【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝   作:双子烏丸

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第二話 腕試し
回想その1 フレンド登録(Side フウタ)


 ――――

 

 時間は正午を過ぎ、時刻は一時を回っていた。

 

「むぅ……遅いな、フウタ」

 

 家のリビングで、ミユは机の上で、頬杖をついていた。

 そうしていると、その机に一匹の白いネコが、ピョンと乗っかり彼女に頬ずりする。

 

「シャルルってば、もう、くすぐったいよ」

 

 この白い雄猫、シャルルもミユの家族の一員。ちなみに猫はフウタの家でも一匹――あっちは三毛の雌猫だが――飼っている。

 二人のGBNでの姿、ダイバールックに猫の要素があるのは、そのためでもあった。

 

「ミー!」

 

 ミユは机に乗ったシャルルを両手で掴み、床へと降ろした。

 

「まぁまぁ。気になるのは分かるが、たった一時間じゃないか」

 

 彼女の向こう側では、父親が新聞を片手にコーヒーを口にし、せっかくの休日をくつろいでいる。

 システムエンジニアとして働くミユの父親は、痩身のナイスミドルと言った男性。今でも女性に声を掛けられることもあるらしいが、それでも愛妻一筋の良い父でもある。

 

「でもお父さん、いつもならフウタは連絡してくれるんだよ? 何かあったのかも……」

 

 そんな時、家のインターホンが鳴った。

 もしかすると――、ミユは玄関に駆け寄り、声をかける。

 

 

 

「もしもし、どなたですか?」

 

「僕だよミユ。……遅れてごめん」

 

 この声は、フウタのものだった。

 ミユが玄関を開けると、そこには息切れをしている、フウタの姿があった。

 

「ちょっと用事があって、電車に乗り遅れてさ。

 でも! ミユと約束があったから、急いで走って来たんだ」

 

「……もう。急がなくても、連絡くれたら、それで良かったのに」

 

「あっ! そう言えば、そうだった。連絡する事も忘れていたなんて――」

 

 どうやら、急ぎすぎたせいで連絡の事まで、頭が回らなかったフウタ。

 ミユはちょびっと呆れた様子を見せるも、遅れながらも来てくれたことや、そしてフウタに会えたことに――嬉しそうな様子だ。

 

「ううん。ちゃんとフウマも来てくれたし、もういいんだ。

 ……ほら、いつまでもそこにいないで、家に入って来て。 フウタが青椒肉絲を作ってくれるって約束だから、私とお父さんも、待ってたの」

 

「ははは。待ちすぎたせいで、こっちもお腹ペコペコだとも。だが、フウタくんの手料理が食べれるなら、悪くはないさ」

 

 ミユとその父の言葉に、フウタは玄関から家の中へと上がる。

 すると白猫のシャルルは、彼の足元に絡みついて来る。

 

「ふふっ、シャルルも出迎えてくれるんだね。よしよし」

 

 彼は猫の喉元をやさしく撫でる。 

 そして早速、キッチンへと向かい、料理に取り掛かろうとした。

 

「さて、と。ちょっと時間がかかるかもだけど、楽しみにしてて。

 ――腕によりをかけて、料理するからさ!」

 

 冷蔵庫から材料を用意し、道具の準備をするフウタ。

 そして料理を始めるなか……彼は二時間前のある出来事について、少し思いをはせる。

 

 

 

 ――――

 時間はさかのぼり、朝の十一時頃。

 フウタとジンは、ガンダムベースへと戻り、そこでGBNへとログインした。

 ゴーグルをつけ、ログインするとともに、意識がふわりと浮かぶ感覚とともに……どこかへと向かって行くようなイメージ。

 そして――

 

 

 二人が立っていたのは、GBNのロビー。

 円形の広いホールに、あちこちにモニターがあり、ガンプラバトルの様子を映し出す。

 もちろんダイバー達も、数多い。

 オリジナルのダイバールックをした者もいれば、これまでのガンダム作品に登場したキャラクターのコスプレをした者

、そして各勢力の軍服や制服を着用した者など……多種多様だ。

 フウタの恰好は、パイロットスーツにゴーグル、そして青髪に猫耳と言った、いつものダイバールックだ。

 

「へぇ、それがGBNでのフウタ、なんだな。なかなか良い恰好じゃないか」

 

 声がした隣を見ると、そこにはジンの姿があった。

 しかし現実とは違い、黒ではなく灰色の髪となり、眼鏡はかけていなかった。

 そして格好もややカジュアルな現代風の服装から、まるで中世ファンタジーの、旅人のような恰好をしている。とりわけ背中に纏った灰色のマントなど、いかにもな雰囲気を感じさせる。

 

「まあね。じゃあまずは、先にフレンド登録から済ませておこうか」

 

 GBNではこうしてフレンド登録をしておけば、相手のログイン状況や現在地を知ることや、連絡など取り易くなる。

 今後何かあった時など、これで楽になるはずだ。

 二人はメニュー画面を開き、互いにフレンドの登録を行う。

「カザマ・フウタ……っと、こっちは登録したさ」

 

「僕もジンさんを登録したよ。これで今度は、直接会わなくてもGBNで連絡がつくはずだ」

 

 フウタ、ジンはフレンド登録を済ませた。

 そしてフウタの方は、少し考えた後、こんな事を話す。

 

「――さてと、手伝うって言ったはいいけど。まずは互いの腕を知っていた方が、良いんじゃないかな?」

 

「腕を知るって事は、フウタとフリーバトルって、ことか。場所はどうする? 俺としては……そうだな」

 

 ジンは画面を開き、周囲のマップを確認する。

 

「場所はそうだな、ちょっと離れているけど、この湖近くはどうだ。戦うには丁度いい感じじゃないか?」

 

 マップをのぞき込む、フウタ。

 

「うん。たぶん、ここなら良さそう。それじゃ早速行こう。

 ……こっちも用事が控えてるし、早く済ませよう」

 

 彼にはミユに昼ご飯の約束をしていた。とりあえず今日は、早めにこの用事を済ませたかった。

 

 

 

 ――――

 

 高層建造物から飛び立つ、二機のMS。 

 フウタのレギンレイズと、ジンのガンダムF91……世界観が全く異なるMSが同じ空を飛ぶ、これもまたGBNならではだ。

 

「……ジンさんのガンプラはさっき見させて貰ったけど、これが僕のガンプラ、名付けて『レギンレイズ・フライヤー』。AEUイナクトとのニコイチで、軽い改造だけどね」

 

 コックピットで機体を操縦する、フウタ。彼は横に表示される通信画面に映るジンに、こう話した。

 

〈たしか、鉄血のオルフェンズの、MSだったよな。オリジナルは緑だった気がするけど、そのブルーは塗装したって事かい?〉

 

「そう言うこと、青色が好きな色だしさ。本当はエアブラシだとかの方がいいんだろうけど、高いし扱いが難しそうだから、スプレー缶で塗ったんだ」

 

〈へぇ、でもなかなか綺麗な色じゃないか? 俺の場合は、全部筆塗りだからさ、微妙に塗装のムラが目立つんだよな……〉

 

 ジンも、そしてフウタもガンプラや模型は好きで、趣味の一つである。

 しかし、一言でガンプラ、模型と言っても楽しみ方もまた人それぞれ。塗装一つでも、スプレー缶や筆塗り、そしてエアブラシに無塗装などと、人によって千差万別だ。 

 加えて更に、接着や合わせ目消しに、プラ板、パテ盛りによる工作もあり言い出せばきりがないが――GBNではこれらの制作、工作技術もまた、重要な要素。

 

 

 何しろこのゲームは、単なるゲームの腕のみならず、ガンプラの完成度がそのまま、機体の性能へと左右される。

 攻撃力、装甲、機動性など、各種の性能はもちろん、一部MSに搭載される特殊システム、EXAMやトランザムなどの能力もまた、ガンプラの出来が良ければ良いほど高くなる。……逆を言えば、出来が不十分であれば、それも満足に使えないと言うことであるのだが、これはまた別の話だ。

 

「まぁ、そこは人それぞれ、好きに作るものだからね。……僕だって、自分より年下の相手が、もっと凄い模型を作っているのを沢山見てきたし」

 

〈言い出したら、きりがないって事か。ははっ、言えてる〉

 

 そんな話をしながら、フウタはふと外の風景を眺めていた。

 下には鬱蒼とした森が広がり、遠くには別のエリアとなる、雪山までも見渡せる。

 そして青く、広々とした空――、ついここが仮想世界であることを、忘れてしまいそうだ。

 どうやら、ジンも同じように風景を眺めていたらしい。彼はフウタにこう話す。

 

〈今更だけど、このGBNは、よく出来ているよな。こうして眺める風景や、空も、本物みたいに綺麗だ〉

 

 フウタもまた、同意を示す。

 

「そうだね。僕は現実世界でも、旅行や散策が趣味なんだけどさ、ここも負けず劣らずだよ。

 それにGBNでは……こうして空だって、飛べたりするし」

 

 そしてこんな事も、続けて話していた。 

 

「僕はガンプラの他に、航空機の模型なんか好きなんだ。

 だけど、こんな風に自分の作った模型に乗って、空を飛べるのはガンプラや、GBNならではだよね」

 

〈――そうだな。俺も交際出来たら、この空でデート、ってのも悪くない。

 まぁ、GBN歴の長い彼女にとって、珍しくないかもしれないけどな〉

 

 フウタはこれを聞いて、ジンが好意を抱いている女性の事を、きっと今思い浮かべているのだろうと、そう思った。

 

 ――ジンさんは好きな人のために、強くなろうとしているんだよね。……僕も、その気持ちは分かるし、出来る限り頑張ってみたいな――

 

 そう思っていると、下に目的地が見えて来た。

 

「さてと、ジンさん。考えている所悪いけど、そろそろ目的地だよ」

 

 フウタの声で、ジンははっとしたようだ。

 

〈おっと! ちょっと考え込んでたな。じゃあ……降りようか〉

 

 眼下には大きな湖が見える。二人は自らの機体を、その近くへと降下させる。

 

 

 

 

 ――――

 

 ――そうそうあの時、空の上ではそんな事を、ジンさんと話していたんだよね――

 

 フウタがこんな風に、さっきの出来事を思い出している内に、青椒肉絲は出来上がっていた。

 

 ――おっと、こっちも出来上がったね。ミユ達に持って行かないと――

 

 彼はフライパンからそれぞれ皿に三人分盛り付けると、ミユと彼女の父親のもとに運ぶ。

 

「はい! お待ち遠さま! あっ、でもちょっと待ってて、ご飯の方も用意するから」

 

 そう言って、またキッチンに戻るフウタ。

 炊いてあったご飯を茶碗によそって、青椒肉絲の皿の横に、置いて行く。

 そしてフウタもまた、テーブルへとついた。

 

「ふふっ、我ながらよく出来た感じ」

 

 テーブルには、三つのご飯茶碗と、青椒肉絲の盛り付けられた皿が置かれている。 

 ミユはその青椒肉絲を、しげしげと眺めた

 

「……へぇ、前の時より、とっても美味しそう!」

 

「だから言ったろ? 前よりも上達したって。それじゃ……いただきます、と」

 

 試しにまずは、フウタが青椒肉絲を一口。

 

「うん。味も……なかなか悪くない、はず」

 

 続いてミユと、その父親も……。

 

「ほう? これはなかなか、いけるじゃないか」

 

 彼女の父親はその味に、悪くはないと言った様子だ。

 そしてミユはと言えば。

 

「あっ! 全然美味しいよ、フウタ! ちょっとピリッとして辛いけど、良い感じだね」

 

「ミユが喜んでくれて、何より! 作った甲斐があったさ」

 

 美味しそうにしている彼女に、フウタは心底嬉しそうに笑っていた。

 

「いざとなった時には、ちゃんと料理も出来ないといけないしさ。……今度は、ハンバーグなんかにも挑戦しようかな」

 

 そう話す彼に、父親は少し茶化すように言う。

 

「いわゆる、フウタの花婿修行って事かい?」

 

「――もう! お父さんってば、恥ずかしい事言わないでよ!」

 

 恥ずかしがるミユはそう言うも、相変わらずの父親。

 

「まぁまぁ。だって幼馴染から、恋人だろう? だったら、このまま行けば……」

 

 

 

 これにはフウタは照れるかのように、少し頬を掻く。

 

「……そりゃ、まだ随分先だけど、僕だって家事が上手く出来るようにならないとね。家では料理以外の家事だって、こなしているしさ。

 ……その時にはちゃんと花婿として、ミユや、いつか出来る家族に、美味しい料理を振舞いたいんだ。まぁ、料理上手なミユには……ちょっと程遠いけど」

 

 そう話しながら、彼は照れる感情を誤魔化すように、自分の青椒肉絲を口にする。

 フウタの想いを聞いたせいか、やや顔を赤らめるミユ。

 

「フウタまで、そんな事言って」

 

「ちょっと気が早いかもだけど、別に、考えるくらいならタダだろ? 両想いでもあるしさ、その時には……良いと思うんだ」

 

 ミユはさらに顔が赤くなり、頬を膨らませて青椒肉絲をぱくつく。

 

「フウタははっきり言いすぎ! そんな事くらい、私だって……もぐもぐ」

 

 しかし青椒肉絲を食べながらも、まんざらでもない様子の、彼女であった。

 

 

 するとふと、ミユは箸をとめて、ふふっと笑う。

 

「……でも、始めたばかりの頃よりも、ずっと美味しくなってる感じ。このままだと本当に、追い越されちゃうかも。

 フウタがそう言うなら、私も負けてられないかな。今度は私が、フウタの家に遊びに行って、もっと美味しい料理を作らないとね」

 

 これにはフウタは心底、嬉しそうなようだ。

 

「それは嬉しいな。ミユの料理の方が、ずっと美味しいし!」

 

「料理の腕を磨いているのは、フウタだけじゃないんだから。さっきの話で言うなら、私だって花嫁修業って事、かな?」

 

「ふぇっ!」

 

 いきなりの言葉に、今度はフウタが変な声を出してドキッとした。

 

「くすっ、フウタが先に言ったのに、驚くことはないでしょ」

 

「……言うのと言われるのは、また違うさ」

 

 今度はフウタが、どぎまぎした様子。

 

「これで少しは、私の気持ちも分かったかしら?

 ――けど、それよりフウタも食べよう。早くしないと冷めちゃうよ」

  

「あっ……そうだった!」

 

 言われてみれば、まだ彼は殆ど自分の料理に口をつけてなかった。

 話に夢中になっていたフウタは、ようやく昼食を再開する。 

 自分の作った青椒肉絲を食べながら、ふとある事が頭をよぎった。

 

 ――そう言えば、ジンさんはどうしているかな。あれからまだGBNにいるって事だけど――

 

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