【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝   作:双子烏丸

85 / 88
三人の挑戦 その4(Side フウタ)

 ――――

 

 エレベーターに乗り、再度要塞の上層へと戻った僕達。ケイさんのおかげで近道を通る事が出来たし、ここからは改めて二人で先を進んでいたんだ

 

「本当、良かった! 話では多分ゴールまで近いわけだし、今の所相手になる敵もいなくて、あれから順調だしさ」

 

〈だな。それに道もとりあえずは、ただ真っ直ぐ行けばいいみたいだな〉

 

 僕達が今歩いているのは要塞内部、高い壁の上に続く階段だった。ガンプラ……モビルスーツでも歩けるくらいに巨大な階段を僕のレギンレイズとガンダムF91は歩いて進む。

 

〈近道を教えてもらって少し反則なきもするがまぁ、そうした運も実力だろ? とにかく話によればこの階段を抜ければゴールはすぐそこだって事だろ〉

 

 ジンに言われて僕は頷く。こうして階段を上って、僕達はもうすぐその先に辿り着く所だった。

 そして、階段の先にあった巨大なハッチ。ここさえ抜ければ――

 

「まーね。案外楽勝かな」

 

〈ハハハっ! 違いない! このまま楽チンに――〉

 

 その……瞬間だった。

 

 

 ――ズドン!!

 

「!!」

 

 突然、すぐ目の前のハッチが大爆発で破壊された。

 

「いきなり何だよ!!」

 

 左右に離れて距離を置く二機。そして破壊されたハッチは一機のガンプラ、紫色でエックス型のバックパックを装備したリーオーの姿が。

 

〈何だよ、アレは!〉

 

「僕に言うなよな!」

 

 いきなり過ぎて戸惑う僕達をよそに、リーオーは専用装備と思われるバインダーガンの片手剣を握り、破壊されたハッチの向こうへと戻る。

 

 ――マジで何あれ?――

 

 気になって破壊されたハッチの脇からこっそり向こう側の様子を見た。そこにはさっきのリーオーとそして、二機のガンプラが戦っているのが。見た感じガンダムDXと、何か魔法少女みたいな姿の人型ガンプラの姿。あれって一体何だろう? とにかく、紫色のリーオーとその二機のガンプラが激闘しているのを見ていた。……すると。

 

〈あっ、フウタ!〉

 

 通信から聞こえた相手――それは僕の彼女、ミユだった。よく見ると三機が戦っている中、端にある別の入り口の物陰に隠れている彼女のガンプラ、白いレギンレイズの姿も見えた。

 

「ミユ! 良かった会えて! 大丈夫だった?」

 

 やっと彼女と再会出来て嬉しかった。ミユも、僕に笑顔で応えてくれる。

 

〈私もだよ、フウタと会えて。……でも大変だったんだから〉

 

〈大変って、まさかこの状況って事? 一体どういう訳なんだいミユちゃん?〉

 

 ジンも気になって状況を尋ねる。ミユは少ししどろもどろな感じで。

 

〈それがね、よく分からないけど――〉

 

 

 

 ミユは簡単にここまでの状況を話す。

 まず、あの紫色のリーオーはミッションでミユのパートナーになったクロ――僕がミッション前に出会った、黒いザフトのパイロットスーツにヘルメットで顔を隠した少女が乗っているガンプラであると言う事。そしてここまで二人でイベントを攻略、僕達よりも先にゴール手前にまでたどり着いたみたいだったけれど、いきなりクロがあの二人、見知らぬダイバー達とガンプラに戦いを挑んだと言う事らしい。

 

〈よく分からないけど、クロさんはあの二人に……ううん、あの魔女っ娘みたいなダイバーに怒っているみたいだったの。だからいきなり襲い掛かって、私はただ……見ているくらいしか出来なくて〉

 

 ミユもどうすればいいか分からない感じで、戸惑っているのが分かる。

 

「大丈夫さミユ。どうしてなのか分からないけど、僕達に任せてよ」

 

〈と言うか、あの戦いを鎮めないと先に進めそうにないからな。よりによって出口前で戦う事は無いだろうに〉

 

 僕達はこっそりと壊れたハッチの向こう側、巨大な広間へと入った。

 広いフィールド一杯で激しい戦闘を繰り広げる三機。あまりに激しいせいでその中をかいくぐり、向こうにある出口に進む事が出来ない感じだ。あの二機はともかく……問題はあのリーオー、クロの方だ。もはやミッション関係なく、ただ相手をぶちのめす事しか考えてないくらいに猛攻を繰り広げている。あの二機はそれから身を守るために戦っているに過ぎない。

 

 ――止めるなら、あっちのクロを止めるべきだろうな。ミユの相方みたいだし話せば――

 

「おい! 聞いているか?」

 

 僕は通信でリーオーに、乗っているクロへと話しかける。通信は一応繋がったみたいだけれど。

 

〈……〉

 

「どうして戦っているか知らないけどさ、無駄な争いは止めてよね。君が一方的に二人を襲っているみたいじゃないか。どんな理由にしても、あまりに乱暴じゃないか?」

 

〈……うるさいわね〉

 

 通信画面で、クロは興味無さげな声でこたえる。

 

〈誰にも関係なんて、ないわ。ワタシは許せないのよ――ELダイバーなんて〉

 

「ELダイバー? 確かそれって……」

 

 話では確か、GBNで生まれた情報生命体だと聞いた事がある。クロはそれが嫌いなのか?

 

「でも、いくら嫌っていてもこんな事、あんまりじゃないか。頼むから落ち着いてくれよ」

 

〈ワタシは至って冷静よ。ただ――〉

 

 クロのリーオーは剣を握り、魔女っ娘型のガンプラに斬りかかる。

 

〈ただ憎くて堪らないだけよ! ELダイバーなんてっ!!〉

 

 魔女っ娘ガンプラは箒のような、メイスのような武器で受け止め防ぐ。

 更に瞬間、リーオーの真横から数発のミサイルを撃ち込まれ、吹き飛ばす。ミサイルを放ったのはあのガンダムDX、改造によって各部にミサイルが増設され、パートナーの魔女っ娘ガンプラを守るように退けたみたいだった。

 吹き飛ばされたリーオー、しかし着地して踏ん張り、片手剣を横をシールド代わりにして衝撃を軽減していた。そしてまた二機に戦いを挑む。

 

 ――あの二機もかなり強い、けどクロも……なかなかだ。ガンプラは二機に劣る急造品みたいだけれど、ダイバーとしての器量は相当だ。

 僕でも立ち回り、戦い方を見れば分かる、多分上級ダイバーくらいの――

 

 でも、とにかくあんな状況。話では止まりそうにない。そう思っていると……ミサイルがこっちにも、僕の方にも飛来した。

 

「うわわわっと!!」

 

 僕は自分のガンプラ、レギンレイズを操作して避けた。

 

〈フウタ! こっちこっち!〉

 

 ミユのレギンレイズは、入口前の物陰からそう言う。見るとジンも一足先にそこに隠れていた。

 とにかく僕も……一旦そこに隠れると。

 

〈ったく! どこの誰だかしらねーけどよ、関係ないなら隠れてなっ!〉 

 

 あの二機の内、ガンダムDXの改造ガンプラから通信が入る。それに魔女っ娘ガンプラの方からも。

 

〈貴方たちは誰なのです? 悪いですけれど今は、私たちは手が離せないの〉

 

 ガンダムDXのパイロットらしい、逆立った茶髪でツナギを着た小学生くらいの男の子と、魔女っ娘ガンプラに乗っているピンク色のフリルとスカートに、胸元にリボンをつけた金髪ツインテールの女の子の姿も画面に映る。

 二人とも僕よりも年下なのに、しっかりしている感じだよな。

 

〈はぁ、いきなりこんな事に巻き込まれるなんてな〉

 

 ジンはこんな状況に困った様子だった。

 

〈うん。私も……突然激しいバトルになっちゃって、これじゃ先に進むどころじゃないよ〉

 

「あの二人と、それにクロだっけ。ミユはクロと二人でミッションを攻略いていたんだよね。

 

〈そうだよ、フウタ。私はクロさんと一緒にここまで来たんだけど、突然クロさんが……二人に攻撃を仕掛けたの。……止めようとしたんだけど、聞く耳を持たなくて〉

 

 この戦い、どうやらクロが一方的に仕掛けた物みたいだ。

 

 ――クロ、だっけ。凄くELダイバーを憎んでいる感じで。さっき僕が話した様子でも、あれは説得なんて出来る感じじゃないし――

 

 彼女一人で暴走した結果がこれだ。言葉だけでは止められそうにない。ジンも僕に対してこう尋ねる。

 

〈だそうだ。……どうする、フウタ〉 

 

「うーん。でも放っておけないし……えっと」

 

 こんな状況は無視できないし、それに、でないと先に進めそうにない。ここは――。

 

「危ないからミユはここで待ってて。ジン、少しだけ手を貸してくれないかな」

 

〈手を貸すだって? ……成程〉

 

 ジンはふっと笑って、応えた。

 

〈分かった、フウタ。じゃあどっちを止める? 二人組の方か、それとも――〉

 

「リーオーの方、クロを止めるよ! あっちを止めないとどうしようもなさそうだから。

 どうにか割って、彼女の機体を行動不能に……撃破したらミユまでリタイヤになっちゃうから」

 

〈あんな戦いに飛び込むなんて、マジかよ。……でもフウタが言うなら。俺も強力するぜ〉

 

 そう言ってくれて、有難い。どうにかしてクロを――止めよう。

 

 

 

 ―――――

 

 ガンダムDXの改造機と、それに魔女っ娘ガンプラ。二機は左右からクロのリーオーに、ビームサーベルとメイスを手に迫る。

 けれどリーオーは先にDXのビームサーベルを弾いて移動、魔女っ娘ガンプラの方に回り込むと片手剣の刃を向けようと。

 

 

「いい加減に、しろよなっ!」

 

 そこに僕のレギンレイズは、リーオーの真横に体当たりを仕掛ける。相手もいきなりで回避出来なかったみたいで、数歩よろめいてひるんでいた。リーオーの前に僕と、それにジンのガンダムF91も立ち塞がる。

 

〈……フウタ、どう言うつもりよ。ジンも〉

 

 通信でクロは、邪魔された事に苛立つような口調で僕達に言った。

 

「何って、クロを止めるためだよ」

 

〈そうだ。こんな無茶苦茶な事、放っておけないだろ!〉

 

 僕とジンはそう言うけれど、クロは機嫌悪そうな含み笑いを返す。

 

〈くくくっ、何も知らないくせに。――邪魔しないで! 関係ないならどいてなさいっ!〉

 

 クロのリーオーは一閃、僕達に向かって横薙ぎを放った。鋭い一撃、僕とジンは距離を離すけれどその隙にクロは僕達を置いて、再びガンダムDXと魔女っ娘ガンプラの方に迫る。

 いや……むしろ魔女っ娘ガンプラの方を執拗に狙っている。さっきも、今も。

 

〈逃がさないわっ、ELダイバー!!〉 

 

 執拗に繰り出す斬撃と、剣先から放つビームで猛攻を仕掛ける。相手はメイスとGNフィールドを駆使して攻撃を防ぐ。それに、すぐさまガンダムDXが魔女っ娘ガンプラを守るように援護。これじゃ完全に泥沼だよ。

 

「あのさ……そこの二人とも」

 

 そんな中で今度はクロと戦っていた二人に通信で話す。

 

〈また一体、何だよっ!?〉

 

〈どうしたいのですー? 貴方たちも〉

 

「見て分からない? 僕達もこんな戦いを……クロさんを止めたいんだよ、彼女のリーオーと二人との……えっと」

 

 そう言えば二人とそのガンプラの名前、何て言うんだろ。僕が言葉に詰まっていると。

 

〈俺はアイアンタイガーってんだ。ガンプラの名はガンダムDXフルバスターって言って、んでもってこっちが俺のダチのトピア、ELダイバーだ。……だから乗っているのも自分の、『モビルドール』ってわけだ〉

 

「ELダイバー、やっぱり」

 

 感じ的にあの魔女っ娘ガンプラ、ううん、モビルドールって言ったっけ。それに乗っているトピアと言う子がELダイバーだと察していた。クロさんもそう言っていた事だし。

 

「じゃあさ、そのトピアちゃんがクロを……何か怒らせるような事したって訳? でなきゃあんな事にならないだろ?」

 

 今こうしている間にもクロの猛攻が続いている。相当頭に来ているのか、かなり執拗に。

 けれど僕がそう聞くと、今度はコテツが顔を真っ赤にして反論する。

 

〈ンな訳ねーだろがっ!! 俺達は何もしてねぇのにアイツがいきなり襲って来たんだ。それも、ずっとトピアばっか狙いやがって。

 ……分かったんならもう良いだろ! 俺はアイツからトピアを守んなきゃなんねーンだ〉

 

〈私は大丈夫ですー。みょんみよんタイガーくん。……でもどうして私に、ELダイバーにああして憎しみを持っているのか、分からないです〉

 

〈だーかーら―! アイアンタイガーだってのっ!〉

 

〈何をゴチャゴチャとっ! とっととやられなさいよ!〉

 

〈〈!!〉〉

 

 クロのリーオーは最大出力を乗せて剣を大きく振り下ろす。アイアンタイガーのDXフルバスター、トピアのモビルドール・トピアはビームサーベルとそしてメイスで、共に受け止める。

 二人は彼女の攻撃を弾いて引き離す。ここで距離が離れた。……今なら、

 

「これ以上は僕達だって!」

 

〈クロ……もうそろそろ、いい加減にするべきだぜ!〉

 

 僕とジンも、クロに向かってライフルでの援護射撃を放つ。

 

〈ぐ……っ〉

 

 僕達程度の腕でも、弾かれて態勢が崩れたばかりの彼女にとっては脅威になる。リーオーは更に後方に退く事に。

 

〈よくやったぜ! 今ならアイツだって〉

 

 今度はアイアンタイガーのDXフルバスターが機体に装備されたミサイルを放つ。けれど、ミサイルは一発もリーオーに命中しない。

 

〈クククっ、残念だったわねぇ〉

 

〈余程周りを見る余裕をなくしたらしいなっ! 俺が狙ったのはっ――〉

 

〈!〉

 

 ミサイルの命中先。それは、リーオーの真上にある天井だ。彼女が反応したと同時に上で爆発、瓦礫がリーオーに降り注ぎ巻き込まれる。

 残った瓦礫の山。クロが乗るリーオーもその中に埋もれたのか。

 

「……やったか」

 

 もしこれでやられていたらミユが困る。でも、せめてしばらく動けないくらいにはと。思ったけれど……。

 

〈っ! こんな物などっ!〉

 

 瓦礫を吹き飛ばし、なおも健在なリーオーが姿を現す。幾らか傷がついて、X型バックパックの一本がへし折れているけれど本体には大きいダメージはない。思っていたより頑丈だったらしい。

 

 

〈なァ、もういいだろ。テメェは強いダイバーだ、認めてやるからよ〉

 

〈そんな物どうだっていいわ。ワタシは――ELダイバーがっ!〉

 

 憎悪に入り混じった言葉。けれどアイアンタイガーは、こんな話を。

 

〈テメェは強い、俺の知っているダイバーにそっくりな戦い方と強さだ。GTubeで見た事あるぜ。まるで、ビルドダイバーズの……ヒロトみてぇだ〉

 

〈!!〉

 

 瞬間、有無を言わさずクロのリーオーは剣の先端からからビームを放った。アイアンタイガーのDXフルバスターに、今の攻撃は明らかに彼に対して敵意を向けた物だった。その射撃を、寸前で回避するDXフルバスター。

 

〈っテメェ! 何すんだよいきなり!!〉

 

〈ヒロト……クガ・ヒロト、よくもワタシにそんな名前を。許せない、憎くて堪らない……あの男の名をっ!〉

 

 ――何だよ、さっきよりも雰囲気が怖くなってるじゃないか。プレッシャーがこっちにもひしひし伝わるくらいに。どんな事があったら、あんなに――

 

 クロが抱く憎悪、アイアンタイガーの言葉の為に更に増したのを感じる。ELダイバーに……それにヒロト。一体クロはどうして、何があったんだ?

 

〈クガ・ヒロトの名を出したのが悪かったわねぇ、そこのELダイバーも……貴方も! 二人ともここで叩き潰してあげるわ!〉

 

 

 

 クロの乗るリーオーは再び攻勢に出る。

 

〈クロ! 何をそんなに――〉

 

〈邪魔だって言っているでしょ!〉

 

 止めようと立ち塞がるジンのF91を、リーオーは剣で吹き飛ばす。そしてアイアンタイガーとトピア両方に敵意を露わにして猛攻を繰り出す……けれど。

 

〈もう止めるです! 戦いなんて!〉

 

 トピアの機体――モビルドールは、左腕に装着したポシェットのようなガントレットを向ける。そして先端のチャック状の開口部を開き、砲身から実弾を放つ。

 

〈ぐうっ〉

 

 一撃が左胴部に命中して、よろめく。

 二対……いや、僕達も含めて四対一の戦い、それにクロ自身の実力は相当でも、肝心の機体がそれに追いつかずに無理が来ていた。

 彼女のリーオーは地を蹴りトピアに迫ろうとする、けれど右脚部の関節も損傷したのかガクッと一瞬ぎこちなくなる。けれど――

 

〈おのれぇ、人形があっ!!〉

 

 それさえ構わずクロは突撃し、猛攻を止めない。さっきよりも数段激しく、攻撃的になっている――半分我も忘れているんじゃないかって思うくらい。けれどその勢いが本来の操縦技術さえかみ合わず、相殺してしまっている。

 

〈貴方も潰してあげるわ、ギャンギャンタイガー!!〉

 

〈アイアンタイガーっつてんだろうが! お前まで間違うのかよ!〉

 

 クロはアイアンタイガーにまで牙を向く。剣をブーメランのように投擲するリーオー、けれど彼のガンダムDXフルバスターはそれを避けると同時に左腕のマシンガンを連射する。

 

〈でも、その怒りのせいで動きも読みやすいんだぜっ! ……俺の言葉が届いているか、分かんねーけどよ〉

 

 マシンガンの攻撃は、クロのリーオーの頭部を半分吹き飛ばす。

 ……度重なる戦いで機体も満身創痍になりつつあり、追いつめられていたクロ。けれど、それでも諦めずにトピアに、そしてアイアンタイガーにまで攻撃を続けるのを止めない。

 

〈……ったく、しぶといぜ、これじゃ埒が明かねぇ! こうなったら仕方ない。

 トピア、それにそっちの二人も下ってろ! ここはアレを使うしかねぇ!〉

 

 いきなりのアイアンタイガーの言葉、一体どう言う事かいまいち分からない。けれど、ここは彼の言う通り後方に離れる。

 

〈みんみんタイガーくん、分かったです!〉

  

 トピアはまたアイアンタイガーの名前を間違っているけれど、僕達も、彼もそれを指摘する余裕はなかった。

 

〈ここまで来て……逃がさないわ!〉

 

 クロが駆るリーオーはバーニアを噴かせてトピアに迫ろうと。だけどアイアンタイガーのDXフルバスターが遮る。

 

〈さすがの俺も我慢の限界だ、これで――吹き飛ばしてやるっ!〉

 

 威勢のいい言葉とともに、彼のDXフルバスターはバックパックに備えた最大の武器、ツインサテライトキャノンを展開して構える。

 原作のガンダムDXがキャノンを両肩上に構えたのに対して、DXフルバスターはガンダムF91のヴェスバーのように両脇からキャノンを展開させる。

 

「マイクロウェーブでチャージしなくても、既に貯めているエネルギーでっ!

 ……悪く思うなよっ! 襲って来たテメェが悪いんだぜ!!」

 

 次の瞬間、DXフルバスターのツインサテライトキャノンが放たれた。強力な二本のエネルギーの軌跡。それは進路上の障害物を粉砕し、消し飛ばし、要塞そのものに大穴を開ける。

 

〈がぁ――っ〉

 

 すぐ至近距離からの、アイアンタイガーによる会心の一撃。それに怒りで吞まれかけていたクロ。ギリギリまでトピアを狙おうとしたせいで反応に遅れてクロが乗るリーオーは右腕と右脚、胴とバックパックが消し飛ばされた。それに、ツインサテライトキャノンの衝撃はフィールドそのものにまでダメージを与えて、足場まで崩落して行く。

 

「……っ、クロ!」

 

 半身が吹き飛んでボロボロなリーオーは、崩落した足場、空いた穴の底へと落ちて行く。

 

 ――もう飛ぶ事も出来ないのか。これじゃ――

 

 落ちて行く彼女の機体、それを僕のレギンレイズは、寸でで機体の左手を掴んだ。

 

〈はぁ、ようやく……倒せたぜ。でもこんな奴、助けたのかよ〉

 

 DXフルバスターに乗るアイアンタイガーはそんな風に言う。けれど、僕は。

 

「もうクロに戦う力なんてないよ。それに……ここでやられちゃったら一緒に組んでいるミユまで失格になるだろ」

 

〈ううっ、ワタシは……まだっ〉

 

 武装もなく、もう戦えもしないのにクロはそれでも動こうとする。

 

「いい加減にしてよね。動くと本当に落ちるよ。

 ……アイアンタイガーに、トピアだっけ。僕の知り合いが迷惑かけたね」

 

 僕が謝ると、トピアは静かに首を横に振る。

 

〈ううん、私は全然気にしてないですの。よく分かりませんけど、やっぱり……みんな無事が一番ですから〉

 

 自分がしつこく狙われても、それでも狙って来た相手の事を気に掛けるトピア。それにアイアンタイガーも頭を掻きながら。

 

〈大変で、俺も意味は分かんなかったけどよ。別に気にしてないぜ。でもこれで一安心はしたけどな。

 じゃあ、俺達は先に行くけどいいか? ゴールはもうすぐそこなんだからさ〉

 

 先を越されるのは少し複雑だけど、僕は頷く。

 

〈りょーかいだ。んじゃ……バイバイ!〉

 

〈皆さん、さよならですー!〉

 

 

 

 アイアンタイガーとトピアは先にゴールへと向かった。

 一方で、僕達は……。

 

〈全く、とんだ事に巻き込まれたぜ〉

 

〈大丈夫ですか、クロさん〉

 

 僕はボロボロになったクロのガンプラを引き上げる。そしてジンもミユも、その傍に。機体はもうほとんど動けない。戦闘能力は皆無だ。

 

「クロ……どうして」

 

 引き上げられた彼女は黙ったまま。けれど、唐突に。

 

〈ワタシが言いたいわよ。どうして、ワタシの邪魔をしたのよ〉

 

〈あんな事していたんじゃ当たり前だろ。……ミユちゃんとのコンビなのに一人で突っ込んで、彼女に迷惑かけたら世話ないだろ。

 確か彼女を守ると約束したんだよな。なのにこれは、あまりにも無いんじゃないか〉

 

〈……〉

 

 ジンの言葉にクロは頭を俯ける。ヘルメットで顔は見えないけれど、申し訳ない感じにしているのは分かった。そう言う所は、妙に素直なんだな。

 

〈……ごめんなさい、ミユ。それに貴方達も。ワタシが約束したのに、自分の感情に任せて勝手な事をしてしまって〉

 

 そんな風に謝るクロ。ミユは――。

 

〈大変だなって思ったけど、私は全然大丈夫だよ。きっとクロさんには大変な事があったからだと思うし……それより無事で良かったよ〉

 

〈もう過ぎた事だ。事情を聞くなんて野暮な真似もしないさ。

 とにかくさ。もう残り少しだし俺達四人でゴールに向かおうぜ。動けないなら、ほら、肩を貸すからよ〉

 

〈――あっ〉

 

 ジンのF91は自力で立てないリーオーを肩に乗せて、持ち上げようとする。

 

〈うーん、やっぱ小柄なF91じゃ少し辛いか。フウタ、手を貸してくれ〉

 

「りょーかい」

 

 ジンに促されて僕のレギンレイズも手を貸して

起こす。クロはこれに驚いたように、一言。

 

〈貴方達……どうして、ワタシを〉

 

「当たり前じゃないか。ともあれミユの事をここまで守ってくれたんだしさ、そのお礼だよ。知り合えもしたし……友達みたいなものだろ、僕達」

 

 ちゃんと答えになっているか分からないけど、僕はこう答えた。……ジンも。

 

〈フウタがそう言うなら、俺も同じくだぜ。ここまで来たんだ。みんなでゴールを迎えた方が、やっぱ良いぜ〉

 

〈そうだよ、クロさん。辛かったかもしれないけど……最後は楽しく行こう〉

 

 ジンに、ミユもそう言ってくれる。僕達の言葉にクロは少し沈黙していたけれど。

 

「――ふふ……っ」

 

 けど少しだけ、笑い声が聞こえたような気がしたんだ。

 

 

 

 ――――

 

 それから間もなく僕とジン、ミユとそして……クロの四人で、無事ゴールに辿り着いてミッションをクリアした。

 ゴールにたどり着いた他のダイバーに比べて、僕達の順位は中の上くらい。報酬も、まぁまぁかな。

 

 

 

「何はともあれ、終わりよければ全て良しってね。だろミユ?」

 

「うん! フウタと離れ離れは寂しかったけど、私も楽しめたよ!」

 

 ミッションを終えて、僕は早速ミユと一緒になる。

 

「それは良かった。でも……寂しかったのは僕もだったんだから。やっぱりミユの傍が落ち着くな、ほんと」

 

「おいおい、ミッションが終わったと思ったら相変わらずこれじかよ。……ははは」

 

「……あっと。もちろんジンも忘れてないよ。僕と一緒に頑張ってくれてご苦労様。おかげで随分助かったしさ」

 

「そりゃどうも。ま、手に入れた報酬も悪くないし、フウタの言う通り良かったよな」

 

「……」

 

 僕達三人がそう話している少し離れた場所で、クロは一人佇んでいた。ミユはそんな彼女にそっと声をかける。

 

「クロさん……その、今日はありがとうね。

 一緒にミッションが受けられて良かった、楽しかったよ」

 

「ワタシ、は」

 

 複雑そうな彼女の様子。一人いくらか考えているようにしているみたいだけれど、ほんの少し雰囲気を柔らかくすると。

 

「ええ。色々あったけれど、楽しめも……したから」

 

 それから僕とジンに対しても話す。

 

「貴方たちも。ワタシは迷惑をかけたかもしれないけれど、一緒にいれて悪くなかったわ。

 だから、その……ありがとう」

 

「どういたしまして、だよ。何か色々訳ありだし、僕たちは大丈夫だよ。だからさ、良ければまた一緒に遊ぼう」

 

「ふっ、もし運が良ければ、ね」

 

 クロはそう言うと、僕達から離れ別れようとする。

 

「あっ! 良ければフレンド登録とか……」

 

「じゃあね、フウタにジン……ミユも。少し複雑な所もあったけれど、でも本当に悪くなかったわ。

 やはりヒトと言うのは、良いものね」

 

 けれど僕が言い終わる前に、クロはそんな優しい言葉とともに人混みの中に消えた。

 

 

 

「言っちゃっ……た。結局何だったんだろうな」

 

 結局よく分からなかった、クロと言うダイバー。

 

「私もだけど。でもクロさんも満足出来たみたいだったよ。……途中は大変かもだったけど、それでも良かったって。

 きっと喜んでくれたって、そう感じるから」

 

 傍のミユの言葉に、頷いて答える。

 クロは何だか色々抱えているみたいだった。けれどミユの言う通り、少しでもそうだったら――いいなって。

 

 

 

 




今回は長かったこのミッションの番外編が完結、ガンダムビルドライザーズから https://syosetu.org/novel/249849/ のトピアさん、コテツくんも再登場。
コラボが多かった回でしたが、改めてありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。