【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝 作:双子烏丸
フウタは複雑な心境を抱えたまま、来た道を戻る。
――ジンのやつ、ああも言わなくても――
さっき言われた事を引きずり、不機嫌そうな彼。
しかし一方で、ジンが言ったこともまた、分かる部分ももちろんあった。
――僕が悪いのだって、分かっちゃいるよ。でも、だって俺には――
そう考えてきた時、急に窓から入る日の光が何かに遮られ、暗くなった。それに、現れたモビルスーツの姿と、響くバーニア音も。
――何だ!? いきなりこんな。これは、感じ的にはここの屋上を包囲しているわけ――
と、ここでフウタはある事を察する。
――屋上には、ミユがいるんだ! もしかすると何かされたり、されていたら――
ミユは屋上にいたままだった。もしや――あそこにいる相手に、良からぬことをされているかもしれない。
――急いで、戻らないと――
この先には屋上に続く階段がある。
フウタは急いで、先へと駆け抜けるのであった。
――――
「――ミユっ!」
フウタは階段を走り抜け、思いっきり屋上への扉を開いた。
そこには……。
「おや? 君は一体誰かな?
……でも、こんな時に乱入するとは、いささか不躾けじゃないか」
屋上には、周囲を取り囲むいくつものウィンダムと、それにガンダムSEEDの地球連合軍のパイロットスーツを身にまとった、何人ものダイバーがいた。
そんなダイバー達の中心に、ミユがいた。
「フウタっ!」
さっきフウタに話しかけたと思われる彼らの一人、恐らくリーダー格とも思える長身で、金色のパイロットスーツのダイバーに絡まれて、困り顔ではあったが、フウタを見てぱあっと笑顔を見せる。
すぐにフウタはミユの元に駆け付けようとする。が、ダイバー達により行く手を塞がれる。
「……何だよ! 邪魔するなよ」
そしてふと別方向を見ると、端には複数人で取り押さえられたロッキーも。
「フウタも来てくれたのか。それはいいが、この状況だもんな」
上を見ると、そこには巨大戦艦ドミニオンが鎮座していた。何というか、凄い光景だ。
だがそれよりも、この状況。はっきり言って意味が分からない。
「この、ミユに何をしているんだ!」
とにかく、フウタにとって何よりも最優先事項は、何よりもミユのことだ。彼はきっと、彼女の傍にいる金色スーツのダイバーを睨む。
「何をって言われても、見ての通りナンパさ。
丁度あの船で通りかかったら、カワイ子ちゃんがいたからね。だから、こうして降りて出迎えたわけなのだよ」
「ふざけた事をいうな! ミユは僕の大切な彼女なんだぞ!」
「へぇ、君が、彼女の彼氏ねぇ」
するとダイバーは、ヘルメットに手を置くと、そのまま頭から脱いだ。
途端、キラキラしたウェーブがかった長い金髪が舞い、キザな色男の笑顔が現れた。
「それは――失礼した。まさか彼氏持ちだとは思わなかったからな」
そして彼は、仲間に指示を出す。
「と、言うことだ。……この小さい彼氏さんを、通してやりな」
彼に言われ、さっきまでフウタの前を塞いでいたダイバーは、左右に道を開けた。
フウタはすぐにそこを通り、ミユのもとへと駆ける。
「大丈夫だった、ミユ! 変な事とか、されたりしてないよね?」
彼女の手を取り、心配そうなフウタ。
これにはミユの方が、彼を安心させるように、笑ってみせる、
「いきなりあの人が絡んできて、ちょっと困ってはいたけど……特に変なことは、されてないよ。
だから、ねっ? 安心していいよ」
二人のやり取りを、横で聞いていた金髪青年は、苦笑い。
「おいおい、私は楽しくお話したり、ちょっとばかりデートのお誘いをしただけさ。
変な事だなんて、するわけがないとも」
「デートだって!? お前っ!」
これには思わず激昂するフウタ。
「おっと、そう怒るなよ。私だってついさっきまで、相手がいるなんて知らなかったんだ。
……でも、やっぱり可愛い子だ。少しだけで良いから付き合いたいものさ」
「誰だか知らないけど、これ以上言うと僕だって――」
「何だこれは! どうなっているのさ!?」
すると丁度、そこにやって来たジン。
「フウタ! もしかしてお前と関係が……うわっと!」
彼はさっきのフウタと同じく、行く手を阻まれた。
「あの、ジンさんも私の知り合いなんです! 通してあげて下さい」
「おっと、そうだったか。それは失礼!」
道を開けてくれ、ジンも二人のもとへと。
しかしフウタはと言うと、相変わらず不機嫌そうだ
「……どうして、来たのさ」
「そりゃ気になったからに決まっているだろ? さっきの事だって、ほら、言い過ぎた事は謝るからさ」
「……」
ジンは謝った。さっきのトラブル、自分でもやり過ぎたと思ったからだ。
……しかし、フウタは相も変わらず。彼はそれさえ不快そうに、そっぽを向く。
「おい! 人が謝っているって言うのに、それはないぜ!」
これにはジンもまた、怒りを露わにする。
「何を偉そうに! 大体ジンのそのムカつく態度、前々から――」
互いににらみ合い、一発触発のこの状態。であったが――
「ちょっと、ジンさん! それに……フウタっ! 何があったか知らないけど、止めてよ!」
「おいおい……。これじゃ私の方が、混乱してしまうぞ。ミユの言う通り、落ち着きたまえ」
二人の争いに、ミユと青年も、止めに入る。
片やフウタの大切な人、片や気になる謎の人物。それに間に割って入ったこともあり、その注意も逸れた。
「……分かったよ。たしかにこんな場所で、不味かったよ。でも――」
ジンへの敵意は、相変わらず。
対して彼も、落ちついたがフウタの事は、無視を決めるようだ。
青年は、ふぅと息をつく。
忘れかけていたが、今のこの状況を作り出したのは、彼なのだ。
「とりあえずは落ち着いて、良かった。
……さて、と」
気を取り直す感じで、青年は続ける。
「そう言えば自己紹介をしないと、いけないな。
私はカイン・ウィルフォード、フォース『ブラックホース』のリーダーさ」
「ブラックホース、だって?」
すると、さっきからずっと取り押さえられたままだったロッキーが、覚えがあるような感じで呟く。
「ロッキーは、知っているのか?」
「まぁな、フウタ。GBNでは珍しくない中堅のフォースで、実力は中の上、上の下と言ったものさ。
だがそのリーダーは割と有名なんだぜ。その……あまり良くない意味でな」
彼はカインに、ちらと視線を向けると。
「ブラックホースのリーダー、カイン。彼も上位に入るガンプラバトルの実力者……なんだが、女癖がかなり悪いのさ。
可愛い女の子を見ると、誰彼構わず手を出しちまう、迷惑野郎さ」
これを聞いてフウタ、ジン、ミユは、フォース『ブラックホース』のリーダーであるカインに、視線を向ける。
「さっきの紹介、まぁ、否定はしないとも。何しろ私は女の子が、とても好きであるからな。無論、可愛ければ可愛いほど、尚更さ!」
そして彼はまた、ミユの方を見る。
「でも……やっぱり気に入ったな、ミユちゃんの事。彼氏持ちなのが勿体ないくらいだ」
「そう言われても……」
「ふざけているの? ミユは僕の恋人なんだ、誰にも渡すものかよ!」
ミユは戸惑い、フウタは彼女を庇うようにして、前に出て立ち塞がる。
するとカインは慌てて、首を横に振る。
「いやいやいや! いくら何でも人様の彼女を取るような真似はしないさ。
ただ――」
と、彼はふふっと、微笑んで提案する。
「けどせめて、一度だけミユちゃんとデートをしてみたい。
……そこで提案なんだが、そのデートをかけて俺とガンプラバトルをしないか。
俺が勝ったら、彼女を少し借りてデートって事で。……たったそれだけだ、別に問題ないだろ?」