『開口一番それかい』
「当然だよ。遅すぎるったらありゃしない」
『いや、Eの暗号の方は更新しただろうが』
「俺ちゃんが出てないからノーカン」
『コイツぁ手厳しい』
(背納サイド)
『第二回戦、第三試合ッ!!皆様お待ちかねのバトルだぞォ!!』
『次の対戦カードを見て掲示板の豚野郎共もイキリ立っております。
では両選手、入場を』
マックスとドクが盛り上げたステージに、ボクは登る。正面からは、切島君が楽しげに口角を引き上げ歩を進めて来た。
『恐怖も苦痛も己が餌ッ!!茶飯に等しく闘争を貪り、一挙一動全身凶器ッ!!
化物の女王!!触出背納ァァァァァァ!!
VSッ!!巌より堅き頑健な骨肉!充つるは闘志ッ!!手足は凶器ッ!!身体は鎧で出来ているッ!!
堅殻のハードパンチャー!!
切島ッ鋭児郎ォォォォォ!!』
何やら語りが豪華だねぇマックス。ではでは、その紹介に恥じぬよう闘って見せようかな!
「ッシャァ!手加減無しで行くぜ!触出ッ!!」
「望む所だね。寧ろ手加減なんぞしようものなら嬲り殺して脊髄ブッコ抜くつもりだったから、それを聞いて安心したよ」
「こ、こえぇ・・・眼がマジだぜ」
「あ、多分大丈夫だよ。半分冗談だから」
「え?じゃあもう半分は?」
「はてさて、自由にご想像下さいな♪」
プリッと舌舐りしながら、眼を薄めて微笑み掛けて見せる。おやおや、青褪めてしまったねぇ。
『切島選手、クイーンの先手に見事に嵌まりましたな』
『如何なる闘いを演じてくれるか!いざ開戦ッ!!』
マックスの声をゴングとし、僕らの試合が始まった。
「先手必勝ッ!!」
「後手対抗」
いきなり大きく踏み込みながら放たれた、右のストレートリード。全身のバネの連動も、体幹の捻りも、縦にした右拳から左肩までの直線もほぼ完璧。やっぱり合ってるねぇ、このスタイル。
ボクは冷静に右足を踏み込み、入身になりながら左拳で腕の側面を打ち払う。
「シッ」
―メキィッ―
「ぐえッ!?」
そして更に右足を抜いて重心を落下させ、右肘を目の前に迫る切島君の右肋に叩き込んだ。
しかし、骨を砕いた感触は無い。どうやら反射的に硬直して防いだみたいだ。脊髄反射でも固まるのは、利点でも欠点でもあるねぇ。
「は、反応はえェ!」
「反応じゃないよ。君はストレートリードを多用する事は分かっていた。それに出久から、ボクは闘いながら学習し強くなる事を聞いているだろうという事も確信していた。
つまり・・・全て予測済みだった訳さ」
「ッ!!」
勿論、これは半分ブラフ。確かにストレートリードを多用するスタイルは観察していたが、出久の話は口から出任せだ。
でも、反応から察するにマジで話してたっぽいな出久は。
「さて、出鼻は挫いた。次はどうする?何が来る?」
「・・・うりゃッ!!」
「・・・ほぉ?」
問いの答えは、岩より固めた正拳突きだった。ウェイヴで正中ごと身体をずらして避け、口角を吊り上げつつ切島君の眼を見遣る。
「挫かれようがどうしようが、俺に出来るのは1つだけ!全力でブッ叩く!
挫かれたなら挫かれただけ、また何度でもブッ叩いてやるだけだッ!!」
「ッ~❤️」
決意に満ちた、鋭い眼。諦める気など微塵もありはしない事がハッキリと分かった。
あぁ、これは良いなぁ・・・ゾクゾクするなぁ❤️
『おぉ見ろドク!あの坊や、クイーンのお眼鏡に適ったようだぞ!』
『完全にハートが浮かんでますなぁあの眼は』
「あぁ、あぁ・・・素敵だ。やはり人間は、素晴らしい・・・大好きだ❤️」
身体の芯から血が逆巻き、脊髄が疼く。脈拍と体温が跳ね上がり、文字通り熱い息を細長く吐けば、うっすら白い湯気になった。
「切島君・・・いや、切島鋭児郎。君を
Unlock tha Hypnosis Sealed Bondage Protocols, Nos.Three,Two,and One・・・」
指で枠を作る何時ものルーティーンと共に、闘争本能を全解放・・・って、うっかり英語版の承認詠唱が出ちゃったな。いやはや、どうにも気が昂るとするとカナダを思い出す。
まぁ良いか。たまには、趣を変えてみるのもまた一興だ。
「Situation〈C〉.Recognized approval by Cromwell activation.
Start unrestricting the use of abilities until you defeat the enemy in front of me・・・」
『おぉ、見ろドク!クイーンが本気の化物モードで遊ぶみたいだぞ!』
『しかも英語版の暗示詠唱ですか。よっぽどお気に召したんでしょうねぇ、彼が』
「It's a lesson time!!
I'll teach you the battle of・・・the True MONSTER!!」
外骨格状であり、尚且しなやかな生体装甲を纏った。そして脳内麻薬がドバドバと溢れ出し、全ての感覚が鋭敏化する。
「ウゥゥゥウッシャァァァァァ!!」
―ビリビリビリビリッ ブチィッ―
更にズボンのウェストと上着の裾をひっ掴み、刃牙の花山薫がスペック戦でやったみたく力任せに引き千切った。ついでにブラジャーとパンツもだ。
ビチャビチャと涎を溢しつつ、これでもかと身体を落としてスパイダーマンみたいな四つん這いになる。ゼノモーフが最も瞬発力を活かせる体勢だ。
「着甲ッ!!」
―ガキィンッ―
「ぐッ!?」
足腰と背骨のバネを全て利用して飛び込み、切島君の腹に後ろ足から拳まで一直線に揃えたパンチを打ち込んだ。
「爆震ッ!!」
―ビキッ―
そして拳を瞬時に引き戻して捻りながら更に肩で押し込み、追加で衝撃を叩き込む事で装甲化した腹筋を叩き抜く。
「
「ごっへェ!?」
切島は衝撃を諸に受けたせいで、大きく後退し膝をついてしまった。
「どうした?何をへばっている?たかが腹筋を叩き砕かれて、内臓を打ち抜かれただけだろう!ほら立て!立てよ人間ッ!!」
「ぐゥ・・・ぬおォォォォ!!」
ボクの叱咤を受け、切島は笑う膝を固めて無理矢理に立ち上がって見せる。
「まだまだァ!!」
「何だ、やれば出来る子じゃあないか!切島鋭児郎ッ!!」
やはり、この男なら立ち上がってくれると思っていた。期待通りだよ切島鋭児郎ッ!
「ショウッラァッ!!」
―ガゴンッ―
「ぬぅっ!」
再び踏み込み、右拳でブン殴る。今度は切島の十八番になった、ストレートリードだ。
だが、まだ終わらないぞ。
「イィッサァッ!!」
―ガァンッ―
「うぉッ!?」
間髪いれず左脚を踏み込み、同時に左拳で追撃。切島は踏ん張りを崩され、重心がブレる。
その胸のど真ん中に、〆の一発!
「デァアッ!!」
―ゴキィッ―
「ゴッハッ!?」
右踵を地面に打ち込んで身体を跳ねあげ、上体の落下と体重と体幹の捻り全てを右拳に注ぎ込むように大振りに打ち下ろす3撃目。打ち据えた後に、右足を前に出して身体を支えバランスを取り直す。
我流・三歩必殺、全拳撃クリーンヒット。
「ゲホッゴホッ・・・」
「どうした切島ッ!?さっきから棒立ち、まるでただの案山子ですなァ!?早く来いよ!攻撃してみろッ!!」
「い、いや触出お前・・・手が・・・」
「あぁん?手がどうか・・・」
したのか、と聞き掛けて、止めた。ボクの右拳を見れば、今の3撃目のせいだろう。手の甲の骨が折れ、生体装甲を突き破って露出していたのだ。滴り落ちた血が、ステージの地面を腐蝕して煙を上げている。
「あぁ、これか。それがどうした?まだ拳が叩き割れただけじゃねぇか。ほら、能書きを糞尿みたく垂れてないで来いよ。さっさと愉しく続きを殺ろう」
「いや、それ流石にやベェだろ!?」
「・・・はァ?」
何を、言っているんだ?コイツは・・・今、此処は戦場だろう?目の前に立ってるボクは、倒すべき敵だろう?何故戦わないんだ・・・?
「早いとこ、リカバリーガールに「下らんな」・・・は?」
呆けたような顔をする切島。
全く、何だか興醒めだ。正直、此処まで甘ったるい奴だとはねぇ。
「この程度で?狼狽えて、敵に治療を勧める?そんな下らん事の為に、反撃を止めたのか・・・ッ!
巫山戯るなよ貴様ッ!ボクを・・・オレを嘗め腐るのも大概にしろッ!!お前は仮にも、出久に師事を仰いだ戦闘者なんだろうがッ!!それがこのザマかッ!?この体たらくかッ!?エェ!?」
「ひッ!?」
『おぉっとこりゃマズいな。一人称が変わる程ぶちギレてるぞ』
『クイーンの前で甘ったれた事を言った切島選手の落ち度ですな』
切島の顔が、今度は怯えに歪んだ。全く、表情をコロコロ変えおって忙しい奴だな。
「貴様には失望したよ。まさか人間じゃあ無く、牙を抜かれ飼い慣らされた狗ッコロだったとは・・・」
―パキペキッ プチッポキッ―
右手の指を引っ張って、突き出ていた骨を元の位置に収める。そして筋肉で少し圧迫してやれば・・・ほォら、すぐ治っちまった。
「手加減などしないと、言うたじゃあ無いか・・・何度でもブッ叩いてやると、言うたじゃあ無いか・・・
しかしどうだ?たった今、オレは貴様に殺されてやる訳にはいかなくなってしまった。いかなくなってしまったじゃあないか。
あぁそうだ。そうだよ、そうだとも!貴様のような腑抜けた狗ッコロなんかに、オレの首をくれてやる値打ちなんぞ在りはしない!
怒髪はとうの昔に天を突き、視界が真っ赤に染まる。全身の筋肉がフル稼働し、体温が跳ね上がっていくのも感じる。
知った事か。オレは今怒ってるんだ。例え身体が燃えようが、知ったこっちゃない。
「貴様では、その能力は活かし切れない。オレのファーストズーグが有効活用してやるよ。喜べ、駄犬」
「ぐぅッ、うわっ!?」
―ガキンッ―
「うっ・・・」
首をひっ掴んで投げ倒し、馬乗りになりつつ両膝で切島の腕を押さえ、抜け出せないようにホールド。
そして両手を首に添え、全力で握り絞める。
「がッ~!?ッ~!?」
気道と頸動脈を絞められ、切島の顔がどんどん赤くなる。ホールドを外そうと藻掻くが、此方は掴んだ首を引っ張り寄せて足に掛かる圧を上げているんだ。外れはしない。
「ハァァァァァ」
さぁ仕上げだ。
―ずりょっ―
「ッ!?」
インナーマウスを伸ばし、半開きになっていた口から一気に挿し込んだ。数秒で胚を産み付け、ズルルッと引き抜いて終わり。
最後は、息も絶え絶えな切島を場外に捨てて試合終了だ。
あぁ、いつ以来だろうなぁ?初めてかな?こんなに気分の悪い勝ちは。
『決着!勝者、触出背納ッ!』
『いやー切島選手、相手が悪かった。クイーンは筋金入りの闘争主義者ですからなぁ。敵からの情けなど、侮辱以外の何物でも無い』
『なまじっか再生能力が強いもんだから、骨折ももはやただの掠り傷と同じような認識してるしなあのお方は。
さてさて、第四試合は爆豪選手対八百万選手です!乞うご期待!!』
to be continued・・・
~キャラクター紹介~
触出背納
化物主人公。
闘争主義者のモンスタークイーン。戦いこそ生き甲斐というヤベェレベルの過激派。日常生活と戦闘の切り分けは出来ているが、戦い方の選択肢は《最後までぶち殺す殺し合い》か《殺し切らないけど死ぬ寸前まで殺す殺し合い》しか無い。故に暴力を伴う戦い全般を殺し合いとしか認識出来ないので、敵への配慮、心配の必要性その物が理解出来ず、嫌悪感を抱く。
因みに、現在までの描写内で背納自身が闘争と認識したのは入試の実技試験と脳無戦のみ。他は全部本気のホの字も出していないお遊び感覚。
出久との組手では打撲骨折当たり前な上に大抵すぐ治っちまうので、怪我に対する認識が若干可笑しい。
切島鋭児郎
今回の被害者。
最初こそ気概良く戦いを挑んで背納に気に入られたが、(背納の感覚では)掠り傷程度の何でもない、それも敵の怪我を心配してしまったのが運の尽き。
試合でも怪我したら治療しなきゃという価値観と、戦いで身体が壊れるのは当然という価値観が見事に食い違い、背納の地雷を踏み抜いた。
背納に個性を使いこなせてないと言われたが、あれ完全に作者の意見。あの硬質化能力を脳筋戦法でしか使わないって勿体無さ過ぎる。
素足蹴りで安全靴キックみたく敵の脛を砕けるし、トリコのフォークみたいな形で硬化すればディザームやソードブレイカーのような武器破壊は勿論、指を引っ掛けてブレイカーのようなコントロールウェポンにもなる。
しかも指が折れないから、肩甲骨100%解放ウェイヴパンチとかウェイヴ抜き手とか普通にポンポン使える。更にフォークのままウェイヴで振るえば、でかくて重い鉤爪がコンマ数秒のスピードで襲い掛かる恐ろしい攻撃も出来る。
結論・個性が戦法に活かしきれてない。