導きの青い星と蒼い絆の物語   作:MAMYU9

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うおーー!!第二章!!


ロジエ編
強き者の苦悩


 ミーナはこの古い痛みと新しい痛みに毎晩魘されていた。しゃっくりが中々出ずいつ出るのか焦らされるように時間(タイミング)は一定を留めず日によって変わってくるが毎日、その痛みに魘される事を知って生活するのが苦しくて堪らなかった。

 痛みは時に夢になって襲ってくるがそれは大抵何時も、“彼女が人を殺している夢”だった。手には真っ赤な包丁が紅い(よだれ)を垂らしながら此方を見る。包丁の鋼鉄が彼女の顔を鏡のように写し出すが、それは酷いモノで人の顔を写していなかった。

 そしてベッドから上半身を起こして額に手をやる。

 また、堪えるのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 「あっミーナ!おはようございます!」

 

 ミーナが身支度してマイハウスを出ると青髪のポニーテール少年が彼女に向けて手を振って挨拶をしてきた。その少年、ミコトとミーナは今日朝早くから待ち合わせの約束をしていた。今日は久し振りにクエストに出掛ける予定でいた。

 

 「うん。おはよう」

 

 ミーナは素っ気ない挨拶を交わすとミコトに行きたい場所があるからと告げて先にクエストボードに向かわせた。

 少しだけその時にいつもとは心情には何か違和感を覚えたが仕草にも毛ほど出さず、やり過ごしてみせた。

昨日に急遽入った通達で工房に彼女が頼んでいた物が完成したと聞き、それを今日の朝、取りに行く事になっていた。それは突然の事だったのでミコトには事前に伝えれていなかった。其処ばかり少し反省しながらミーナは工房に足を運ぶ。

 歩いている最中、自然に目に入るアステラは変わって見えた。何だかいつもより町を歩く人達が忙しく見える。特にその様子がよく表れていたのが書類を抱いて急ぎ足で歩く研究員達だった。こういう時は大抵未知の痕跡やモンスターの目撃情報が出た時に見られる光景で腕の立つハンターに依頼を頼んでくる。

 因果応報、その矛先はミーナに向けられた。

 

 「あぁミーナさん!良い所に来ましたね!実は今大蟻塚の荒地で記録に存在しない痕跡が発見されましてね!そこで!そこでですね!!どーか貴方様に調査をお願いしたいのですよッッ!!」

 

 怒涛の有無言わさぬ長文に早口に圧されてしまいミーナは言葉には出さずに喉の奥の方でぐっとそれを縛り付ける。

 

 

 

 

 《チョ~~~ッッ迷惑なんですけどッ!!》

 

 

 

 品性疑われる言葉は堪えて品を申し訳ない程度に持たせた心にもない言葉をまるで辞書から丸々持ってきたような断る時のお手本中のお手本を口に出す。

 

 「ごめんなさい。また後にしてくれるかしら?今はちょっと忙しくてね……大丈夫。このアステラ中くまなく捜せば暇してるハンターなんてゴロゴロ、ハコビアリみたいに見付かる筈だから」

 

 然り気無い他人への標的(ターゲット)変更(チェンジ)を付け加えた模範的な対応を済ませてミーナは即刻、その場から消え去った。脚は水車に滝をぶつけたように凄まじい回転速度を生んですたこらさっさ、逃亡に成功した。

 その場に居合わせ他の研究員達も皆「あちゃー」と仕方ないように唸りを漏らす。今日はよく此処に魚は通るが中々釣れない日。餌も上物。いや彼ら釣り師にとってはこれ程とない天下一品。こうも釣れないのはおかしい。

 研究員達は皆不思議そうな顔を合わせる。これで十二回目を記録した。

 一部の研究員は口を尖らせて「あ~また外れたよっ!!ちくしょ~」と呻き合っているような会話を続けた。

 記録係を押し付けられた女性研究員が手持ちの紙に十二本目の線を書き込むと「次は何方がいかれます~?」となまらせた。

 

 「もう僕勘弁。サシャさんとか滅茶苦茶怖かったじゃないですか……」

 

 「俺も無理かな……」

 

 諦めの言葉が続投される中、女性研究員は頭を鉛筆でつつきながら悩んでいると其処に黒スーツをビシッと着こなしたオレンジ色の髪をした女性が通り過ぎた。女性は出るところは出して抑えるところは抑えたモデルのような体型をした女性で研究員達は一瞬、声を詰まらせたが女性研究員が覚悟を決めて前に出た。

 

 「あの~……その、今アンケートをしててです…ねっ!?」

 

 ひっくり返ったような裏声で話した彼女は顔を真っ赤に染め上げて舌を噛んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 熱が籠る室内にミーナは手で仰ぎながら入っていく。金網状の床もすっかり慣れて気にする事も無くなっていた。寧ろ、新大陸に来たハンター達がまず慣れなければならない難色のひとつでもある。

 ミーナは工房を仕切っている加工屋の若頭に頼んでおいた防具の受け取りに来ていた。定期的に防具や武器の点検を彼女はしてもらっていたのだが、どうやら防具にも相当ガタが来ていたようで、この前のディノバルド亜種戦で本格的に壊れて直せなくなってしまった。

 だから以前狩ったオドガロン亜種の素材を使って防具の制作を頼んでいた。

 ミーナは奥で他の作業員に指示している若頭を見つけるとひょいひょいと手招きをする。すると若頭もミーナの素材に気付き「すみません。待たせちゃって…」と詫びながら向かってくる。

 

 「いえ……こっちも急な頼みでしたから、依頼を受けてくれただけでも感謝してます。それで、今は何をお作りになられてるんですか?」

 

 若頭は首に巻いているタオルで汗を拭きながらミーナの問いに律儀に答え始めた。

 

 「今ですねギルドの方から新兵器の設計図が届いて、それを元に部品一つ一つを造り上げている途中なんです。此処に居るのは全員、物造りのエキスパート達ですから時折、あっちからこういった仕事が舞い込んで来るんですよ」

 

 分かりやすいようにミーナに答えると彼女は成る程といったような顔を浮かべて聞いていた。新大陸に来ている人達は何かに特化している人達。研究、食事、加工、そして狩り。何においても並みよりも頭一つ飛び抜けていなくてはならない。

 彼女も推薦を貰ってこの新大陸に来た身としての仕事はしていた。(先程のを除く)

 それがミーナが皆から頼られる事になった原因の一つといえる。もう一つは単に彼女のハンターとしての腕の方も素晴らしいものだからというのもある。

 腕が立つもの同士、話が合いやすかったりもする。苦労とか努力とか。

 

 「お忙しい時期に……ごめんなさいね。こっちも早く狩りができるように復帰しないといけないから…」

 

 「いえいえ。ハンターを誠心誠意サポートするのが我々の仕事ですから」

 

 若頭は丁寧にミーナに一礼を済ますと凸凹に白い布が掛けられた見てその重量感がとれる木箱丁重に抱えて持ってきた。その埃を一切被っていない白い布を取れば中からは黒色が目立つ防具が露見した。

 

 「おぉ……凄い真っ黒だ。ゴア・マガラの一件を彷彿とさせるねぇ」

 

 ミーナが箱を受け取ったその刹那、若頭も彼女も気付かぬ間にその男に背後を取られていた。一切合切気配など感じさせずに其処に突っ立っている。

 黄金のような濃いサラサラの金色の髪を持ち、ミーナとほぼ同様の背丈、ハイライトの篭らない瞳。うなじまで伸ばされた髪を束ねて頬まで垂れるもみあげは少しばかり女性と思わせるが綺麗だがしっかりとした男の声そのものだった。

 男はその身にジンオウガ亜種の防具を纏って背には黒色の刀袋を背負っていた。そして左肩には謎の毛玉が乗っている。

 

 「えっと……見ない顔」

 

 ミーナは困惑した様子のまま尋ね口調で応じた。若頭と一度、顔を見合わせるものの互いにこの男については知らなかった。

 

 「あぁ……こりゃ失礼。俺の名前はメイリン。ギルドで二級ハンターをやってる。ただのハンターさ」

 

 メイリン。ミーナは以前この名前を聞いたことがあった。あれはそう、確かナナリから聞いたものだった。そうか。この男がメイリンなのか。

 

 「貴方がメイリンさん!サシャやナナリから聞いてます!とても凄い人だって!」

 

 目の前の男がメイリンだと知った途端、ミーナは目をキラキラ輝かせて溢れんばかりの嬉々の感情を露にした。その後急激な態度の変化にメイリンは驚いてしまう。

 

 「まったくっ失礼な女ルルな!」

 

 「………?誰か何か言いました?それにルルって…」

 

 正体不明の声が聞こえてミーナが皆に訊いているとメイリンの肩に乗っている例の毛玉がモゾモゾと揺れ初めて刹那、ミーナの顔に突っ込んだのだった。

 

 「んぎゅ!?」

 

 そしてミーナの顔面に張り付いて離れなくなる。後頭部を手のようなもので掴まれて、肩には脚のようなものが置かれる。この毛玉、“生きてる”!?

 毛玉を掴んでも液体のように指と指の間から通り抜けて掴めず、段々ミーナの息が浅くなってゆく。

 

 「んーーーっ!?んーー!んー!」

 

 「ルルネ。そこら辺にしないと怒るよー」

 

 ミーナが毛玉と格闘をするという中々奇妙な光景にメイリンが終止符を打った。

 次の瞬間にはミーナから謎の四肢は離れてメイリンの肩に戻っていったお陰で深く深呼吸が出来るようになっていた。

 彼の元に戻った毛玉はというとなんと中から細い薄緑の手足を生やして毛玉の中央には桃色のハート型を模したお面を着けていた。

 ミーナも若頭もその見慣れない謎の生物に驚いてしまう。

 

 「紹介するよ。彼女は“奇面族”のルルネだ。俺となんやかんやで七年くらい一緒に過ごしてきた大切な友達さ。まー彼女は食わず嫌いでね。すーぐこうやって人様に無礼を働くんだよ。まぁ根は良い子なんだ許してやってくれ」

 

 メイリンが頭を掻きながらははは、と愛想笑いを交えたその奇面族のルルネの紹介を済ませた。

 奇面族と聞いてミーナ達がすぐに脳裏に過ったのはあの“ガチャブー”達だった。いっつも彼らが居合わせる場所で狩りを行えば爆弾は跳んでくるわ、毒性の混じる物もあったりと狩りを難航させる迷惑モンスターの一角だった。

 

 「あの…奇面族…ですか」

 

 「お前!今すごーく失礼な事を考えてたルルね!?ルルナをそんじょそこらの低能ボンクラ奇面族と一緒にするなルル!ルルナはエリート中のエリート!クイーン・オブ!!クイーンなのルル!!」

 

  「ルルネ。あまりミーナちゃん達を困らせるな。ほら、ずっと困惑してる。彼女達は君みたいな奇面族には慣れていないんだよ。俺が聞いた話じゃ此処の奇面族は藪から棒に爆弾や毒を塗った槍なんかを投げつけて襲ってくるらしいし警戒されるのは当然でしょ」

 

 メイリンがそう言うようにミーナ達にとってルルネという奇面族の存在は完全なイレギュラーだった。

 あの野蛮な奇面族がこんなにもメイリンに馴れ親しんで、人の言葉を違和感を持たせずこんなにも流暢に話している奇面族は初めてだった。

 ミーナは暫し、そのハート型のお面を見つめた。

 

 「ん?女!お前このお面の良さが分かるルルか?」

 

 「えっ……いや、まぁ…何と言うかその、可愛らしいお面だなって」

 

 「ふん!見惚れるがいいルル!この無駄のない完璧なデザイン!肌にも優しく、軽い素材の裏に隠された丈夫さと通気性の良さ…あぁ、自分で言っておいてなんて完璧なお面なんだルル!」

 

 ミーナは少し顔を強張らせながら話を聞いていた。最後らへんからは聞き流す程度だったがハート型のデザインだけは彼女も評価していた。こうやって自分に似合わない物を他人が身に付けていると何だか一層その物の特徴が引き出されているような気がしていた。 

 似合わないハート型のアクセサリーなんて着けたことも無いが少し羨ましく感じてしまった。そうは思ってもルルネは可愛いというよりもマスコットに近い。

 

 「自画自賛もいいけどそこら辺にしないとキモがられるよ。君は奇面族の悪いイメージを撤廃させないとこの先苦しいよ」

 

 「確かにそうですね。雰囲気的にルルネさんが悪そうな感じは一切無いんですが……奇面族に抵抗を持つ人は結構いると思いますよ…ハンターなんて襲われての怪我人が多いですから」

 

 「悪いイメージ付きまくちゃってますからねぇ…私も此処の皆も良いイメージ持ったこと無いですね。ハンターじゃないからどんな感じに襲ってくるかは知らないですけど」

 

 両者、口を揃えて奇面族に対してのマイナスイメージを吐き出し、ルルネに不信感を抱く。本当に奇面族なのかどうか疑い始める。こうも慣れている、当たり前のものとうって変わられては少し揺らいでしまう。

 何だか少し怖いっていうか──何かされるんじゃないかと脅えてしまう。

 

 「───ははっ!別にそんなに怖がらなくて良いんだよ。ルルネの言う通り彼女は確かにそんじょそこらの奇面族とは格が違う。知性やコミュニケーション能力に置いたって僕らとほぼ変わりがない。見方を変えれば僕らと違う所なんて見た目の一つしかないんだよ。アイルーだって同じさ人は経験と見た目で片付けてしまう所があるからね。人間誰しもが生まれつき持つ悪癖さ」

 

 「メイリンさんは全くそういうのに抵抗無さそうに見えますけど……その、悪癖は持ってないんですか?」

 

 するとメイリンは苦笑いをしながら答えた。

 

 「何だか矛盾してるかもしれないけど…特訓。経験を積むことさ」

 

 人差し指をピンと立ててウィンクを混ぜた回答が渡された。声がさっーとミーナの耳の横を通り過ぎた。

 予想外。さっき自分から経験や見た目で判断してしまう悪癖と言っておきながら経験を積んだなんて回答になってないじゃないか。

 

 「若い内にじゃんじゃん経験は積んだ方がいい。世間一般論なんて取り込んでいけ。けどね……ここからが面白い。大人にたってそんな世間一般論をぶち壊してやるんだ。奇面族が危なっかしいなんて俺だって最初は思ったさ。けどね世間一般論を取り込んでただいま産まれただけの経験とその裏を見て産まれた経験は全然違うよ」

 

 メイリンは腰に手を当てて誇らしげに言い放った。堂々としているのは二つ名ハンターとしての威厳か─はたまたその経験の量の分厚さかミーナにはまだ分からない。

 

 「積んでいきましょーやお若いモン。君は俺より若いんだからさ、時間があれば本の束だって分厚くなっていくでしょ君と逢えたのも何かの縁だ。一緒に時間掛けて世間論からぶち壊してこ」

 

 彼は笑顔で嬉々として話している。これもまた二つ名ハンターの裏なのかなとミーナは感じた。この人と少しでも行動を共にしていれば何だか色んな事に気付けそうだと思った。

 ミーナは下を向く。今自分がやらなきゃいけない事はすぐに分かった。

 今の自分をどうにかしなければこれから先やっていけない。あの二人と同じ所には肩を並べてなんて居られない。今日の朝のあの違和感は劣等感だ。あの二人、サシャとミコトは私よりも強い心を持っている。私なんかよりもずっと──強い、憧れの人達だ。

 今はやっぱり一緒には居られない。

 その時にはもうすっかりミーナはミコトとの約束を破る気でいた。今の自分じゃかえって彼に迷惑を掛けてしまう。それだけは嫌だった。

 

 「メイリンさん!お願いします!私を、私にありたっけの経験を積ませてください!!」

 

 ミーナは既に手付かずだ。こんなの放っておけば危なっかしくて仕方がなかった。まるでモンスターだ。これは今後、育て方次第では化ける。

 メイリンにはその確証があった。彼は鼻の下を指で擦ると手を伸ばし握手を望んだ。

 

 「宜しく!お若いの!」

 

 「けっーー!旦那様がそう言うならルルネも認めるしかないルル!!」

 

 ミーナは伸ばされたを両手で握って大きく上下に何度も振った。

 そうしてミーナの経験を積む、修行の日々が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読了ありがとうございました‼️
いよいよ詰めに詰める予定の第二章の始まりです‼️
一応、メイリン達は新キャラなので紹介しときます。

メイリン 21歳。身長174cm
 近所の優しい兄貴分みたいな存在(目は腐ってるけど)
 第二級ハンターとしての戦績はトップクラス。(大抵これクエストに同行させればどうにかなっちゃう)
 サシャの先輩。
 多分死なない。

 ルルネ 身長は計らせてくれないが大体メイリンの顔と同じ位の大きさ。
 自称エリート。お面の中に色んな物をしまっている。
 語尾にルルが付く。
 こいつもメイリンと一緒に居る限り死なない。

 こいつらは多分死なないっす()
 ではまた❗
 導きの青い星が輝かんことを……


 

第二回 人気投票

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  • カムイ
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