【完結】バディーライズ! ――ガンダムビルドダイバーズ外伝   作:双子烏丸

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第三話 大乱闘! 合同イベント!
ティーブレイク(Side フウタ)


 ――――

 それから一週間と少し後、フウタ、ジンともに時間を見つけてはGBNにログインし、ミッションなりフリーバトルなりでバトルの経験を積んでいた。

 二人はともに戦い、少しずつではあるものの、タッグとしての息も合い、実力もついて来た……と、互いにそう感じていた。

 

 

 

 ――――

 

「……にゃろう!」

 

 砂漠のバトルフィールドを縦横無尽に駆ける、何体もの四足歩行の機体。

 まるで動物を思わせる機体は、機動戦士ガンダムSEEDに登場するバクゥと呼ばれるMS。人型ではないが、一応、

 

 

フウタのレギンレイズ・フライヤーに向かい、背中のレールガンで砲撃を放つ。

 フウタはどうにか回避し、ライフルで応戦した。

 レールガンを放った機体、さらに続いて接近して来たもう一機も、とっさに撃破した。

 反射的な行動かつ、偶然ではあったものの、連続で二機撃破したフウタは、やや得意げな様子を見せる。

 

 ――これは、ライフルの扱いも上達したかな。ならこの調子で――

 

 そして後方に控えていた一機も、撃破しようとする……が呆気なく避けられた。

 集中的に狙って何発も撃つも、面白くないほどに外れ、一向に命中する気配がない。

 

 ――相変わらず僕の、ヘタクソ! 遠距離がダメなら――

 

 今度はパイルを持ち替え、近接戦を仕掛けるものの、それさえ俊敏な動きで避けられる。

 勢い余ったレギンレイズは転倒し、砂漠の砂に頭部を突っ込んだ、

 

「ぐえっ!」

 

 転倒して揺れるショックも、フウタに伝わる。

 

 ――ちぇっ! こんな感覚までいちいち再現するなんて――

 

 そう心の中で愚痴りながら、フウタはレギンレイズを起き上がらせる。

 目の前には、おそらく本ミッション残り一機の、バクゥの姿。

 

 ――確かにいつもよりも難易度の高いミッションを受けたけど、これでも一応、GBN全体では大した事ないミッションなんだよね。

 とくに、残りの一機はなかなか手ごわい、指揮官機……って感じか――

 

 つかさず、バクゥはレールガンで攻撃を仕掛ける。

 ――だが、レギンレイスはそんな中で向かい合い、真正面から向かって行く。

 馬鹿の一つ覚えと言うべきか、追い詰められた時にはよく、被弾お構いなしで正面から突っ込む戦法を、フウタはGBNで取っていた。

 ナノラミネートアーマーの防御力での、ごり押し。いかにもアマチュアらしい、単純な戦法だ。

 単純すぎるために、他のダイバーとの対戦などでは逆手に取られ、回避された後の集中砲火で撃墜されるのも、これまでに何度かあった。

 ……まぁ、それでも近いレベルのダイバーや、それなりのミッションなら有効な戦法でもある。それなりにGBNを遊んでいる程度のフウタにとっては丁度良いから、今でもよく使っているのだが。

 

 

 そして今回も、その戦法は有効だった。

 レールガンの攻撃は幾らか被弾し、破損したものの、バクゥに接近し、今度は上手く近接戦に持ち込んだ。

 バクゥの後期型であれば頭部にビームサーベルが装備されているが、生憎これは前期型、近接装備を持ち合わせていない相手ではレギンレイズが有利だった。

 最も、相手もそう簡単に倒されるはずもなくもがくも、フウタはそのコックピットに、パイルを突き立てた。

 

 ――ふっ、どんなもんだい!――

 

 何とかミッションをクリアしたフウタは、得意気に笑った。

 

 

 

 ――――

 

「おかえり、フウタ!」

 

 ミッションを終えてGBNのロビーへと戻ったフウタを出迎えたのは、幼馴染のミユ。

 

「ただいま。ミユも、GBNに来ていたのか」

 

「ジョウさんが、フウタがここにいるって、言ってたから。それで私も今さっき、ログインした所なんだ」

 

 彼女は手を後ろに回して、得意げに笑う。

 

「私もフウタと一緒に、GBNで過ごしたいの。ねっ、いいでしょ?」

 

 彼の顔を覗き込んで、上目遣いでちょっと甘えた感じの、可愛いらしい彼女の仕草。

 フウタは自分の幼馴染の、そんな仕草につい心を奪われていた。

 

「……ねぇ、フウタってばー」

 

 ちょっと呆けていた所に、ミユにそう言われた彼は、ようやく我に返った。

 

「あっ、うん、もちろん良いに決まってるさ。……そうだ! せっかくだから、少しカフェでゆっくりなんて、どうかな?」

 

 この提案に、ミユは嬉しそうに頷く。

 

「うん! まずはGBNで喫茶店デートって言うのも、いいな!」

 

 今回はちょびっと久しぶりのデート、フウタもミユも、心をときめかせていた。

 

 

 

 ――――  

 ロビー近くに位置する、ビル内のカフェにて。

 ミユは机に載った美味しそうなイチゴパフェの、アイスとイチゴクリームをスプーンですくい、口に頬張る。

 

「うーん! このイチゴパフェ、甘くて美味しい! フウタのチョコパフェは?」

 

「こっちも美味しいよ。なかなかに良い味って感じ」

 

 対してフウタは、チョコパフェを頼んで食べていた。

 

「でも……そう言えば、チョコパフェの味って言うか、味覚までも再現してるなんて。

 ここまで来ると、ちょっと気味が悪い気も、しないかな?」

 

「うーん、そうかな? フウタの考え過ぎな気がするけど」

 

「だって人一人の感覚を、仮想空間でここまでコントロールしてる訳だろ? そう考えると何だか、少しだけ、変な気持ちにもなるんだ」

 

 実を言うと、模型を作るのはそれなりに好きなフウタではあったものの、GBNに対して、確かに楽しんでいるものの……所謂、VRMMOの類はそこまでタイプ、と言うわけではない。

 景観やグラフィックは良いとは思う彼だが、こうしてゲームの中まで味覚や感覚までフィードバックされるのは、個人的に好きになれなかった。

 ゲーム全般が好きなのはミユの方で、GBNを始めたのも、彼女の勧めがあったから、なのだが……。

 

「でも、最近のフウタ、私以上にGBNばかりやっている気がするよ。……一緒に、外へ遊びに行ったりする事も少なくなったし、寂しかったんだから」

 

 しかし、この頃フウタはGBNに、多くの時間を費やしていた。

 それこそ学校が終わってからは模型店に行って、遅くまでログインする事も多々あった。ミユにはそれが、気になって心配していたのだ。

 

 

 

「……」

 

 そのせいか、ふと寂しい表情を見せるミユ。

 フウタはそれにシュンとして、呟いた。

 

「そんな思いをさせて、ごめん。ちょっと今、GBNでやる事が出来たせいで、そっちばかりに集中しちゃってたんだ。

 後でミユとの時間も、確保する予定だったんだけど……君に寂しいと思わせるなんて、僕は……」

 

 確かに彼は、ある理由でGBNに熱中して取り組んでいるものの、それでもミユの事を一途に、何よりも大切に思っていることには、変わりなかった。

 

「ううん。フウタが私の事を、大切に想っているのは、知ってるから……」

 

「当たり前さ。だって僕にとってミユが……一番大好きなんだし」

 

 だが、さすがのフウタでも、直接本人にそう伝えるのはやや気恥ずかしい。

 ……けど、言える時には、ちゃんと自分の想いを伝えたい、彼であった。

 何しろ――

 

「ふふっ。私も、フウタの事が大好きだよ」

 

 頬杖をついて、ミユがフウタに向けた、とても嬉しそうに微笑む笑顔……。

 彼女が笑ってくれるなら、少しくらい恥ずかしい想いをしたって、どうってことはなかった。

 

 

 

 するとミユは、ある事を聞いた。

 

「ねぇ、そう言えばフウタは、どうしてそこまでGBNに熱中しているの? ……理由があったら、教えてほしいな」

 

 フウタは少し考えるも、すぐにこう返事を返した。

 

「もちろん、構わないさ! それは――」

 

「やぁ! ここにいたのか、フウタ!」

 

 フウタが何かを言う前に、ふいに近くから、旅人姿の青年が現れ、そう声をかけて来た。

 

「……はぁ、ジンさん、何も今来ることは、ないじゃないか」

 

 青年はこの間、フウタと知り合いとなったダイバー、ジンであった。

 二人でいる所を邪魔されたせいか、フウタは少しご機嫌斜め。

 さすがにジンもその事に気づいたのか、申し訳ない様子を見せる。

 

「それは、悪かった。なら俺は少し席を外しておくから、しばらくは二人で……」

 

「待って! せっかくのフウタの友達だもん。

 ジンさん、でしたよね? 良かったら一緒にどうですか?」

 

 しかし、ミユはジンに対し、引き留める。

 これには少し困った様子の、フウタ。

 

「えっ、でも今ミユと二人なのに……」

 

「まぁまぁ。私はフウタに友達が出来たことが、嬉しいから。友達は、大切にしないとね」

 

「……むうっ、分かった」

 

 

 

 しぶしぶながらも、フウタは了承する。

 

「これは、ありがとう。じゃあお言葉に甘えて……」

 

 ジンはフウタ達の近くの席に、腰を下ろした。

 

「えっと、それじゃ俺は、オレンジジュースでも頼もうか」

 

「オレンジジュース? 大人なんだから、コーヒーを頼むかと思っていたけど」

 

 ジュースを頼もうとするジンに、こんな事を言うフウタ。

 そう言われた彼は、表情を緩める。

 

「俺はアルコールの入った酒だとか苦いコーヒーより、ジュースの方が好きなんだ。……別にいいだろ?

 それを言うなら、フウタだって、パフェを食べてるじゃないか」

 

「そりゃ、そうだけどさ」

 

 二人のそんな会話の様子を、ミユは微笑ましげに眺めていた。

 と、そこに注文したオレンジジュースが届く。

 ジンはジュースに一口、口をつける。

 

「ああ、なかなか上手いな。まるで現実と、全然変わらない味だ」

 

 ジュースの味に感心する彼に、ミユはこう話しかける。

 

「初めまして、ジンさん。私はミユ、幼馴染のフウタがお世話になってます」

 

「おっと、これはご丁寧に。と言っても、世話になっているのは、俺の方なんだけどさ」

 

「ううっ。ちょっとミユ、そんな言い方されると、何かこそばゆいよ」

 

「あはは、ごめんねフウタ。

 ……でも、ジンさんはフウタ知り合って、どれくらいになるのいですか? フウタからはまだ、あなたの事を聞いていなかったから」

 

 ミユの問いに、ジンは答えた。

 

「ああ、フウタとは初めて会ったのが、一週間くらい前になるな。直接会ったのはその時だけで、後はGBNで三度くらい、一緒になったくらい……まぁ、ついこの間さ」

 

「僕も、ちゃんとミユにこの事を伝えるつもりだったんだよ。

 ジンさんはある理由でタッグバトルで勝ちたい、上位ダイバーがいてさ、僕はそれに協力してバトルの訓練に付き合ったりしてたんだ」

 

 そうフウタは説明するが、ミユは首をかしげる。

 

「フウタたちがやっている事は、分かったけど……でも、どうしてフウタはジンさんに協力しているの? 

 だって、あんまりこんな事を、するなんて思えなかったから」

 

 

 

「……うっ!」

 

 彼女の質問に、フウタは表情を変えた。

 するとジンがこんな事を――

 

「その事についてか? 俺の聞いた話だとフウタは――」

 

「あー! 理由だったらもちろん、ガンプラバトルで強くなりたいからに決まってるじゃないか!」

 

 彼が話そうとすると、割って入るかのようにフウタが代わりに説明した。

 あまりにも慌てた素振りに、ジンは不審がる。

 

「おいおい、俺が聞いた理由とは……」

 

「黙っててよ、ジンさん! 

 ……その、このGBNだって長いから、この機会にそろそろ本気で腕を上げたいって、思ったのさ」

 

 ジンの言葉を妨げ、そう言い訳をするフウタ。

 

「うーん、フウタがそう言うことなら」

 

 少し怪しんでいるものの、ミユも一応は納得したようだ。

 対して、ホッと胸を撫でおろすフウタ。ジンは何か腑に落ちないように、オレンジジュースを一言、口にした。

 

 


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