるダメージを残しながら弱らせるリオレウス得意の十八番の技。比べるにも他のものでは大した比較にもならず僕は仕方ない気持ちで“太陽”と例えたのだ。
なら、今目の前で起きてる光景は何なのだろうか。このような事を予想の範疇に入れて置くのは厳しい、いや不可能だ。それは長い間、共に行動し、共に暮らしてきた僕が一番知っている。心の底から拒否している。それも無意識の内に。
「立ってる…!?」
びくともしていない。手応えが無いこの様子はまるで山にでも火球を放ったみたいに、いやもっと当たった感触すらも感じれないこれは火球自体が吸い込まれ消えたような感覚に陥った。今はただ困惑だけが僕とソラを襲っていた。ディノバルド亜種でもレイギエナでもない困惑という感覚だけが襲ってくる世界に“堕ちた”。
ディノバルド亜種の甲殻はパチパチ音を立てながら燃えているが、実際は“ただ燃えているだけ”。ダメージなんて無いように平然な顔をして動じていない。それだけ格上の相手だったのか?生物の壁を越えてしまっているのだろうか?何をしても無駄なような気がしてきている。まさか気持ちが先に滅入るとは想像もつかない。
圧倒的な実力差が此処にはある。単純なパワー、頑丈さ、そして素早さ。こちらも何かでは優ってはいるのだろうがその“何か”が分からず仕舞いでは挑もうと思う気すら湧かない。
先からミーナも少し焦っている様子だった。特にこれといった分かりやすい驚いた表情は現さないが、じっくりと窺えば少し下唇を噛んで赤く腫れさせてるのが見てとれる。ただ、ディノバルド亜種は堂々と静かながらも僕らを黙らせた。
「ソラ…まだ、やれるよね」
ソラの背中を撫でながら頼み込む。僕らがここから引き下がることは今はミーナの戦況を不利にさせる一方と行為だ。避けがたい行為は無茶をしてでも避けねばならない。たとえ自分の命が危険に晒されても此処に居るということは元からその覚悟があって来た。
必ずミーナとソラだけは───
「ソラッ!!もう一度!!」
ソラはもう一度火球を放つ。一発目と何も変わらない一撃である。けれどディノバルド亜種はそれを先よりも柔軟に受け止めた。くるりと身体を動かしたと思えばその古い結晶を纏い続けている尾でキャベツを一玉、新品の包丁で真っ二つに切り裂くように小太陽を切り分けた。いとも簡単にやられたので少し動揺を隠せないが狙いは元よりこれではない。
「今だっ!!」
ディノバルド亜種と目が合う。それも二メートルもあるか無いかのこの距離まで一気に詰めた。わざわざ威力のある火球を囮にしてまで詰めた理由があった。もし火球が駄目だというのなら、ただ力にものを言わせた物理で圧すだけのこと。ディノバルド亜種の顔面に向けてフルスイングの勢いを思い切りつけた尻尾での攻撃。威力だけで語ってるのではなく技術も力を貸すこの技。
クリーンヒット。確実に顔面に直撃し、火球以上の手応えを異常な違和感も感じる程の手応えを覚えた。全身の骨の髄まで振動が染み込みさっきとは違うと身体に伝わった。達成感と驚きが奥底で混ざり合う。
ディノバルド亜種もこれには堪えたようでドスドスと力強くも頼り無い千鳥足で後ろに退きながら倒れて込む。ミーナはここぞとばかりに刃を背に預けながら直進する。太刀分の空気抵抗が減ったのかいつもの倍ほどに感じれた。
「ハァァア!!」
繰り出される斬撃は最初のうちは目で追えたものの、時間が経つにつれて一筋の細い線に変わり閃光がほどばしっている。これが人の繰り出せる巧みな業なのかと目を疑ってしまう程の凄まじいものだった。
僕はソラを地面に降ろすと少し休憩をさせる。時間が無いことは承知の上だが今はミーナが一方的な攻撃を続けているので休ませないと次に万全の状態で迎え撃てないかもしれない。ソラだって疲弊する。ミーナだって疲弊する。
だからこの順番交代の戦い方、作戦が生まれたのだった。ミーナと僕たちが順番で交代し休み無くディノバルド亜種に攻撃を続け、生じるであろう隙で交代する繰り返しの作業のような作戦。
僕はコートの袖から手にナイフを三本落として受け止めるとコートの胸ぐらを自分で掴んでバサッと宙に脱ぎ捨てた。中からは日光を反射させるイャンガルルガの素材が使われた防具が姿を現した。
「そろそろ、だよ…」
ソラの背中を優しく撫でながら僕は言う。ソラはそれに少しばかり声をだして応えてくれる。
「皆で一緒に帰ろうね」
するとミーナがばっと後ろに飛び下がり息を荒げて膝をつく。彼女の目の前にはディノバルド亜種が体勢を立て直して僕らを一気に睨む。恐ろしい
僕はくるりと指を器用に扱いナイフを一回転させるとそれを勢いつけて、空を切り裂きながらディノバルド亜種に向けた投げて進む。
三本の内、二本は甲殻に弾かれてしまうが残りの期待が籠められた一本は恐怖をしまい込んだ眼に突き刺さる。悲鳴を上げる程の苦痛の筈なのに彼は顔を下に向けるだけの反応を見せるだけで、それ以上のことは期待出来そうになかった。
けれども、その僅かに怯んでくれた時間はソラがこの離れた距離を詰めるにはあまりにも十分だった。
「ソラ!!薙げ!!」
ソラに指示したのは尻尾でディノバルド亜種の顔面をまた弾いて後ろ飛ばす。打撃系の手段が効くと分かれば後はこの手で攻め続けるだけである。
ディノバルド亜種が叩かれた顔面をこちらへ向け直すと覗くようにソラの顔は先に向いていて、それを飲み込みように大きく口を開けている。そしてまた小太陽が放たれた。
痛恨の一撃である。これ程の距離で放たれればいくら炎が効きにくいといってもその反動が勝る。これにはディノバルド亜種も唸りながら空を仰いでよろめく。
このチャンスに乗じてソラを飛ばせて足の鉤爪で攻撃を開始させると彼は何も出来ないまま攻撃を耐え忍んだ。効果が薄いか。
だがその次の瞬間、目を見張るような出来事が起こる。ソラが姿勢を急に崩して地面にばたりと墜ちて倒れ込んでしまったのだ。僕はその時にソラの背中から放り出されてしまう。
「ソラ!!」
よくソラを見ると足の裏に大小、まばらの結晶の棘が数本刺さっていたのだ。理解は未だに追い付かず無駄な行動ばかりを取ろうとしてしまう。それでも一握りの理性で腰からナイフ一本を取り出して、正確に目に狙い定めて投げ刺す。もちろん狙っただけあって理想通りに命中する。刺さったのは先程の目だった。
僕はソラへ駆け寄ろうとするがディノバルド亜種が常識を逸脱した摩訶不思議な攻撃を仕掛けてきた。
ドンと自分のすぐそばの地面に尾を叩きつけたかと思えば結晶がその先、一直線に延びて背の低い、針山のような壁を作り上げた。僕の右足が少し被弾して犠牲になってしまう。
「うあっ!?」
ふくらはぎが鋭い針にやられて血だらけになるが、おぼつかない足取りでソラの元まで立ち寄ると足に刺さっている棘を抜いてやる。きっと僕よりも痛い筈だ。
ごめんね、と言ってやりたいのだが痛みに耐えるだけで口が縫われたように開かないのだ。
背後から背を通って伝わるこの威圧感はヤツが近づいて来ている証拠だ。もうダメかと残り一本のナイフを握り締めて、振り向き投げようとした瞬間だった。目の前に眩い刹那的な閃光が走る。顔を伏せて閃光が過ぎるのを待つとミーナがディノバルド亜種から僕らを守るように立った。その姿は見慣れてる筈なのにどこか引き寄せられるものがある、英雄的な立ち姿である。その美しい黒の長髪をなびかせて、傷だらけのリオレウス亜種の防具が頼りになる。
「ありがとうね。アンタ達。後は私がやる」
ミーナは背中から太刀を抜くと空高く刃の先端部分を掲げて、もう片方の手でポーチから黄ばんだ液体が入った瓶を取り出すと真上に投げてそれを太刀を振り下ろして真っ二つにした。刃は黄ばんだ液体を十二分に纏っている。
「さぁ、ここからが本番よ」
スリンガーに装填している火種石がキラキラと日光を反射して刃を照らす。ミーナは刃の側面を火種石に擦り付けるような真似をすると一気に刃を滑らせた。
すると火打ち石のように発火した火が刃に吸い込まれて瞬く間に炎へと規模を拡げた。そして炎を纏う。
パチパチ音を立て、巧みに扱う。液体のように正体は油、それが発火した火を強めて
ミーナのとっておき、〈
読了ありがとうございました❗
ここで説明することじゃないと思ったんですが結構これから先、物語で絡んでくるので二つ名ハンターについてご紹介。
まず何?って話ですけど二つ名ハンターはこの創作のオリジナル要素でギルドから直接的に雇われたハンターと思ってください。ギルドナイト?って思うかも知れませんがギルドナイトよりも幅広い依頼を受ける狩猟のプロって感じです。
階級も分けれてて、第三級の実力は4人パーティーで古龍の完全討伐が可能なレベル。
二級は1、2人での完全討伐可能レベルで、最高クラスの一級が1人での完全討伐、もしくは4人パーティー(それ以上)での禁忌級のモンスターの討伐、もしくは迎撃可能レベルっていう感じです。
この中にサシャが二級で入ってる感じで、それぞれアクセサリーみたいな物が配られていて、三級はネックレス、二級は指輪、一級にはイヤリングと区別されていて、それぞれに竜の首に剣が突き立てられている紋章が入っています。
これから二つ名ハンターは結構登場するのでその為の解説でした。
ではまた❗
導きの青い星が輝かんことを…
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