【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝 作:双子烏丸
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その丁度、同じ日の出来事。
田舎町の高校にて――。
今は数学の授業。フウタは席に座り、退屈そうに授業を聞いていた。
「ふぁーあ」
学力は高くもなく、かと言って低くもないフウタ。
勉強はまぁまぁ出来るものの……別に好きと言う訳でもない。彼は授業に退屈していた。
カザマ・フウタ、十七歳。
片田舎に暮らす、大体普通の高校生だ。学力、運動能力ともにそこそこ、ちょっと強気な所があるものの、割かし好青年でもある。
「……と、言う事だから、この二次関数の図の、X軸は……」
教壇では数学教師が、黒板に書かれた内容を解説している所。
――こう淡々と説明されてちゃ、眠くなるよ。……もうすぐ昼だし、お腹だって空いているんだ――
それでも一応は、ノートに授業内容を書いている。
フウタのひとつ前……右横の席で教科書を立ててその後ろでグースカ寝ている、クラスメートの男子よりはまだマシだ。
「……また、数式として書くとするなら、このように……」
授業が進んでいる中でも、相変わらず眠り続けている、クラスメート。
その隣には座っているのは、フウタの幼馴染であるミユ。放っておけずにクラスメートの肘をペン先でつつくも、一向に目ざめる気配がない。
これには困ったように、彼女は後ろに座っているフウタに、ちらりと視線を向ける。
――うーん、こればっかりは――
フウタもこれには困り果てた様子、そんな時……。
「そこ! 起きんか!」
突然、手にしたチョークでクラスメートを指さし、数学教師は声を張り上げた、
クラスメートは驚き、ガバっと起き上がる。これには隣のミユまで、ビクッとした。
「……ふぁっ!」
それでも若干呆けた様子の彼に、教師は畳みかける。
「授業中に居眠りとは、どう言うことだね、ナカガワ君?」
「ははは、嫌だなぁ……眠ってなんかいませんよ」
「なら、この式のXとYの値を答えたまえ。授業を聞いているなら、分かるはずだ」
「うっ! それは……」
何とかごまかそうとするクラスメート、ナカガワ・ヒロノブだったが、これには言葉が詰まる。
「はぁ……やっぱり、眠っていたのか。大体、ちゃんと授業を聞いていれば、居眠りはしないと思うのだがな。
そもそも学生として、授業を疎かにするとは……」
こうなると話が長い事は、フウタ、ミユも含め、クラスの誰もが知っていた。
数学教師はくどくどと、説教を始める。
もうすぐ授業時間が終わろうとしているが、この様子だと――昼休みに入るのはもう少し先になりそうだ。
――――
説教のせいで、授業時間を幾らか過ぎた後、ようやく昼休みに入ったフウタ。
「ふぅ、結局五分、授業が終わるのが遅くなったな」
昼休みの教室で、彼はちょうど昼食をとっていた所だった。
「仕方ないよ。あの先生、一度説教するとなかなか止まらないんだから」
机を並べて、ミユもまた、向かい合わせに座っていた。
彼女の言葉に、フウタはそうだね、と軽く頷く。
「そりゃそうだけど、さ。でも……あんなタイミングで、居眠りなんてないだろ、ヒロ」
「ごめんごめん。だって、あまりに退屈だったから、つい」
そしてもう一人、並べてある二つの机の横にもう一つ椅子を持って来て、さっき居眠りしていたヒロノブも席を並べていた。
彼はフウタの数少ない友人で、そして――
「そう言えばさ、フウタは良い写真、撮れたのかよ。来週の金曜日は月一の、部活の展示会だぜ」
フウタ、ヒロノブはともに、学校の写真部に所属していた。つまり二人は、部員同士でもあった。
模型も趣味であるフウタだが、残念ながら模型部は、この学校にはない。入っている部活は、これだけだ。
「……おっと! 忘れてた。ちゃんと写真は用意しているからさ、楽しみにしててよ」
「二人の展示会かー。私は剣道部の練習が、その日に遅くまでかかりそうなんだ。気になるけど……厳しいかも。
こっそり抜けて、見に行こうかな」
「もし見に行けなくても、どんな写真かコピーを貰ってくるから、大丈夫だよ。それにしても――」
彼は弁当のタコさんウィンナーを箸でついばみ、美味しそうに口にした。
「ミユの作ってくれたお弁当、とっても美味しいな! このウィンナーや野菜炒めに、フワッとした卵焼き、やっぱりミユのお弁当は、世界一だねっ!」
彼女の手作り弁当で、幸せそうなフウタ。
そしてそれは……ミユも同じ。
「早起きして、頑張って作った甲斐があったよ。フウタがそんなに喜んでくれて、私も嬉しいな。
……でも、世界一は、ちょっと大げさかも」
彼女は嬉し恥ずかしいような、そんな様子を見せる。
「ううん、そんな事ないよ。少なくとも僕にとっては、そうなんだからさ。
これでまた、午後からの授業も、頑張れる! さてと、次は残りの卵焼きも……」
……と、フウタは弁当の、残りの卵焼きに箸を伸ばそうとする。
その瞬間、横から別の箸が伸びて、その卵焼きを掻っ攫った。
「もらいっ!」
「おい、ヒロ! 人の卵焼きを横取りなんて!」
「へへん! 世界一って言われたら、どうしても気になってな! 別に一つくらいいいじゃないか」
卵焼きを取ったのは、横に座っていたヒロノブ。フウタは手に持った箸で、卵焼きを取り返そうとする。
「これは、ミユが僕に作ってくれた弁当なんだ! 渡せるわけがないだろ!」
「まぁまぁ、友人のよしみだろ。、大目に見てくれよ」
「な訳――あるかよ!」
「落ち着いてよ、フウタ。後でまた美味しいのを、作るから、ね」
大騒ぎのフウタとヒロノブに、たしなめるミユ。
……これもまた、ちょっとした日常だ。