捕食少女の闘争アカデミア   作:エターナルドーパント

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『もうね、大変だよ何もかも』
「改変しすぎてか?」
「それ以上にトーナメントの戦略練るのが」
『お前、軍師の才能無いもんなぁ』


第17話 戦闘者の試練

(出久サイド)

 

「う・・・うぅん・・・っ」

「!」

ベッドの上で寝かされていた麗日さんが上げた唸り声に、僕は僅かに眼を見開いた。

「目が覚めた?」

「ここ、は?・・・いっつつ・・・!」

薄目に周囲を見渡しながら身体を起こす麗日さんだったが、痛みが襲ったであろう腕を強張らせて再びベッドに横たわった。

「無理はしないで、麗日さん。此処は医務室だ。

リカバリーガールの治癒でも、流石にあのダメージは1度に治しきれはしなかったみたいだから。と言っても、もう筋肉痛程度みたいだけどね」

肩に手を置き、緊張を解す。緊張すればする程、其処に意識が集中して痛覚が鋭敏になるからだ。

「・・・そっか。私、負けたんだ」

「・・・そうだね」

「そっか~・・・んあ゙~悔しいッ!あイテテテ・・・アハハ」

歯を喰い縛りながら腕を振るい、痛みに少し呻いて乾いた笑いを漏らす麗日さん。だが・・・

「・・・妹弟子」

「・・・はい」

「此処には、僕以外居ない」

「・・・うん」

貼り付けたような笑顔は消えども、心の内を明かすには今一歩・・・足りないか。

「・・・求められていないなら、僕からは何も出来ない。

でも・・・最後のウェイヴパンチは美事だった。良いセンスだ。

じゃあ、僕はこれで・・・」

「ま、待って!」

立ち上がりかけた僕の袖を、麗日さんが引き留める。その手の引きに委ねるように、今度は椅子では無くベッドに腰掛けた。

「・・・兄弟子。ちょっと、背中・・・貸して、貰えませんか?」

「・・・あぁ、良いとも。背中でも胸でも、好きにしなさい。これも、兄弟子として当然の事だから」

「優しいなぁ・・・うっ、うぅ・・・うわァァァァァァんッ!!」

・・・やっぱり、泣く程悔しいよね。まぁ、当然か。

「落ち着くまで、背中は貸してあげるから」

左肩と右脇腹に感じる、麗日さんの握力。悔しさで握り締められているが、不意に緩む時がある。苦し気な嗚咽と染みてくる涙が、僕にその全てを伝えてくれた。

・・・抱き締められない事を不甲斐ないと感じてしまうのは、子を産み過ぎて膨れ上がった母性故にだろうか。

「・・・あったかい」

「それは良かった」

一頻り泣き、落ち着いたらしい。嗚咽も止み、深呼吸の揺れが背骨に伝わって来る。

「麗日さん」

「何?」

「確かに、麗日さんは負けた。でも、あの爆豪相手に最後の最後で一発良いのをくれてやった。素晴らしいと思うよ。

それに・・・あのパンチは、バトンでしょ?」

「ッ!気付いてくれてたん!?」

「ハハハッ、ウェイヴマスターを嘗めちゃいけない。良く見えていたとも、君の狙いが」

「・・・えへへぇ♪」

照れくさそうに頭を掻く麗日さん。やっぱり、あれはそういう事か。

「良い判断だ。勝てずとも、ただでは死なない。己の死力を尽くしきり、それを次に繋いだ。

戦闘者として、ベストだった。花丸だ」

「ふあっ」

そう言って、僕は自慢の妹弟子の頭をクシャッと撫でる。そしてベッドから立ち上がり、部屋を出んと扉に向かった。

「・・・緑谷君!」

「ん?」

「・・・兄さん、と呼んでも?」

「・・・フハハッ、ちょっと照れくさいな。でも、悪い気はしない。好きにすると良いよ。

じゃあね」

そう優しく微笑み掛け、僕は医務室を後にした。

 

―――

――

 

「おー師範!お帰り!」

「うん。ただいま、切島君」

ブロックに戻ると、気付いた切島君が手を振って来た。ワキワキと指を曲げて答え、席に座る。

「って師範!次お前だろ?大丈夫か?」

「あっ、いっけない!」

もう轟君と・・・心操君!心操君の試合終わってたか!医務室完全防音だったから気付かなかった!

「慌ただしいなー師範。因みに轟が勝ったぜ。

じゃ、行ってらっさい」

「うん、行ってくる!」

さて、相手は教え子たる芦戸さん。せっちゃんと何時も師弟対決はしてるけど、師の側に立つのは初めてだな。

あぁ、楽しみだ。とても、とても楽しみだ。

 

―――

――

(NOサイド)

 

『第二試合ッ!纏うは強酸ッ!腐食の浸蝕ッ!ブレイクウェイヴァー・芦戸三奈ァッ!!』

 

「ルーブじゃん」

「何それ」

「ウルトラマンシリーズって言う大昔の特撮の1つ。仮面ライダーと共にオススメだよ」

 

『VS!一挙十撃!一動必殺ッ!最年少ウェイヴマスター!緑谷出久ゥゥ!!』

 

芦戸と他愛ない言葉のキャッチボールを交わしながら、出久は肩甲骨を回してストレッチする。そして上着を脱ぎ、マタドールのように両手で持ったまま肩をダルンと下げた。

「さっきは何時も通り瞬殺しちゃったけど、それじゃあ観客の皆さんも面白く無いかもだし・・・今度は、もう少し戦闘らしい戦闘をしよう。あ、ついでにウェイヴや戦闘体術のテストも済ませちゃおうか。

さぁ芦戸さん、楽しませてね?観客(ギャラリー)と、そして僕を」

「アハハ・・・師範はこれまた難しい宿題出すなぁ・・・まッ、やれるだけやってみるけどね!」

凶暴な笑みを浮かべ、楽しみたいと宣言する出久。それに苦笑いしながらも、芦戸は真面目に構える。前傾姿勢で肩甲骨を回し、顔の前で手を揺らす構えだ。

 

『レディ、Fight!』

 

「うりゃッ!」

「フッ!」

 

―バシャッ―

 

「ッシャ!」

「わっぷ!?」

 

『おぉー!流石は母上!芦戸選手の開幕酸液を上着で払い退け、それを被せて視界を奪ったァァ!!』

『しかし、追撃をしませんね。戦闘が成立するまで、決着を着けないつもりでしょうか』

 

「さぁ、次は何が来る?

蹴りか?突きか?平手か肘か、それとも酸か!

闘争はこれからだ!テストもこれからだ!夜明けはまだまだ遠いぞ!さぁ来い門下生!

早く(ハリー)ッ!早く(ハリー)早く(ハリー)ッ!早く(ハリー)早く(ハリー)早く(ハリー)ッ!!」

「うわぁ~ん!スイッチ入っちゃってるぅ~!!」

 

『母上、既に闘争モードに入って眼がギンギンになってるな。泣き言を言わずに居られない芦戸選手の気持ちもよく分かるぞ』

『最初の宣言通り、母上の暴力に男女の差はありませんからな。男女平等に殴り飛ばします』

 

「さぁ、おいで。有望な門下生」

「・・・ヨシッ、覚悟完了ッ!」

芦戸は腹を括り、膝を抜いて突撃する。更にブレイクダンスで培った体幹とバランス感覚で、正中を留めず的を作らない挙動も織り混ぜる高等技術を披露した。

「シアッ!」

そして出久の大股3歩分手前で身体を左に思い切り落とし、右足を振り上げて卍蹴りを繰り出す。

 

―ボッ―

 

「痛っ!?」

「良いキレだ。スムーズになったな。80点」

 

『あーっと母上!芦戸選手の卍蹴りに、同じく卍蹴りを重ねたァッ!!』

「脛同士が綺麗にクロスしていますな。これは痛いでしょう芦戸選手。母上の脛蹴りは木製バット2本をへし折りますからね。骨折していない辺り、かなり加減したのでしょうが」

 

「さぁおいで、我が教え子・・・」

「うぐっ・・・」

出久の気迫に、芦戸はザリリ・・・と、指半分程だが後退る。

 

後退(さが)るなよ・・・ヒーローだろ?」

 

「ッ!!」

挑発であろう出久の叱責。しかし、芦戸の退きかけた精神を叩き起こすには十分だった。

「ヒーローは退かない。戦士は退かない。気高き人間は退かない。

例え、敵の眼を欺く為に逃げ回り跳び回ったとしても、例え、相性が悪過ぎて殺されかねなかったとしても・・・信頼し得る仲間に託しもせず、戦いそのものを投げ出し、みっともなく逃げ出す訳が無い。

あぁそうだ。そんなものは決してヒーローではない。諦めの1つも踏破出来ぬ者が、どうして他者を救う事が出来ようか。

それは最早、人間等ではない。血と糞が詰まった、只の肉袋だ。人の姿貌(すがたかたち)を持っているだけの、無様な負け(イヌ)だ。断じて、()()()()()()()

さぁ、門下生芦戸三奈。お前は何だ?人間(ヒト)か?狗か?それとも・・・化物か?」

「あ、アタシ、は・・・」

見つめた両手をグッと握り、構え直す芦戸。

「フゥゥゥゥ・・・

 

アタシはッ!人間だッ!!」

 

息を吹き出し、強く宣言する。只の肉袋に、無様な負け狗に成り下がるつもりなど微塵も無い。

「然らば、構えろ!零距離戦闘術の基本を思い出せ!」

「・・・スゥゥゥ、ハァァァァ・・・」

芦戸は深呼吸しながら肩甲骨を回し、上がっていた肩をゆったりと下ろして強張った筋肉を解す。其処から全身へと意識を移し、5つ数える間も無く緊張状態から脱した。

「ほう・・・この圧を前に、そうも容易く緊張状態を解くか。やはり才能の塊だ。

師として、その才を磨き上げられる事を誇りに思うよ」

「っ・・・照れるってばさ、師範・・・行きますッ!」

膝を抜いて重心を落とし、()()()と身体を溶かすように前方へ駆け出す芦戸。

そしてウェイヴを乗せて放たれる拳を、出久は腹で諸に受け止めた。

「ごふぇっ!」

出久はご丁寧に完全に衝撃をボディで完全に受け切ってから、バックステップで距離を取る。

(チッ、流し込み切れなかった!)

「フゥゥゥゥ・・・」

息を深く吐き出し、腹筋を波打たせて無理矢理痛みを緩和。身体の内側に意識を集中し、被害を感覚で読み取る。

「・・・僕が脱力して全体に逃がし散らした分もあるけど、明らかにエネルギーが入り切っていない。75点。

良いとこまでは行ってるけど、今一歩だね」

「やっぱりねぇ。だって突っかかるような感じしたもん、肘とかで」

「だが踏み込みは見事だった。良いセンスだ」

軽い称賛を贈りつつ、出久は腰を落として構え直した。

「まぁ、赤点ラインギリギリではあるが合格としとこうか。いや、そもそも修練期間が短過ぎたんだ。本来は年単位で身体に刷り込む技術、逆に良く此処まで練り上げた。

さぁ、最後だ。掛かって来なさい」

「・・・ッ」

構えを作り身体を揺らす出久に対し、芦戸は飛び込むように踏み出す。そして着地した右脚を軸に、左脚で後ろ回し蹴りを突き出した。

「どぇっ!?」

しかし、出久は左足を引いた半身で蹴り脚を捕まえて踵を左肘でホールド。其処から送りのウェイヴを流し込み、芦戸を突き倒す。

そして上がった芦戸の左腕に右腕を絡め、自分の肩に手首を引っ掛けて関節を極め、左手中指を芦戸の頸動脈に突き付けた。

「いッ!?」

「酸で僕の肌が焼けるよりも、僕の指が頸動脈を突き抜く方が早い。どうする?」

「・・・参り、ました」

 

『決着ゥゥゥゥゥッ!!師弟対決、師の勝利ですッ!』

『今回は勝負と言うより寧ろ、完全にテストでしたね。免許皆伝はまだまだ程遠いようです。

ですが、あの殺気ギンギンな母上相手に良く食い付きました。芦戸選手に拍手を』

 

「師範!これ普通に負けるより恥ずかしいんだけど!?」

「ドクちゃーん!止めたげてぇぇぇ!!」

 

to be continued・・・




~キャラクター紹介~

緑谷出久
現代忍者高校生。そして雄英高校ウェイヴ教室(仮)の師範代で、お茶子の兄弟子。
ウェイヴだけでなく、それを他の武術と織り混ぜた戦闘術を教える。また、個性や性格に合わせてバトルスタイルの指導も出来ると言うオーバースペックっぷり。
今回で師匠属性とお兄ちゃん属性が追加。もう属性が多過ぎて通称に困る。

麗日お茶子
爆豪に一杯喰わせた原作ヒロイン。
出久に教わる門下生の中では最も好成績。
現状、出久に抱いているのは恋情ではなく純粋な安心感。此処からどうなるかは、正直作者も分からん。
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