導きの青い星と蒼い絆の物語   作:MAMYU9

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更に導く。この大自然へ──

 「ねぇ……ソラの脚はもう大丈夫なの?」

 

 「すっかり傷口も塞がっていつもどうりです。それよりも、ミーナの方が重傷じゃないんですか?」

 

 「私、回復は早い方だと思ってたけど…骨に到達するほどまで抉られてたみたいで…全治にはまだ時間が掛かるって」

 

 そうミーナは笑いながら包帯を巻かれた手をミコトに見せる。薄い布が分厚くなるほどぐるぐる巻きにされていてどれ程護っている傷が重傷さを物語っていた。

 二人はあの闘いからアステラに戻ってきて一日が経過していた。まだその時の疲労感や傷の痛みも残っているせいかあまり勝利した実感を得られてはいなかった。

 昨日はミーナは介護を受けて寝たきり、ミコトはソラの傷の処置と今のところぐっすりと言い切れる程休めておらず、二人は調査班リーダーから報告を聞いた後、少しばかりの休暇を貰いに行く途中だった。流石に傷だらけの重傷者であるミーナはクエストに出されることはまず無いとはおもうが、ミコトに関しては他のハンターの補助に回されるかもしれないのでその為の申し出だった。

 

 「あんまり…実感が得られませんね。本当に終わったんですか…ね」

 

 「ハンターとしての仕事は終わってないけれど、アイツとの闘いは確かに、確かに終わったのよ…。生態系もこれから元通りに調和していけばいい」

 

 ミコトは彼女の事を凄い人だと思っていた。というか今も思っている。いつも目の前の事だけじゃなくて一歩、二歩先を見据えて行動している尊敬出来る人。それがミコトにとってのミーナの人物像。

 

 「……ほんっとうに疲れたぁー。お酒でも呑みたい気分だわ」

 

 「ミーナも呑むんですか?」

 

 意外。そういったのを呑むのは身近ではサシャ位だと思っていたミコトにとってミーナが呑んでいる所は想像出来なかった。何だか今まで興味も無く、得体の知れない液体という認識だった酒を呑めることが急に憧れてきた。

 

 「美味しいんですか?そんなにお酒って」

 

 「疲れてる時は美味しく感じるし…あんまり美味しくない時もあるし…ワインとか結構いけるわよ?」

 

 「じゃあ今度、貰うことにします」

 

 ミコトはクスリと笑いながらミーナの先を進んでいく。彼女はその足取りを不安に感じた。自分よりも何処か遠くへ行ってしまうのではないかと不安で胸が苦しくなる。

 もうあんな思いはしたくない──

 

 「──ちょっと待ってよ」

 

 ミーナは焦るように片方の手を伸ばしてミコトの後ろを追う。置いていかれたくない。彼女はもう一人きりにはなりたくなかった──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ディノバルド亜種の回収は済んでるし、大方の素材もお前らに譲ることになってる。…あぁ、後処理の方は俺とサシャでやっとくからお前らは少し休め。その体じゃまだロクに休めてもないだろう?」

 

 調査班リーダーの所に向かった二人は休暇の件について話すと調査班リーダーはすんなりと要求を呑んでくれた。寧ろ、この事を話し掛けられるのを待っていたような会話の手際のよさと早口。ミーナは元々、自分たちにその命を出そうとしていたんじゃないかと仮定した。多分、サシャもグルだろう。

 何にせよ、二人の望みは難なく叶った訳だった。

 

 「そうかぁ…私達勝ってきたんだよね…」

 

 「まだ実感が湧きませんか?」

 

 「…うん」

 

 二人は去っていく調査班リーダーの背中を見つめながら事の静かさに疑問を抱く。まだ胸騒ぎが止んでいないのだ。止まることのない恐怖が心の奥底で鼓動を打っている。─── 私は一体何に恐れているのだ?

 心の空はまだ曇って青空は見えはしなかった。

 また、虚ろに染まるのだろうか?

 

 「───?───ナ?ミーナ?」

 

 「あっ…ごめんなさい。ちょっと考え事をしてて…」

 

 「そうですか…」

 

 彼女自身もミコトを不安にさせようとは考えてもいないが気を抜けば直ぐに周りの声が聞こえなくなるらしい。

 ミーナは鼻の付け根をつねりながらミコトに訊いた。

 

 「…それで?どうしたの?」

 

 「ミーナはこれから家で休むんですか?よかったら一緒にサシャさんに挨拶行きませんか?」

 

 「……アイツ、忙しいんじゃない?一応、二級クラスのハンターなんだし私達の書類をまとめてくれてるみたいだし邪魔になると思うんだけど…」

 

 「………えっ。ミーナがやってたんじゃないんですか…?いつも報告書出そうとすると僕から奪い取るもんですから、てっきりミーナが今回も出してくれてるもんだと…」

 

 するとミーナは意表を突かれたような間抜け面を晒してしまうと自分の髪をいじくりまわしながら続けた。

 

 「いつも……サシャが…やって……くれてる…ます」

 

 「…………」

 

 ミコトの目は完全に冷めきっていて、開いてる口は簡単には閉じそうにはなかった。それほど彼にとっては中々衝撃的な事実だった。

 ミーナに目すらも合わせるのがためらいたいものになってしまう。

 ミーナは少し反省した口調で話した。

 

 「…今度からちゃんとやります」

 

 ミコトはまだ何故、サシャがミーナの代わりにやってるのか疑問に持ちながら、その不完全燃焼感に襲われていた。今度、サシャ本人に直接訊いてみるのも良いかもしれない。多分、ミーナに訊くよりも確かでちゃんと答えてくれそう。それが理由だった。

 ミコトは何だかミーナとサシャの詳しい関係も気になり始めたので次に機会には、何かお菓子でも持っていってそういう話をすることで頭が一杯になっていた。

 だんだん、こうたわいの無い会話をしながらあの地獄の記憶が薄れていく───幸せにも感じて──何だかまだ終わっていない恐怖も──残ってはいるが今が幸せだとお互いに感じていた。

 だからただ、今は何も起こらないことを祈った。

 

 

 

 

 

 ~~~~~~~~

 

 

 此処は元マイハウス。アステラでは死んでいったハンターや現大陸に戻ったハンター達の空いたマイハウスを作業場に変えて誰かが其処に居座ることはさほど珍しいものではない。

 今日は常連のサシャと調査班リーダーが居座っていた。デスクの上には散乱した大事な書類と新聞が置かれていた。

 

 「どうだサシャ?書類の方が一段落ついたらコーヒーでも飲まないか?交易船の連中が豆を持ってきたんだ。一息ついたらどうだ?」

 

 「コーヒーか…久々かもな…。よし、一杯貰うことにするよ」

 

 サシャはデスクの上に散らばっている書類を大雑把に一ヶ所にまとめると椅子から尻を離して声を掛けてきた調査班リーダーの方へ歩み寄った。

 手にはすくったように今でも溢れそうなコーヒー豆を持っていて、サシャに「そこのコーヒーミルの蓋を開けてくれ」と頼み込んだ。サシャはコーヒー豆を持った手から目を離せなかった。なんと大胆な。何かしらの容器に入れる考えには至らなかったのかと頭を抱えてしまうが、今は先にコーヒーミルの蓋を要望通りに開けた。

 その後、コーヒー豆を砕いているのを横目にサシャは机に置かれている新聞に目をつけた。

 手に取ると一番に目が行く内容が大きく載っている。

 

 『“ライダー殺し”再び!?ライダー護衛のハンターを含める六名の殺害』

 

 「まだ捕まってないのか…」

 

 サシャは感じていた。その文面から筆舌に尽くしがたい恐怖に似つかわしい、得体の知れないものをしっかりと感じていた。じわじわくる吐き気。喉の奥が煮えたぎって堪える涙が垂れかけて、体が重くなる。

 “ライダー殺し”。数年前から突如として現れた執拗にライダーを狙って殺しを行う謎の人物。その件数はざっと百近くまで上り詰めて“ライダー殺し”は単独犯ではなく複数の腕利きが行動しているなんて一説もある。

 最初の頃はライダーだけが殺されていたが護衛のハンターやギルドナイトが付き始めれば問答無用、誰問わずの鏖殺が繰り返された。武器の特定も出来ず、大小様々な傷口も複数犯の可能性を高めさせる要因の一つである。これの恐ろしいのが事の全てがモンスターではなく、ただの人間が全てをやったのだということ。

 

 「ギルドも総戦力を挙げて挑んでいるらしいが……現場には一切の痕跡は残さないらしく例え足跡が元はあったのだとしても……血の水溜まりで沈んでるのがオチだ」

 

 「こえーよな…」

 

 サシャは置かれたカップを取りコーヒーを口に流し込むと新聞を置いて事務作業に戻った。

 美味な苦味が口の中に広がっている間に出来ることは済ませておきたい。

 サシャは窓から見える澄みきった青空に小粒の違和感を抱きながらペンを動かす。

 

 

 

 

 

 

 ~~~─~──~──~────

 

 

 ───~───

 

 ~───

 

 

 「クソっ…!!何でこんなことを…!?」

 

 男は大木にもたれ掛かりながらその右腕を失ったことによる痛みに耐えて質問した。簡素ながらも要点を押さえた冷静な頭回り。ただ、今にも消えそうな目の光は目の前の男の全容を捉えきれていなかった。所々黒が混じる。

 

 「何でって…そりゃぁ、お前さんがライダーだからだろ?こんな状況まで追い詰められてても気付かないのか?俺が噂の“ライダー殺し”だって。あんたアタマまわんねーみてぇだな」

 

 “ライダー殺し”と名乗る男は自分の頭を人差し指でトントンと突いて死にかけのライダーを煽るような口調で話す。

 

 「ライダーだけじゃないのか……!?護衛のハンターまで殺して…!ゲホッ…」

 

 息が次第に苦しくなり大量に吐血してしまう。視界の次は耳もおかしくなったみたいで“ライダー殺し”の音が聞きづらくなった。

 

 「邪魔するやつは■■だろ…フッツーじゃね?やっぱあんた■■だな。今すぐ■にしてやろうか?あっ冥土の土産としてさ■■他の■■■の居場所教えてくんね?」

 

 「ハァ…ハァ……無理っだ……」

 

 「そっか…じゃぁな■■■■■■」

 

 すると“ライダー殺し”は落ちてた太刀を拾い上げるとライダーの胸に突き刺し、足で思い切り白目を向く顔を蹴った。

 

 「こんなもんかな……帰って焼き肉…いや、やっぱ酒だな」

 

 “ライダー殺し”はポケットから煙草と発火石を取り付けた簡易的なライターを取り出すと、ライターから空まで立ち上るような火花を出して煙草を押し付ける。無論、油やガスといったものも無いため火花で無理やり煙草に火を点けるしかなかった。

 火花を十分に浴びた煙草は先端から煙を上げながら“ライダー殺し”の口に咥えられる。

 

 「次は……何処にしようか」

 

 そう呟きながら頼りない足取りで森を抜けた。

 次に“ライダー殺し”が向かう先は本人も知らないが、男はただ運命に導かれて向かうだけ。例え、其処が海を越えた新大陸だったとしても────

 まだ、歯車は導きの青い星によって動かされる。

 誰もまだ知らない物語が動き出す───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読了ありがとうございました‼️
これにて第一章の本編は終わりとなります‼️
本当にありがとうございました‼️
ではまた❗
導きの青い星が輝かんことを…

第二回 人気投票

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