【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝 作:双子烏丸
一人フウタは、町の通りを歩いていた。
別に目的がある訳でなく、ただ気を紛らわすために、だ。
――はぁ、僕も悪いことしたよな――
彼も彼で落ち着いたらしく、反省もしていた。
――ジンも間違ったことは、別にしてないんだ。確かに頑張りも足りないかもだし、それにミユにはあんなに情けない所も見せたし――
今更、会わせる顔もない。だからこうして一人でいる、わけなのだが。
……いつまでも、そうしているわけにも、やはりいかない。
――どうしよう。本当に……困ったな――
「おや? 誰かと思ったら、フウタじゃないか!」
ふいに横から、誰かが呼び掛けて来た。
「……ハクノさん」
そこにいたのは、銀髪を後ろに束ねた鋭い目つきの青年。彼は、マリアの兄である、ハクノだった。
「ここで会うなんて思わなかったよ。てっきり市内で暮らしているって、考えていたから」
「ははは! その通りなんだけどさ、欲しい旧キットが近くの店では扱ってなくてよ、こうしてここまでやって来たんだぜ。
この町にはヒグレ模型店って言う、個人経営の店があるみたいでな。今から向かう途中だったんだ」
「……へぇ! あそこは僕もよく行く店なんだ」
意外な名前を出されて、フウタの表情は少しだけ明るくなる。
「フウタの行きつけ、と言うわけだな、そりゃ楽しみだ。ところで――」
ハクノは腰に手を当て、屈んで顔を覗き込む。
「その、さ……。大丈夫かい?何だか落ち込んでいるようにも見えるからさ。
せっかくだ。話くらいなら、聞いてやるぜ」
そう聞いてくる彼。さすがにフウタは悩んだものの、悪い人間ではない事は知っていた。
――だから。
「ちょっとだけ、ジンと喧嘩しちゃったんだ。どうしてかって言うと――」
フウタは簡単に、さっきの事を簡単に説明した。
「ふむふむ……なーる程、な」
話を興味深そうに聞いていた、ハクノ。……そして。
「そりゃあ悪いのは、ジンの奴だぜ。大体フウタは厚意であいつの手伝いをしているんだろ?
なのに少し羽休めをしていたくらいで、バトルに全力を出していないだなんて、何様のつもりなんだと言う感じだぜ」
「……でも、僕だって言い過ぎたしそれに、手まで出ちゃったし」
「確かにフウタだってやりすぎな部分はあるかもけどさ、そこはまぁ、謝りなよ。
結局は問題なんて突き詰めれば簡単で、悪いと思った部分については素直に、謝れば済む話だ。
俺もたまに妹と喧嘩もするが、それで解決して来た。何しろ大切な妹だから……な」
ハクノはそう言いながら、今度はフウタに。
「フウタもミユちゃんが大切なんだろう? さっきの話を聞いていれば分かるとも」
「それは、まあね。当然だよ。
僕の大切な彼女……。ミユのためなら僕は、何だって頑張れる」
何気なく呟くフウタは、真剣に続ける。
「むしろ頑張んないと。ミユは僕を、昔から好きで想ってくれているから。
だからその気持ちを、裏切りたくなんてない」
「ふむ」
顔に手を当て、考え込むようなハクノ。そして途端にニッと笑うと。
「少し考え過ぎかもだが、でもその真摯な想いは、好きだぜ。いっそ……改めてそれをミユちゃんに直接伝えるのも、いいんじゃないかい。
多分行動で示そうとしているんだろ? けど、言葉でも伝わるんだからそれもきっと、悪くはないぜ」
これにはっとする、フウタ。
――そう、かな。……僕は――
「うん。ハクノさんが、そう言うなら……もしかすると」
「そう言うことだと、俺は思うぜ。
――さてと、それじゃあ俺はそろそろこれで」
ハクノはそう話すと、この場から立ち去ろうとする。
最後に彼は、少しだけ付け足す。
「そりゃあジンの奴は、俺の大事な妹に手を出す気に食わない奴だ。だがフウタ、君にはそんな恨みなんてまったく無い。
後、これはジンには内緒だが、俺も二人でタッグバトルをするのも楽しみにしている。
だから――上手く仲直りするのを、心から願っているぜ」
――――
ハクノと別れたフウタは、今はまた、別の所に来ていた。
――やっぱりこうしていると、何だか落ち着くよね――
彼がいた場所、それは住宅地の中にある小さな公園だった。ブランコに滑り台に、砂場。しかし時間はもう五時過ぎで、遊ぶ子供の姿はない。
フウタはそんな公園のブランコに座って、一人漕いでいた。
前へ後ろへと、揺れるブランコ。揺れる度に空気を切り、風を感じて心地がいい。
――ここに一人で来たのも久しぶりだ。でもここは、僕とミユにとってとても大事な場所だから――
だから、ここにいると良い気分にだってなる。
フウタはそんな気持ちに浸りながら、携帯を触る。
どうやらメールを送ろうとしているらしく、送り先は……ジンに対してだ。その内容は……。
――直接はアレだし、メールで謝ろう。それでも内容は考えなきゃ、だけど、うーん――
携帯を握りながら彼は、メールの内容に頭を悩ませていた。
どうしたものかと……考えていたところ。
「はぁ……ここにいたんだ。探してたんだよフウタ」
ここに現れたのは、彼の幼なじみであり、彼女でもあるミユだった。
「もしかして、ミユにずっと探させちゃった、かな」
「あはは。店だとか場所だとか、町のあちこちを探したんだよ。
……ここは真っ先に探したんだけどいなくて。でももう一度来てみたら、フウタに会えた」
それに彼女はおかしそうに、ふふっと微笑む。
「でも、フウタがブランコでこうして座っていて、私は探しにここまで来てさ。
おかしいよね。だって『あの時』と、逆な状況だもん」
ミユは微笑みながら、フウタの隣のブランコに並んで座る。
「あの時もまた、夕暮れ空の下で、こんな風に並んで座ってたよね。
……一年前、フウタが私に告白してくれた時」
ブランコに座るフウタとミユ。二人は互いに、熱く見つめ合っている。
「そうだったよね。僕は告白しようとミユの事探してさ、そしてここで見つけたんだ。
小さい頃によく二人で遊んだ、思い出の公園でさ」
もちろんフウタだって、よく覚えていた。
「学校の終わった放課後で、学校にも家にもいなくて、町のあちこちも探して回って。そして見つけたミユは、寂しそうにブランコを漕いでいたよね。
とても僕は、心配だったよ」
彼の話にミユは、恥ずかしそうに顔を赤くする。
「あの時は私のせいで、余計な心配させちゃったね。
だって……見ちゃったもん。フウタが学校で別の女の子に、『好きだ』って言ってたところ。だからフウタは別の人が好きなんだって思って、それで……」
これにはつい、フウタは可笑しそうに笑う。
「あははっ! あれはただ、少し友達だったからミユへの告白の練習相手として手伝ってもらってただけさ。
僕はずっと、ミユの事が一番だから。別の誰かをそれ以上に好きになるなんて、あり得ないよ」
「だよ……ね。
でもあの時は自信がなくて、そう思ったからこの公園で一人、落ち込んでいたんだよ。
だけど、そこにフウタが探しに来てくれて、そして私に好きだって、告白してくれたよね」
ミユも今でも嬉しい思い出らしく、照れていながらもニコニコしている。
「だってもう、フウタの一番にだなんてなれないって、諦めていたから。
だから本当はフウタも私の事を同じように想っているって、凄く嬉しかったの」
「でも……それで思いっきりミユが抱きついてきたのは、驚きだったさ」
「あははー、それだけ私は、嬉しかったんだから」
二人の雰囲気は、とても幸せ一杯な、そんな感じだ。
フウタの思い悩んでいる様子も今では、十分に和らいでいる。それを見計らって、ミユは。
「あのね、フウタ?」
「ん? どうしたかな」
「……GBNでの事なんだけど、フウタはどう思っているの?」
これはまたミユも気になっていたこと。もちろんフウタはもっと、気にしていた。
「それは、その。あれから僕も考えてみたんだよ。
……やっぱり、僕もやりすぎた所もあった。そこは素直に謝らないとねって」
フウタもあれから反省していると。それが分かって、一安心なミユ。
「良かった。だって、喧嘩別れだったから大丈夫かなって心配してたから。
フウタは偉いね」
まるで彼のお姉ちゃんみたいに、ミユはよしよしとフウタの頭をなでる。
「ううっ、そうされると照れる。これじゃ恋人じゃなくてまるで世話好きなお姉ちゃんみたいだよ。
背丈も僕が低いわけだし、さ」
「つい、こうしたくなっちゃったんだよ。
だって私、昔からフウタの世話を焼くのだって、好きなんだから」
「……むぅ」
でもフウタもそう言いながら、やっぱりまんざらでもない感じ。
「それでもさ、僕は偉くなんてないよ。
だってまだ、ジンに言われた事は怒ってるし。……僕なりには、ミユとの時間を大切にしながら強くなろうと努力しているんだ。だって……」
やっぱりそこは、フウタ自身心の整理がしきれていないようだった。彼には彼で、ある想いだってあったからだ。しかし……。
その時、ミユは彼が考えもしない事を言った。
「――知っているよ。
小さい頃、ウィングガンダムゼロカスタムを買ってくれるって約束、果たすためなんだよね。
ジンさんがそのガンプラを持っているから、譲ってほしくて、一緒に頑張っているって」