導きの青い星と蒼い絆の物語   作:MAMYU9

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青空が降る日だまりに

 

 「此処で決着をつける」

 

 柄を握るてはからは熱さの影響で汗を流して燃えているようにピリピリ焦がされている。刀身に塗られた油に火が引火し、元より刀身は焔で出来ていたように錯覚させる。

 吹き荒れる突風は焔を拐い、空を游がせているが、未だにくっきりと刀身の形は此処に残る。

 私はただ、“あの時”のようにひたすら無心になろうとする。身体中で風を受け止め、音を全て吸収して、視界だけは遮断する。

 そうだった。“あの時”もそうだった。

 ただ、この自分と感覚しかないこの空間が、

 この世界が───

 “心地よくて仕方ないのだ”────

 

 「さぁ楽しもう──」

 

 自分でも思いがけない言葉をまだ目を瞑りながら呟くとまるで私がディノバルド亜種に吸い込まれてるように無意識に、素早く近づく。視界は今も真っ暗のまま、時折、照らされてしまうが依然、心地よい。

 肌を触られた感覚を感じて確信する。目の前には驚いて慌てて注視したディノバルド亜種が無防備にも漠然とした様子で立っていると確信できた。

 あぁ、この瞬間が堪らない。

 突然、湧いて出たこの謎の衝動の正体は一向に分からぬままだが最早、そんなことはどうでもよかった。今は本心でこの闘いを楽しめればいいと思ってるのだ。

 自分じゃないと思う心の形も堪らない程好ましくなる。壊れ行くような水槽から零れ出る水も気分を良くさせる。それら全部が私の身体をいつも以上に働かせてくれる。まるで一種の“ゾーン”に入ったみたいだ。

 私は誰かに任せるように太刀を振るうと気持ちいい感覚が痺れさせる。音で様子を捉えると今の攻撃はディノバルド亜種に命中して怯ませたらしい。そんな感覚は伝わりはしなかったが、それもこれもさっきの感覚の麻痺が原因だろう。

 

 「当たったの!?それは!それは良かったぁ

 !!」

 

 誰が叫んだのだろう?まさか私か?正気も保つのが難しくなってくる。この暗闇の中では私一人なのだ。壊れ行く私一人。世界に立つ、絶対支配者ただ一人。

 私はこの空間から現実(?)の私へと命令して柄を握っていない片方の手の人差し指をクイクイとディノバルド亜種に向けて挑発する。

 多分、相手攻撃を受けたら発狂してしまうんじゃないか。怒りも苦しみでもなく、ただこの闘いを盛り上げるスパイスの一つとして感じてしまう。そしてこのゾーンを更に加速させてしまう。

 しかし、あぁ…なんて心地良いのだろうか。思わず浮き足で歩いて、鼻歌でも歌いたい気分だ。

 私は適当に刃を振るうがまたしても吸い込まれるように勝手にディノバルド亜種に命中して、できた切り傷に炎がえもいわれぬ苦痛を与える。

 っ───楽しい!!

 思わず腕を振るう速さが一段と上がり、目を瞑った状態でもより鮮明にヤツの位置が分かるようになる。今は感覚も音も勘も全てが味方についているんだ───

 そう。カムイも──

 

 「心地良いぃ!」

 

 今まで出し方を忘れていた天賦の才の出し方を思いだしたようにはっきりと次にどのような行動を取ればいいか自然に思いつく。

 右足を、左足を、また右足をとタップダンスでも踊るかのように舞って距離を詰める。時折過ぎ通る風と音はあの尾での突き刺しの攻撃により生じたものだろう。けれども私はそれが来ることを感じていた。或いは知っていたのかもしれない。どちらにせよ、一発も私に当たることはなかった。

 そしてまた、刃を振るう。

 

 『───────!!』

 

 その瞬間、ディノバルド亜種は鋭い雄叫びを上げた。私の振るった刃に重い衝撃がのし掛かり、私の手には手応えと虚無感が宿る。

 尾での相殺か。この数秒とも無い瀬戸際に、ヤツは尾で私からの攻撃を防ぐ判断に至り実行に移した。手応えはその頑丈さに触れたことによってのものか。虚無感は確実なダメージが入っていないことによるものか。

 けれどヤツは小さな人間の攻撃を己が誇る最強の武器で防いだ。成る程。追い込んだか。

 不意に瞑ってる目元に柔らかい感触が伝わり何かが覆い被さってることを知る。少しだけ、鉄の臭い。知っている。これは──

 

 「“あの包帯”か──」

 

 そう、私があの雨の日に見つけた包帯。それを此処に来る前に御守り代わりに柄に巻いていたんだった。

 そういえば熱中してたせいで興味はあまり持たなかったが飛竜種特有の翼をはためかせる音が聞こえていた。きっとソラのものだろう。彼らの視線が無くなっていることに気づく。

 そうか。それはありがたい。今の私には一人で十分。いや一人で楽しみたいんだ。此処を広々と使って。

 私は目元に張り付いている包帯に手を掛ける。そうすれば本気の出し方を思い出せる気がする。もっと楽しくなれる気がする。 

 私は空よりもずっと高い所にいる彼のことを思いながら、彼に伝えたかった言葉を思いながら目から包帯を取る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「愛してるわ──────カムイ」

 

 目を開けば其処は、全てが真っ青な空の世界だった。

 

 

 

 

 

 ─--z--z──---ーー

 

 

 

 

 ミーナは驚いていた。見えるもの全てが青色に変わって美しいのだから、その光景には思わず開いた口が塞がらない。包帯を握っている手からも力が不意に抜けていってしまう。空はより蒼く。ディノバルド亜種はより綺麗な澄んだ青に変わり果てている。

 しかし、実際に全てが青になっている訳ではなかった。青に変わっていたのはミーナの瞳だった。海のように深い蒼をした瞳孔、空のように澄んだ青した虹彩。ミーナ自身が変化しているのに彼女はそれに気づくことはなく、目の前に広がる光景に胸を踊らせていた。

 ディノバルド亜種は漠然と立ち尽くして動けなかった。彼の本能が叫んでいたのだ。今動いたら確実に不味い事が起こると必死に呼び掛けて制御していた。

 今のアイツは危険だと──

 

 「始めましょう──第二ラウンドよ」

 

 途端、ミーナは頭から倒れ込むように力なくして前に倒れ始めた。ゆらりゆらりと木綿のように不安定な倒れ方をして、地面すれすれの所まで胸がくると足で力強く蹴って前に進むための加速をつけてディノバルド亜種へ向かっていった。

 迫真の演技であったそれは、ディノバルド亜種の目をも騙して頑なに閉ざされた蟻一匹も通さない警戒心を容易くくぐり抜けた。

 ヤツの首下まで凄まじい勢いで潜り込むとミーナは蒼い瞳孔を狂ったかのような開き方を見せながら空中で刃を振るいながら一回転してディノバルド亜種が喉を斬る。

 微かな量の血液が刃に帯びていて、いつの間にか煮えたぎっていた焔は消えていた。

 ミーナはスライディングをして窮屈なディノバルド亜種の身体の下からの抜け出すと甲殻達をなぞるように太刀を滑らした。がぎがぎと耳を痛めるような金属音が響き、効果が薄いように感じる。それでもミーナは尾まで刃を滑らし走り抜けた。

 そしてミーナは一瞬で体ごとヤツの方へ振り向いて気配を隠し近づいていたディノバルド亜種渾身の噛み付きを───弾いた。

 激しい金属音が鳴り止んだ時、彼は困惑していた。自分よりも遥かに小さな虫けら(人間)に攻撃を無力化されたのだ。避けられた訳でもいなされた訳でもなく、ただその蒼く滲んで見えた刃に押されて攻撃の相殺、いや負けたのだった。単なるパワー勝負であったそれに彼女は技量に似せた何かを持ち込んだ。それが勝因であった。言い返せばそれを持ち込んだだけで圧倒的不利な場面を押し勝ったのだ。

 

 「随分と──静かね、どうしたのさっきまでの威勢は」

 

 言葉も通じぬ相手にミーナは煽るような口調で応えを待った。それは言葉でなくともミーナは立ち尽くして待ち続けた。

 彼女に帰ってきた応えはディノバルド亜種の尾を地面に滑らしての出始めが素早く対処の効きにくい攻撃だった。しかしミーナはそれを無駄の無い動きで紙一重で避けた。ただ後ろに一歩、二歩下がって目の前を通らせて空振りに終わらせた。

 彼は目を見開いてしまった。それは驚きの分かりやすい現れであった。

 

 「せっかちね。きらわ──いいえ。何でもないの。ただ…」

 

 何かを言い止めるとミーナは思い切り刃を振るう。

 ガギンッ。もたもや耳の奥を痛める。

 

 「私は好きよ──」

 

 何処が痛もうが最早、彼女にとっては何の支障にはなりはしなかった。一時的な快楽を得られるただそれだけだった。

 ミーナはこのだんだん海の底へと沈むような感覚に陥る。これがたまらない。飽きない。虜になっていった。

 経過する時間が増えていくにつれてミーナの動きもより俊敏になり、無駄な動きは完全に無くなった。全てが完璧へ近づいていく。この状況を嬉々として楽しめる感情以外は全て捨ててきていた。

 海のように深く、暗闇を含んでいく瞳孔の様子は本物そのもので、彼女の前に何が来ようとも今だけは無に帰した。

 ミーナは迫る来るディノバルド亜種の猛攻も見慣れた顔つきで技量で弾き、ねじ伏せていく。内、彼は察する。力などではこの並外れた化け物級の人間を嬉々としてどうにかするなど到底、叶いはしないことだと。

 刃同士を打ち付ける数も上昇していき、脆くなっていくのは必然的に結晶を纏っているディノバルド亜種の刃だった。

 ディノバルド亜種は一度、距離を取ろうと尾で薙ぎ払おうと振ろうとしたその時、ミーナは無茶な行動に出た。なんと、ミーナは薙ぎ払いに対して敢えて、ディノバルド亜種の尾が届く距離に入って刃を打ち付けたのだった。無理で無意味な攻撃であった。否、それは攻撃であったかどうかすら定かではない。何せ、それは防御しているようにも見えて確かな攻撃ではなかったようにも感じれた。

 しかし──今は──それが攻めの兆しへと変化した。

 なんと無理やり攻撃を受けて弾いたことによって一瞬の爆発的な威力を生んでディノバルド亜種の尾に纏う結晶を粉砕し切断なではいかないものの、一部的な部位破壊に成功した。それはディノバルド亜種に大きなダメージと衝撃を与えた。彼が幾年もそれで己を守り、落としてきた命を積み重ねた証拠。どの金属にも強度で上回り、がらくたに仕立て上げてきた。それが今、この少女に消された。

 

 「終わりじゃ───ないでしょうね」

 

 ミーナの目はその青みをだんだんと失っていって最終的にはいつもどうりの黒い瞳へと戻った。

 ディノバルド亜種は尾を顔まで巻いて寄せて傷をまじまじと見つめる。深くえぐられた傷だ。まとわりつき、凍らせたように尾を守ってきた結晶もポロポロと剥がれ落ちていく。

 ディノバルド亜種はその鋭すぎる牙で尾を噛んでガリガリ音を立てて“研ぎ始める”。牙は砥石の役割を果たしていた。そして───

 

 『───────────!!』

 

 咆哮と同時に結晶は弾け消えて彼の真剣が現れる。口からは結晶と同じ色の煙が漏れ始め、より彼の眼差しを鋭くさせた。

 ミーナは再びポーチから油の入った瓶を取り出して豪快に刃に塗りたくる。

 スリンガーにセットしていた火種石に勢い強くぶつけて火花を起こし、焔を握る。

 最終決着が今、決まる。

 




読了ありがとうございました‼️
最近、ダブルクロスに再熱し始めてハマってます。(どうでもいい)
ではまた‼️
導きの青い星が輝かんことを…

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