【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝 作:双子烏丸
あれから、カインからまた連絡が入り、今度こそ勝負がしたいと伝えられた。
そして、その指定された約束の時間と、場所にて。
「ここが、その舞台……か」
GBNにログインしたフウタ、ジン、そしてミユ。
対決に選ばれたのは、広大な氷原のエリア。
雪と氷……それに空の曇り空からは、はらはらと雪が降る。
「うう、こんな景色の中にいると、つい寒く感じるよ」
厚手のパイロットスーツのフウタや、それにマントを被っているジンとは違い、ミユはワンピースと薄い上着しか羽織っていない。仮想世界で実際はそこまで寒い感覚はないものの、気持ち的にやっぱりそう思ってしまうのだろう。
「感覚としては寒さはそこまでないはずだから、平気だよ。でも……そう寒く思ってしまうなら」
そう言うと、フウタはパイロットスーツの上のジャケットを脱ぐと、ミユに被せた。
「これで少しは気持ち的に、ましになったかな」
上着に身をくるんで、ミユは彼に嬉しい表情を見せる。
「ありがと。おかげで何だか、ポカポカするよ」
「それは良かった! ふふっ、ミユのそんな顔を見れて、僕だって――」
もはやジンにとっては、フウタとミユのやりとりはいつもの事だった。ただ、前に二人についての話を聞いてからは、不思議な感覚も覚えていた。
――本当に二人とも、良い絆で結ばれているって言うかな。ま、それだけ一生懸命なのは良いことさ――
「だけど、フウタ。これからバトルが始まるのを忘れてないかい? イチャイチャも程ほどにな」
ジンの言葉に、得意げな顔を向けるフウタ。
「もーちろん! 忘れてなんて、いるわけないさ」
そして彼は、氷原の先を見据える。
向こうの空から迫る、戦艦ドミニオンの姿。………カインはあれに乗っているのだろう。
「ねぇ、ジン」
「改まってどうした?」
迫る巨大戦艦を見据えて、フウタは言った。
「――今回のバトル、絶対勝つよ。あんな相手、ミユの前で負けられないから」
いつも以上に彼は、真剣そのものな……顔をしていた。
――――
空中に現れた、ドミニオン。
そのカタパルトから二機のガンプラが飛び立ち、そして華麗に三人の前へと着地する。
正面に立つのは、黒と黒鉄色のV2ガンダムをベースにした、大型の翼を持つ……改造ガンプラ。そしてその左後ろには、銀色に塗装されたウィンダムが一機、控えていた。
「あれが、カインのガンプラか。随分と小柄だな」
「ジンのF91と、似たり寄ったりじゃないか。……まぁ、あれ以降の宇宙世紀のMSは小柄だから、当然っちゃ当然か」
「それもそう、だな」
そしてV2ガンダムのコックピットハッチが開き、現れたのは貴族風の恰好をした長い金髪の美青年、カインの姿。
「やぁ、こうして来てくれて、感謝するよ」
カインは、以前はパイロットスーツではあったが、今回はそんな恰好。
やっぱりキザな雰囲気は相変わらず、それでも恰好が似合っているのがまた、何とも言えなかった。
「その機体が、カインのガンプラか」
ジンの問いに、カインはこたえる。
「そうだとも。これが私のガンプラ、V2シュヴァルツドライだ。……自慢の、愛機さ」
自分たちよりもずっと作りこまれた機体。二人とも、つい目を奪われる。
「続けて自慢だが、私も、シュヴァルツドライもかなり強い。
これを前にしてでもまだ、戦うと言うのかな」
自信に溢れたカイン。では、あるが――。
「……ああ! 戦うって、約束したからな」
フウタは自身満々に、前へと進み出る。
「ミユを賭けたバトル、負けられはしないさ。
僕が勝ってちゃんと、格好いい所だって見せたいし」
「もちろん! 私も応援しているからね、フウタ!」
傍にいるミユも、いつものように言ってくれる。そしてジンは。
「俺だって一緒なんだぜ。……まぁ、元気になって良かったとは、思うが」
フウタと、ジン、二人はこれから戦う相手であるカインを、共に見据える。
「……それよりもまずは、あいつを倒さないとな」
「まーね! どうやら上級ダイバーみたいだし、実力を試すには申し分なしさ!」
対してカインも、不敵に微笑む。
「以前と違い、随分言うようになったじゃないか。
いいだろう……ミユちゃんとのデートは、私が貰うとも」
二対二のタッグバトル、互いに戦う覚悟は――すでに出来ていた。
――――
フウタのレギンレイズ・フライヤーは氷原の空を飛行し、ライフルを構える。
……しかし、相手は。
〈ふふふ……。悪くはないが、私にはまだ届かないな〉
ライフルによる銃撃を、高速起動で飛び回り回避する、黒い影。
――ちいっ、全然当たらない。よくあんな無茶苦茶な動きを――
フウタはそう苦い思いを抱くも、まともに考える暇なんて与えられなかった。
〈では――今度は私の番だな〉
カインの乗るV2シュヴァルツドライ、その武器は……。
「なあっ!」
レギンレイズに急接近したシュヴァルツドライ、その両手には二振りの双剣が握られていた。
この双剣こそが、機体唯一の武装。つまりこの機体は近接戦闘に特化し、遠距離からの攻撃は不可能だ。そもそも飛び道具を持ってすらいないため、射撃で襲われる心配はない。
――しかし。
まるで瞬きする間の、僅かな瞬間。
離れていた位置にいたはずのシュヴァルツドライは、瞬時にレギンレイズの懐にまで迫った。
避ける暇もなく、フウタは自身のガントレットで防御する。だがその一撃は強力だった。
自分よりも図体の小さい機体による斬撃、それを受けレギンレイズは後方まで吹き飛ばされる。
――なんて威力だ! それにガントレットもこんなに――
攻撃を防いだガントレットも、深々と斬撃痕が残る。これではあと一度、攻撃を防げるかどうかだろう。
吹き飛ばされてすぐに、シュヴァルツドライは再び迫り切りかかる。
「くそっ!」
フウタのレギンレイズはライフルからパイルに持ち替え、応戦する。
襲い掛かる二本の剣で抵抗するのは、一本のパイル。反撃する暇もなく受け止めるだけで一杯一杯の状態だ。
〈確か君はこの間まで、アマチュアだったんだろ? それがここまで上達した事は……素直に褒めてあげよう〉
「その上から目線、気に入らないな!」
レギンレイズはバーニアを噴かし、後ろに退こうとする。しかしすぐにシュヴァルツドライは高速で迫り更に攻撃を続行する。
――あの強力なバックパックがあるから、近接線だけでも十分なのか。いや、十二分以上さ――
あの高出力、高機動のバックパックによる俊敏な動きと、そして瞬時に相手に迫れるほどのスピード。カインにとって飛び道具など、端から不要なのだ。
そして斬撃を繰り出す、シュヴァルツドライ。
機体の、いやカインの剣裁きは相当な実力だ。近距離戦闘に限定した分、その特化した剣術は高度な域にある。
正直、フウタがこうして持ちこたえているのも奇跡に近い。全能力を注ぎ、双剣の攻撃をパイルやガントレットでどうにか防ぐ。
――こんなのって、一人じゃ持たないよ――
フウタ一人で戦うには、無理がある相手だ。しかし、ジンの方も手が離せる状況ではない。
ほんの僅かに確認すると、氷原上ではジンのガンダムF91と銀色に塗装されたウィンダムと戦っていた。
〈おっと! よそ見をする暇なんて、あるのかな?〉
重い一撃が、またフウタを襲う。
今度は双剣を同時に、全力で振り下ろした。フウタは受け止めるもその勢いで、地上へと墜落する。
割れて飛び散る、無数の氷の破片。
――今度はこっちも、地上戦ってわけ――
〈もし援護を期待しているなら、諦めることだ。
あのウィンダムのパイロットは私に次ぐバトルの腕を持つ、実力者だからな!〉
「はっ! 別にそんな期待なんて。僕一人でも十分さ。……そりゃ、厳しい戦いかもだけど」
とは言っても、やはりフウタには荷が重すぎる。
――でも、やるしかないか――
これまでにない相当な強敵。でもフウタは彼なりに、今は戦うしか術はなかった。
――ジン、そっちだって頼りにしているんだから。だから……負けないでよね――