【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝 作:双子烏丸
本編では視点切り替えの多さで三人称でしたが、番外編は一人称視点の物語になります。――それでは!
――幼なじみのいない一日 (Side フウタ)
…………ニャー
……ニャー、ニャー
朝からリビングで一人、僕はテーブルでもたれ掛っていた。
――いや、正確に言えば一人と……二匹なんだけどさ――
そう、リビングの床では二匹、白猫と三毛猫がじゃれあっている。
――ミユのシャルルと、それに僕ん家のミケ子。二匹とも家にいるのは――
同時にため息もこぼれる、だって……。
――今日もミユがいないんだよな。昨日家族ぐるみで県外の離れた父親の実家に行っちゃって、帰って来るのが明日か――
ミユのいない一日、そう考えただけでも気分が落ち込む。
「うー」
思わず僕はテーブルに顔をうつ伏せになって呻く。幸い僕の親も仕事でいない、こんな事をしても別に平気だ。
一家全員家を留守にしているからペットの面倒……と言っても餌だとかそれくらいだけど、僕が見ている感じだ。
テーブルで呟きながら、棒の先にひも付きの人形がついた遊び道具で、猫二匹と遊んでみる。
――そりゃ猫は大好きさ、可愛いし癒されるもん。けど――
やっぱりミユがいない。それだけで胸にぽっかり大穴が空いたみたいな感じがする。
電話でもしようかな……と、勿論考えはしたけれど、向こうで過ごしている彼女の邪魔するみたいで悪いと思って出来ないでいた。
――んでもって、こうしている間に昼だよ。ダラダラ家で猫と過ごすだけでさ――
せっかくの休みなのに、うーん。
残りの時間どう過ごそうか。ミユがいない分、せめて何か……。
――そうだ。こんな時は……あれでもしに行ってみようかな――
ふと頭に浮かんだ思い付き。
時間だってあるし、だから……丁度いいかなって。
――そうと決まったら。僕は席を立つと、空になりかけていた猫のエサ入れにたくさんエサを入れておく。これでしばらく出てても大丈夫なはず。
そして自分の部屋に戻ると出かける準備、身支度をちゃんとして、持っていく物だってささっとね。あっと言う間に準備を済ませて、出かけようと――
「……おっと」
大事な物を忘れていた。
僕はすぐに引き返して、机に飾ってある物を手に取った。
僕のガンプラ、レギンレイズ・フライヤー。青く塗装したレギンレイズの腰背部にAEUイナクトのバーニアとウィングを取り付けたくらいの、簡単な改造と塗装で作ったガンプラだ。
――これがないと始まらないよね――
作ったのは一年くらいも前、でも、使い慣れている僕の愛機なんだ。
もちろん今日も。僕はレギンレイズを入れ物に入れてそのまま、ヒグレ模型へと行くんだ。
もちろん――GBNをプレイするためにね。
―――――
「こんにちはジョウさん! 今日はGBNを遊びに来たよ」
途中コンビニで買ったおにぎりで昼ご飯、食べ終わってそのままジョウさんのヒグレ模型店にやって来たんだ。
ちなみにここ、ヒグレ模型店は土曜日の昼12時から14時の間は昼休憩で店を閉めている。本当ならいけないけど、昔からの馴染みと言う事で大目に見てもらっているんだ。
「おう、フウタ! それくらいなら構わないぜ。……けど、今日はミユちゃんがいないのか。少し珍しいな」
ミユがいない事に、ジョウさんも気づいたみたいだった。これにフウタは苦笑いで。
「親の実家に帰るって事で今日までいないんだ。
はぁ、正直とても寂しいって言うか」
「彼女いない歴イコール年齢の俺からすれば、あんなに良い子がいるだけでも十分、幸せだと思うけどな。それがたった数日いないくらいで」
「幸せだからこそ、いなくなると辛いものさ。
――そう言う事だから頼むよ」
せめて少しでも時間つぶしと言うか、気を紛らわしたいんだ。
ジョウさんは分かった、分かったと言うと。
「だから構わないとも、ゆっくり楽しんで来いよ」
「ありがとジンさん。んじゃ、早速――」
僕はGBNをプレイしに、別室に向かおうとした。……すると彼は。
「おっと――待った。
ならせっかくだから俺も、一緒にやるかな。また店を開く時間には余裕があるし……丁度いい!」
――――
GBNにログインした僕は……さっそく、あるミッションに挑んでいた。
〈さて、と! どれだけ腕が上がったか、見せて貰おうじゃないか!〉
通信モニターには、トレンチコートを纏った、まるで探偵か何かみたいなダイバールックのジョウさんが映る。
対して僕は猫耳と尻尾、パイロットスーツ姿のダイバールックでコックピットに座って自分のガンプラ、レギンレイズフライヤーを動かすんだ。
「モチのロンさ。けど、ジョウさんも協力してよね。何せ――」
画面に映るのは広い市街地のエリア。そして、迫る二機のガンプラ――ガンダムSEEDのダガーLと機動戦士ガンダム 逆襲のシャアのジェガン……両方ともジムっぽいガンプラだ。
〈分かっていると思うが、油断するなよ。このミッションに参加しているダイバーは結構ランクもいるんだ。
だから、きばって行けよな!〉
ジョウさんのガンプラは、Gガンダムの敵量産機のデスアーミー。彼はそう言うと早速、迫って来たジェガンに棍棒を片手に突撃する。
〈勿論援護もだ、なんせこれはタッグでの……勝ち抜きだからな。行けるところまで行こうぜ!〉
僕とジョウさんが受けたミッション、それはタッグで挑む勝ち抜きバトルだ。
同じミッションに参加する多数のダイバーと一組ずつ対戦、勝ち抜いていくことでそれに見合ったポイントと商品が貰えたりするんだ。
「……オーケー!」
ジョウさんに続いて僕も、ジェガンに迫る。
――同時じゃなくて一機が先頭を切ってか。場合によっては有りかもだけど、この状態なら!――
先手を打ったのはジェガンの方。すぐ近くに迫っていたジョウさんのデスアーミーに、ビームサーベルを抜いて横に薙ぐ。
〈させねえよっ!〉
けれどデスアーミーは唯一の武器である棍棒で、攻撃を受け止めた。続けてそのまま下半身ごと回転させて太い脚部で蹴りを放った。
――これはチャンスだね!――
蹴られたジェガンは、そのまま僕の方にまで。
態勢を戻す暇も与えない。僕のレギンレイズはパイルでジェガンの胴体を貫いて撃破した。
〈良い手際だ、やるじゃないか!〉
「あはは、まあね。……でも」
ガンプラバトル、そりゃ面白いさ。けれどやっぱり頭の中にあるのはミユの事。それが離れないでいるんだ。
〈……って、おい!〉
「えっ!?」
僕は完全にボーっとしてた。そう、横からダガーLのライフルで狙われているのさえ気づかずに。
〈全くもう!〉
けれどジョウさんのデスアーミーが棍棒をライフルのように持ち替えてビームで応戦してくれた。
おかげで相手の攻撃は中断された……けど。
〈ったく、何をボーっとしてるんだよ、困ったな〉
「……ごめん、ちょっと考え事って言うかさ。
次はしっかりするから」
そうは言ってもミユがいないと、やっぱ調子が出ないと言うか……。
でも――せっかくバトルするからには、出来るだけやりたいから!
――――
そんな感じで、僕とジョウさんは二人で次々と相手を倒して行った。
幸い僕達でもどうにかなる相手ばかりで、もう四度くらいタッグを倒したくらいだろうか。
「――これで!」
僕は最後の一機――金色に塗装されたZガンダムをライフルで撃ち抜いた。
――あの出来事で、僕も割と腕を上げたしね。一般的なダイバーよりも実力があるはずだよ――
〈順調に進んでいるな、フウタ。これは報酬も期待出来そうだ〉
「だね。ジョウさんとこうしてタッグを組むのも、割と行けるね。
これまではジンとのタッグが多かったけどさ」
〈ははは、俺だってガンプラバトルには自信があるしさ。さて……次の相手も〉
今回も相手を撃退した僕とジョウさんは、次の相手とマッチングするのを待つ。
今度の――相手は。市街地に出現する二機のガンプラ、それは。
〈――ん? まさか、フウタじゃないか〉
〈あらあら! 面白い偶然じゃないの、ねぇジン?〉
現れたのは黒く塗装されたガンダムF91と、それに少し改造が施され、大型ライフルを装備した赤いガンダムバエル。
この機体は――。
「ジン! それにマリアさんも!」
このミッションで二人に会うなんて、驚きだ。ジョウさんも面白いと言うかのような表情で。
〈へぇ、お二人さんともご一緒とはお熱いねぇ。もしかしてデートかい〉
彼の言葉に二人とも顔を赤らめる。
〈あはは、そんな感じだなジョウさん。マリアとの一時をエンジョイしてるってわけさ〉
ジンの言う通り。今やジンとマリアさんは恋人同士、ようはラブラブって訳。……二人がこんな関係になるのに、僕とジンがどんなに頑張ったか。
〈……そう言えば、フウタ〉
「どうしたのさ」
不意にジンに言葉をかけられ、僕は反応する。
〈お前がジョウさんとタッグを組むなんて珍しい。そもそも、ミユはどうしたんだ? 一緒じゃないなんてらしくないぜ〉
「……」
空気を読まないな、ジンは。僕はしぶしぶと答える。
「ミユは今日、親の実家に行って一緒じゃないんだよ。
だからこうしてさGBNで気を紛らわしているんじゃないか」
――ああっ、何だろ。自分で話しているだけでも。
僕はレギンレイズを操作して早速、ライフルを構えて戦闘態勢に入る。
〈おいおい、やる気かいフウタ〉
「自分でもミユがいないの、凄くむしゃくしゃするんだよ。
だから気分晴らしに付き合ってもらうよ、ジン!」
〈あらら、フウタくんは随分張り切っているわね。
だそうよ、ジン〉
〈そうだなマリア。ならここは――俺たち二人の力、見せてやろうじゃないか!〉
こうしてジンとマリア対、僕とジョウさんのタッグバトルが始まった。
〈私はあっちのデスアーミーを相手にするから、フウタくんをよろしくねジン〉
〈了解! ……って、うわっと!〉
僕のレギンレイズ・フライヤーは空中を飛ぶジンのF91にライフルの弾を連射して放つ。
「一気に撃ち落としてやるさっ!」
向こうが反撃する暇だって与えない。
ジョウさんがマリアさんを相手しているんだ。僕はジョウさんを……って言うか!
「大体僕がミユと離れ離れなのに、ジンはマリアとイチャついているのが気に入らないんだ!」
〈はぁ!? んだよそれ! ――くっ〉
レギンレイズの放つ射撃が一撃、本体に直撃して怯んだ。
それを逃さない。僕は機体のバーニアを噴かして跳躍、パイルを構えて直接仕掛ける。
〈全く、ミユがいないからって滅茶苦茶だなおい。……けど近接で仕掛けるなら!〉
ガンダムF91もビームサーベルを抜いて、迫る僕を待ち構える……つもりみたいだけどさ!
「そうワンパターンじゃないさ!」
パイルを振ると見せかけて、僕はその底部に備えたアンカーを射出する。
長いワイヤー付きのアンカー、それはジンのF91を絡めて身動きを封じた。
〈ぐぅっ、ワイヤーで身動きが……取れない〉
「このままぶっ潰す!」
〈ミユがいないからって……気が立ち過ぎ何だっての!〉
パイルを振りかぶる。けれど寸前でワイヤーを振りほどいてヴェスバーを展開した。
「!!」
銃口はこっちに向いている。あと少しだったのに――。攻撃を中断して離れたと同時に、F91の二門のヴェスバーが同時に火を噴いた。
――うわ……っ――
一撃、レギンレイズの右肩関節に直撃して、パイルを握っていた右腕は吹き飛ばされてしまった。
――パイルごと落とされたのは、かなり痛い!――
〈フウタには悪いが、やってくれたお返しはちゃんとしないとだしな!〉
続けてF91はビームライフルを僕に連射する。
――くっ、ジンってこんなに強かったっけ。
最初戦った時なんか全然下手で、そんな戦い方だったのにさ。……最も――
「それは僕も同じか!」
僕はそう言うと、こっちも左手にライフルを握って応戦するんだ。僕とジン、どっちとも射撃での戦闘……実力は互いに拮抗と言った所かな。
射撃戦の中で、僕達はこんな会話をする。
〈やるなフウタ。……そう言えば〉
「どうしたのさ、ジン」
〈俺たちはさ、最初なんか全くのアマチュアで、バトルの実力なんか大した事なかったよな〉
「……まあね」
ジンの言う通り、元々僕達はGBNは軽く遊んでいるくらいのエンジョイ勢に過ぎなかったんだ。
それこそあの世界に熱中したり、世界ランキングとか目指して全力でバトルとガンプラを作り込むわけじゃない。多分、大多数と同じように軽く遊んでいたに過ぎなかったんだ。……だけど。
「ジンと出会って組んでから、僕達はちょっとは頑張ったよね。
腕は全然だけど、一緒に頑張ったおかげで――少しはマシになっただろ!」
ミユのいない事で気が立っていたけど、今は結構楽しんでいるんだ。
ガンプラバトル……やっぱり割と楽しいし。
僕の言葉とともに、レギンレイズが放ったライフルの一撃が、ガンダムF91の握るビームライフルを弾き飛ばした。
――やったね! これで――
「今回のバトルは僕の勝ちだね、ジン!」
これで勝ったと。僕はライフルをF91本体に向けて、引き金を引こうと――
――――
「うーん、残念! フウタくんはジンを追い詰めていたんだけどね……」
ミッションを終えた僕達四人は、ロビーで集まって談笑していた。
「まさか……ジンを倒そうとする前に、マリアに撃ち落とされるなんて」
「まぁまぁ、真っ先に倒された俺も悪い。フウタは本当に良い線行ってたんだぜ」
ジョウさんに励まされるけど、でもやっぱり少しショックなんだな。
あの時――ジンに勝てる所だったけれど、その直前に真横から放たれたマリアのガンダムバエル・クリムゾンの大型ライフルの一撃で撃ち落とされてしまった。
「はぁ、後少しで勝てたのに」
「残念だったなフウタ。……まぁ俺たちもあの後すぐに別のタッグにやられたんだけどな。
俺たちもまだまだって事だぜ」
ジンはそう話して、はははと苦笑いをしていた。
……僕は一人、ため息をついて少し落ち込む。
「何だろ、やっぱ調子が出ないよな。
……僕にはミユがいてくれないと」
「――あっ! ようやく見つけた!」
突然聞こえた声。僕にとって、ずっと馴染みのある声が聞こえたんだ。
僕はその聞こえた方向へと振り向いた。そこには――。
「……ミユ!」
そこにいたのは白い髪と猫耳の女の子。そう、僕の幼なじみで――恋人の、ミユの姿だった。
思わず僕はミユの元に駆け寄る。
「やっぱりGBNに来て良かった、だってミユに会えたしさ。
でも、一体どうして」
「それがね、少し出かけた所にガンダムベースがあったんだ。
だからフウタに会えるかなって……そしたら」
僕も嬉しいけど、ミユも僕と会えて嬉しそうな表情で僕に近づいて、にこっと満面の笑顔を見せてくれた。
「嬉しいよ、フウタに会えて!
……ちょっとしか遊べないけど、良かったら一緒に過ごしたいな。確かぺリシアエリアだっけ、あそこのガンプラ展示も見に行きたいな……なんて」
もちろん、僕の答えは決まっている。
「僕も嬉しいよ! ミユと一緒に――過ごせるなんて」
そう言って僕はジン達三人に振り返ると。
「と言う事だから、いいかな。
みんなでのバトルは楽しかったけど、やっぱり今はミユといたいから」
ジンは仕方ないなと言う感じで、僕に。
「そう言う所、フウタは相変わらずだな。
――もちろんさ。しっかり楽しんで来てくれよな」
マリアさんとジョウさんも大丈夫だと、そんな風に。
「ミユちゃんに会えてよかったな、フウタ」
「可愛い彼女さんですもの、しっかり大切にして来なさいな」
「――ありがとう、みんな。…………それじゃあ」
僕は隣に寄り添うミユと手を繋いで、にこっと微笑みかけた。
「じゃあ行こう、ミユ」
「――うん!」
やっぱり僕には、ミユが一番だから。
だから彼女と一緒の時間が……何よりかけがえのないんだ!