【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝 作:双子烏丸
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V2シュヴァルツドライとレギンレイズ・フライヤー。
二機のガンプラによる双剣とパイルによる迫撃戦。ガンプラにダイバー、それに武器まで何もかもカインに分がある。
それでもフウタは気合と想いで、自分の持てる実力を限界以上に引き出していた。
〈はは……これはなかなかに良い戦いだ〉
カインもこれには関心したように言った。
シュヴァルツドライにもあちこちに傷がつき、フウタはちゃんとダメージを与えていた。
「そりゃ、ミユのためなら僕は――気合だけでいくらでも!」
彼のレギンレイズは鋭いパイルの突きを繰り出し、シュヴァルツドライの右角をへし折った。
「惜しいな! あと少しで頭部を破壊出来たのに」
〈残念だったなフウタ。……しかし〉
シュヴァルツドライは双剣の二振りを繰り出す。それを両腕の傷だらけになったガントレットでどうにか受け止める。
〈別に気合だけではないとも。気合いで引き出せる実力もあるからこそ、こうして私と渡り合えている。
だから――自信を持っていい〉
上級ダイバーであるカイン、それとどうにか渡り合っているのは事実だ。
彼もまたここまでの域に到達出来てはいたようだ、……けれど。
〈最も、その実力もかなり気合で上増ししているようだ。――長くはもちはしないとも!〉
瞬間、防いでいたガントレットがついに砕けた。ダメージが蓄積されてついに限界が来たのだ。
「くはっ!」
「フウタ!」
剣に押しのけられて吹き飛ぶレギンレイズ。機体は後方の氷山にぶつかり倒れる。
氷が砕け、倒れたレギンレイズは半分埋まる。
「……ううっ、やられちゃったね」
「これくらい全然平気さ」
フウタはミユにニッと笑って機体を起こそうと。しかしその動きはガタガタでコックピットも揺れる。
「でも、何だか動きが変だよ」
「……」
「結構私たちもダメージ受けたもん。簡単になんて、行かないよね」
装甲も殆ど剥がれ機体の動きにもぎこちなさが表に出ている。
あれから戦いを繰り広げ、一時は攻勢に出れたもののやはり気合いでカバーするにも限界があった。
もはや機体はシュヴァルツドライの斬撃を繰り返し受けてズタボロ。装甲は剥がれ傷まみれで、さらにフレームにまでかなりのダメージが入っている。動くだけでもガタガタで起き上がるのもやっとだ。
「これってまだ戦えるの?」
ミユの問いにフウタは頷く。
「僕のガンプラも結構やられちゃったけど、まだ幾らかは平気さ。
もう少しくらいなら。だからその間にアイツを」
彼のレギンレイズ・フライヤーはその頭部カメラでシュヴァルツドライを睨む。
〈ふふふ、限界が近いようだな。ちなみに私もダメージを受けはしたが、君に比べれば大したことないとも。
あんなにボロボロな相手など私の敵ではない。それに……〉
シュヴァルツドライは剣の先をレギンレイズへと向けた。
〈そもそも量産機で私と戦うなど、無理があったのだよ。せっかくのGBNだ、せめてガンダムであればな!〉
得意げに言い放つカイン。対してフウタも負けずに言い返した。
「余計なお世話! 僕はガンダムよりも量産機の方が好きなのさ!」
最も口先だけで勝てれば苦労はない。
今のカインとフウタの差は歴然。もはやまともに動くのが困難な機体では、対抗することは難しい。
〈……とは言っても、とにかくこれで終わりにしよう!
ミユちゃんとのデートは頂いた!〉
シュヴァルツドライは一気に翼のバーニアを全開にして迫る。
超加速を加えた斬撃の一撃、今のレギンレイズでは当たれば一たまりもない。
――これは避けられるか!? でも避けなきゃ――
あれは防げない。動きが悪くなったレギンレイズは高速で迫る斬撃を避けられるか?
しかしすぐ目の前まで迫り来るシュヴァルツドライの側面に、エネルギーの塊が叩きつけられる。
〈!!〉
不意をつかれ驚くカイン。機体は軽く吹き飛ぶも、さすが上級ダイバーと言うべきかすぐに態勢を戻す。
〈くっ、これはまさか〉
シュヴァルツドライは攻撃の主を確認するように頭部を向ける。するとそこにいたのは。
〈助けに来たぜフウタ!〉
現れたのはジンのガンダムF91だ。
「来てくれたなんて、良かったね!」
ミユはそう言って、フウタも……。
「ああ! ……でもジン、来てくれたのは嬉しいけれど、あのウィンダムはどうしたのさ」
これには得意げなジンの顔。
「そりゃ倒して来たに決まっているだろ! 俺にかかれば、あんな奴なんて軽いさ」
〈ほう! 私のフォースのナンバー2だぞ。それを先に倒して来たとは〉
自分の相棒が倒されたことにカインは何より驚いてしまう。
そしてジンのF91はレギンレイズの隣に並ぶ。
〈俺たち二人、ここからが本番だぜ! なぁフウタ!〉
「……そうだね。僕とミユ、そしてジンの三人なら!」
ここからは二対一の戦いだ。
〈その様子だとあまり動けそうにないな。フウタ、援護に回ってくれ〉
フウタのレギンレイズはライフルへと持ち替える。
「指示されるのは少々癪だけど、ここは従ってあげるよ。何しろ僕は相棒だしね!」
〈サンキュー! んじゃ向こうも剣が二本と言うことだし、こっちも……〉
F91も両手に二本のビームサーベルを握り、刃を放出させる。
〈双剣には双剣でと言うわけか。だが私の剣は一味違うと、とくと見せてやるとも!〉
シュヴァルツドライとF91は互いに双剣とビームサーベルで近接戦闘を繰り広げる。
最初は互角かと思われたが、すぐにシュヴァルツドライが優勢となり押される。
やはり近接戦に特化した機体とバトルスタイル。例え同じくビームサーベル二本で応戦した所で、簡単に敵う相手ではない。
〈やっぱり強いな。さすがフォースのリーダーなだけある、さっきの相手よりも一回り手ごわい〉
〈勿論だとも! 私のパートナーを倒した事は褒めてあげるが、一緒にしてもらっては困る。
この程度の腕ではな!〉
〈くうっ!〉
シュヴァルツドライの高出力なバックパックは、剣劇に勢いをつけ威力を増すことにも使われる。
その強力な一撃、これをビームサーベルで受け止めきれずに態勢を崩す。
〈それなりにはやるみたいだが、これで――〉
瞬間にF91の背後から銃弾が飛来する。
シュヴァルツドライは後ろに下がりせっかくの攻撃の機会を失った。
「残念だけどやらせはしないよ! ほらもう一発!」
援護するのはフウタのレギンレイズ。ジンが直接相手をしている中、その後方からライフルで射撃を繰り出す。
〈これは……やるな〉
ジンが斬撃、フウタは射撃でカインを責める。
加えてさっきまでフウタと戦っていたダメージも。最初は大したことはないと思ったものの、戦闘が継続するたびに負担が生じ出す。
――少しだけだけど、動きがさっきより鈍くなった。これはいけるかも――
今はややフウタ達が優勢だ。このまま押し込めば……二人はそう思ったが。
〈まだやられはしないとも!〉
するとシュヴァルツドライは双剣を合体させ、両刃の剣へとする。そしてまるで旋風のように回転させて振り回す。
〈これは……くうっ!〉
先ほど以上の勢いにおされるジンのF91。
加えて下手に下がったのも不味かった。シュヴァルツドライは振り回す剣で更に迫り、その斬撃を胴体へとまともに受ける。
ガンダムF91はよろめくも、まだどうにか戦える。ビームサーベルを握り直し続けざまに襲来する斬撃を防ぐ。
……が、途端に形勢は逆転された。苦境に立たされ追い詰められるジン。
――これは不味いな。あの状況をどうにかするには――
フウタは考えた。そして考えた末にある事に気が付いた。
両手で旋風のように剣を振り回すシュヴァルツドライ。しかしその腕は。
――シュヴァルツドライのあの右腕は殆ど動いていない。左腕を多く使って剣を振り回している、だとするなら――
幸いカインはジンを倒すことに集中している。今はフウタのマークは手薄だ。
――それに二機とも動き回る中、あの左腕辺りはまだ狙いやすい――
フウタのレギンレイズは手にするライフルを構え狙いを定める。
狙うは武器を振り回すシュヴァルツドライの左腕。あれさえ使い物にならなくすれば、後はジンが倒してくれるはずだ。
しかし……。
――でも腕がガタガタだ、上手く狙いが定まらないな――
さっきまでの援護射撃はあくまで牽制、これを命中させようとするとかなり困難だ。なにしろシュヴァルツドライとF91が近接戦を繰り広げている。かなり狙うのは困難だ。
――あんなに打ち合っている中で腕を狙うなんて、ジンに当たったら――
機体を操作する手が緊張で固まる。けど、そんな時。
自分の手にもう一人、優しくそっと手をのせる。
「フウタなら、きっと出来るよ。……大丈夫だから」
いつものミユの優しさ。こうして傍に寄り添ってくれる彼女に、彼はようやく心に決めた。
「うん! 僕はミユと一緒なら――」
――ミユがいてくれるなら、僕は何だって――
再び集中するフウタ。
シュヴァルツドライの左腕をよく狙いライフルの引き金を、ついに引いた。
ライフルの銃弾は真っすぐに。それは剣を振り回しF91を追い詰めるシュヴァルツドライの左腕へと。
〈……何だと!?〉
銃弾は左腕に直撃し、動作が止まる。剣の猛攻もぴたりと止み、その機会をジンは逃しはしない。
〈さすがフウタ! これで決めさせてもらうぜ!〉
ジンのガンダムF91はビームサーベルをシュヴァルツドライめがけ……最後の一撃を放つ。
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それから、次の日。
「あはは、僕達もやれば出来るものだね」
「そうだなフウタ! あの一撃のおかげで、俺はカインを倒すことが出来た。二人なら何だってな」
「かもだけど、何よりミユが一緒にいてくれたから僕は……。ちゃんと勝てて、ミユが取られなくて良かったよ」
「ふふっ、私のために頑張ってくれて嬉しかったよ。今回も恰好良かったんだから」
「フウタもミユも、本当に変わらずなんだな。
いや、前よりいくらかラブラブ味が増した気もするな」
「そうかな? あはは、言ってくれると嬉しいな。
……それに」
フウタは改めて辺りを見回す。
そこは広くて立派なブリッジの中、たった三人では広すぎるくらいだ。
「って言うか、こんな大きい船を動かすなんて大変だぜ。フウタ、少しくらい代わってくれよ」
「こうして巨大戦艦を動かしたいって前言ってたじゃないか。それに、何だか面倒くさいし」
彼の本音にジンは苦笑い。
「はぁ、せっかくカインから貰ったってのに、これじゃあな。
いっそ売ってしまった方がいいんじゃないか?」
カインとの戦いに勝利し、三人は約束通りこの巨大戦艦ドミニオンを受け取った。
こんなに大きくて立派な戦艦、貰うのは気が引けたがそれでも約束は約束だ。……向こうも勝ったらミユとデートする条件で勝負した。つまりお互い様、報酬は喜んで受け取るのが礼儀と言うものだ。
「えー、そんなの勿体ないよ! こんな凄いのが貰えるなんて普通ないさ。
それに何だか縁起良くない? だって、ついにマリアさんとハクノさんとの決着は三日後、あと少しじゃないか」
「……ああ、確かにそうだな」
これにジンは改めて思い直すような表情で、返事を返す
……そう、ついにあの兄弟との決戦、タッグバトル大会がもう僅かに迫っていた。
「泣いても笑ってもついに決着か」
「だね。ちょっと不安だけど確かに強くなったし、今回だって上級ダイバーとのタッグバトルで勝てたじゃないか」
二人ともあれから強くなったこと、これならもしかするとマリア達に勝てるかもしれない。
「ここまで来たんだ。絶対に勝ちたい、勝って俺はマリアと付き合いたい」
改めてジンは自分の決意を話す。そしてまたフウタも。
「僕ももちろん勝つよ。ミユに自分の想いを……示すために」
彼はそう言ってミユを見た。ミユもフウタに優しく微笑む。
互いに戦いへの決意を固めたフウタとジン。もうすぐ……これまでの努力の成果が明らかになる。
「ふっ、お互いに気合いを入れないとな」
「もちろんさ! ……だけど今は」
そう言うとフウタはミユと手を繋ぐ。
「ねぇ! せっかくだから二人で船の中を見て回ろうよ。どんな風なのかまだ見てないし、どう?」
彼女は満面の笑顔を向けてこたえる。
「そうだねフウタ。私とフウタ、また一緒に思い出を作ろう!
――ジンさん、ごめんなさい。と言うことだから船の操縦をよろしくね」
「おい、ちょっと待ってくれよ……」
「戻るのは結構遅くなるかも! バイバイ、ジン!」
フウタとミユ、二人は明るい笑顔を見せてジン
を置いて出かけていった。
そして一人残されたジン。彼はそれに少し唖然とするものの、フッと微笑んだ。
――ああ言うのもまた悪くはないよな。なぁ、フウタ――