【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝 作:双子烏丸
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一方、カイン率いるフォース『ブラックホース』のナンバー2と戦う、ジンはと言うと。
氷原上でライフルを構え、射撃を繰り返す彼のガンプラ、ガンダムF91。
――やっぱ、簡単には行かないか。……っと!――
対戦相手もまた彼に反撃を返す。
銀色に塗装されたウィンダム。向こうもまたビーム射撃を繰り出すが、ジンも実力を上げていた事と、それにF91の機体そのものがウィンダム以上に小回りが利くためにその攻撃もまた当たってはいなかった。
両者、殆ど当たらない射撃を繰り返すばかりの泥沼な射撃戦。
――おっ、命中したか――
ジンのF91の放ったビームが、ウィンダムに命中したと、そう彼は喜んだ。
……しかし、確かに当たりはしたものの、当たったのはウィンダムの右肩装甲の一部を削った程度。
どちらもたまに攻撃を当ててはいるものの、結局は大したダメージを与えられていない。
――全く埒が明かないぜ。……ここは!――
そして互いにこの状況を打破しようと、近接戦を仕掛けもする。
今回先に動いたのは、ジンの方だ。
ビームサーベルを抜き、目の前のウィンダムへと急接近するF91。対して向こうもビームサーベルを構え、迫る。
すれ違う二機、互いのビームサーベルが衝突し激しい閃光を放つ。そして何度か打ち合った末、再び距離を離す。
結果、やはり決定的なダメージは与えられないままだ。
最も、一フォースのナンバー2とされる程の実力を持つ相手と、元々ただのアマチュアだったジンがここまで対等に戦えるだけでも……実際かなり凄い成長だ。
ただあまりにも互角な戦いで、若干泥沼化している。まさにそんな感じである。
――何か決定的な機会があれば一気に、形勢を覆せるはず――
こんな状況に焦るジン。
……何故かと言うと。
――フウタはかなり苦戦しているな。ここは俺がさっさと奴を倒して、援護に行かないと――
空中をちらりと見ると、そこにはシュヴァルツドライに押されに押されているレギンレイズの姿が。
やはり相手が相手、フウタ一人の実力では厳しいのだ。
――こっちは何とかだが、このままじゃあいつ――
そう心配した次の瞬間だった。
シュヴァルツドライが双剣を振り上げ、レギンレイズへと叩きつけた。
フウタの乗るレギンレイズは墜落し、氷原に叩きつけられる。
「嘘だろ!!」
だが、ピンチは続けてジンの方にも。
彼がフウタに気をとられている隙をつかれ、ウィンダムはバックパックの翼に取り付けられたミサイルを二発放った。
――しまった、こんな所で――
とっさにライフルを構え、ミサイルを撃ち落とそうとするジン。
一発目のミサイルはどうにか撃ち落とし、空中で爆発する。だが、その爆風の中からもう一発のミサイルが……。
――まずい! これは避けられないし、撃ち落とすのも――
どちらとも、もう間に合わない。
ミサイルは固まったままのF91に迫り、そして……大爆発を巻き起こした!
――――
少し離れた場所で起こったその爆発が、目に入ったフウタ。
〈さて……と。そっちは大丈夫かな?〉
目の前に悠然と立っているのは、カインのシュヴァルツドライ。
先ほど猛攻を繰り広げていたのとは打って変わり、機体はただレギンレイズに向き合っている。
斬撃を受け氷原に叩きつけられたレギンレイズ。だが幸いダメージは思ったよりも少なく、通常通りの動きは問題なかった。
機体を起き上がらせて、フウタは後ろを振り返る。
「ごめんミユ。思いっきり墜落したけど大丈夫? 調子を悪くさせたかも」
「ううん、私は平気だよ」
そう。実は今回は、フウタはミユと一緒にガンプラに乗ってのバトルだった。
「そう言えばフウタと一緒にガンプラに乗ったの、ガンプラバトルではあまりなかったね。
……普通の時はよく一緒に乗ったりはするんだけど」
「だよ……ね。でも、まさかこんな事になるなんて」
今更ながらフウタはそんな気持ちで一杯だった。
『今日はフウタの傍にいたいんだ。だって、大好きな人が頑張っている所……すぐ近くで見ていたいから』
このミユの気持ちに応えて、彼は一緒に乗って戦っていた。
今度は、通信画面に映るカインに向かって……。
「……どう言うつもりだよ、ただ突っ立っているなんて。
僕をおちょくっているのか?」
まるで舐められたように思えて、不機嫌気味なフウタにカインは答える。
〈とんでもない! 私なりには全力を出して、戦ってはいるとも。
ただ、ミユちゃんが一緒に乗っているのだろう。あまり無理させるわけにはいかない、フウタも彼女の彼氏ならもっと気を遣うといい〉
この言葉に渋い表情をするフウタ。
「そんな事言われなくても! ……けど」
――やっぱ、無茶苦茶やられてばかりだから、かなり無理をかけたのかな。さっきの墜落だって――
自分でも悪く感じて、それに不甲斐なさまで。
しかしその時後ろからこんな声が。
「全然、大丈夫なんだから! これくらい私もガンプラバトルで慣れっこだもんね!」
カインに対して言い返したのはミユ。
振り返って見ると、彼女の表情はとてもキラキラしていた。
〈ほう、これは私の方が失礼したかな〉
「その通り! フウタだって本気で戦っているんだから、私の事は気にしないでカインさんも本気を出して欲しいの。
……それでもフウタは負けないんだから!」
そしてミユはフウタに微笑む。
「ちょっとごめんね。好き勝手言い過ぎちゃったかも」
「まさか、ミユがあんな事を言うなんて」
いきなりあんな風にされてフウタどきっとする。
いつもの、でも彼にとってかけがえのないくらいに大切なミユ。
そして彼女はいつも……
「フウタ……私も一緒についているからね」
――そうだよね。ミユはいつも僕の――
いつも寄り添ってくれる自分の幼馴染――パートナー。
――確かに僕はまだまだ情けないかもだけど、それでも僕はミユが好きだって思ってくれる……相手なんだ。
だから無理はしなくても自分なりに――
背伸びなんてしなくても、今出来る限りは。
〈そう……か。ならばミユちゃんの意見を尊重しよう。
ここからは――全力で行かせてもらう!〉
双剣を構えシュヴァルツドライは全推力を叩きつけて急加速、一気にフウタのレギンレイズに突撃をかける。
――勢いがさっき以上だ。でも、こっちもいくらか動きは覚えたし対策くらいは――
さすがにあの加速をそのまま受けるのはまずい。レギンレイズは機体ごとブースターで突撃方向と同じ向き、つまり後方に飛び退く。
おかげで突撃の威力も和らいだ。けど、シュヴァルツドライは構わず斬撃を繰り出す。
双剣の斬撃がいくつも放たれ襲い来る。
――それなりには見切った! こっちは一本だけどその代わりに、肉を切らせて骨を――
全てをまともに受けるのは無理だ。ならレギンレイズの装甲で斬撃の一部を受け止める。
ナノラミネートアーマーはビーム攻撃の耐性も高いが物理攻撃もかなり防げる。
そして斬撃を装甲の厚い部分で防ぐなりいなすなりして受け止め、フウタは……。
――これでこっちにも少し余裕が出来た。だからようやく反撃だって!――
彼のレギンレイズはシュヴァルツドライの斬撃の間に、いくらか隙を見つけた。
レギンレイズのパイルはそこを狙い、かいくぐるように一撃を。
〈……!〉
パイルの先はシュヴァルツドライの胸部に、ぐさりと突き刺さった。
――よし! 上手く入った! ――
半分運が良かったのもあるが、攻撃は見事に急所へクリーンヒット。
カインも想定外の反撃を食らい、シュヴァルツドライはレギンレイズから離れる。
「やったねフウタ! とても恰好良いよ!」
後ろではミユがまるで自分の事のように喜ぶ。
「うん! やっと一撃当てられたよ」
フウタもこれにはにっこり笑う。
「ほらね? やっぱりフウタは凄いんだから、もっと自信を持たないとね」
――やっぱりミユの言う通りだよな。……僕は――
改めて彼女は自分の事をここまで分かっているんだと感じた。
そんなミユと一緒なら何だって出来そうだと、そうフウタは思う。
「ここまで来たらあともう少しだよ……一緒に頑張ろう」
「うん! わざわざジンに頼らなくても、僕達二人でアイツを倒そう!」
フウタ、ミユはともに前を睨む。
〈ふふ、ふ……さすがではないか。フウタもそれにミユちゃんも、そう来なくては〉
再び二機は互いに構える。
急所とは言えシュヴァルツドライに与えた傷は致命傷に届かず、未だに戦闘は十分に可能だ。
〈それでは続きを始めようか。二人とも〉
改めて戦闘を続行するシュヴァルツドライとレギンレイズ。
未だに実力差が大きいフウタだが、その分は……気合で埋めるだけだ。
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先ほどのミサイルを食らったジンのF91。
爆風が晴れるとその姿は、影も形の消えていた。
ミサイルを放ったウィンダムのダイバーはこれに微妙な思いを抱いていた。
相手の姿はない。ミサイルは直撃したのか、だからバラバラになったのかとも考えた。
しかし本当に跡形もなくなくなっていた。破片も残骸も見当たらない……これは。
その時、いきなりウィンダムの右腕が何かによって切断された。
これにはダイバーも驚愕し斬撃の放たれた先を確認した。……そこには。
「……さすがにさっきの事には驚いたぜ。あんなになるなんて思いもしなかったが、おかげでこうして反撃出来たわけだ」
ビームサーベルを手にしたジンのガンダムF91。外装はボロボロだが、それでもミサイルの直撃を食らった割にはダメージが少ない。
……と言うのも。
――運が良かったと言うべきか、まさか足元の氷の下が海水だったなんて――
そう、ミサイルは直撃したのではなくて正確には足元に命中した。
爆破は足場の氷を粉砕し、F91は下の海水に落下したと言うわけだ。
――にしても、ううっ……びしょびしょだぜ。海水が随分と入っちまったからな――
さっきまで海中にいたせいで、コックピットは水浸しで服もまた濡れていた。
だが海に落とされたおかげで海中を移動しウィンダムの背後へと回り、奇襲をかけることが出来た。
おかげで、相手の腕一本を切り落とした。
続けてF91はビームサーベルを二本構え、ウィンダムに襲い掛かる。
対して向こうも片腕で握るビームサーベルで応戦するが、片腕だけでは形勢はジンが有利だ。
勢いに押されるウィンダム。シールドも切り落とされた右腕に装備していた。一本のビームサーベルで防ぎながら攻撃を繰り出し、かなり無理をしていた。
――このまま押し切らせてもらうぜ! ……って、しまった!――
しかし向こうもまた対策は考えていた。
ウィンダムは強くビームサーベルを横一文字に薙ぐと同時に、左に大きく飛び退く。
続けてビームライフルに持ち替えて射撃に切り替える。
――また泥沼戦に持ち込もうって魂胆か――
銃撃戦に持ち込まれたらまた面倒なことになる。
だが応じないわけにはいかない。F91もまたライフルに持ち替えて、それに応じる。
先ほどの、互いに殆ど射撃の当たらない泥沼な射撃戦。
また二機はそんな戦いを繰り広げる。相手の攻撃もだが、ジンの射撃もなかなか当たりもしない。
――やっぱ、こうなってしまったか。……でも!――
視線の先には氷原を駆け回り、ジンの射撃を避けながら反撃するウィンダム。
しかしその瞬間。
――かかったな!――
ウィンダムが氷原にステップを踏み出した時、いきなり足元の氷が砕けて半身が沈み込んだ。
――へへへ……甘いな。こんな事もあろうかと――
実はジン、先ほど海中に沈んでいた時に少しある細工をしていた。
――あそこら辺の氷の足場、軽くバルカンでヒビを入れておいたんだよな。
それこそいくらか力を入れれば割れてしまうようにさ――
あえて俺は足場を脆くして、落とし穴のようにしてやった。そして狙い通りウィンダムは氷の穴にはまって身動きがとれなくなっていた。
――ま……ここまで簡単に引っかかるなんて――
F91はライフルを構え動けなくなったウィンダムに三、四発ビームを放った。
ビームはウィンダムの本体を貫いて、そのまま爆発四散だ。
――あんなに苦戦したのにこれは、随分と呆気のない最後だな。
さて、俺の方は片付いたし――
戦いはまだ終わってはいない。何しろまだ……離れた向こうではフウタとカインが激闘を繰り広げていた。
――ここは相棒として援護に行かないとな。待ってろよ、フウタ!――