【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝 作:双子烏丸
訪れない待ち合わせ(Side ジン)
日曜日の――真昼間。
ジンは地方都市のとある喫茶店の前で、誰かを待っている様子だった。
服装もカジュアルな感じの普段着から、何やら立派なジャケットを羽織り、髪も綺麗に整えていた。……どうやら、誰かを待っているようだ。
――このサンドウイッチなんか、なかなか旨そうだ――
彼は暇つぶしに、入り口近くにある食品サンプルのメニューを、少し眺めていた。
――へぇ、プリンアラモードまであるのか。そう言えば、この間のミユちゃん手作りのプリンアラモード……あれも最高に美味しかったな――
実は昨日、フウタとミユの二人がジンの暮らすアパートに、この前話していた通りプリンアラモードを渡しに、やって来たのだ。
――フウタの奴、『ミユの作るデザート、最高に美味しいんだ』って言ってたっけ。
まぁ、ただの惚気かと最初は思ったけど、フウタの言う通りだったとは。……嬉しい誤算だったな――
昨日食べた、彼女のプリンアラモードの味をつい、思い出していた時……。
――ピロリン!
ズボンのポケットから、軽快な音がなった。
ジンはポケットに手を突っ込み、タブレッドを起動させると、チャットにメッセージが入ったという、通知があった。
メッセージの相手を知った彼は、ぱあっと輝いた表情になる。
すぐにチャットを開き、その内容を確認する。
……しかし。
だが内容を見た途端、落胆した様子を彼は見せた。
――はぁ、会うのが厳しい……か。でもこんな状況だと、仕方ないと言えば仕方ない――
溜息をこぼしながらも、ジンはタブレットをポケットに戻す。
喫茶店の壁にもたれながら、深呼吸をついて空を見上げた。
――もっと、強くならないとな。どの道彼女にふさわしい相手になるなら、俺は――
――――
「……何だ、誰かと思ったら、ジンさんじゃないか」
いきなりそう声をかけ、現れたのはフウタだった。
長ズボン、薄いシャツにパーカーを羽織った私服姿……。両ポケットに手を突っ込んで、彼はジンの顔を覗く
「フウタも、街に来ていたのか」
「先日ぶりだね! 僕はと言うと、街の水族館で『日本のクラゲ展』って言う企画があったから、それを見にと写真を撮りに来てたんだ。
半透明でキラキラゆらめく、綺麗なクラゲ……。良い写真が撮れたよ! 良かったら後で見るかい?」
「ははは、だったら……後で見させてもらおうか」
余程満足したのか、目を輝かせているフウタに、ジンは押され気味なようだ。
「本当ならミユと行きたかったんだけど、部活の練習が入ったって、事みたいだから。……また今度、一緒に行く時間を作りたいな。
でもでも、ミユにはちゃんとお土産を買ったんだ。ほらこの『お魚さんクッキー』! なかなか可愛い感じだし、喜んでくれるかな」
フウタは土産袋に入った、クッキーの箱を見せびらかす。
いつものように、彼女の事を想っている……彼。
ジンは口元に、軽い笑みを見せた。
「いい感じだな。俺も本当に、微笑ましいと思うさ」
だが、その言葉にフウタは――。
「たしかに僕は、幸せ者かな。…………きっと、とても幸運、なんだろうな」
嬉しそうにこう呟いたフウタ、その笑顔は確かに本心ではあった。
――しかしほんの僅か、どこか複雑でそして、寂しいような雰囲気を見せた気も、ジンは感じた。
――――
「……フウタ?」
違和感を持ったジンは、思わずそんな言葉が口に出た。
対してフウタは、さっきまでの様子は何事もなかったかのように、気を取り直してみせる。
「何だよ、ジンさん! ――そんな変な顔してさ」
「いや……さっきの言葉、どう言う意味かって、少し気になって……」
この問いを聞いてか聞かずか、フウタはそのまま続ける。
「――僕のことなんか、どうでもいいさ。それよりも、ジンさんこそ何やっているんだい? そんなに決めたような恰好をして、こっちの方が、僕は気になるな」
……すると、今度はジンの方が、他所の方向を向いて不自然な様子を見せる。
「それは……その、俺の用事は、もうなくなったさ」
「……そう、か。何だか僕も変なことを聞いて、悪い」
こっちもこっちで、不用意な事を聞いてしまったことに、フウタは謝る。
だが、その後フウタはこんな提案を続けた。
「――けどさ、もし用事がないなら、今からGBNに行かない?」
「ん?」
「ほら? 僕たちだってあれから、腕も上がっただろ? いよいよあのドクロマークのハイゴックに、リベンジでもしようと思ってさ」
確かに、あのジャブロー戦再現イベントでも、実力のいくらかの向上は、二人とも感じていた。
おそらく強敵ではあるかもしれないが、今なら……どうにかなるかもしれない。
「リベンジ……か」
ジンはふと、考えこむ。
――けど、フウタの言う通りかもな。ちょっと気分転換にもなるし、落ち込みも晴れるかもしれないし――
考えた結果、彼は答えた。
「OKだ。俺たちの力、見せてやろうじゃないか」
フウタはうなづく。
「よし! じゃあ、ガンダムベースに行こう! ……ここからだと遠くないしね。
ちなみにガンプラは、持って来ているかな? 僕は一応用意はしているけど……」
「心配しなくても、バッグの中にちゃんと入れているとも。念のために、な」
こうして二人は、GBNにログインするためにガンダムベースへと向かう。