【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝 作:双子烏丸
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フウタが幼馴染の家にいる頃、ジンはまだGBNに留まっていた。
今は簡単なミッションを受け、機動新世紀ガンダムXの量産機、ジェニス、ドートレスとの戦闘を繰り広げていた。
本編の第二話、主役機であるガンダムエックスを狙いに、ならず者――ヴァルチャーが襲撃に現れた展開を再現したミッションと言うこともあり、両機ともカラーリングも、カスタマイズもそれぞれ大きく異なる。
ジンのF91はその機敏な動きで、キャノン、マシンガンなどの相手による飛び道具の攻撃を避けつつ、ビームライフルで次々仕留める。
――対して強いわけじゃないが、やはり、数が多い――
内容は初心者向けミッションに近い難易度だけあり、一体一体の実力は大したことはないものの、敵の数はかなり多い。
――けどその分、腕を磨くには丁度良い。俺は、もっと強くならないと――
ミッションでの戦いを、一人繰り広げるジン。
そしてそんな中……彼もフウタ同様、さっきの事を思い出していた。
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一、二時間前。
フウタとジンは腕試しの場として、GBN世界に位置する、湖へと来ていた。
その湖の周囲は、広い平野がある。そこはまさしく、戦うには最適ともいえる場所だ。
二機のMSは、湖を挟んで向かい合う。
その大きさも決して小規模ではなく、離れた距離に位置する機体は、それなりには確認できるものの、互いの姿は小さく見えた。
ジンが乗るコックピットの中、モニターに映るフウタは、こう話しかける。
〈さて、それじゃお手合わせ……と、その前に。ジンさんのその武器、対策は用意していたみたいだね〉
ジンが乗るガンダムF91は、オリジナルには存在しない装備である、長い実体の槍を手に持っていた。
ちなみに本来の装備としては、ビームサーベルにビームライフル、そしてビームの収束率、射出速度の調整が可能かつ、高速で貫通力の高いビームを発射する可変速ビームライフル――ヴェスバーを背部に搭載していた。
だが……。
いくらアマチュアなジンでも、ある程度の知識は持ち合わせていた。
「これでも、それなりにGBNはしているからな。鉄血系の機体にはナノラミネートアーマーがあることや、ビーム兵器だと相性が悪いことぐらいは、俺だって!」
対して、フウタが使うレギンレイズは、鉄血のオルフェンズの世界観の機体であることもあり、搭載されたエイハブ・リアクターの発するエイハブ・ウェーブに反応して実弾、ビーム兵器に対して高い防御力を発揮するナノラミネートアーマーが存在していた。
頭部のバルカン以外はビーム兵器と言ってもいいF91にとっては、まさに手ごわい相手である。
ジンはそれに備え、本来ない近接装備を用意し、戦いに挑んだ、と言うわけだ。
フウタのレギンレイズは、自らの近接装備である一本の、パイル型の武器を構え、身構える。
〈相手にとって、不足なしって事かな。
まぁ僕も、腕はそこそこだし自信はないけど、始めようか〉
そして向こうのジンも、戦闘態勢に入る。
「そうだな、じゃあ手合わせ願おう。
正直、大人げないと思うが……先手必勝!」
彼は機体を一気にフルスロットル、高速でレギンレイズに突撃する。
元々F91は機動性、加速性の高い機体。手にした槍に、その速度で威力を乗算――決まれば相手を貫くことも、容易なはずだ。
〈それくらいなら!〉
対して、レギンレイズは上に跳躍して避ける。
F91の槍の突撃を避けられ、とっさに相手の方へと薙ぐ行動を取るものの、向こうはその範囲よりも、高く跳躍して当たらない。
と、今度はフウタのターン。
レギンレイズが自身の背後に手を伸ばし、腰背部にマウントされているライフルを抜いた。そして真下に位置するF91へと乱れ撃つ。
だが、その腕前はそこまで良くはない。
狙う余裕があるならともかく、とっさの反撃による乱れ撃ち、フウタ程度の腕では大して当てられるわけがなかった
つまりジッとしていれば、おそらく当たらない、はずだ。
しかし……
――うわっ!――
突然の反撃にジンは慌て、とっさに左にスラスターを思いっきり噴かして避けてしまった。
そのせいで本来当たらないはずの弾が左肩に当たり、損傷を受ける。
――ううっ、これは下手な手を打ったか――
ガンプラバトルがそれなりに上手い人間なら、F91に装備されたビームシールドで銃弾を防ぎながら敵機に向かって行き、そして攻撃を繰り出すなど、良い手があったはずだ。
それに引き換え……ジンの取った手は、完全に悪手である。
スラスターの出力をつい出しすぎたこと、また攻撃を受けたことにより、F91は避けた直後に態勢が大きく崩れた。
フウタはこれを逃さない。レギンレイズは急降下し、ジンのガンダムF91めがけてパイルを構える。が、その判断と、動作に移るまでの速度も、若干遅い。
それがジンにとって幸いし、何とかギリギリ態勢を整える猶予が出来た。
飛来する機体――そして、振り下ろされるパイル。
態勢を戻したF91は槍を両手で握り、その長い柄で攻撃を防ぐ。
両者はしばらくの間、拮抗してつばぜり合いとなる。
「……腕としては、互いに同じくらいって、感じか」
ジンの言葉に、モニター上のフウタは、苦笑いする。
〈むしろ、どっちもどっちって所だね。互いにアマチュア同士って事だし、グダグダな戦いさ。
これじゃ、やっぱり上位プレイヤー相手に戦うのは、程遠い〉
「それは、悔しいけど同感だ」
〈あの二人に勝つには、かなり腕をあげないといけない、か〉
溜息交じりでこう話すフウタ。
だが……彼はさらに、こんな事を続ける。
〈――だけど、ジンさんには悪いけど、僕の方が少し上手かも!〉
……だが、F91が両手とも塞がっているのに対し、レギンレイズがいま使っているのは、パイルを握る片腕のみ。 もう片方に握られた武器は……先ほどのライフルである、
〈もらった!〉
フウタはそのライフルで、相手の胸部を撃ち抜こうとする。
レギンレイズはライフルを向け、引き金を……。
――いや、それよりも僅かに早く、火を噴いたのはF91のヘッドバルカン。
何十発ものバルカンの銃弾が、レギンレイズの頭部へと叩きつけられ、激しいショックと映像の乱れに、パイロットのフウタは怯む。
ジンにとっては、運よく反射的に、とった行動だった。
向こうが怯んでいる隙に、僅かに二機との距離を取る。
攻撃のせいで未だ視界が回復しない、フウタのレギンレイズ。
機体は腕に握る近接武器を、盲目的に振り回していた。この状態では迂闊に接近も出来ず、鎗の攻撃も阻まれるかもしれない。
――なら、これはどうだ!――
ジンはF91背部のヴェスバーを展開し、高収束、高射出のエネルギービームを放つ。
ナノラミネートアーマーはビーム兵器に、高い防御力を誇る。だが、模型の作りこみにより性能が左右されるGBNでは、絶対とは言い切れない。そして貫通性のある高威力のビーム兵器を、至近距離で受けたとしたなら――
ガンダムF91による、会心の一撃。
それを受けた相手の機体は吹き飛ばされ、平野の外縁の、森へと突っ込んだ。
森の木々をへし折り、倒れるレギンレイズ。
……だが、すぐに金属の身体を起こし、機体は立ち上がる。
視界はもう回復したらしく、装甲が砕け、複眼タイプの内蔵センサーが剥き出しになった頭部を、F91へと向ける。
それにビームを受けた胴体も、致命傷にはなっていないものの、装甲は幾らか剥げてボロボロとなっていた。
これなら、再度攻撃を命中させれば――。
再度ヴェスバーにより、一撃を加えようとジンは試みる。
……が、レギンレイズはブースターで一気に加速し、発射寸前のF91に体当たりを食らわせた。
体格差のある分、機体は激しく衝突したショックで、態勢を崩す。
そして態勢が崩れたF91に、パイルを握り、先ほど損傷した左肩へと突き刺し抉った。
このダメージで、左腕はだらりと下がり、動かなくなった。
もっとも、槍を握っているのは右腕。
F91は槍を薙ぎ、レギンレイズを引き離そうと試みる。
後方に反撃を回避するフウタ、しかし再びパイルで打ちかかる。
対してジンは片腕の槍で応戦。二機は激しく近接戦闘を、繰り広げる。
「こんな時に言うのも何だが、全力を出して戦うのは……気持ちいいな!」
〈ああ! いつもはちょっと軽く遊んでいるくらいだけど、たまには本気でやるのも悪くないさ!〉
互いの武器がぶつかり合う音が、周囲に響く。
確かにジン、そしてフウタは、GBNでは全然のアマチュアだ。
その戦いも、上級、または中級ダイバーの目で見れば、かなり下手な所が目立つもの。……それでも、二人にとってはなかなかない、対等で、本気の戦いだった。
機体はボロボロ、だが今まさにこの瞬間、その戦いを心から楽しんでいた。
両者の近接戦闘、それはしばし、譲らない互角の戦いを見せた。……だが。
レギンレイズの腕は、突然関節がおかしくなり、動かなくなった。さっきのヴェスバーのダメージは、胴体だけでなく腕部にも響いていたのだ。
そのチャンスを、逃さないジン。
何度目かの、槍による攻撃。それで相手のパイルを持つ腕ごと、切断して弾き飛ばす。
〈やるね! でもまだまだ!〉
そう、まだライフルがレギンレイズに残っている。
機体はライフルの銃口を、F91のコックピットがある胸部へ向ける。
そしてF91もまた、ヴェスバーを展開し、レギンレイズの胸を狙った。
フウタ、ジンとも、そのタイミングは全く同じ。両者は動けず、その場で固まる。
「これは、引き分け――って事か」
〈……そうだね。やっぱり、どっちも実力は、同じみたいだし〉
ジン、フウタはそう言い、構えた武器を下した。
元々は互いの実力を知るための、戦いだった。だからこれ以上戦う必要も、もはやないのだ。
〈あーあ、戦うからには勝ちたかったけど、仕方ない〉
引き分けと言う結果に、ほんの少しフウタは残念そうだった。
〈でもまぁ、楽しめたから、良いか〉
……それでも、やっぱり満足そうに、彼は笑った。
対して、ジンも。
「まぁな。だけどこれで、俺たちは良い相棒に、なれそうな気もしたぜ」
〈相棒……ね。乗りかかった船だし、悪くないかも。それに、少しは強くなりたいっていうのも、思ったし〉
「たしかに、俺だってまだまだだし、これから伸ばして行きたいさ」
こうして戦ってみて、改めて自分の力も分かった。
そして互いの事も、知ることが出来た二人は、握手を交わそうと手を伸ばす。