【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝 作:双子烏丸
これにはフウタも、驚いた。
「えっ!? どうして、知っているんだ?」
「……実は、お店でジョウさんにフウタが相談しているの、聞いてたんだ。
フウタが心配でこっそりついて行ったら、ね」
それはガンプラバトルで伸び悩んでいて、ジョウにコーチを紹介して欲しいと頼んだ時だった。
――あの時、ミユも話を聞いていたなんて。フウタは考えもしなかった。
ゼロカスタムの事は秘密にして、プレゼントする時に驚かせるつもりだった。なのに、彼女はその事を既に知っている。
戸惑うフウタに、ミユは続ける。
「私との約束、ずっと覚えてくれてたんだ。それだって、とても嬉しいよ。
それに、フウタは驚かせるつもりだったから、私も知らないふりをしなきゃって思ってたけど。
この機会だから、フウタと話をしなきゃって」
「話、だって?」
彼女は頷く。
「うん。フウタって私のために、色々頑張ってくれているよね。
そこまで想ってくれるの、きっと私にとっては幸せな事だって思うの。けど……フウタは頑張りすぎている部分もあったりで、私、ずっと心配しているんだよ」
「……」
気にかけるミユ。フウタは自分でも少し申し訳ない様子では、あったものの。
「だって僕はそれだけ、ミユの事が大好きなんだ。 僕は勉強だって、運動だってそこまで出来るわけじゃないし、際立ってカッコいいとか性格が良いとかでもない普通の、大したことない奴なんだ。
けど唯一、ミユ――君と言うかけがえのない幼なじみが、傍にいてくれた」
フウタは真っすぐ、彼女を見据える。
「小さい頃からミユが好きで、それに僕に世話を焼いて、優しくだってしてくれる……。
僕はだんだんと、ミユへの好きって言う感情が強くなっていったんだ。だからもっと深い関係になりたくて告白もした。
僕も告白を受け止めてくれて、幸せだったよ。――だけど」
途端、今度はその顔に不安の感情が現れた。
彼は少し間を置いて、続きが気になるミユに、こう話す。
「でも僕は、やっぱり大したことないんだ。
なのにミユがずっと僕の傍で好意を向けてくれたり、それに恋人にまでなってくれたのは……あまりに幸せ過ぎて。
だからこんな僕自身その幸福と、そしてミユにふさわしいのか、自信が持てないんだよ。
だから、少しでもふさわしい相手にならないといけないってずっと――そう思って来たんだ。それ頑張らないと、ミユへの好きだって想いを証明したくて。……だから」
ここまで話したのは、フウタ自身も初めてだった。
何しろ言う機会だってそこまで無かったし、それにいくらミユ相手でも、ここまでの気持ちは恥ずかしくて告白出来なかった。
今だって、恥ずかしさとそれに情けなさで、まともにミユの顔も見れさえしなかった。
だけど、ミユはフウタにとても優しい表情を浮かべると――。
「――えっ」
途端彼が全身に感じたのは、暖かな体温。
「ミユ――僕に」
ぎゅっと、小柄なフウタの体を包み込む、ミユの抱擁。
思いも寄らないこの状況に、彼はドキっとする。そんなフウタの耳元でミユは呟く。
「フウタの気持ち、やっぱり嬉しいな。
だってそこまで私を好きでいてくれている、私はそれだけで、幸せなんだよ」
とても優しい、ミユの言葉。フウタは途切れ途切れに、返事をする。
「でも、僕は幼馴染ってだけで……ミユみたいに何か出来ている訳じゃ、ないんだよ。
なのに……僕は、本当に好きだと想ってもらえるなんて……本当にいいのかな」
声には少し涙声までも混じっていた。そんなフウタをミユは、まるで子供をなだめるように、続ける。
「私はそんな真っすぐで、頑張り屋さんな……そして私の事を想ってくれている、フウタが好きなの。
もちろんそれ以外も、全部が全部フウタの事なら、大好きなんだよ。
これまでだって、今も。……もちろんこれからも」
そしてふふっと笑って、さらに。
「私、ずっと嬉しいんだよ。そんなフウタが私を一番大切だって思ってくれて。
だって……私、普通の女の子より背が大きかったりするし、それに学校のクラスには何人も可愛い子がいて、比べたら私はそこまで可愛く、ないもん。
取り柄もほとんどないのにそれでも……私を好きだって、選んでくれたんだから」
珍しくミユは、少しだけ自信ないように、下を向いて俯く。
今度は慌ててフウタが、彼女を励まそうとする
「そんな事ないよ! ミユはとても可愛いし、優しいし……よく僕に勉強を教えてくれたり、美味しい料理を作ってくれるじゃないか!
ミユがそう言ったって僕はちゃんとミユが一番で、とても大切な存在だって思っているから。だから――」
「……くすくすくす」
するとそんな中、フウタは下を向いていたミユが、こっそり笑っているのが見えた。それに――自分でも言って、ある事に気が付き、はっとする。
ミユはくいっと、顔を上げて彼に微笑みかける。
「ほら? 私だって、本当はフウタと一緒なんだよ。
だから……フウタはそんな風に思っているかもしれないけれどね、私もちゃんと、フウタが凄いんだって、偉いんだって分かっているから。
……ねぇ、自分が大したことないなんて、思わなくていいの。そんな風に考えてたら……私だって悲しいよ」
そう言われてしまったら、フウタも素直になるしかなかった。
「……うん」
ミユの励ましに、まるで心のどこかにあった殻が、ぼろぼろと剥がれるような感じがした。
「僕も、ミユを悲しませるのは……嫌だから。
自分でも無理してたし、それを隠したせいで、ずっと心配もさせていたんだよね。
――ごめん。僕は一人で、グルグルし過ぎていたよ」
もう、フウタには変に焦ったり、無理しようと言う気持ちはなかった。
「いいの。……フウタはもう、大丈夫?」
彼はもちろんと答えた。
そして、今度はこんな事も。
「もちろん――だけど、無理とかじゃなくて、今度のバトルはちゃんと頑張りたいとも思っているんだ。
やっぱり、一度は始めたことだしね。自分でもどこまで出来るか試したいしそれに、ミユに僕の恰好良い所、見て欲しいし」
そしてフウタはミユに、もっと近づく。
「決して無理とかなんかじゃない。けれど、僕はやっぱりミユのために、頑張りたいんだよ。
だって、世界で一番大好きな僕の幼馴染みで、そして恋人なんだから」
すぐ傍にある、ミユの顔とそれに……唇。
「フウタが頑張るなら、私も応援しているよ。だって私は、フウタの――」
二人は互いに気持ちを確かめ合うかのように――静かに口づけを交わした。
フウタとミユの特別な一瞬。
キスした後も、二人は幸せそうに見つめあっていた。……けれど。
――えっ?――
ミユの頭越しに、フウタはその向こうに知っている人物が見えた。
「……ジン?」
よく見ると、公園の木に隠れ、こっそりとジンがそこにいた。
「えっ? ジンさんが」
これにはミユもまた振り向く。
そして……二人の視線に気づいた、ジン。彼はこれはもう隠れてられないと諦めたのか、ゆっくりと姿を現す。
「……あはは、バレちまったか」
やって来たジンの手元には、模型店で買ったガンプラが入った袋をぶら下げている。多分ヒグレ模型店で買って来たのだろう。
「まさか……ずっと、見ていたのかよ」
フウタは気まずいのか、そんな感じの表情をしていた。
「えっと、ミユちゃんがフウタを励ましていた、辺りからか。
もう少し早く姿を見せるつもりだったんだけどさ、二人がもっとラブラブしはじめたものだから、どうも出るに出れなくて……」
ジンもまた、頭を掻いて照れている感じだ。
――これはちょっと、複雑かもね――
フウタとジン、互いに困りながらも顔を合わせたままの二人を眺めて、ミユはそう思った。
なにしろこんな所で出会ってしまったせいか、これ以上何を言おうか困っている。
「なぁ、フウタ」
……しかし、そんな中で先に口を開いたのは、ジンの方だ。やはり年上としての、責任を感じたのだろうか。
「ん? どうしたのさ」
「俺さフウタの事を探してたんたぜ。その、なんだ」
そこから先の言葉は、なかなか言えずにいた。……が、ジンは勇気を出して。
「――さっきは、本当に悪かった! 俺、フウタの事をあまり考えないで、傷つける事を言ってしまって」
彼はフウタに対して、頭を下げて謝った。
「フウタだって……フウタなりに考えて、頑張っているんだよな。
俺はその事を考えなくて、勝手にあんな。……許してくれ」
「……」
いきなり謝られて、フウタは戸惑った。けれど彼もまた、同じように。
「僕の方こそ変にムキになり過ぎた。
ごめん、ジン。今度からはもう、あんな事起こさないよ」
彼はまた、ミユに優しい視線を向ける。
「ミユの気持ちだって、今日僕は改めて分かったんだ。だからもう……無理に気負いなんてしない」
「そっか。フウタも知らないうちに、解決していたんだな。
――さすが、ミユちゃん」
ジンに褒められて、嬉しそうなミユ。
「えへへ……。だって私、フウタの事が大好きだもん。力になれて良かったよ」
これで、ジンもフウタも仲直り。……そしてまた、フウタの心の問題もまた、解決した。
彼はいつもの調子に戻ると、ぐいっと背伸びをする。
「さて、と。ジンにもミユにも迷惑をかけたね。
――けど、僕はもう大丈夫。それに……」
フウタはジンに、強気な視線を向ける。
「カインって奴だっけ、アイツを倒すんだろ。
もし時間があるんだったら、今からヒグレ模型店にでも行かない? ……ガンプラバトルに向けて、少しでも特訓しないとだしさ」
今の彼は、本当に良い表情をしている。
ジンもこれには一安心だ。
「ああ! 今日は俺もまた、暇だしな。
――頼りにしているぜ、フウタ!」
それにフウタは、自信満々に。
「……もちろんさ! 改めて、また頑張ろう」