【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝   作:双子烏丸

57 / 88
十年前の回想と、フウタの約束(Side ジン)

十年前――

 

「やぁ、いらっしゃい、小さなお客さん」

 

 ジョウはその時は二十代と若く、店も父親の手伝い、アルバイトとして店員をしているくらいであった。 

 

「また遊びに来たよ! ジョウおじさん!」

 

「おじさんはないだろ、フウタ? 俺はまだ二十三……、まだまだ若いんだしさ」

 

 店にやって来たのは、小さい男の子だった。

 彼がまだ小さい頃のフウタ、よくこの模型店に遊びに来てガンプラを買って行く、言うなれば常連である。

 だからこの時から、フウタとジョウは互いによく会ってもいる、知り合いでもあったのだ。

 

「いいじゃん! 別に小さい事だし」 

 

「あはは、参ったなこりゃ? ところで……」

 

 ジョウはそう言って、フウタのすぐ隣に視線を向ける。

 

「そっちの女の子は、一体誰なんだい?」

 

 フウタは一人で来たわけではなく、もう一人、同い年の女の子を連れて来ていた。

 彼と手を繋いでいる、亜麻色髪の可愛い女の子。背丈はフウタよりも少し小柄。……この時はまだ、フウタの方が背が髙かったのだ。

 こっちは、ジョウにとっても初めて見た。

 

「あの、初めまして……です」

 

 女の子は少し緊張しているようで、ぎゅっとフウタの手を握る。

 

「大丈夫だよ、ミユ。あの人は悪い人なんかじゃないから。ちょっと、柄は悪いかもだけどさ」

 

「おいおい、そりゃひどい言いようだな。

 でもミユちゃんって、言うんだな。良い名前じゃないか。……俺はジョウ、よろしく」

 

「……うん」

 

 ミユも少し安心したのか、にこりと微笑んだ。

 これには一緒にいるフウタも、

 

「ミユが安心してくれて、僕も良かった。

 ……ジョウさん、彼女は僕の家の隣に住む子で、大の仲良しなんだ。

 だから、せっかくだから今回はミユも一緒にって、思ったんだ。プラモとかに興味を持っていたから、今日は一緒に来たわけ。

 ねっ、ミユ!」

 

 フウタとミユは顔を合わせ、にこっと笑いあう。

 

「ははは! 若いお二人同士、微笑ましいな。

 ちなみにさ」

 

 ニヤニヤしながら、ジョウはこう聞いてみた。

 

「ところでフウタ、彼女とはただの友達なのかい? それとも、恋人だったりか?」

 

「えっと、私は……」

 

 これにミユは、顔を赤らめてもじもじするも、フウタは。

 

「そりゃあもちろん、誰よりも大好きな、特別な人だよ! ジョウさん」

 

「わわわ、っ……フウタ!」

 

 いきなりそう言われて、ミユはさらに顔を真っ赤にしてしまう。

 これにはジョウも大笑い。

 

 

「ははははっ! これはまた、愉快な二人じゃないか。

 ……とにかく、見て行ってくれよ。ちなみにミユちゃん、もし何か欲しいのがあったら特別に、ある程度だったらタダでプレゼントするぜ」

 

「えっ! 本当にいいの?」

 

「もちろんさ。何しろお得意さんの、彼女なんだからな!」

 

「さすがジョウさん、太っ腹!

 ミユも何か作ってみたいって言ってたし、良かったね」

 

 まだ顔を赤らめたままだけど、ミユも嬉しそうな様子だった。

 

「じゃあ見て行こう! 僕のプラモもだけど、ミユのも一緒に、さ!」

 

 

 

 フウタは彼女の手を引いて、共にプラモを見て回っていた。

 

「へぇ……本当に、たくさんあるんだ」

 

 初めて来る模型店、ミユはワクワクとしている感じだった。

 あちこちにある、色んな模型。女の子であっても十分に楽しめている、その様子にフウタも嬉し気だった。

 

「まーね! 車のプラモもあるけど、こっちには飛行機のプラモだってね。

 僕としては飛行機の方も作りたいけど、ジョウさんからは大きくなってからって言われたから」

 

 二人は今度は、ガンプラコーナーへと。

 

「こっちのロボット……ガンプラなら、僕でも作れるから。

 だからミユも作るとしたら、こっちがいいかも」

 

「あっ! これはフウタの部屋にあるロボットだね」

 

「そうだよ。ガンダムって言うロボット作品の機体で、たくさんあるんだよ」

 

「ガンダム……面白そうだね、フウタ」

 

 

 

 ――へぇ、気に入ってくれているようで、何より――

 

 ジョウは一緒にガンプラを見ている小さな二人を、少し離れた所で眺めていた。

 

「……ミユはプラモを作るのが初めてだから、このハロだとかどう?」

 

 フウタが勧めたのは、ガンダム作品のマスコットである、丸いロボットのプラモ。

 

「こっちは可愛いね。それにこれなら、私だって作れそうだし」

 

「あとミユが作るなら、この小さいクマみたいなプチッガイもおススメだよ。

 どっちとも色は選べるから、好きなのを選べるんだ」

 

「うーん、どっちにしようかな。迷うよ……」

 

 そう悩んでいるミユ。――で、あったが。

 

 

 

「――あっ」

 

 すると彼女は、ふいに何かに目を奪われたように、固まった。

 

「どうしたの、ミユ?」

 

「ねぇフウタ、私……あれが欲しいんだ」

 

 ミユが指さしたのは、棚の一番上に置いてある、大きなガンプラの箱。

 

「あの白い翼のガンダム、とても恰好良くて、綺麗なの。

 だから私、これがいい」

 

「えっ、でもあれは……」

 

 しかしフウタはミユの願いに戸惑っていた。なぜかと言うと。

 

「ハハハ! いくら何でもそりゃ厳しいだろ。……PGのウィングガンダムゼロカスタムを、子供が作るだなんてよ」

 

 

 

 ミユが欲しいと言ったのは、パーフェクト

グレート――PGの、ウィングガンダムゼロカスタムだ。1/60の大きさのガンダム、もちろん組み立ても緻密であり、とても小さい子供に作れる代物じゃない。

 

「駄目かな、ジョウさん。……フウタも、私一人だと無理かもだけど、一緒だったら作れるって思うの」

 

「あっ……えっ、と」

 

「だってフウタは、模型が得意だから。これだって作れたり、するんじゃないかなって。

 ……お願いフウタ」

 

 期待の眼差しを向けられて。フウタは相当に困り顔。

 いくら彼でも、PGなんてまだ作れはしない。これにはたまらずジンも、助け舟を出す。

 

「おいおいミユちゃん。あのキットはな、二人には早いんだよ。

 何せ組み立てるのがかなり難しい。だから、悪いがそれは諦めてくれよな」

 

「そう……なの」

 

 ミユは残念そうに、しゅんとしょげた。

 

「あれはもっと、二人が大きくなってからだ。今はミユちゃんはフウタの言う通り、ハロやプチッガイを作った方が楽しいぜ」

 

 

 

 ジョウの説得に、ミユは頷く。

 

「……うん」 

 

 けれどやっぱり、ゼロカスタムのパッケージを、彼女はまだあきらめられないように、少し寂しいように眺めている。

 残念がっている、ミユ。だけど……

 

「ねぇ、ミユ」

 

「――フウタ」

 

 彼女の傍には、フウタがいた。

 

「確かにまだ、僕にはあれを作るのが難しいし、ミユにプレゼントする事だって、出来ない。

 けど、ジョウさんの言う通り、僕が大きくなったら……。それこそ、僕はミユが大好きだから。――だから」

 

 彼はミユの目を真っすぐ見て、そして幼いながらも純粋な心で言った。

 

 

「だから、もしゼロカスタムを作れるようになったら一緒に作ろう。大きくなって、それをミユにプレゼントして、そしたら。

 ミユ、その時には僕と――結婚して欲しいんだ!」

 

 

 

 ――――

 

「……ぶっ!」

 

 これにはジンも思わず吹き出す。

 

「フウタの奴、マジでそんな事を……」

 

 ジョウも思い出し笑いでニヤニヤしながら答える。

 

「そりゃ、まだ小さい頃だからな。結婚、と言うのもまだ分かっていない所もあったんだろ。せいぜい一番大好きな相手とする事ぐらいにしか……間違ってはいないが」

 

「でもあのフウタなら、あり得るかも、か」

 

 ずいぶんジンは、フウタとともにいた。だからそれくらいは分かる。しかし……。

 

「そう言うことだ。だから、ああしてゼロカスタムを手に入れるために、強くなろうとしているんだ。 ……フウタにとってあれは、今でも大切な約束。ミユへの好きだって気持ちの、証明でもあるからな」

 

 そうジョウは解説し、そして少しため息交じりで、続ける。

 

「あいつ、自信がないんだよ。

 何の取り柄もない自分が、本当にミユに好かれるに相応しいのか。だから……想いだけでも証明しようとあがいているんだ」

 

「だから、あの時も……」

 

 GBNでフウタが激高したのも、そこに触れたせいだ。そうジンは気づいた。

 

「ガンプラだけ手に入れる方法なら他にもある。なのにジンの提案を受けたのも、そうしたいフウタ自身のためさ。

 困難を乗り越えて、そして目的を果たした方がより、自分の想いに自信が持てるかもって。

 ははは……身勝手ではあるけど、全部ミユちゃんのためなんだよ。少なくとも、本人にとっては」

 

 

 フウタがゼロカスタムが欲しいのも、ガンプラバトルで強くなるのも、どちらもミユに想いを伝えたいため、そして彼女が好きだからこそ。

 ……そのために、ある意味ジンの提案を、利用した部分もあるかもしれない。けれど、フウタも本気ではあった。

 

「――そっか」

 

 話を聞いて、ジンは呟きそして……。

 

 

 

「ありがとう、ジョウさん。色々と教えてくれて。

 俺は――フウタとまた、ちゃんと話し合わないといけないな」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。