【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝 作:双子烏丸
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カインの言った、コアガンダムと言うフレーズ。
それはミユにとっては全く聞き覚えのないものだった。
「あの、コアガンダムと言うのは何なのかな。私も、多分フウタだって聞いたこともないもん」
自分だって、それにフウタからもそんな名前だって聞いた覚えがなかった。
不思議そうにするミユ。カインは頷いて言葉を開く。
「ふむふむ、ミユちゃんも知らないか。それにみんなも。
なら教えてあげよう。……最も私も、詳しく知っている訳ではないのだけれど」
少し控えめな前置き、それから彼は続けた。
「コアガンダムと言うのは――元アヴァロンに所属していた若いダイバーが使っていたガンプラさ。
……二年前、ほら二度の有志連合が結成される程の大事件が起こったあの時だよ」
「確か、違法プログラムだとか、電子生命体だとかの大騒ぎとか……だったかな。……その頃はまだ私たちはGBNをプレイしていなかったからよく分からないけど」
「私とレーミちゃんも同じかな。当時からのプレイヤーって訳じゃないしね。ミユちゃんと同じだよ」
マノモもそう言い、レーミも頷いている。カインは成程と言うように……。
「ふむ、あまり知らないかもしれないけれど、当時GBNではかなりの大騒ぎだったのだよ。
……まぁそれはさておき、コアガンダムもその時期に現れたガンプラさ。サイズもあの二機と同じくらい、最も頭部はちゃんとガンダムであるのだが。
ああも小型のガンプラはないけれど、強いて言うなら原型は、初代機動戦士ガンダムの『RX-78 ガンダム』だろうかな。
まぁ、小型な所以外は似ているからね――コアガンダム形態でなら」
「……? それって一体?」
思わせぶりなカインに、気になる感じのミユ。
「ふふっ、あの二機は違うらしいけれど、オリジナルのコアガンダムには特別な機構が搭載されているんだよ。
確か名前は――『プラネッツシステム』と言ったか。戦局に応じて様々に姿を変えるのさ。
汎用性の高いものや、ミサイルや重火器を全身に装備したもの、それに巨大な実体剣を装備した近接戦用の姿もあったか。
アヴァロンにコアガンダムに乗るダイバーが所属していた当時、私はまだGBNで駆け出しだったけれど、その活躍は……凄かったとも」
そうカインが憧れを見せる様子、きっと相当に凄いんだろうとミユは思った。
「へぇ……カインさんが言うんだから、本当に凄いんだろうな」
「ああ! まさにそうだとも!
最も、今はアヴァロンを抜けて一人であちこちのエリアを彷徨っているとの噂だが、どうだろうか。
まぁ過去の活躍を知りたいなら、後でGTubeで動画を探せば出て来るはずだとも」
――気になっちゃうね。大会が終わったらフウタと一緒にその動画、見てみようかな――
少しだけ気が早いかもしれないけれど、ついそんな予定を作ったミユ。
そしてそんなコアガンダムを元にして作られたガンプラを相手にするフウタ達。こっちもどうなるかと気になる、彼女であった。
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先ほどから小さい身体で高速で飛び回るコアアトリと、コアスカイラーク。
最も、パイロットが違うだけで外見上は違いがなく分かりはしないけれど……それでも息の合った連帯で回避、攻撃を仕掛ける。
「ていっ!」
フウタのレギンレイズはフィオの乗るコアアトリに迫り、パイルを振るうが。
〈残念、外れだよ!〉
フィオは悪戯めいた笑みでフウタに言う。
さっきからこんな調子が続き、イライラしていたフウタ。悔し紛れにこんなぼやきをする。
「全く、ハエ叩きじゃあるまいしさ」
〈それは僕達に失礼じゃないかな、フウタさん!〉
間髪入れずにティオのコアスカイラークがライフルによるビーム射撃を放つ。
〈――かはっ!〉
ここまでの戦闘によりレギンレイズのナノラミネートアーマーはそれなりに剥がれていた。
射撃の一撃で機体の右太ももの装甲が粉砕され、フレームにもダメージが入る。
――よくも、やるね――
フウタの援護に現れたジンのガンダムF91は二門のヴェスバーを展開、そしてライフルも構えてコアスカイラークに撃ち放つ。
けれどスカイラーク、それに続いてアトリは射撃をかいくぐってF91に高速で接近。
〈〈これでどう!〉〉
二機はF91の手前寸前で左右に分断、それぞれの方向から同時にビームサーベルを薙ぐ。
〈……させるか!〉
タイミングを合わせ、ガンダムF91はビームサーベルを二本両手で振り上げて防ぐ。
〈どうにか動きには……ついて行けるようになったぜ。そのよく分からない、チビッこいガンプラの素早さにな〉
〈チビッこいガンプラだって? もしかして――〉
〈――コアガンダムを知らないんだ〉
「コアガンダム、だって?」
初めて聞くフレーズ、フウタは何の事か気になった。
けれどそんな事よりも、コアアトリ、コアスカイラークは今度は二手に分かれ、それぞれジンとフウタの相手へと回る。
フウタはコアスカイラークに乗るティオに対して言う。
「何だよ、コアガンダムってさ!」
同時にライフルで、今度はしっかり狙い撃ってみるも……外れる。
〈なーんだ、お兄さん達は知らないんだね〉
「知らなくて悪いかよ!」
再び狙い撃つも、今度は惜しい所で外れた。
〈ヒロトと言う上級ダイバーが使っているって話の、コアガンダム。機体は小さいけれど『プラネッツシステム』って色んなアーマーに換装して戦うシステムを持つ、凄い機体なんだよね!〉
今度はコアスカイラーク、レギンレイズの周囲を飛翔し回りながらビームライフルを放ち、追い込む。
〈だから、それを元にして自分のコアガンダムを……言うなれば『マイコアガンダム』を作るのが周りではブームなんだよね!〉
「はは、そう言う……事」
人のオリジナルガンプラを参考にした機体。道理でフウタも見覚えがなかったはずだ。
――最もそんなのがブームなんて、知らなかったけどさ。プチブームって奴かな――
けれどそう悠長に考えてもいられない。
コアスカイラークはビームを放ちながら回る輪を徐々に縮め、追い込んで行く。
「……っ」
攻撃は避けるけれど、それでも半分近くは被弾し傷だらけになる。
〈僕達のコアアトリとコアスカイラークは、プラネッツシステムは未搭載だけど、あの小柄な所が気に入ったんだ!
だって身体が小さい分素早いし、それに被弾する的だって少ないしね。だからこそ、フウタさん達は苦戦しているんでしょ!〉
確かにこのままでは……フウタは危ない。
〈随分ボロボロだね。そろそろ、決めさせてもらうよ!〉
もう自分の勝ちだと、そう言うような態度のティオ。
そして周囲を旋回する中から、コアスカイラークはビームサーベルを抜いて、トドメを刺そうと迫った。
フウタは――。
「残念! 見切ったよ!」
〈はっ!?〉
ビームサーベルを振ろうとした瞬間、フウタのレギンレイズはぐっと左手を伸ばし、相手が武器を握る右腕を掴んだ。
〈そんな、しまった!〉
「僕はコアガンダムは知らないし、確かに小さい事には利点があるよね。……けどさ!」
フウタはそう言い放つと、自身のガンプラがもう片手に握るパイルの先を、真っすぐとコアスカイラークの胴体に振り上げる。
「その分、一撃のダメージは大きいだろ!」
パイルはコアスカイラークの胸部を深々と貫いた。
〈やられる時は……結構、あっさりしたもの……だね〉
ティオのその言葉を最後に、機体は胴体から火を噴き爆発四散する。
――と言っても……なかなか強い相手だったけどね――
そうフウタが思った、瞬間。
「――!」
瞬間、右後方から高速で迫る気配を察知した。
ジンのガンダムF91とは違う……これは。
〈よくも、やってくれたねっ!〉
迫ったのは残り一機になった相手、フィオのコアアトリだった。
間近に迫った機体は刹那、握るビームサーベルを真横に薙ぐ。
防ぐ間もなく、サーベルの刃はレギンレイズ・フライヤーの右ウィングを切断する。
――これは不味い!――
機体はバランスを失い、すぐ下の地面に落下する。
そして……横を見るとそこには、ジンのガンダムF91が、胸部に大穴を開けて倒れていた。
「……っ、ジン!」
相棒の無残な姿に、フウタは目を見開いて叫んだ。仮想世界だからこうなっても無事である事は分かっていても、こうして相棒が倒されたのはやはりショックもある。
〈くくっ、ジンさんなら僕が倒してやったさ。割と倒すのに骨は折ったけど、これで一対一、おあいこさ〉
対してコアアトリ、フィオの乗る機体は上空から見下ろしてビームライフルの銃口を向ける。
〈ティオの仇、討たせてもらうよ!〉
そう言うやいなや、地上にいるレギンレイズに対し、上から射撃を放っていく。
上空から雨のように放たれるビームの雨、翼を切り落とされて逃げるしかない。ただ、逃げながらライフルで反撃してはみる。けれどなかなかに当たりはしない。
〈ハハハ! そんなもの当たりはしないって! このまま――〉
「せいっ!!」
とっさに、フウタはライフルを撃つのではなく――思いっきりぶん投げた!
よく考えたわけではなかった。けれどこのままでは埒が明かないと考えた彼の、反射的な行動だった。
〈そんな――馬鹿な!〉
けれどその行動は……正しかった。
フウタのあまりにもとっさ過ぎる反撃。まさかライフルを投げて来るだなんて――フィオには考えられず、避ける事さえ遅れてしまった。
それは……まさに致命的だった。
ぶん投げられたライフルはコアアトリに迫り、コックピットを潰した。そして機体は墜落して倒れ、動かなくなる。
「はは……僕の勝ちだね」
四回戦目は割と自分は頑張ったと、フウタは思った。何しろジンの分まで二機倒しもしたからだ。
――でもこれで、いよいよ次で決着かな。……それと――
ふと、彼はもう一つ、こんな事も思った。
――コアガンダム、か。後でどんな物かくらいは調べようか――