【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝   作:双子烏丸

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今回はフウタの幼なじみであるミユの短編。
 本編前、二人に一体何があったのか……。本編58話の出来事を当時のミユ視点で、ですね。


泡沫の恋(Side ミユ)

 夕暮れ時。

 オレンジ色の空に、それに木の葉だって同じ色に。

 まるで秋一色のこの景色。とても、綺麗だった。

 

 

 小さい公園のブランコで私は一人座っている。

 何だか外は少しだけ肌寒くて、思わず両手に息を吐いて温める。

 冬も近づいているからかな。だんだん寒くような……気がするんだ。

 

 ――これだと冬に入るのも、あっと言う間かな。

 空は綺麗だけれど――

 

 空を見上げて、私は感じた。

 自分がずっと抱いていた夢がくずれて、その欠片が指の隙間から零れ落ちるような、そんな感覚を。

 

 ――フウタのこと、私は分かっていたつもりだったんだけどな――

 

 つ空に向かってつい、一人照れ笑いを向ける私。

 なんだろう。……やっぱり気持ちの整理が難しい。

 

――でも、私がずっと自分の気持ちにはっきりとしなかったのも原因だもん。仕方ないよね――

 

 

 

 ――――

 

 ずっと好きだった私の幼なじみ、フウタ。

 小さい頃から一緒で仲良しで、そして……思いを寄せていた一番大好きな人。

 いつか……幼なじみよりも、ずっと深い関係になりたいって。それをずっと夢見ていたし、願っていた。

 きっと彼も同じ気持ちだって思っていた。だから。

 

 

 私達は今年、一緒の高校に入学した。

 それからお互いに友達も出来て、高校にだって慣れて、半年くらい経って落ち着いた頃。

 

 ――せっかく高校にも入って少し大人になったもの。だから、ずっと想っていた気持ちを――

 

 幼なじみの関係から一歩踏み出す勇気。

 学校の終わった放課後、私は自分の気持ちを告白するために校門前でフウタが出て来るのを待っていた。

 

 

 ……だけどしばらく待っても、姿は見えなかった。

 これ以上待っていることは出来なくて、私はフウタを学校へ探しに行ったんだ。

 校舎の中をあちこち探して、そして校庭も見に行ったとき……校庭の隅にようやくその姿を見つけたの。

 

 

 ――今なら告白できるかも――

 

 私は彼の元に駆け寄ろうとした。……けど。

 

 

 フウタの傍に、別の方向から女の子がやって来た。

 それは彼が高校で出来た友達の一人で、学校で可愛いと評判のクラスメートだった。

 彼女に手を振るフウタ。

 私はその様子を少し離れた所から隠れて見ていた。

 二人は互いに緊張しながら向き合って、そして。

 

 

 その時言った彼の大きな言葉。

 唯一それだけは、こう聞こえたんだ。

 

『好きです! 僕と、付き合ってください!』

 

 

 

 ――――

 

『――』

 

 心の中が絶対零度に冷え切ったかのような感覚を覚えた。そして……私はもうその場にはいられなかった。

 すぐに学校から出て行って、気が付くとここにいたんだ。

 

 ――この公園、小さい頃にフウタと一緒によく遊んだ所だな。

 大きくなってからは行かなくなって……覚えているかな?――

 

 つい私はフウタの事を、えてしまった。

 だけど……

 

 ――やっぱり、少しだけ辛いよ。私、ずっと……フウタの事を思っていたのに――

 

 ぎゅっと拳を握って、目から涙も零れそうになるけど。

 すぐにそんな涙目になっているのをすぐに手で拭いとった。そして一人、笑ってみようとする。

 

 

 ――ううん。好きな人が出来たんだから、幼なじみとして喜ばないと。

 フウタが幸せなら、私は。

 会ったらちゃんと祝福するんだから――

 

 

 

 私がどうにか気持ちを落ち着けたその時、誰かがこの公園に走って来る音がした。

 音は次第にこっちに近づいて、そして――

 

「はぁ、はぁ……。ここにいたんだ、ミユ」 

 

 息を切らしながら走って来たのは同い年の、少し小柄な男の子だった。

 彼が私の……幼なじみ。

 

「……フウタ」

 

「どこにもいなくて心配してたんだ。帰りが遅くなったから、もしかして家に帰っているんじゃないかって思ったけど、いなくて。

 それでもしかするとって思ってここに来たら……やっぱり。

 だってここは、僕たちが小さい頃によく遊んだ場所だから」

 

 と、そう言うと彼は、私の傍へと近づいた。

 

「隣、座っていいかな?」

 

「……うん」

 

 それを聞くと隣のブランコへとフウタは座った。

 

 

 

 好きな人が出来た、彼。――なら私は祝ってあげないと。

 

「ねぇ、フウタ」

 

「ん? どうしたんだ?

 

「……あっ」

 

 でもそこから先がどうしても言えなかった。言葉が喉から、出てこないんだ。

 

 

 ――駄目だよ。やっぱり、胸がとても苦しくて、言えないよ――

 

 私はそれが辛く感じた。

 

 ――私って幼なじみ失格だ。

 フウタの幸せ、ちゃんと祝福しないといけないのに――

 

 それでも……ダメなんだ。どこかで辛いのかな、私は……

 

 

 

 するとフウタはブランコに座りながら、横から私の顔を覗き込んで来たの。

 

「何だか浮かない顔だね。もしかして悲しい事があった? 

 相談だったら聞くよ。だって僕は、ミユの幼なじみだから」

 

「あっ……」

 

 この言葉に思わず私は……。だけど。

 

「ううん。なんでも、ないよ」

 

 とっさに笑ってみせて、私は彼を安心させようとした。

 

 

 

 幼なじみ……そうだよね。

 私と彼はあくまでその関係だもん。これまでだって、それで良かったんだから。

 そう自分に言い聞かせた。

 

「ミユがそう言うなら、分かったよ。けどあまり無理はしないでね」

 

 私はそれに頷いてこたえる。

 

 

「……ところで、さ。

 実は今日、ミユにどうしても伝えたいことがあるんだ。

 もし良ければ聞いてくれないかな」

 

 

 話したいことって、なんだろう?

 でも、彼のお願いだから、もちろん。

 

「うん、いいよ」

 

「ありがとう! なら……」

 

 いつになく真面目な目で、彼は私を見つめる。

 そして――

 

 

「ミユのこと、ずっと前から好きだったんだ! だからこれからは恋人として――付き合って欲しい!」

 

 

 

 ――――

 

「えっ? どう言うこと、フウタ?」

 

 訳が分からなくて、頭の中が一瞬真っ白になった。

 

 ――恋人って、そんな事を私に言うなんて。だってあの時フウタは校庭で別の女の子と――

 

「あは、は。やっぱり緊張するな。

 ミユへの告白……少しでも上手く言えるように、何度も何度も練習だってしたのにさ。

 ……今日の放課後も少し、友達を練習相手にリハーサルもしたんだけど、本番となると難しいよ」

 

 

 

 練習? もしかして校庭でのあの出来事って――。

 

「じゃあ、校庭での告白って……ただの練習だったの?

 私、てっきり……」

 

 フウタはそれにドキッとしたみたい。

 

「もしかして、見ていたの?」

 

 私は頷く。……だけど。

 

「うん。だから、フウタに好きな人が出来たんじゃないかって……うっ……ひっく」

 

 

 とうとう感情が抑えられなくなった。

 声が上ずって声を上げながら私は、ポロポロと涙を流して泣き出してしまう。

 フウタはそんな私を見て慌てていた。

 

「ああっと、ごめん! 泣かせるつもりはなかったんだ!

 僕の一番大好きな人は、昔からずっとミユなんだから!

 だって、いつも一緒にいてくれて……僕を大切にしてくれているのも分かっているから」

 

「ぐすっ……ほ、本当……なの。本当に、私が大好きだって」

 

 私はもう一度確かめるようにそう言うと、彼は、もちろんと笑いかけてくれた。

 

「当然だよ! 優しくて可愛くて、時々お茶目で、僕の事を想ってくれる大切な幼なじみ。

 だから僕だって負けないくらいミユの事を大好きで想ってるって、もっと大切にしたいって。

 ……でも、思わず泣かせてしまうなんて、ごめん」

 

 そしてフウタはこんな事も、そっと私に言ったんだ。

 

 

「幼なじみの関係もそれは素敵だよ。だけど、さ、その関係で終わりたくはなかったんだ。

 いつかミユともっとずっと仲が深められたらって。――夢だったんだ、僕の。

 きっと……ミユだって同じ気持ちだって、思ってもいたから!」

 

 

 

 嬉しかった。とても……嬉しかった!

 やっぱり、私とフウタは――

 

「フウタっ!」

 

「――うわっ!」 

 

 頭で考えるよりずっと早く、私は彼に抱きついていた。

 

「私も夢だったんだよ! ずっとフウタとこうなれたらって!

 フウタと私、やっぱり想いは一緒なんだね、とっても――幸せだよ」

 

 座っているブランコから落ちそうになりながらも、彼はドキッとしている感じだった。

 

「やっぱりミユもそう思っていたんだ!

 ……なら、僕の告白の返事は」

 

 もちろん! 私は、力強く頷いた。

 

「うん、当たり前だよ! これからは幼なじみとしてもだけど、恋人としてもよろしくね、フウタ!」

 

 

 

 

 私の夢……。

 一度はほんの儚い、泡沫のものだって思ってた。

 けどそれは、全く違った。

 私と、幼なじみと一緒に見ていた夢。

 それは決して、泡沫などではなく――

 




 
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