【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝   作:双子烏丸

3 / 88
冴えない一日(Side ジン)☆★

 GBN、荒野のフィールドにて、三機のMAが飛翔する。

 闇夜を照らす、仮想空間とは思えない程に綺麗な月に照らされる機体の姿は、三機とも改造されたガザシリーズのMA形態だ。

 元々『機動戦士ガンダムZZ』に登場する、MS、MA両形態への変形機構を持つ可変機。…………なのだが、やたら派手な塗装に、刺を生やしていたりなどと、やたら世紀末的もとい攻撃的な外見となっている。

 

《さてと、次はどんな真似をしようか?》 

 

《低レアのアイテムを初心者に高く売りつけて、コインの大儲け、なんてどう?》

 

《だが、ポイントも稼ぎたいぜ。ミッション中にでも、高レベルのプレイヤーを騙し討ちすれば、たんまり儲かるんじゃねぇか》

 

 やたら物騒な会話を行う、アバターの柄までもが悪い、ガザのパイロット達。

 どう見ても、ただ普通にゲームを楽しむダイバーとは、とても思えない。

 それもそのはず、彼らはGBN内で迷惑行為を繰り広げ、『ガザ三兄弟』で名の知られる悪質ダイバー達であったのだから。

 

 

 

 彼らはこれから行う悪事について、色々と話し合っていた。

 

《確かにポイントも悪くねぇ。ここらで一気に、稼ぎたいとも思っていたしな》

 

 その中でリーダー格と思われる――ここではダイバーAと呼ぶ――ダイバーが、もう一人のダイバーBの意見に同意する。

 だが三人目になる若干オネエ口調のダイバーCは、やや否定的な様子。

 

《だけど、最近だと微妙に警戒されてるじゃない? 他のプレイヤーも集まるミッションだと、不意打ちをするのも面倒でしょ》

 

 これにはダイバーAも唸る。

 

《確かに、それはそうだ。何しろ俺たち悪質ダイバーを狙う、ヒーロー気取りの奴もいるからな、そいつに目をつけられるのも少し不味い》

 

 

 

《なら、一機でいる所を、三機で襲うなんてどうだ? いくらレベルが高くても、俺たちのコンビネーションなら!》

 

《それでもそんなに都合よく、そんなダイバーが一人でいないわよ》

 

 それでも懲りずに高レベルのダイバーを狙う、ダイバーB。ダイバーCは乗り気ではないが、対してタイバーBには、まだ当てがあるらしく、ある事を話す。

 

《ところがどっこい、実はそれに打ってつけの相手がいるんだ。

 ……こんな噂を、聞いたことあるか。あちこちのディメンションを一人放浪し、何かを探して回っている凄腕のダイバーがいるって事を》

 

 この話についてダイバーCは知らない様子だが、ダイバーAには聞き覚えがあった。

 

《ああ、その話なら俺も知ってるぜ。何ならあの『アヴァロン』の一員として、第二次有志連合戦でも活躍していたって話だ》

 

 

 

 GBNにおいては、ダイバー同士の協力要素も存在し、それが部隊システム、『フォース』である。同じ目的を持ち、専用のミッションへ共に挑む、それこそフォースの醍醐味とも言えた。

 その中でもランキング一位のフォースこそ、『アヴァロン』でる。

 リーダーを務めるのは、GBNチャンピオンであるクジョウ・キョウヤ。約二年前に起こったブレイクデカール、そしてELダイバーに関する事件に際して、ダイバー、フォースの連合軍となる『有志連合』を組織し、GBN全てを巻き込んだ第一次、第二次有志連合戦は、今でもダイバー達の間で語り草となっていた。

 

《確かにそんな奴なら、倒せばポイントが高く、手に入りそうだな……ふふふ》

 

 ほくそ笑んでいるダイバーAに、そうだろう、とダイバーBは言う。

 

《そのダイバーは見たことないガンダムに乗っているらしい。大きな特徴は、普通のガンダムより、小型ってことだぜ》

 

《小型の……ガンダムねぇ。何があるか知らないけど、私たちなら余裕そうね》

 

《俺が聞いた、その筋の話では、次はこのディメンションに現れるってよ。

 もし現れれば、その時は――》

 

 悪質ダイバー達がそんな話をしてた、まさにそんな時……『それ』は姿を現した。

 

 

 

 三機の前に現れた黒い影。

 夜の闇に紛れ、姿ははっきりと分からないが、人型のシルエットはまさしくMS。

 そして、頭部からのびる、角のような二本のアンテナと、輝く二つの目。

 それはまさしく―― 

 

《『ガンダム』……か》

 

 ガンダム――それはアニメ『機動戦士ガンダム』から始まる、一連のアニメシリーズで主役として活躍するMSであった。

 そのヒロイックなデザインは、今日に至るまでのガンダムシリーズの人気へと繋がり、GBNにおいても他のMSを凌ぐ高い人気を誇っている機体だ。

 

《それに見ろよ。あのガンダム、普通より小型だぜ。まさかあれが……》

 

 あの正体こそ、先ほど三人が噂した、凄腕のダイバー……なのだろうか。

 

 

《そうと決まれば、早速――倒してポイントを頂くぜ!》

 

 ダイバーAの合図に、B、Cともに応える。

 

()()()

 

 謎のガンダムに向かい、急襲を仕掛ける三兄弟のガンプラ。

 相手もそれに気づき、ライフルらしきもので応戦するも、ことごとくそれを避ける。

 MA形態は加速、機動性ともにMSよりも高い。そのためでもあるのだろう、が……

 

《ははっ! 全然当たらないぜ!》

 

《射撃が全然ダメじゃない、本当に凄腕?》

 

 噂とは全く違う様子に、思わず嘲笑するかのように三機はガンダムの周囲を飛び回る。

 ガンダムは相変わらずライフルで攻撃しているものの、それでも傷一つ、つけられはしない。

 

《それじゃ、そろそろ止めを刺すか。……行くぞ!》

 

 その声を合図に、三機のMAは方向転換し、ガンダムへと向かって行く。

 そして三方向からの、ビーム砲の一斉斉射、相手は成す術もなく次々とビームに貫かれ――爆発四散する。

 

 

 

《ひゃははは! どうだ! いくら凄腕だろうが、俺たちの敵じゃないぜ!》

 

 ダイバーBは得意げに大笑いした。だが、ダイバーCはやや、懐疑的だ。

 

《……だけど、あのガンダム、かなり弱すぎでしょ? あんな動き、初心者と殆ど変わらないわ》

 

《何言ってんだよ、確かに普通よりも小型の、ガンダムだったじゃないか? あれで間違いないぜ。弱かったように思ったのは、単に俺たち三人が、強かっただけの話だ!

 見てみろよ、きっと手に入ったポイントだって……》

 

 そう言って、ダイバーBがポイントを確認した。

 しかし、確認した瞬間、彼の得意げな様子は消えた。

 

《どうしたのよ?》

 

《……馬鹿な! ポイントがほとんど入ってない、だと!?》

 

 ポイントを確認した所、ほんの僅か入ってはいるものの……大して入っているとは、言えなかった。

 こんな中で、ダイバーAは何かに気づいたらしく、こんな事を言った。

 

《おい、二人とも、倒したガンダムの残骸を見てみろ》

 

 先ほど、爆散したガンダムのパーツ。

 頭部と胴体、肩など一部が、原型が残っており、それは三兄弟にも見覚えが、あるものだった。

 

《あれは……F91、じゃないのか》

 

 

 

 ガンダムF91――それは劇場アニメ『機動戦記ガンダムF91』に登場する主人公機。従来のMSよりも小型化した機体が中心に登場し、ガンダムF91もこれまでのガンダムと比較し、小型の部類に入った。

 

《確かに、小型のガンダムだが……確かお前の話では『見たことのないガンダム』だったよな》

 

 これにはダイバーBも、認めざるを得なかった。

 

《ああ。これは…………全く違う機体。ただの人違い、だな》

 

 

 

 ――――

 とある地方都市のガンプラ専門店、ガンダムベース。

 そこでGBNから、ついさっきログアウトしたばかりの青年が、溜息交じりでヘッドギアを外す。

 

「……はぁ」

 

 その傍に位置する、三角形に近い台座。GBNへとガンプラのデータをスキャンするデバイス――ダイバーギアの上には、彼の物と思われる、黒と金色に塗装されたガンダムF91が置かれていた。

 

 ――ディメンションで一人、ガンプラバトルの訓練をしていたのに、まさか三人がかりで襲われるなんて。

 一体、俺が何をしたってんだ――

 

 灰色を基調としたカジュアルな服装に、細目の眼鏡をかけている青年、顔立ちは整っているものの、若干冴えない雰囲気を漂わせている。年はおそらく、二十代半ば、と言った感じだろうか。

 

「ようやくログアウトしたか、随分と遅かったじゃないか、ジン」

 

 青年――タケヤマ・ジンの傍らには、少し前から待っていたのか、年が近い男性が二人。どちらも彼の仕事仲間、そして彼らもGBNのダイバーでもあった。

 

「ごめん、ちょっと待たせた」

 

「全く! 今日はGBNは程々で、その後飲みに行くって約束だったろ? せっかく良い店を予約したって言うのに、時間がないぜ」

 

 多分三人の中では年上で、先輩風を吹かせた青年は、そんな事をジンに言う。

 

「まぁまぁ。待っている間に僕たちは、ガンプラが買えたじゃないか。それで良しとしましょうよ、先輩」

 

 一方、ジンと同期らしいもう一人は、彼を弁護する様子を見せる。

 先輩とその同期の青年は、どちらも手にはガンプラの入った袋を持っていた。

 

「ま、それもそうか。……それじゃ、ジンも戻って来た事だし、早速飲みに行きますか!」

 

 

 

 ――――

 三人はガンプラベースから歩いて数分程度の距離にある、居酒屋へと向かった。

 それなりに良い所らしく、小綺麗な感じの店内。ジンたち三人は、テーブルを囲んで飲み物を頼みながら軽い食事をしていた。……そもそもメニューも、やや高めな物ばかり、あんまり多くは頼めない。

 

「くーっ! やっぱり飲み会一番のビールは上手いな! 身体に染みるぜ!」

 

 早速、届いたばかりのビールを飲み、ぷはっと酒臭い息を吐く先輩。その一方で、同期の方は、頼んでいた焼き鳥を食べていた。

 

「……にしても、相変わらずジンは、酒を飲もうとしないんだな。ケイジの奴だって、ノンアル程度は飲めているのにな」

 

 そして、ウーロン茶をちびちび飲みながらフライドポテトをつまんでいたジン。

 

「……ん?」

 

 自分の名前が呼ばれ、焼き鳥を頬張りながら、同期も顔を向けた。

 が、それは置いておいて、ジンはこう言い返した。

 

「仕方ありません、先輩。自分、ノンアルでも酔って次の日、頭が痛くなりますから」

 

「と言っても、明日は仕事休みだろう? たまには冒険ってのも悪くないぜ。……ほら、これなんか喉越しも良いし、フルーティーな味わいだぞ」

 

「はぁ、これ以上言うなら、パワハラで訴えますよ」

 

「ちぇっ! 連れないやつだな」

 

 と、そんな会話をしているものの、実際は関係としては良好で、悪いものではなかった。こうしたやりとりも、たまにあることだ。

 

 

 するとここで、何かを思い出したかのように、先輩はこんな事を聞く。

 

「まぁ、それはともかく。……ところで、だ。ちょっとはGBNは、上手くなったか?」

 

「うーん。やっぱり、俺はまだ……」

 

 この質問に、ジンは残念そうな表情だ。

 同期も同期で、何かを思い返す様子を見せる。

 

「元々僕たちは、時間を見つけてはたーまに、GBNで遊ぶ程度だったのにな。

 それなのに最近のジンは、僕たちより熱中した様子でさ、本当によくやるよ」

 

「それは勿論。だって、そうしないと、『あの二人』に勝てないだろ」

 

「話は聞いてるけどさ。その二人は世界ランク五百位代の、かなりの強者じゃないか。対する俺たちは、せいぜい行けて百万位くらいだろ? どう考えても程遠いに決まってる」

 

 同期の指摘に、ジンはグサッと来るも、こんな事を言う。

 

「けどさ、頑張ればそのうち、いつか……。だからさ、先輩やケイジ、どっちでも良いから協力してくれないか。二人を相手するには、こっちも二人じゃないと駄目なんだ。

 あれからGBNでもパートナーを探したんだけど、見つからなくてさ。……他に、頼れる人間がいないんだよ」

 

 しかし、先輩と同期の様子は、明らかに乗り気ではないと分かる。

 

「だから言ったじゃないか、僕たちの実力じゃ、全然届くわけがないって。世界の中で五百位近くの上位まで行くってことは、ゲームの腕もガンプラの腕も、並外れているに決まってる。

 ジンが頑張っているのは分かるけどさ、やっぱり諦めた方がいいさ、僕たちには無理だよ」

 

「……ケイジの意見には、俺も同感だ。今日みたいにたまに練習へ付き合う位なら構わないが、さすがにそんな無茶な事は、ご免だ。

すまない、悪いとは思うが、な」

 

 結局、二人はそこまで、ジンの味方になってくれる……と言うわけではないようだ。

 

 ――まぁ、俺だって無茶だって言うのは、分かっているけどさ。あきらめ切れるわけ……ないじゃないか――

 

 彼らなりには、親身になってはいる。決して責めることは出来ないと、分かってはいても、ジンは悔しくて両拳を握る。

 

「さてと、ちょっと暗くなっちまったな。……それじゃ! 仕切り直しと行こうか」

 

 そんな様子を察したのか、先輩は明るく振舞い、楽しい飲み会を再会する。

 同期、そしてジンも、何とか調子を取り戻す。……だが、彼の心の隅には、相も変わらず影が差していた。




――――――

今回登場したF91はこんな感じのデザインに。


【挿絵表示】


そして本作もう一人の主人公、タケヤマ・ジンのイメージイラストになります。後フウタの、私服姿も(^o^)


【挿絵表示】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。