【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝   作:双子烏丸

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二人の大勝利!(Side フウタ&ジン)

 ――――

 

 

 

 いよいよ最後の――決着。

 フウタとジンは勿論、対するマリアとハクノもまだ負ける気はない。

 

〈あはは、これは随分とやられてしまったわね〉

 

〈全くだぜ。まさかここまで追い詰められるなんてな!〉

 

 けれど、そう言いながらハクノのアヘッドは右腕の蛇腹剣、剣の刃先を向ける。

 

〈けどまだ負けてないぜ! 最後に勝つのは……俺たちだぜ!〉

 

 マリアのバエルクリムゾンもまた、片手に握る大型ライフルを構えた。

 

〈そりゃあ負けるのもシャクだしね。バトルをするからには、勝ちに行かないと!〉

 

 

 

 そんなハクノとマリアを前に――

 

「いや、俺たちが勝つ!!」

 

 ジンはビームサーベルを抜くと、先陣を切って突撃しようと。

 

「フウタ、また援護を――」 

 

〈いや……それよりもさ、ジンに援護を任せるよ!〉

 

 フウタが言うやいなや、彼のレギンレイズが先に前に出てガンダムバエル・クリムゾンとアヘッド・ブロッケンに迫る。

 

〈だってジンのF91の方が火力はあるだろ! 狙いは勿論――〉

 

「――ああ! 分かっているぜ」

 

 フウタの言おうとしている事はジンにも察しがついた。

 瞬時にF91はヴェスバーとそしてビームライフルを構える。

 

 ――うっ――

 

 先ほど胸部に斬撃を受けた傷から、いくらかのスパークが飛ぶ。それにエネルギーも溜まりにくい。

 

 ――やっぱりダメージが辛いな。……けど! ここが正念場だぜ!

 それにフウタにも任されたんだ。俺は年上として、ちゃんと恰好良い所を見せないといけないだろ!――

 

 今出来る最大の攻撃で。

 ジンのガンダムF91はヴェスバーとビームライフルにエネルギーを充填し、そして一斉に放った!

 

 

 

 

 ――――

 

 F91の一斉射撃、それはハクノのアヘッド・ブロッケンへと放たれた。

 

〈小賢しい真似をしやがるぜ!〉

 

 アヘッドは跳躍して避ける。……けれどヴェスバーの一撃が右脚部を抉り傷を付ける。

 

〈……反応が遅れちまった。思ったより機体にダメージが重なって、ボロボロなせいか〉

 

「おっと! 僕だって忘れないでよね」

 

 

 

 そして――フウタも。

 彼のガンプラ、レギンレイズ・フライヤーは近接武器であるパイルを握りアヘッドに迫る。

 

〈やるじゃないかよ! けれど、俺の剣の一振りで……〉

 

「距離が近すぎると使いにくいだろ、それ!」

 

 最初、ジンの攻撃に気をとられたせいで流石のハクノでも反応が遅れた。

 

〈不味いっ!〉

 

「少しはハクノさんの実力に、近づいたんだよ!」

 

 フウタのレギンレイズはパイルの一撃を真っすぐに繰り出した。

 一撃はアヘッドの胸部に、突き刺さった!

 

「やった!」

 

 これは倒したんじゃないか。そう、フウタは思ったが。

 

〈残念……だな〉

 

 胸に突き刺さったパイルを、アヘッドはボロボロの左腕で掴む。

 

「まだ動けるのかよ!」

 

〈生憎胸部装甲はとりわけ頑丈でな。それに――右を見てみろ!〉

 

「……? 右だって?」

 

〈こっちよ、フウタくん!〉

 

 右を確認するとそこには、ライフルを構えたマリアのバエルクリムゾンの姿が。

 銃口ははっきりとレギンレイズに向けられ、エネルギーの充填は既に終わっていた。

 

 ――しまった! これは避けられるようなものじゃ――

 

 間に合わない。そうフウタが思ったと同時にライフルの引き金が……

 

 

 

〈んな事、させはしないぜ!〉

 

 その時、バエルクリムゾンの銃身に別方向からビームが着弾する。

 

〈――くっ!〉

 

 その衝撃でライフルの向きはそれ、放たれたエネルギーは何と……ハクノのアヘッド・ブロッケンへと。

 

〈おい嘘だろ? ……ぐはっ!〉

 

 相当に、今のは運が良かった。

 完全に直撃とは行かないまでも、その誤射はアヘッドの右肩を大きくえぐり取った。

 

〈ううっ……そんな〉

 

〈ごめんなさい、兄さん。まさかこんな事になるなんて〉

 

 いくら実力のあるハクノとマリアとは言え、これには動揺を隠せないでいた。

 

「ジンのくれた好機、たたみ掛けさせてもらうよ!」

 

 ジンが乗るガンダムF91は、アヘッドブロッケンへと迫る。

 

〈ああ! 手負いのハクノは、今度は俺に任せてくれ。

 彼とは俺自身が決着をつけたいしそれに、マリアのバエルと相性的にはフウタのレギンレイズの方がいい〉

 

「オーケー! ならジンはハクノさんを、僕は――」

 

 

 

 少し離れた位置にいるガンダムバエル・クリムゾンへと、レギンレイズは大出力で迫る。

 パイルを構え、そして一気に突撃をかける。

 

〈うっ、やるじゃあないの〉

 

「そりゃあね、当たり前だよ!」

 

 フウタが駆るレギンレイズによる次々と繰り出される連撃に、ライフルを握る片腕しかないバエルクリムゾンは追い詰められて行く。

 これまでの経験でフウタの戦闘技術も十分に上がって、上級ダイバーであるマリアを追い詰めるまでに至った。

 

「片腕がないんじゃ僕に有利さ。そろそろ勝負、決めてみせるよ!」

 

〈フウタくんも強くなったのね、頑張って偉いわ。

 ……だけどね〉

 

「えっ!?」

 

 瞬間、マリアのバエルクリムゾンは強く左足を蹴り上げ、攻撃を繰り出す。

 

「――ぐはっ!」

 

 蹴りはレギンレイズの胸部に命中し、コックピットも激しく揺れる。

 

〈片腕がなくても足があるのよね! ほらほら行くわよ!〉

 

 続けて回し蹴り、飛び蹴り、蹴り落とし――、息つく間さえない足技の連続に今度はフウタが圧倒的に追い詰められる。

 瞬く間に装甲は傷だらけに、そして最後の強烈な右回し蹴りによってレギンレイズは倒れ、ダウンする。

 

「うう……っ」

 

 ――まさかここまで、強いだなんて――

 

「確かに二人とも強くなったわ。でも、まだまだね」

 

 そう言ってマリアは片手に握る大型ライフルを向ける。最後はこれで止めを……と言うことだろう。

 

「ずいぶん苦戦しちゃったけど、これで終わりだわ」

 

 今度こそ吹き飛ばそうと、ガンダムバエル・クリムゾンはライフルの引き金を再度引いた。

 ……瞬間、今度は。

 

 

 

 大爆発――。引き金を引いた途端、バエルクリムゾンの大型ライフルの銃身が膨らんだかと思うと、手元で思いっきり爆発を起こした。

 

〈そんな! ……まさか!〉

 

 自身のライフルの暴発。この原因は……恐らく。

 

 ――さっきのジンの攻撃が、銃身にダメージを――

 

 ジンのガンダムF91が放ったビームの一撃、それが彼女のライフルにダメージを与え、発射しようとした瞬間にダメージが元になって暴発したわけだ。

 

 ――ジンのお陰でまた助かったし、それにチャンスまで。

 相手も既に深手を負っている。この一撃で――

 

 自身のライフルの暴発を喰らったバエルクリムゾン、その胸に狙いを定め、レギンレイズはパイルを槍投げの如く投擲した。

 

〈――!〉

 

 投げられたパイルの先端はガンダムバエル・クリムゾンの胸に深々と突き刺さる。

 

〈私の運が悪かったと言え、お見事ね〉 

 

 マリアの言葉はこれで最後、それとともに彼女のガンプラであるバエルクリムゾンは倒れ、機能を停止する。

 

 ――本当にチームワーク……だね。僕一人だけじゃ勝てなかった。

 幸運と何より、ジンがいたからこそ――

 

 一人で戦っているわけじゃない。フウタとジン、二人がバディとして組んだから、勝てた。

 

 ――僕達の勝利だね。だからこそ、今度は――

 

 ジンはまだハクノと戦っている。

 残りは彼だけ、けれどその強さは相当でもある。

 

 ――僕が、今度はジンさんの助けにならないとね――

 

 

 

 

 ――――

 

 フウタがマリアを倒すほんの少し前。

 

 

 ジンのガンプラF91は、ハクノが乗る傷と損傷により満身創痍のアヘッド・ブロッケンと激戦を繰り広げていた。

 

「嘘だろっ! あんなにボロボロなのに……うっ」

 

 かなり損傷が酷いはずなのに、それでもものともせずに今唯一の武器である蛇腹剣を振り圧倒する。

 

〈もう一切の手加減は無しだ! ここからは圧倒してぶっ倒してやるぜ!〉

 

 アヘッドの蛇腹剣は一振りごとに、確実にジンを追い込む。

 

 ――やはりやるな――

 

 しかしジンも、ハクノの本気の攻撃をどうにか避け致命傷を避けている。

 

 ――でもやっぱりダメージのせいで、動きは鈍くなっている。でなきゃ今頃は――

 

 何だかんだハクノは慢心して、最初の頃は甘く見て手加減をしていた。だからこそ今、本気で襲って来ているわけだ。

 距離も蛇腹剣の攻撃を最大限に生かせる中距離を維持。離れて射撃する暇も、至近距離に迫って斬撃する事さえも難しい。

 

 ――どうにかしないと。あと少しなんだ、無茶をしてでも――

 

 ジンは覚悟を決め、ビームサーベルを抜いて一気に迫ろうとする。

 

〈無茶はいけないぜ!〉

 

 が、その斬撃をすぐさま退いて避ける。

 

「まだだぜっ!」

 

 瞬間ジンは切り札であるヴェスバーを展開して至近距離で放とうと。

 

〈ヴェスバーに頼るのも甘い!〉

 

 途端にハクノのアヘッドは蛇腹剣を薙ぐ。展開したヴェスバーの銃身を二門とも切断する。

 

 ――俺のヴェスバーが!?――

 

〈だからお前が俺に勝つなんて、百万光年早いってんだよ! ジン!〉

 

「光年は時間じゃなくて……距離の単位だろ」

 

〈おうおう! 細かい事はいいんだぜ。

 とにかくお前の負けは決まりだ、せいぜい覚悟するんだな〉

 

「それは……」

 

 悔しく、認めたくないけれど、この場において優勢なのはハクノの方だ。

 

 ――ああもボロボロでも、太刀打ち出来ない。俺一人じゃ――

 

 

 

〈助太刀に来たよ、ジン!〉

 

 その声とともに、別方向から銃弾が飛来してアヘッドを襲う。

 

「まさかフウタ、来てくれるとはな!」

 

〈勿論だとも。だって僕は、ジンのバディだしね〉

 

 援護に来たのは勿論、フウタのレギンレイズ。

 ジンは喜び、そしてハクノは驚く。

 

〈……嘘だろおい。マリアは一体どうしたって言うんだ〉

 

〈悪いねハクノさん。マリアさんはさっき僕が倒して来た所だよ、ギリギリの戦いだったけれどね〉

 

〈くぅ……っ! あり得ないぜ〉

 

「マジかよフウタ! 凄いな!」

 

 二人の驚きに、フウタは照れた表情をする。

 

〈ふふっ、倒せたのはジンのおかげでもあるんだ。

 ……だから今度は僕たち二人一緒に、最後の決着をつけようか〉

 

 これで二対一。

 次はジンが追い詰められる側に回った。

 

〈これは……まずいな。

 ――だが! 俺にだって意地があるんだよ!〉

 

 

 

 ハクノ、残る全力を振り絞り、一気に間近のガンダムF91を始末しようとする。

 蛇のようにうねり、F91に迫る剣先。

 

〈させないよ!〉

 

 けれどその刃はレギンレイズからの銃撃によって弾かれ、軌跡が逸れる。

 

〈フウタの方も、厄介だな〉

 

「――今なら! 俺も忘れないでくれよな」

 

 続けてジンのF91も、再度ビームサーベルを構え、突撃する。

 先ほど蛇腹剣を弾かれた隙を突かれた攻撃。とっさに回避しようとするも、ビームサーベルの突きをその腹部に、アヘッド・ブロッケンは受けてしまう。

 

〈ぐうっ! だが俺は負けないって言うんだよ!〉

 

 ハクノはF91、レギンレイズの中間に機体を跳躍させる。

 

〈この距離なら二機共々!〉

 

 そう言うやいなや、自身の身体ごと蛇腹剣を大回転。

 恐らくハクノの得意技でもある刃の嵐を巻き起こそうとする。

 

「これはヤバい技だ。けれど……フウタ、分かるな」

 

〈オーケー!〉

 

 二人は示し合わせたように頷く。

 次の瞬間、一気に巻き起こる蛇腹剣の大回転。それに……ジンとフウタのガンプラは瞬時に後方に跳躍、攻撃範囲から離れた。

 

 ――大規模な攻撃だけれど、勝負をつけようと焦ったハクノ、そっちが甘い!――

 

 跳躍した二機は宙から、ライフルを同時に構えて放つ。

 

〈かはぁぁっ!〉

 

 ライフルの射撃は回転中央のアヘッド・ブロッケンへと直撃する。

 

「この技は上からだと、攻撃を当てやすいんだぜ。

 そして、やっと――」

 

 回転が止み、膝をつくアヘッド。

 ジンはビームサーベルを、そしてフウタはガントレットを構えて、そのまま。

 

「――これで決着だ! 俺たちの今までの頑張りの結果、見せてやろうぜ!」

 

 通信モニターで、フウタは頷いて応える。

 

〈もちろん! 最後の勝負、これで終わらせよう!〉

 

 ガンダムF91とレギンレイズ・フライヤーはアヘッドに急接近して……そして。

 

 

 

〈……〉

 

 F91のビームサーベル、レギンレイズのガントレットに突き刺さる、ハクノのアヘッド・ブロッケン。

 最後の最後で抵抗しようとしたのか、蛇腹剣を振ろうとした態勢のまま固まるアヘッド。

 

「……今度こそ」

 

「どうだろ……多分」

 

 アヘッドは微動だにせず、ハクノは……モニターで。

 

〈これで、負けるのか。……悔しいものだぜ〉

 

 そう言い残し、アヘッドの頭部はがくっと下がる。辛うじて光っていた頭部の片目の輝きも消え――停止した。

 

 

 

 

「勝った……のか、俺たちは」

 

 ジンは唖然としたまま呟いた。

 ……と、次の瞬間、観客席から沸き起る大歓声。

 優勝したのはジン、フウタの二人だと。観客はみんなそれを祝福し、祝っている。

 

〈こんなの初めてだよ。凄いし、でも恥ずかしいな〉

 

 でも何だかんだフウタも嬉しそうに顔をほころばせる。

 もちろんジンだって同じ気持ちだ。

 

〈ミユも喜んでくれるかな……ふふっ、何だかいい気分。

 これもジンといたからかな。改めて――有難う〉

 

 フウタのレギンレイズは、そっと拳をジンのF91に差し出す。

 その意味は……もちろん。

 

「こちらこそな。フウタ、お疲れ様だ」

 

 F91もまた拳をレギンレイズへと。

 

 

 そして二人のガンプラは、互いに健闘を祝い合うように…………ゴツンと拳を突き合わせた。

 




 これにて決着。
 ……次回はいよいよエピローグですね。

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