導きの青い星と蒼い絆の物語   作:MAMYU9

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 復ッッッッッッッ活ッゥ!!


THE RACE!! RACE!!

 「俺美味い麻婆豆腐屋知ってるんすけど今度食いに行きません?」

 「君の奢りかい?ならいいが……」

 

 日差しが眩い、空に座礁する活気あるアステラの集会所に異色のコンビが佇んでいた。どれくらい異色かと言うとディアブロスと海、ラギアクルスと砂漠と想像も出来ないようなコラボレーション。

 それがメイリンとフユメのコンビだった。

 

 二人揃って飯の、それも奢りの話で盛り上がっている。

 

 「マーボーくらいで奢りたくねぇ~~」

 「私は麻婆豆腐が好きなんだ。その気になれば三皿はペロリとイケる……お値段は?」

 「一皿三千ゼニー」メイリンは指を三本立てる。

 「乗った」

 

 すかさずフユメはパチンと指を鳴らしてメイリン指差す。安くても美味しい料理はあるが実際、値段が高ければ美味い理論があって高い理由は大抵良い食材を使って作られている理にかなったものだ。

 

 一皿三千ゼニーと値段が張られている麻婆豆腐、美味しくない筈がないのだ。(メイリン&フユメ談)

 

 「しっかし……この前食ったばっかだなぁ…麻婆豆腐」

 「あ~…そうでしたっけ?」

 「覚えてないのかい……この間中華行っただろ…」

 

 首を傾げるメイリンに呆れたフユメは何処か悲しそうな表情をちらりと見せたが束の間、偶然二人の前にもう一つの異色男女グループが歩いていた。それも一人は顔を隠すように手で覆っている。

 

 メイリンはそんな二人組に近寄ると手を振って話し掛けた。

 

 「お二人さん昨日ぶり。二日酔いは大丈夫かい?フーカさんは二日酔いでダウン。今ルルネが視ててくれてるんだが……っとミーナちゃん具合悪いのかい?二日酔い?」

 「いえ……その…何でもないですぅ」

 

 明らか、一目で分かるほど様子がおかしいミーナにますます疑問が増えるメイリンは隣に佇んでるミコトに訊いた。 

 

 「ミコト君は何か知ってるのかい?」

 「…………ぃぇ」

 

 虫の声のように小さな声を彼は頬を赤らめて発した。

 

 「んぅ~?とりまどーでもよくって…クエスト、行こっか」

 「クエストですか…どんなんです?」

 

 上機嫌に続けるメイリンはフラフラと酔ったような足取りで受付カウンターに寄るとそこの受付嬢とミーナ達をすっぽかして会話を始めた。

 

 相変わらず自由奔放な人だと呆れて肩を落として溜め息をつくフユメにミーナ、慣れないミコトがナンパと変わりない彼の会話を眺めていると彼は一枚の紙切れを持って戻ってきた。

 

 そして、それをミーナ達が見えるようにちらつかせる。

 

 「それは…ラドバルキンの討伐依頼?」

 「そっ。それも二頭もいるもんだからそこそこの報酬額だし何よりもこれはミーナちゃんとミコト君の後始末でもあったりするんだよねぇ」

 「後始末ゥ?」

 

 明らか不機嫌になったミーナが彼を睨み付けながら尖らせ、口に出した。身に覚えのない彼女にとって唐突ぬ言いがかりを付けられたようで附に落ちなかったがその後始末が何なのか、好奇心があって耳を傾けてしまう。

 

 「武神を宿すディノバルド亜種…であってる?まぁそいつは環境を荒らして過酷なものにした訳。するとなんと!その過酷な環境を生き抜いたラドバルキンは強力な個体に成っちゃいました!名付けて歴戦のラドバルキン!なんちゃって……」

 「歴戦が二匹も……それって私達があの件以来、一切谷のクエストを受けなかったからですか…ぁけど他に受けるハンターなら幾らでもいるか……」

 

 絞ったような声を出したミーナは少し顔色を青く染めたが自己解決したのかすっかりいつもの肌色に戻してメイリンを見た。

 

 そんな彼はきっぱり告げた。

 

 「それが誰も受けなかったんだよね」

 「えっぇ………」

 

 そのつぎ一言に固まってしまうミーナは微動だにしない。その様子はまるで彫刻であった。

 そしてもう一人、ミーナ同様その一件に深く関わり今まさに彼女のように驚いている少年がこっそり口を押さえていた。

 

 (これって私達のせいか……?)

 「誰もあんな環境を生き抜いたラドバルキン狩らない訳だから下はエライ事になっちゃってるんだよね~今じゃこのクエストも高難易度クエストに成りかけててね…報酬額も実際一般の目からしたら割に合わないんだよね」

 

 高難易度クエスト。普通にハンター稼業をしていれば聞き慣れず慣れたくないクエストである。内容としては通常のようなクエストとは異なってどんなベテランハンターでも大変命の危険が伴う完全なクエストカウンターの厄介者である。今回で言うと歴戦のラドバルキンが二体というだけでも厄介なのに報酬額が少ないと来たものだ。

 

 流石のミーナもハンターとして生計を立ててる身としては難易度も高いのに報酬額の少ないクエストはあまり受けた経験がない。こういったクエストを毛嫌いする人がいるのも知っている。

 

 メイリンはそのまま続けた。

 

 「こういった余るクエスト、俺ら二つ名に回される事が多くてねぇ…マジでそうなるとミーナちゃんとかも連れていけないからダルくなる。その前に皆で狩っちゃおって訳なんだけど~」

 

 メイリンの口調はまるで粗悪な品を売り捌くぺてん師のように次から次へと口に出た。

 

 「レース、しない?」

 「レ、レースゥ?」

 

 メイリンはびしっと人差し指を立てる。

 

 「競争しようじゃないか!このクエストの報酬金は十万ゼニー。一体五万ゼニーとしてだ…先に狩った方がその報酬金が貰えるレースだ」

 「先に狩った方にお金が入るんですか?」

 「そういうことだ。一人に十万も入れば儲けがある。いいよなァ~十万もあれば焼肉に中華に食い放題なんだぜ~?」

 

 命懸けというのに随分呑気な口調で告げたメイリンへのミコトの視線は何故か鋭かった。

 生きるという行為を馬鹿にして踏みにじったような彼の言動と考案に苛立ちを覚えていた。それ故──メイリンの軽率な言動がどうも許せずにいた。

 

 だが、その鋭き刃の視線にいち早く気づいたのはメイリンではなく隣のフユメだった。彼女はミコトの目をじっと見つめると不適な笑みを浮かべると、隣のメイリンの腕を掴んで自分の胸で挟んだ。

 

 「げっ、フユメさん……!何やってんスか!?

 「メイリン……もっとイイご褒美が欲しくないか…?

 

 耳元でフユメが囁くと彼は唾をゴクリと飲み込んで喉笛に汗を通らせて心臓の鼓動が格段に早くなる。気のせいか自分でも息が段々荒くなっていくような気がしてきた。

 そして───また囁かれる。

 

 「────君が二体とも倒したら………………………デート、してあげる

 

 途端、メイリンの目が見開いた。どうも彼は素直であったが為か直ぐに体に出てしまっていた。

 

 「何かやる気湧いてきたわ。ゼッテェー負けねェ」

 

 そうやって急に腕を伸ばし始めたり回し始めたりサクサクと準備運動を進める落ち着かない様子のメイリンの心境が窺えた。

 

 

 

 ((とんでもねぇーやる気だ!?))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 

 

 以前より瘴気の谷の様子は生命の活気が溢れていた。幾ら生命の到着点とはいえ屍を貪って生活する生物もいれば上の陸珊瑚の台地より谷の環境の方が合っている生物も沢山いる。今回の標的であるラドバルキンもそうだ。

 

 ラドバルキンはウラガンキンに酷似した谷にのみ、生息されている大型の獣竜種である。ラドバルキンの特徴といえば全身を纏う骨の鎧。これが骨鎚竜と呼ばれる由縁でありコレクターのように集め身に纏うその様はモンスター界のスカベンジャーと言える。

 それ故、攻撃にも防御にも移動能力でさえも補うその万能さはハンターを苦しませた。

 

 そんな危険生物が徘徊する獣道をミーナは何故かスーツ姿のフユメと探索していた。

 

 「……こっち来たんですかメイリンさんの方じゃなくて」

 「直ぐ終わっちゃうからね」

 

 この二人だけで行動するのは互いに初めてだったからかぎこちない雰囲気が歪めなかった。言葉も少なく会話もよく途切れてまるで仲が良くないみたいだった。

 

 何処かむずむずするミーナが下唇を噛んで焦れったそうにしているとフユメが口を開けた。

 

 「私、女が嫌いなんだよね。メイリンを取られそうでどうも気に食わなくてね。彼に近付くヤツはとことん取り除いてきたんだ。……ねぇ君もそっちなのかい?」

 

 フユメは彼女に目は合わせなかったが横から見えるその不思議な眼は常に監視されて行動を制限されているような感じがして怖じ気立った。モンスターの眼でもビビらなかった彼女が人に恐怖心を抱いたのはこれが三度目だった。

 

 一つは今のフユメと。二つはメイリンと初めて会った時に気配も無く背後を取られていた時、そして三つは昔鍛えられていた時代の師匠の姿だった。

 

 ミーナは動揺を隠しきって告げた。

 

 「興味ありません。タイプじゃないんで」

 「へぇ~~~……メイリンって結構顔もイケててお金もあって超強いのにぃ?君からしたら憧れでもあるんじゃないか?」

 「憧れとタイプは違います」

 

 少しフユメはつまらそうな顔をした。

 

 「じゃぁどんなのがタイプなの?」

 

 その問いかけに彼女は暫しの熟考の末、口を開ける。

 

 「言うことを聞いてくれる子犬ですかね」

 「コワッ……」

 「こう……囲まれてたいですね…タイプっていうか願望というか…」

 

 手を使って分かりやすいように説明しようと試みるミーナの腰から導蟲が光りだす。その色は強者を表す青色になって彼女達の進行方向を先導する。

 

 「あっちの方向は?」

 「四番エリアです」

 「………いくか」

 

 彼女達が小走りで蟲が進む四番エリアへと向かうと青い集団は一つの大きな骸の集合体に寄ってたかって反応しだす。

 ミーナが近付いて漁って骨を一つ取り出し導蟲の入った籠に放り入れる。

 

 すると彼女は目を疑った。回収した痕跡に反応し進んだ導蟲の行き先は自分より少し離れただけの位置で再び反応しだす。そしてゾッとするような戦慄が走る。

 

 

 突如として動き出す一つの骸が影から伸びて僅かに実体を作り出して無機物から生命の鼓動を発信して周りの骸を駆り立たせた。まるで骨一つ一つが命を持つように集まって散らばって大きく鳴る。

 ぎらんと鋭い視線が彼女だけを見つめて離れない。

 

 

  バキンッバキンッバキンッ

 

 

 無数の骨が彼女に迫って嗤っている。口も無く、目も無いただの影から伸びた黒く無骨な巨体がが此方を向く。

 

 「退け」

 

 動き遅れたミーナを体当たりで無理やり退かしたフユメは腰から抜いた拳銃により辺りが金属音と線香花火みたいな僅かな一瞬の光を得た。

 

 その光でミーナもフユメも相手の全容を窺えたがそれはあまりにも────

 

 「デカくないかぁ…?」

 「滅茶苦茶デカイですよ……」

 

 記録されてる最大金冠のサイズは越えているであろう巨体に二人とも一歩後ろへ下がる。禍々しい黒色の体表に纏う幾千もの骸の意志を背負って戦う、『誰かが為のスカベンジャー』。

 この死体漁りの戦士は既に彼女達をを我が物にしようとしていた。文字通り骸に変えて愛し続けるのだ、食すのだ、護られるのだ、此処に眠る朽ち果てた名も無き小さな英雄と同じように彼女達もまた絵画のように神を崇める信者達のように死して尚その身が()に成ってまでも尽くし、張り付けにされるのだ。

 

 「ミーナ、私は下がるが君一人で前線を任してもいけるか?」

 「やってみます」

 

 肉食バクテリアが混じる淀んだ空気が緊迫する中フユメはミーナの肩を押さえて「後は任せたよ」と告げて彼女からも離れた所に向かった。その時、少しだけ彼女に信頼されている気がして自信が湧いた。

 

 ほらりと視線をやると今にも暴れたそうに殺気立って蒸気が溢れるラドバルキンが映る。これを自分がやらなきゃいけない。何故だ、こう怖いのは。

 ────そうだ。いつもの私の狩りは背筋が凝結するような緊迫して、切羽詰まった狩りだ。メイリンやフユメとは違う狩り。 

  

 今、彼女は成長しようとしていた。果たしてそれが人として堕ちたものであっても強さを求める思想を止める事は生物の本能が許さないまま彼女は背負う太刀を抜く。

 その太刀は鮮やかな桃色を帯びて谷に漂う僅かな光すらも吸い込むように反射し、施された花の模様が妖しげに煌めく。少し短めに作られたその太刀は片手でも軽々扱えてその切先を獲物に向ける。

 

 狐刀カカルクモナキ 彼女が現大陸で愛用した太刀だ。

 

 「成長しろよ──私」

 

 とたん、と勢い良く骸だらけの地面を蹴って飛び上がったミーナは空いたラドバルキンとの距離を一気に詰めた。身のこなしは軽い。今まで装備していた防具よりも軽量化されたオドガロン亜種の防具は確実にミーナの狩猟のスタイルに合っていた。

 ふとした刹那にミーナの姿はラドバルキンの腹を狙える位置に降り立っていた。すっかり切先を触れさせてその気になれば振って攻撃を行えるよう構え終えている。

 

 「動くな……言葉が通じるならな……けど無理かぁ」

 

 脅迫の言葉すらも通じぬ相手に脅しを掛けたミーナの体はぐらっと崩れて視界が斜めに変わる。

 

 「ライダーじゃないからなぁ──」

 

 崩れ行く彼女から一時の閃光がほど走りの銀色の線は頑強なラドバルキンの甲殻すらも貫いて矢のように肉まで到達し、突き刺さる。

 ラドバルキンは悲鳴を上げることも怯むことも無かったが仕返しと言わんばかりのタックルをゼロ距離でミーナに放つものの直ぐ様太刀は抜かれて距離を離される。

 

 「私にとってミコトってなんだろ……」

 

 過る今はどうでもいい問題。自分がどう思ってようが………やっぱりミコトは私の事が好きなのだろうか?キスするってことはそう言うことなのだろか。

 やっぱり分からない。こういうのは私が田舎物語だから分からないのだろうか?都会では沢山の小説が売ってて其所に住む人達は皆感性豊かなのか。

 

 幼き日々をベルナ村で過ごした彼女は恋と云うものを知らずに生きてきた。ただモンスターを狩ることを生き甲斐として自分自身の存在価値として見て、見られてきた今日この頃。どうも不思議な感情に溺れる。

 

 「頑張れよ……私」

 

 気張って彼女は刃を振るいラドバルキンへと向かっていった。

 

 

 

 

 ───────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 メイリンは血で汚れた頬を腕で擦って滲ませていた。目の前には転がった傷だらけのラドバルキンが横たわっていて目からは生気を奪われて死んでいる。

 

 ミコトはその光景に唖然としていた。今起きた出来事は彼が見てきた狩りとは全く異なる、最早虐殺に及ぶ程の圧倒差をとくと見せつけられてしまった。

 その証拠にメイリンの防具は血で汚れてはいるが外傷は一切無く、息も上がっていない。

 

 エリア九番はたった一人の人間によって制圧された。巨大なスカベンジャーが抵抗しても差し支えない程の圧倒っぷりを魅せた後、その命が途切れる音の余韻に浸っているのだ。

 

 「どうしてこんなレースなんて始めたんですか…」

 

 ミコトの顔色は優れない。何かをずっと溜め込んで今にもストレスが爆発しそうで危なっかしいそんな表情を浮かべてメイリンを睨んだ。

 すると彼は悪びれた様子も無く、ただ純粋に言い放った。

 

 「楽しくするためかな」

 「狩りを……ですか命が懸かってるっていうのに…」

 「だから、だろ。折角命賭けた博打を打ってるのに面白くなかったら頑張る気が起きない。仕事ってのはさーテメーの人生楽しくしようとするために皆汗かいて働くんだ。ハンターなんて死期が早いとこに身を置いてるんだ…人生とにかく楽しんだモン勝ちだから俺は若い内にとことん楽しむね」

 

 逃げるようにメイリンはスタスタと足を適当に運ばせてミコトを置いてきぼりにしては進んで行ってしまった。そんな彼を尻目に転がるラドバルキンの死体にそっと触れる。

 

 もう冷たい───

 

 

 ミコトはため息を吐いた。目前の死体は切りつけられた腹部から臓器が出そうで彼の理性がラドバルキンの腹のようにはち切れそうになり───直ぐに口を押さえた。こんなのいつまでも見てたら吐いてしまう。

 

 「うぅ………せめて…せめて…」

 

 せめて、このラドバルキンが生きていた間だけでも幸せであった事を願ってミコトはメイリンの後を辿った。

 しかし意外にも早く彼の元に辿り着いた。そして呆然と彼と一緒の光景に目を見開き口を開けた。

 

 

 

 

 

 「あ”あ”あァ”ァァ!!」

 

 頭を押さえる。

 

 「死ねっ!!」

 

 目まぐるしく交ざり合う二匹の獣。血が宙に渦巻きを作り出す。少女は淡い桜色の刀と小さなナイフをそれぞれ片手持ちして暴れる。

 

 彼女もまた狩人である。

 

 主役が斬る手を止めて二刀を掲げれば敵役もピタリと動かなくなる。そしてゆっくりと刀を下ろせばまた同時にラドバルキンも脚から崩れてくたばる。

 肌に付着し、すっかり滲んでしまっているモンスターの血が証明するのは紛れもない彼女のハンターとしての殺しの才能。

 

 

 ミコトは絶句して冷や汗を掻いていたのに気付かずあまりの光景に出る言葉が無くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 レースは引き分けである。メイリン一、ミーナ一のドローであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 清掃だった白い部屋の隅に埃が溜まっている。無骨な正方形の箱の中に一人の若い男が立っていた。

 漆黒のスーツを纏って気だるそうに部屋の中央に突っ立ている。男と向かい合うように前には横長の木製テーブルと五席の椅子に汚いシワを作った老人がそれぞれ座っている。

 

 窓は赤いカーテンで日差しを遮り部屋の中を舞う大量の埃が薄明かりに照らされて金粉のように映る。

 

 

 「私達は…君の行動に今まで目を瞑ってきた。理由が分かるかね?それ以上に君が有用な存在であったからだ……だがもうこれ以上目蓋をを糸で縫うのは懲り懲りだ…分かってくれ、毎日取っている新聞の見出しに君の犯行が載るようになってしまってから隠蔽工作の限界を迎えている。それは君が一番理解しているのでは…?」

 

 中央に座る髭を伸ばした男は捨てるようにテーブルに置いていた新聞を若い男の足元へほった。

 

 

 『ライダー殺し再び!?』

 

 「いい加減…まだなのかね?君の野望の遂行は……もう幾つ待たされているのやら…後先短い老人達の時間を幾ら費やしてきたと思っておる」

 「君の野望なんて君を利用する為だけの条件に過ぎないのだよ。我々が本当にそんな世界を望んでいるとでも思っているのか?甚だしい勘違いだよまったく」 

 

 

 次々と口うるさく告げ始めた老人達に若い男はにっこりといかんせん不気味な笑顔を見せて腰から長く鋭利な剣を取り出した。

 

 「私は貴殿方に話す許可を出していませんよ?」

 

 

 

 

 

 「─────あっ」

 

 

 一人の老人がはっとしたような声を衝動的に出して薄く光を反射する剣を捉えたが最後、若い男以外のそこに居合わせた全ての人間の視界が揺らぐ。

 それは剣を抜かれて一秒も経たない出来事であった。

 

 

 

 

  

 

 

 

    ー───────────────ー

 

 

 

 男が構えた一瞬にして五人の首がはねられた。踊るように舞い上がり喜びながら血を流して赤いカーペットをもっと濃くした。

 舞い上がった頭部は空中で数回転するとやがてはテーブルの上に落ちて綺麗とは言いがたいが五つの首が意思を持っているように勝手に並んで置かれた。平らな切断面から血が溢れだし滴っていく。

 

 

 並べられた生首を眺めて男は確かに悦に入ったのだ。舞う埃、仄暗い部屋、充満する鉄の臭い、ただの無音、自分好みに調整された夢心地で居られる子供部屋だった。さしずめ、老人達も玩具のようにしか思っていなかったのだろう。

 

 不敵な笑みを浮かべる男は死体に背を向けて部屋を出た。誰にも気付かれぬよう隠蔽するために持ち出した合鍵を使ってさも当たり前かのように鍵を閉めた。そして長い廊下を歩く。

 コツコツ革靴が響くのは彼以外に廊下を誰も歩いておらず故に静かだったのが原因だろう。響きやすい素材、部屋にしかカーペットが敷かれてないのはコスト軽減の為、それでもこのボロ廊下には嫌気がさす。

 

 だが、それも今日が最後だろう。

 これ以上の隠蔽が不可能となれば男はこれからギルドと、世界と闘うことになる。しかし、それも本望であった。

 

 世界など男には関係の無いこと。

 彼が心の底から神に祈るように願うのはライダーの撲滅(・・・・・・・)と唯一の家族の幸せ(・・・・・)であった。が、神が居ないと知れば彼は自分の手を伸ばした。

 

 

 

 ライダーの撲滅。男に出来ない芸当ではなかった。寧ろ男にしか出来ない事。この世でただ一人、最強の称号を持つ彼にしか出来ない悲劇を起こす。

 望むは家族が幸せに暮らせること。 

 

 

 

 金髪が揺れる。透けるように美しい黄金が揺れる。

 

 彼の()が疼く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  




 読了ありがとうございました。
 一ヶ月ぶりに更新をし、復活を果たしたドブネズミです。
 これからもバンバン投稿して参りたいと思います。
 ではまた!
 導きの青い星が輝かんことを…

第二回 人気投票

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