【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝 作:双子烏丸
時系列は本編終了後ですね。タイトル通り、彼はどうやら……
――さて、どうしたものかな――
今日は休日。俺は部屋の床で寝っ転がって、積んであるガンプラの箱を眺めている。
前までは一人身のせいか、それなりに散らかって汚い部屋だけれど、今は割と綺麗にしているんだ。
――何せ、今の俺には……マリアがいるしな。たまに彼女が遊びにも来るから、汚いわけにはいかないだろ。
まぁそれよりも、だ――
再び俺はある考え事に集中する。
――GBNで使うガンプラ、そろそら新しいのを用意したいしな――
そう思って俺はおもむろに、自分がこれまでGBNで使っていたガンダムF91を手に取って眺める。
今まで、俺はこのガンプラを使ってガンプラバトルをして来た。全然のアマチュアだった頃から、そしてフウタと組んであのマリアとジンを倒したのも、このガンプラだ。
けれど――そろそろ新しいガンプラだって使ってみたい。
――でも、何にするか悩むよなぁ――
改めてガンプラの箱を眺めて、考える。……するとふと。
――あっ、これとかいいのかも……しれないな――
その中に丁度目についたガンプラが、一つあった。俺はそれを――。
――作る時間は十分にある。早速これを作って、GBNで実際に使ってみるかな――
そうと決まれば。俺は早速箱に手を伸ばして、ガンプラを作ってみる事にした。
――――
それから俺は、ガンプラを完成させて早速GBNにログインした。……訳ではあるけれど。
――今日は俺一人だけなんだよな――
ロビーでは俺一人。辺りには見知った顔なんてどこにもなかった。
――フウタは誘ったけどリアルでデート中だって話だし、マリアは……仕事が入ったみたいだし――
ついため息をついて、俺は少し考えてみる。
――さてと、これからどうしたものか――
今日は俺一人……だけれど。せっかくガンプラだって新しく作りもした。
――それを使ってみるのが今回のメインだしな。だから、何かミッションでも――
そう考えて俺はロビーの端末で適当なミッションを選ぼうとする。
端末を動かそうと、俺は指を伸ばそうとすると――。
「……悪い、うっかりしてた」
俺と同時にもう一人、別の誰かが端末に触れようとする誰かの指が見えた。
「こっちこそ悪い。同じく使うだなんて、思わなかったからさ」
謝って相手の顔を見ようとすると、その相手は――。
「手前は、ジンかよっ」
「ハクノ……兄さん」
そこにいたのはハクノ、現実通りポニーテールの白髪の、言っちゃ悪いが不良っぽい青年だ。
多分俺と同年代か、もしくは一、二歳程若いのか。けれど……俺に関して相変わらず敵意を向けているのは今も変わらない。
「はっ! お前に兄さんに呼ばれる筋合いなんかない!
大体交際こそ認めたが、今でも妹との関係を許してなんていないんだぜ!」
顔を合わせて俺だと分かった途端にハクノは攻撃的になる。
いくら何でも、そこまで言うことはないのに。
「……悪い」
「ったく、何謝ってるんだよ。イライラするな」
勢いに負けてつい謝った俺に対しても、ハクノの敵意は相変わらずだ。更に彼は、俺に対してこんな事も。
「けれどジン、ここで会えたのは……丁度良かったぜ。
前々からあの時のお返しがしたくて、ウズウズとしていたんだからな」
俺に向けられた視線は鋭く、敵意に満ちている。
――ハクノが妹想いだって言うのは分かる。俺は結果的に妹から奪ったわけだし、敵意を向けるのも分かる。けれど――
「なら、俺に一体どうしろって言うんだ」
ここで引き下がっては男が廃るとも言う。俺はハクノに視線と言葉を返す。
ハクノはにいっと、口角を上げて攻撃的な笑みを浮かべる。
「ジンも今からミッションを受けるんだろ? だったら、丁度いい。
良ければ今から対戦型のミッションで、一対一で戦おうじゃないか」
「決闘、ってわけか。……分かった」
新しく作ったガンプラの初陣が、こんな事になるだなんて思っていなかった。
けれど当然引き下がるつもりもない。俺はハクノの挑戦を、受けて立つ。
「一対一だな。その勝負、また俺が勝たせてもらう!」
「はっ! あの借りはたっぷりと、利子をつけて返してやるぜ!」
――――
舞台は月面上のフィールド。
宇宙空間のように無重力ではないものの、重力が弱い大地の上、ハクノのアヘッド・ブロッケンは立ち構える。
〈ほう? ジン……そのガンプラ、M1アストレイか〉
どうやらハクノは俺が新しく作ったガンプラ、M1アストレイに気が付いたみたいだ。
機動戦士ガンダムSEEDに登場する国家オーブ連合、その量産機がこのアストレイ、ガンダムに近い見た目と、スタイルだって良い。
シールドも装備、武器はビームサーベルとビームライフル、それに両腰に備えた対艦刀が武装……後は頭のバルカンもか。
「そうだ! これが、俺の――新しいガンプラだ!」
本来なら白と赤のツートンカラーだけれど、俺のは赤い部分を黒く塗装したオリジナルカラーなんだぜ。
――前のF91も黒色だったからな。それを引き継いで……なんだけどさ――
今更ながら思った。
目の前のアヘッド・ブロッケンとも、俺のガンプラは色が被っていると。
その事はハクノだって、気付いているらしかった。
〈また色が、俺のアヘッドと被っているじゃないかよ。何だ? 当てつけのつもりかよ〉
「いや、そんなつもりは……たまたま、なんだ」
〈ふん! まあいい! どの道ジン、手前は――〉
ハクノの言葉とともに、アヘッドはバーニアを全開にして俺へと迫る。
〈ここで俺の、剣の錆びにしてやることには変わりねぇんだからよ!〉
最初から全力でぶつかる気満々のハクノ。
――けれど近接戦か! 俺にだって今は、丁度いい武器がある!――
俺のM1アストレイは両腰の対艦刀を引き抜き、両手で構える。
「得物ならこっちにもある! 叩き斬ってやるとも!」
迫るアヘッド、アストレイは対艦刀で受け止める。
相手の右腕の剣を、二本の大振りの実体剣で防ぐ。
〈ほう? 確かにこの機体は近接戦は得意そうだな〉
「おうとも! それに、だ。ガンプラの出来だって若干こっちが良い。だから性能はこのアストレイの方が、上だぜ!」
このGBNで使えるガンプラ、その性能は作中のスペック……ではなくて、ガンプラそのものの出来によって左右される。
合わせ目消しに、墨入れ塗装、などなど……ガンプラの完成度がそのまま、GBNでの性能に結び付く。
〈悔しいがジンの言う通り、この剣は割と重いな。パワーは……確かに上昇しているみたいだな〉
モニターでは若干、苦い表情を浮かべるハクノ。
俺が動かすアストレイは一気に力を込めてアヘッドを押し返すと、低い重力に任せて高く跳躍する。
「ははっ! こりゃいい、絶好調だな!」
上空からビームライフルで狙いをつける。そして下のアヘッド・ブロッケン目掛けてビームを連射する。
〈っつ! 小癪だな!〉
上から降り注ぐビームに、ハクノは機体を巧みに操作して次々と避ける。
「そして、続けてっ!」
一旦ビームに集中させた後、俺は今度はビームサーベルで、引き抜くと同時に迫り斬りかかる。
――やはりパワーも出力も、前より良い。これなら!――
今攻勢に、有利にあるのは俺の方だと。このまま迫るアヘッドのビームサーベルの斬撃を放とうとした時。
〈そりゃあ前より、性能は上がっているとは思うぜ。――けどな!〉
「!!」
激烈に、蛇腹剣を振り回して、自在な剣筋がアストレイに襲い来る。
宙でビームサーベルを振り下ろそうとした瞬間を狙われた。俺のアストレイは成すすべなく曲がりくねる剣の刃にズタズタにされる。
あっと言う間に傷だらけになったM1は、月面に落下して倒れる。
〈全っ然! ジンはそのガンプラを使いこなせていないじゃないか! 少しだけは付き合ってやったけれどよ、さっきから攻撃に無駄と隙が多い!
これなら前のF91で戦った時の方が、まだ手強かったぜ〉
一方で俺の前に、勝ち誇るように仁王立ちするアヘッド・ブロッケン。
「うっ……く」
どうにか立ち上がろうとするけれど、今の攻撃で大分やられた。
満身創痍の身体を起こし、再度向き合おうとするけれど――その瞬間に迫ったアヘッド・ブロッケンが更に連撃を繰り出して来る。
〈おらっ! 借りは返すと言っただろうがよ!〉
繰り出される連撃を俺は受け止める。けれど容赦のないアヘッドの蛇腹剣の攻撃を受け止めるので精いっぱい、対艦刀とシールドを駆使して防ぐけれどそれでも、防御をかいくぐって攻撃が次々にダメージとしてガンプラに入る。
――しまった、F91に比べて機体が大きい分、当たり判定が大きいのか――
「これじゃ、上手く避ける事さえ……っ」
〈だから言っただろ、使いこなせてないって! どうだ? こうして一方的にやられる、無様な様はよっ!〉
「ちっ、ちくしょうめ」
ハクノは余程俺を目の敵にしている。
妹を取られたせいなのは分かるけれど……いくら何でもあんまりじゃないか。
――でも大ピンチなのには変わりしない。せっかくの俺のM1アストレイのデビュー戦が、惨敗だなんて洒落にもならない――
〈良い様だぜジン! そして――このまま、止めを刺してやるぜ!〉
ボロボロで、立っているのもやっとの俺のガンプラ。ふらふらな状態で後退するアストレイに、確実に止めを刺そうとするよう狙いを定めて、そして一気に突撃した!
真っすぐ向ける刃の刃先。
――まずい、やられる! どうにか逃げないと――
そう思い、俺は機体バックパックのバーニアを噴かせて、跳躍して上に逃げようとした。
……その時だった。
「――はうっ!?」
突然ブースターの出力が異常をきたして不安定になる。
――さっきのダメージのせいか!? バックパックまでも――
不調をきたしたらしい。アストレイは一気にぶんっと、空中で後ろにすっころぶ。
手にした対艦刀は上に投げ飛ばした上に後ろへ勢いよく倒れ、その時足が――
〈んだとっ!?〉
転倒した瞬間、上がった足が思いっきりアヘッド・ブロッケンに激突する。
ハクノにとってもあまりにも意外だった事で避ける暇すらなく、まともに蹴りを受けてそのまま転倒した。
〈ぐっ……往生際の悪い。だが、すぐに起き上がって――〉
あくまで蹴り倒されただけ。すぐに起き上がろうとするアヘッド。
けれど、その時アヘッドの上から真っすぐ落ちて来るものがあった。……それは。
「俺のアストレイの――対艦刀か」
〈――うそだろ〉
唖然とする俺たち。
……次の瞬間、さっきアストレイが投げ飛ばした対艦刀が、ものの見事にアヘッドを刺し貫いた。
――――
「ああああっ! クソっ!
まさか! あんなアホみたいな事でこの俺が、ジンなんかにっ!」
バトルが終わった後、ハクノは荒れに荒れていた。
そりゃ偶然足にぶつかって転んで、倒れた後にぶん投げられた刀が突き刺さってやられたなんて負け方をしたらああなるか。更には、大嫌いな俺にやられたんだ。ハクノのイライラは想像に難くない。
「……何だか、その……悪かった」
「うるせぇ! 謝るんじゃない、余計惨めになるだろうが! ……ああ、もう」
少しは落ち着いたのか、ハクノは大きく息を吐くと、顔をそらす。
「――とにかくだ、俺はもうお前なんかの顔を見たくない。
本当なら今すぐリベンジマッチをしたいが、これで失礼するぜ」
「そっか、ハクノ」
確かにそれが、互いにとって一番かもしれない。
「俺もハクノとのリベンジマッチ、楽しみにしている。その時にはちゃんと戦おう。
その時には、俺もアストレイを使いこなせるようになるからさ」
「……ふん」
ハクノは俺をこれ以上見ずに、俺から離れて行こうとする。
……けれど、最後に彼は。
「そう言うなら、一応楽しみにはしておくぜ。
――せいぜい頑張ってみるんだな」
俺はこうしてハクノと別れた。
――はぁ、確かにガンプラの扱いは、まだまだだったな――
さっきのハクノの戦いでの通り、せっかく作った新しいガンプラ、M1アストレイの扱いはまだまだだった。
けれど、それはこれから……慣れていけばいい。
――はは、ガンプラバトルって言うのも、本当に奥が深いものだな――