【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝 作:双子烏丸
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GBNをログアウトしたジンは、一人電車に乗っていた。
電車に揺られて彼は、さっきの事にに思いを巡らせている所だ。
――うーむ、これはまた、妙ちくりんなことになったな――
フウタは怒り出し、また女たらしのダイバーに絡まれては、何故か勝負を挑まれることになった。
そして……ミユから聞いた話も。
――まさかあんな風に、ずっと考えていたとはな。……いや――
まだはっきりとは、実は分かっているわけではない。何しろこの話をした当のミユでさえ……。
『でも私もはっきりとは、分からないんだ。
あくまで私の考えだしそれに、フウタにも聞いたわけでもないから。だから……もし良かったらジョウさんに会って話してみるのもいいかもね』
彼女から聞いた、フウタの秘密。それを確かめるためにジンは、ジョウに直接会いに行くことにしたのだ。
ちなみにミユはミユで、フウタに会って話をして来るだそうだ。大好きな彼女からの言葉ならきっと、問題はないと思う。
もちろんGBNで会った方が手っ取り早いとも考えたが、リアルでの彼は模型店を営んでいるらしい。だから彼は。
――せっかくだから何かガンプラでも、買いたいって思ってたしさ。丁度いいよな――
店で何を買おうかとも、ジンは考えを巡らせる。しかし、それでも。
――けど、あくまでも目的は、フウタの事だ。
だって放ってはおけないよな。何しろ俺は……フウタのバディなんだから――
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それから電車を降りて、どこにでもあるような中規模な町へとやって来た、ジン。
――さてと、と。ここから模型店に向かうわけだが――
彼の手元にあるのは、駅から模型店までの道筋が簡単に記された、手書きの地図。
――フウタから聞いた情報を元に書いてはみたが、これで大丈夫……か?――
自分で書いた地図、お世辞にも上手いとは言えない出来のそれを見ながら、つい頭が痛くなる。と言っても、まぁ読めなくはないし、大体のことは分かる。
――ま、いいか。とりあえず行けば分かるし、それで着けば万々歳だ――
まずは地図の通りに、行くしかない。
ジンはそうすることにした。
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と、心配はしていたものの、それは奇遇だった。
――全然あっけなく、簡単に到着してしまったな――
目の前には、ヒグレ模型店と看板がかけられた
店があった。窓には模型のポスターが色々と貼られ、その隙間からは積まれた模型の箱がいくつも置かれている。
まさに、個人経営の模型店、と言った感じだ。
――ここがリアルのジョウさんが経営している店か。現実で合うのは初めてだから、ちょっとドキドキはするぜ――
とにかく、彼に会うためにここに来たのだ。
ジンは店の扉を、そっと開いた。
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扉もアナログな手動ドア。
そして店の中はやはり、模型の箱だらけ。
あちこちに積まれた箱の山が並び、棚にはスプレー缶や瓶に入った、多数の塗料が置かれている。
――これは、城のプラモか。それにあっちには戦闘機と戦車のものまで――
いわゆる、スケールモデル。ガンプラなどとは異なり、現実世界に存在していた物を模した、模型である。
ジンはあんまりそうしたのは作らないものの、様々な模型が置かれているこの場所、ただ見ているだけでも楽しかった。
――この空気感、個人経営の店ならではって感じだな。
ジョウさんは、店にいると思うんだが――
そう想い、彼はレジの方に目を向けたのだが……。
――あれ? まさかの、留守かよ。困ったな――
レジには誰もいなかった。
――いくら個人でやっているにしても、不用心だぜ。泥棒が入って来たらどうする気なんだか
――
半分呆れた感じの彼であったが、その時に後ろから。
「おや? これは新しいお客様かい? よく来てくれた、歓迎するよ」
声がした方を見ると、そこには三十代の男性店員の姿がある。
彼の姿、ジンには見覚えがあった。
「貴方は……ジョウさん、ですか」
これまでGBNで、ガンプラバトルについて教えてくれた、ジョウ。
彼はまさに同一人物、と言うことだろう。
それに向こうも、ジンの顔を見て察した事があったようだ。
「おや、よく見れば君は、もしやジンかい?
この頃フウタとタッグを組んでいるダイバーがいてな、君はそれとそっくりな気がしたのさ」
ジョウの言葉に、ジンは頷く。
「そりゃ勿論。色々と教えてくれて、感謝しているさ。
フウタからは模型店を営んでいるとも聞いたからな。リアルでも会って見たいとも思ったし、プラモも何か買いたかったしな」
「そうか、そうか。俺ももちろん大歓迎だとも。
んじゃ……適当に見ていってくれよ」
ジンは模型店のあちこちを眺めながら、買う模型を探していた。
最も、彼が主に作っているのはロボット系の類。スケールモデルなどは範囲外なのだが。
「見た感じ、ジンはガンプラと言ったロボット物が好きらしいな」
そんな彼を、ジョウはレジに頬杖をつきながら眺めてる。
ジンはガンプラなどのロボット系のプラモがメインだ。だから見るのはそればかりであったからだ。
「そりゃあな。ガンプラはもちろん、他のキットだって色々と」
「ふむふむ。
しかしそれ以外の、スケールモデルだとかも悪くはないぜ。実在したものを自分の手で再現するのは、ロマンでもある」
ジョウはさらに、こんな話も。
「それこそフウタはガンプラも好きだが、どっちかって言うと航空機のスケールモデルが好きなんだよな。
だからGBNのダイバールックでもパイロットスーツを着ていると言うか。まぁとにかく、それだけ好きなのさ」
「ふむ。それは俺も、分かる気がするぜ。
……あっと、そうそう」
ジンはジョウに顔を向けると、ある話を切り出す。
「あのさ、ジョウさん」
「急に改まって、どうした?」
「フウタの事だけどよ、あいつ、ミユを滅茶苦茶好きなんだよな」
「……くくくっ、そりゃあそうさ。だって彼女は彼とこれまで、ずっと一緒にいたんだからな」
何気ない彼の問に、ジョウは当然みたいに話す。
「フウタとミユちゃんは、昔から幼なじみ同士なのは知っているだろ?
まぁ幼なじみとしても兄弟みたいな関係って場合もあるけど、二人の場合はそれとは違った。
もっとも恋人になったのは高校に入ってからだが、そうなってからはもっと互いに好き好きというか、ラブラブでさ。
俺も二人が小さい頃からの付き合いで、そんな風に恋人になったのも自分の事みたいに嬉しく、微笑ましくも思ってはいるんだが。それでも見ていると、たまに恥ずかしくなったりも……な」
そんな事を話す彼だが、ふといくらか考えるような表情となる。
「ただ、フウタの奴は、少し真面目過ぎる所があると言うか。……だから、今回のガンプラバトルの事だって」
「やっぱり、関係があるのか」
「ん? もしや何か聞いたりとか、したのかい?」
やっぱり、と言うことは前もって何かを聞いていたということだ。
ジョウはそう聞くと、ジンはまあねと、答えた。
「そうなんだ。……実はフウタと、ちょっと喧嘩と言うか、怒らせてしてしまってさ。
だからミユちゃんに聞いたら、色々教えてくれた。どうして、あいつがああ怒ったり落ち込んだのか」
「そっか……」
ジョウは腕を組み、考えるそぶりを見せる。
「やっぱり何か、知っているのかい?
なら教えて欲しい。俺も、ちゃんとフウタに謝りたいんだ」
ジンの言葉に、彼は何か決めたように、言葉を続ける。
「……分かった。そこまで言うなら、俺も答えられることは答えよう。
さっき話した通り、フウタはミユちゃんの事を好きでいるのは、当然知っての通りだろう?」
ジンは頷く。
「そりゃ、もちろん」
「………彼にとって、ミユちゃんは幼なじみ。それに彼女、とっても気立てがよくて健気な、いい子だからな。
昔からミユちゃんに優しくしてもらって、フウタにとっては良い幼なじみだったのさ」
だが、ジョウはため息を一つつく。
「だからこそ……か。フウタはそんな彼女に対して、自分が相応しい相手にならなきゃって、変な思い込みってのがあるんだ」
「はっ?」
――それって一体、どう言うことだ?――
これにはジンも、訳が分からない様子だった。
「フウタは……とりだって特別でもない、普通の少年さ。
模型と写真が少し趣味で、家庭は普通、成績や運動神経も普通、人付き合いは僅かに苦手なくらいの、珍しくない奴だ。
ただ、そんな彼にとって唯一特別だって言えるのが、ミユちゃんと言う幼なじみがいる事だった。あんなに絵に描いたような理想の幼なじみ、いるものじゃないからな。
それはフウタ本人が、一番よく分かっていた」
「……」
「もちろんミユちゃんが大好きだって気持ちもちゃんとある。だが、同時にそんなミユちゃんに対して同じくらい、いやそれ以上に何かしないと、想いを伝えないとって言う強迫観念じみたのがずっとあるわけだ。
あんなに自分を好きでいてくれるミユちゃんに、ふさわしい相手にならないと……ってな」
思えば、フウタはよくミユに対して好きだとか、自分の気持ちをよく伝えていた。
ミユに対してベッタリなのも、その面の裏返しである部分も少なからずあるのだろうと、そうジン
は考えた。
「やっぱり、ミユの話していた通り、だったな。そこは彼女も少し心配してたりしていてさ、隠し事や無理も、しているっぽくってさ」
「ああ……やっぱ、そうか」
ジョウもこれに想像通りとも言った、そんな顔をしていた。
そして、ジョウはジンにこんな事を尋ねる。
「ところで、フウタが君の手伝いをしているのは、ウィングガンダムゼロカスタムのPGを、譲ってもらいたいと言う条件で、だろ?」
「そうだ。フウタにはその条件で、俺と組んでいるんだが……ジョウさんにはその事を話したっけな」
「いいや、たぶんジンからは聞いてないな。フウタから少し聞いたのさ。
ではもう一つ質問だ。じゃあなぜ、ゼロカスタムを欲しいのか分かるかい? それに他の店を探したりネットを使ったりと手段は色々あるのに、どうしてこんな回りくどい手段で手に入れようとしているのは、どうしてか」
この問にジンは……答えようとしたが。
「それは単純に、フウタがガンプラが欲しいから……と、言いたいところだが、それだけじゃないみたいだな」
思い返せば、どうしてそこまでガンプラ一つにこだわっているのか、ジンには分からなかった。その為に数か月、一緒にガンプラバトルに励んでいる。ただのエンジョイ勢が、だ。
「考えても分からないな、俺には。どうして、フウタはあんなになって俺に付き合っているのか。
もしや、ガンプラそのものが理由じゃ、ないのか?」
それを察したジン。ジョウはその通りと、言いたいかのようだった。
「ようやく気付いたか。
――ああ、ウィングガンダムゼロカスタムそのものが理由じゃない。
フウタが頑張っている、本当の理由は……」