【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝 作:双子烏丸
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あちこち巡った後……
様々な服装が用意された、町のアパレルショップ。フウタとジン達が今いたのは、そこだった。
「えへへ、似合うかな?」
店の更衣室から出てきたミユは、ガンダムSEEDの組織、ザフト軍の女性軍服を身にまとっていた。
黒と赤の上着に、ピンクのミニスカート。キャラで言うなら、作中でルナマリア・ホークなる人物が身に着けていた恰好……と言ったら分かりやすいか。
彼女はそのコスプレをして、近くのベンチに座っていたフウタに、得意げにポーズをとる。
「とても可愛いよ! やっぱりミユは、何を着ても似合うね!」
「ありがと、フウタ! 軍服みたいだけど、可愛い服装で気にいったんだ。
えっと、他にもまだまだ……」
ミユは再び更衣室に戻ると、また試着を試す。
機動戦士ガンダムの登場人物であるフラウ・ボゥのコスチュームに、Zガンダムの組織エゥーゴのパイロットスーツ、Ⅹガンダムのヒロイン、ティファ・アディールのワンピースに、またガンダムООの組織ソレスタルビーイングの女性服などなど……
「今度はこれを着てみたんだ! どう? ……ちょっと露出が多いけど」
と、そう言ってまた更衣室から出てきた姿は――何と水着だった。
「にゃっ!!」
この姿には思わず、フウタは顔を両手で覆った。
見るとその顔も、若干赤い感じだ。
「ねぇフウタ、ちゃんと見てよー」
フウタは顔を覆う手の指を開き、ちらと彼女の姿を見た。
「別にガンダムのコスプレってわけじゃないけど、これも気になっちゃって。
ねぇねぇ、どう?」
ミユが着ているのは、黄色くて、ヒラヒラした可愛らしいビキニ。
もちろん似合っていて、これもとても可愛く思った、フウタではあったが。
「当然、似合っているよ。けど……かなりセクシーって言うか、その……。
まさか水着で出てくるなんて、心構えをしていなかったんだ」
「へぇー。それはそれは」
相変わらず顔を赤くしてどぎまぎしているフウタに対し、ミユは口に手を当てて、いたずらっぽくニヤニヤしていた。
……すると、彼女は一気にフウタとの距離を縮めると、上からかがんで覗き込んで来る。
「悪戯心て言うか、ちょっとフウタにドキドキさせたかったんだ。
うん! この反応……大成功! そんなフウタも可愛いよ!」
フウタが見ると、すぐそこに水着のミユの姿が、また……。
彼女はフウタを覗き込んでいた。つまり一番よく見えるのは、間近にある顔と、そして……それなりに大きい胸の、胸元がすぐ目の前に。
「ミ、ミミミ……ミユっ!?」
これには、先ほど以上にアワアワするフウタ。思わずベンチからも、落ちそうになるほどだ。
この慌てようにはミユも少し驚くも、すぐにどうしてあんな反応をしたのか気づくと、さらにニヤつく。
「あははっ、なーるほどね。でもでも、ここは仮想空間なんだよ? 私は気にしてなんて、ないよ。
まぁ、現実世界でも、フウタになら全然……大丈夫だけど!」
いつもより悪戯っぽいミユと、それに振り回されているフウタ。
これはこれで……また仲の睦まじいような、そんな感じだ。
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今、仲の良いフウタとミユ。
その少し離れた場所、アパレルショップの玄関近くには……。
――はぁ。やっぱ……寂しいな――
壁にもたれかかって、ジンは息を一つつく。
――気を遣ってフウタ達を二人っきりにさせた
んだけど、二人だけの方が、何だか楽しそうじゃないか――
遠目で二人の和気あいあいとした様子を眺めながら、複雑な表情だ。
今はたったの、一人だけのジンは、再びため息をついた。
――にしても、やっぱり羨ましい、な。
俺もいつか、あんな風に――
と、ジンがそう思っていた、時だった。
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「なっ!」
突然、目の前が急に真っ暗になり、何も見えなくなった。
これに、ジンは驚く。
それと同時だった。……後ろから、こんな声が聞こえて来たのは。
「くすっ! 誰だか、分かるかしら?」
明るい女性の声。それがだれか、ジンは考えるまでもなかった。
「もしかして……マリア、なのか?」
その言葉と同時だった。
ジンの視界は急に元に戻り、辺りの様子が見えるようになった。
そして、戻った視界の、端から顔を覗かせたのは――マリアであった。
「ピンポーン! 大正解!」
長い赤毛の、快活な美女である、マリア。その姿は現実世界との差は、ないに等しい。
「ようやくちゃんと会えたわね、ジン! 私、とても嬉しいわ」
会えて嬉しいのは、ジンもまた、同じだった。
「マリアに会えて嬉しいのは、俺もだよ。
……でも、信じられないな。お兄さんの方は、どうしたんだい?」
「あはは……それはね……」
これには、思わずマリアは苦笑いを見せる。
「実はお兄ちゃん、どうも風をこじらせたみたいで。今は家で、ぐっすりってところかしら、ね!」
――――
「……へくしっ!」
部屋の蒲団の中で、大きなくしゃみの音がした。
「ううっ……くそっ」
布団から上半身を起こし、真っ白く長い髪をばらけさせて、冷却シートを貼った額を手でおさえるハクノ。
結構熱もあるように、呼吸も若干荒い、そんな感じだ。
――まさか、俺が熱で寝込むなんてな。ツイてないぜ――
鼻をすすりながら、ハクノは再び蒲団へと横になる。
――俺はまぁいい。けど、問題は――
と、彼は何やら、ある心配があるようだ。
……それは。
――マリアの奴、今どうしているんだぜ。困ったな、妹のことだろうから、多分――
心配しているハクノではあった。
だが、どうすることも出来ない。
……とにかく、今の彼は、ただ大人しくして、休養をとるしかないのだ。
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「……と、言うことで、お兄ちゃんには悪いけど、こうしてジンと会えたってわけ」
マリアはそんな説明を、簡単にジンへと伝えた。
「喜んでいいか、悪いのか、何とも言えないけどさ、マリアに会えたのは俺も嬉しい。
その気持ちは、確かさ」
「ジンならきっと、そう言ってくれると思ったわ!」
満面の笑顔を、彼へと見せるマリア。
「それでだけどね、せっかく会えたのに、会って終わり……だなんて寂しいでしょ?
だから――これから、デートなんて、どう?」
「デ、デート……だって?」
思わぬ提案に、ジンはドキッとした。
一方、マリアは彼の様子を、面白そうに眺めている。
「そ! だって、最後にデートしたのは、もう何か月も前よ?
だから――どうかしら、ジン?」
マリアからの提案。
もちろんジンにとっても、願ったり叶ったりのもの。……ではあるが。
――ただ、あの二人、そのまま放っておいて出て行ってもいいだろうか? せめて一言くらい――
ジンは向こうにいる、フウタとミユに、目を向けた。
しかし彼の心配とは裏腹に、二人は二人でよろしくやっていた。
――ま、あの様子だと、その心配はないか。
それに向こうは二人で、楽しくやっているんだ。俺だって――
フウタ達は、気にする必要はないだろう。
そう考えたジンは、再びマリアを見ると、そして……。
「もちろん大歓迎さ! 久しぶりのデートなんだ、一緒に楽しまないと、損だもんな!」
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ジンとマリンは、アパレルショップを出て、二人で街を散策した。
さっきとは違い、二人っきりで、改めてお祭り騒ぎの街の通りを歩き、屋台を巡りながらと、楽しいひと時を過ごす。
彼女は買い物よりむしろ、ゲームを楽しむのが好きだった。射的や輪投げ、スーパーボールすくいなどなど……。
「……くっ」
射的用のライフルを構え、狙いを定めるジン。
目の前の射的台には、景品となるガンプラが、いくつもあった。
彼が狙うのは、その中で一番の大物、MGのガンダムエクシアだ。
ガンダムОО、第一期の主役機であり、剣を主な武装である白と青の、細身でヒロイックなガンダムだ。
射的台中心に目立つように置かれた、ガンダムエクシアの箱。
――大きい的なんだから、簡単かと思ったけど、な――
ジンはライフルで狙い、弾を放つ。
……が、弾は目標から、ほんの少し外れた。
「ああっ、また外しちまった。あとちょっとだったのにな」
「残念ね、ジン。でも本当に、惜しかったわ」
射的に熱中するジンと、それを温かく見つめているマリア。
「でも今度こそ、当ててみせるさ。格好よく決めてみせるから、見ててくれよ!」
もう何度も挑戦している。
コツもある程度つかみ、次こそ当てる自信があった。
よく狙いを定め……そして!
――今だ!――
何度目かの弾を、ジンは放った!
弾はエクシアの箱へと向かい、ついに命中した!
「よしっ! やったぜ!」
これにはガッツポーズを決めたジン、ではあったが……。
弾の当たったガンプラの箱は、グラリと揺れた。……が、それはほんの僅か。とてもでないが、落下までには至らない。
「……ああ。あと……もう少しだったのに」
これにはガクッと肩を落とし、気も落としてしまったジン。
しかし、そんな彼に対して……マリアは。
「こうなったら、私がやってみようかな? 代わってもいい? ジン?」
「……たしかに、ここはマリアに任せるよ。
俺の仇、取ってくれ」
マリアはジンから、ライフルを受け取ると、同じく狙いのガンプラの箱に、狙いを定める。
「ちょっと違うかもしれないけど、狙いのコツはガンプラバトルと似た感じですもの。
……それに、射的のコツで言えば、景品の足元を狙うのが良いのよ!」
そう言うやいなや、マリアはライフルを一気に放った。
弾は箱の足元にピンポイントで当たり、そのままグラッとバランスを崩すと……下に落下した。
「やった! 見事に手に入っちゃった!」
射的で手に入れたMGのガンダムエクシア、それを手にしたマリアは意気揚々だ。
「ははは……やっぱりすごいな、マリアは。本当にすごいぜ」
彼女の活躍に、ジンはそう言わずには、いられなかった。
すると、そんなジンに対して彼女は、手にしたガンプラを差し出した。
「ん! はいジン!」
「……えっ?」
「だってこれは、ジンが狙っていたものでしょ? ジンはあんなに頑張ってたし、私は最後の最後でちょびっと手を貸しただけ、だから……ね」
マリアの、優しさ。
ジンはそれを、ガンプラとともに受けとった。
「ありがとうマリア。俺、とても嬉しいよ」
せめてものお返し、彼はそう、礼を伝えた。
これを聞いた、マリア。
彼女は、素敵な笑顔を、ジンへと投げかけた。
「ジンの喜ぶ顔が、私にとって一番のプレゼントだわ!
それに……さっきの頑張っていた所、とっても恰好良かったよ!」