【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝 作:双子烏丸
「……」
それからしばらく、河川敷の傍に、フウタは座り込んで景色をただ、眺めていた。
さっきのショックから、立ち直れないでいる彼――。
――せっかく……せっかくあれを手に入れるのを、ずっと待ってたのに――
今からガンダムベースに買いに戻っても、既にもう売り切れているだろう。
溜息を深くつき、体育座りをした膝に、顔を埋める。
昼からはミユとも会う約束もあるが……正直言って今は、それも少し難しい、かもしれない。
にっちもさっちも行かない。思わず、再びため息をこぼしそうになる。
「「……はぁ」」
すると、誰かと溜息が、重なったような気がした。
……右横を見ると、そこから少し離れた場所に、知らない青年が座っていた。
「……悪い。君がその――座っているのを見て、もしかしたら気分を落ち着けるにはいいと、思ったから」
若干冴えない雰囲気の青年は、フウタの視線に気づいて、そう言い訳した。
しかしフウタはあまり気にする様子はなく、僅かに笑みを浮かべる。
「僕は、別に構わないさ。お兄さんも……何か落ち込んでいるみたいだし――」
改めて、青年を見ると、彼は大きな箱が入った袋を持っていた。少し透けて見えるその中身は、あの限定版ゼロカスタムだった。
「――それは、ゼロカスタムじゃないか。もしかして……」
「ん、ああ、これか。俺も気になっていたから、記念にと思って買ったんだ。えっと、君の名前は?」
「……カザマ・フウタ」
「俺はタケヤマ・ジン。にしてもフウタって名前か……なかなか、良い名前だな」
名前を褒められて、ほんの少しはにかむフウタ。
「ん、ありがとう」
「ところで、フウタはあのゼロカスタム、買わなかったのか? 見たところ、ガンプラに興味がありそうでもあったから、もしかしてとは思ったけど」
しかし、これを聞かれた途端にフウタの顔は、再び曇る。
「確かに、僕もあれが目当てだったさ。だけど……」
先ほど不注意のせいで起こった災難、思わず彼は、その出来事の一部始終を、青年――ジンへと話した。
――――
「……と、言うことさ。ははっ、馬鹿みたいだろ?」
フウタの話を、一部始終聞き終えたジン。
ほんの少し沈黙した後、彼もまた、ある事を打ち明けた。
「それを言うなら俺だって……人の事は言えないさ。馬鹿なのは、こっちだって、な」
そんな風に話され、少し気になる様子のフウタ。
「ジンさんも、何だか困っているみたいだね。僕も話したんだからさ、良かったら聞かせてよ」
ジンは仕方ないと言うように、苦笑いする。
「確かにそうだな。ならちょっと、話すとしますか。
まずは……ほら、この写真なんだが、見てもらっていいかな」
ジンはそう言ってタブレットを操作し、ある写真を映し出す。
フウタがのぞき込むと、そこに写っていたのは、ジンとそして、長い茶髪の女性のツーショットだった。
思いっきり美人とは言えないものの、化粧っ気のない小綺麗な、眩しい笑顔の快活な女性だ。
「へぇ、もしかしてジンさんの、好きな人?」
「きっかけはほんの些細なことさ。俺がよく行く模型店で、何度か出会う内に仲良くなって……いつの間にか、彼女を好きになったのさ。
それは向こうも同じで、言わば、両想いって奴だ。だけど――」
深い溜息をつきながら、こんな事を続ける。
「――問題は、彼女の兄さんが、俺との交際を認めてくれな
い事だ。俺には妹を任せられないって、それはもう、猛反対」
「そっちもそっちで……大変なんだね」
落ち込んでいる二人であるものの、それでも相変わらず、空は晴れ渡っている。
そしてジンは、おもむろにポケットから、あるものを取り出す。
取り出したのは――黒と金色の、オリジナルに塗装したガンダムF91、ジンのガンプラだった。
彼は自身のガンプラを握り、正面から見つめる。
「ただ唯一、交際を認める条件は、彼女と兄さんの二人を、GBNのタッグマッチで倒せたら――って言う条件。
これは兄の方が出した条件だけど、正直言って、かなり無茶なんだ。
二人とも、タッグマッチでは名も知られる程にバトルの腕は高い。何しろ、GBNの世界ランキングで、五百位まで行く程だからな」
世界規模のユーザーを持つ、GBN。
五百位と聞くと、一見大したことはないように思える。だが、数千万は軽く超える世界中のユーザーの中での五百位――それは、上級ダイバーの中でも、さらに上級に位置するダイバーと言えた。
「それに対する俺はと言えば、最近特訓を始めたと言え、それでも全然。……バトルは大したことないしな」
それを聞いたフウタは、仕方ないと言う風な様子だ
「でも、普通そんなものだよ。
よほど才能があるか、もしくはGBNやガンプラに全力をかけているなら話は別だけどさ。僕も軽く遊んでいる程度だし、ガンプラだってまあまあ楽しんでいる、趣味だしね」
確かに彼の言う通り、GBNそしてガンプラも、あくまで趣味の一つ。フウタも、そしてジンも、それは同じはあった。
――しかし、それはジンのある言葉から、変化する事になる。
「それに、タッグバトルを一緒にやる相手だっていない。数少ないリアルの友人も、GBNのフレンドだって、尻込みしているからな。
……いや、待てよ」
彼は気が向いて購入した、限定版ゼロカスタムをちらりと見た。
「なぁフウタ、これは、そんなに欲しかった物なのか?」
「それは、もちろん」
フウタは迷わず、即答する。
「だったら、頼む。俺と一緒に――タッグを組んで、戦ってくれないか?
もし勝てたら、その時にはこのゼロカスタム……フウタに
譲るよ」
どうか、一緒にタッグを組んで欲しい――そう願い出た、ジン。
戦う相手は、彼の恋人と、そしてその兄。
ガンプラバトルの腕は高いと、フウタはそう聞いた。だが……
――それでも、僕だってGBNでガンプラバトルの経験はある。なら頑張って腕を上げれば、もしかすると――
それに、限定版ゼロカスタムの存在。あれは、どうしてもフウタにとって……欲しい物だった。
なら――答えは一つ。
「分かった。僕もジンさんと……一緒に戦うよ」