『初手でそれ言うか?仕方ねぇだろ、まだ出久と三奈のドレスイラスト出来てねぇんだから』
「これ書き始めた日は仕上げてたのか?」
『ナイフ作ろうと鉄叩いて七輪の簀の子壊してた』
「ギルティ」
『おっふ···あ、今回ワンフォーオールに独自解釈と言う名の屁理屈をミッチリ混ぜ込んだんで、出久がトンデモ技使います』
(出久サイド)
『第三回戦、第二試合ッ!最後の準決勝を飾るのはこの両雄ッ!
凍てつく吹雪の右半身!!しかして瞳は燃え滾るッ!
Cool&Heatのハイブリッド!轟焦凍ォォォォ!!
VS!!
マッちゃんのシャウトと共に、観客席が沸き上がる。
「さぁ、やろうか。轟君」
「あぁ。緑谷なら、心配無い···全力で、行く」
僕の呼び掛けに、そう答える轟君。さっきとは違って、スッキリとした眼をしている。
『どんな戦いを見せるのかッ!Fight!!』
「ハァッ!」
開戦の合図と同時に、轟君は氷の壁を伸ばしてきた。これなら、大丈夫だ。
「ッシィアッ!」
―バギンッ―
左足を後ろに下げ、ワンフォーオールを纏う。そして右足を抜き、ウェイヴを乗せた右エルボーを突き出した。衝撃は内部に浸透し、氷壁を打ち砕く。
だが、これではまだ終わらない。
「チィアッ!」
抜いた右足を今度は踏み締め、左足を前方に振る。その慣性のままに右足で地面を蹴りつけ、サマーソルトキックを繰り出した。
脱力と怪力で加速した爪先は、鞭のように空気を圧縮し破裂させる。その衝撃波を氷に叩き込む事で、砕けた破片を完全に吹き飛ばした。
(脚部出力、30%!)
まだ腕では耐えられない数値。しかし、頑丈な脚ならば耐えられる。
「流石だな、緑谷!」
声と共に、再び氷壁。今度は馬跳びの要領で飛び越え、轟君本人を目指して滑り降りる。
「クッ」
脅威を感じたか、向かって右側に跳び退きながら氷で盾を作る轟君。だが、その程度の氷塊なら···
「フンッ」
―バキィッ―
「なッ!?」
鞭打で指を打ち付ければ、砕ける。
「···すげぇな。指、全然平気そうだ」
「粗塩入りの砂に抜手しまくって、鍛えてあるからね。人を打てば、骨も砕けるよ」
指をゴキゴキと鳴らしながら、教えてやる。
僕は無個性だった分、技や道具でカバーする必要があった。故に最初期から、指を固める訓練を続けている。だから僕の指は普通より少し太く、また肌の色も濃い。
こう言う骨格レベルの改造訓練は、全身に施してある。ワンフォーオールを使わずとも、せっちゃんに負けない程度には全身凶器だ。
「まだ、左は使わない?」
「···わりぃ、まだ···すぐ、覚悟決めるから」
「んっ、分かった。付き合うよ」
「···ありがとな」
柔らかい笑みを浮かべる轟君。
これは、ただの試合じゃない。僕が轟君に施す、治療の一環だ。
自分の攻撃でも、僕なら捌ける···それを教えてあげれば、自分が感じた痛みを相手に与えるかもしれないと言う恐怖は軽くなる。だから今の彼が出し得る全力を引き出し、そして僕も全力で応えよう。
「ハッ!」
「ツォラッ!」
―ガガガガガガッ バギャンッ―
「はっ···はっ···はぁ···」
荒く吐かれた吐息が、瞬時に白く曇る。冷気を放出し過ぎたのか、轟君のジャージには霜が降りていた。そろそろ、限界だろう。
「ふぅゥゥゥ···ッ」
「覚悟は、決まったみたいだね」
「···あぁ!」
―ゴゥッ―
返事と共に陽炎を放つ、轟君の左腕。満を持して、彼の精神に染み付いていた影が揺らいだらしい。
「焦凍ォォォォッ!!」
「「ッ!」」
と、良い所で観客席から割り込んで来た馬鹿デカい声。振り返るまでも無い。あの
「そうだ焦凍ッ!今お前は、正しく俺の完全な上位互換となったッ!!俺を越えて行けッ!!焦凍ォォォォッ!!」
『如何致しますか?母上』
『口で言っても、埒が明かぬでしょうなぁ』
···そう、そうだ。ドクちゃんやマッちゃんの言う通り、あの男は口では止まらない。仕方無いな、こうしたくは無かったけど。
「···モンティナ・マックス小隊指揮官に伝達。
『御意···小隊員、諸君に伝達。あの熱中症患者製造装置殿に、速やかにご退出願え。呉々も、
『道具は各自、シュレディンガー准尉から受け取るように』
命令が伝わるのを見届け···ブルリと身震い。見れば、轟君が無意識に冷気を吹き出していた。
「おいッ、コラ!何だ貴様ら、何をするッ!」
「キシャーッ」「キシャーッ!」
僕の娘達に金属ワイヤーで縛られ、引き摺られて行くエンデヴァー。流石に此処では、金属を融解させる程の熱は放てまい。
「···仕切り直しだ」
「そうだね」
眼を苛立ちから闘いに切り替え、再び熱を放つ轟君。対して僕は腰を落とし、これから起こるであろう現象に備える。
「···ハァァァァァッ!!」
見えたのは、蒼く染まった轟君の左腕。それが視界に入った瞬間、僕は多少の犠牲も覚悟で右足を蹴り出す。
――――――轟音、衝撃波、振動
視界は瞬く間に真っ白に染まり、僕は宙に浮いていた。
脳内麻薬で引き延ばされた時間の中、ステージ後方、場外に向けて吹っ飛ばされているのだと理解する。
両腕を迅速に頭の上へ。そして人差し指から小指まで、計8本の指にワンフォーオールを20%ずつ流し込み、弾いた。
―ドンッッッッ―
反動が手首から伝わり、背骨、骨盤まで響く。後方へのベクトルとぶつかり合い、急激な失速によってほぼ真下、ステージへと落下した。そこは辛うじて、場外では無いギリギリのライン。
『スッゴい爆発だな···水蒸気爆発か?』
『それだけでは無いでしょう少佐殿。冷やされ切って凝縮されていた空気が、今の熱で一気に膨張したのです。一瞬轟選手の左腕が青くなっているのが見えましたので、恐らく一瞬で1万度以上の急加熱を行ったのでしょう』
「···は、ハハ。これでも、平気か」
若干乾いた笑いを溢しながら、轟君は呟いた。対して僕は、内出血を起こした指をプラプラと振って見せる。
「いや、平気ではないね。手はこんな様だし、右脚もギシギシさ。でも···まだ、終わりじゃない」
「え?」
呆ける轟君に、僕は空を指差した。その先には、真っ黒な曇が渦を巻いている。しかし、その雲は異常だ。光を通さぬ重い雲は、この上空、1ヶ所だけに固まっている。
―ピチャッ ピチャピチャッ ザァァァァァァァ―
と思えば、そこから大雨が降り始めた。
「こ、これって···!」
「君が炸裂させた、水分を多く含んだ爆風···あれを僕は、真上に蹴りあげたんだ。その結果がこの雨であり、あの曇さ。
そして···此処からが、
ずぶ濡れになって大混乱に陥る観客席を余所に、僕は両足で思いっきり跳び上がった。
風を切り裂き、40m程。雨粒の抵抗が大きい中、今度は空気を踏み締める。
―ゴォォォォォォッ―
頭上で曇が光り、稲妻が走った。その稲光に向けて、僕は拳を突き上げる。
―ビッシャァァァァァンッ―
その拳に、落雷。しかし、僕の身体から電気が逃げる事は無い。
ワンフォーオールを全身に張り巡らせて、雷を受けた右拳を全力で握る。赤い血管のような光の中に、雷の黄色いスパークが溶け込んだ。
さぁ、充電完了だ。
バチバチと体表を爆ぜさせながら、高電圧を帯電しているせいで普通よりもゆっくりと落下していく。そのまま拳を引き絞り、全身に電光を弾けさせた。
「ハァァァァァァァァッ!!」
轟君の位置を覚え、眼を閉じる。そしてワンフォーオールを介して体内に溜め込んだ電気を、全開で放電した。
「サァンダァァァァァァッ!!ブレィィィィクゥゥゥゥゥゥッ!!」
―BAZZZZZZZZZッ!!―
降り注ぐ幾つもの小分けにされた翠の雷。コンクリートの地面を焦がし、ギリギリ音速を越えた空気の熱膨張が衝撃波を生む。
「はぁぁぁぁ···」
帯電による斥力が消え、着地。前方には、轟君が倒れている。
『決着ッ!!勝者、緑谷出久ゥゥゥッ!!』
『オヤオヤ、皆さんポカーンとなってますね。今回のはそう簡単に打てる訳じゃありませんのでご安心を』
「···ドクター!」
ドクターロボを呼び、担架に気絶した轟君を乗せた。そして僕も、医務室に着いて行く。
指は真っ赤に腫れてるし、脚はガタガタ。オマケに拳はちょっと焦げちゃってる。治して貰わないと、痛くて敵わない。
(背納サイド)
「勝っちゃったね、ボクの愛弟子♪」
「···」
仏頂面でベンチに座っているエンデヴァーに、ボクはにこやかに話し掛ける。ご機嫌なボクとは反対に、エンデヴァーはかなりイライラしているみたいだ。
「じゃ、約束は約束だ。アンタの遺伝子、ボクの軍に貰うよ?」
「···好きにするが良い」
そう言って、不機嫌さを隠そうともせず口を開けるエンデヴァー。まぁ、当然だろうね。
「じゃ、遠慮無く」
何時ものようにインナーマウスを突っ込み、えずかれる前に胚を産み付ける。
そしてすぐさま引っこ抜き、ニヤリと口角を吊り上げた。
「これで、アンタの能力はボク達の元に下った。優秀な能力が宿るだろうなぁ♪あ、エヴォリューションタイプなら完全上位互換もあり得るか♪」
「ッ!」
オヤオヤ?表情が曇っちゃったねぇ?
「も・し・か・し・て~、俺が長年苦労し続けて漸く出来た事をこの小娘は一瞬で~、とか思ってる?」
「ッ···」
「図星だねぇ。仕方無いよ。ボク達は生物兵器。型落ち品より性能が上がるのは当然さ。
じゃ、次は愛しの弟子との殺し合いだから、ボクは行くね♪」
ニシシと笑いながら、ボクはその場を後にした。
(NOサイド)
「お帰り~轟君に出久~♪」
A組のブロック。出久と轟はリカバリーガールの治療を受け、自分の席に戻った。
プロテインゼリーを飲みつつ、背納が2人を迎える。
「いやー、良い闘いだったねぇ」
「スッゲェな師範!あの雷ビッシャーンッて、あれどうやったんだよ!」
「俺のアイデンティティ無くなってね?」
当然、出久の周りにはクラスメイトが集まって来た。揉みくちゃにされながら、出久は轟を見やった。
(うん、大分憑き物が落ちたね···良かった)
「!···」
(かっ、可愛いッ!)
その視線に気付き、轟は無言で微笑む。その可愛らしい表情に、思わず頭を撫でたくなった。
「あれれれれえ?もう帰ってきたのぉ?」
と、そのタイミングで横から敵意全開な声が掛けられる。B組の物間だ。
「全く、君たちのせいで、何人の人がずぶ濡れにされちゃったと思ってるんだろうねぇ?僕たちも結構濡れちゃってさぁ、オマケにステージが乾くまで試合再開不可!ホンット、自分の事以外考えてないよねぇ?
あーコワイコワイ!こんな奴らがプロヒーローになっちゃったら、周囲にどれだけ被害が出るんだろうねぇ!?」
「ッ!テメェ···」
「ストップ」
物間の煽りに冷気と熱気を纏った轟を、出久が手で制した。
「でも緑谷っ!」
「大丈夫。ほら、落ち着いて?ね?」
高温と低温の両手を柔らかく握り、ベンチに座らせる。そして頭を撫で、優しい声で落ち着かせた。
「···ごめんね?君、何て名前だっけ」
「え?
「ものま、ねいと···成る程成る程、そう言う事か」
名前を認識し、ウンウンと1人納得して頷く出久。この態度が、物間の神経を逆撫でしまくる事は言うまでも無いだろう。
「はァ?何を納得したんだい?A組ってやっぱり失礼―――」
「個性のコピー。それも、相手に接触する事が条件」
「ッ···」
出久の放った言葉に、一瞬物間の眉が跳ねた。
「物間、寧人。ものま、ねいと···物真似···やっぱり、名は体を表すね、どういう訳か···」
呟きながら、フフッと笑う出久。物間はその笑みに、何かを見透かされたような不気味さを感じた。
「コピーしなきゃ、同じ土俵に立てない。コピーするには、素手の間合いを取るしかない。そこに誘い込むには···言うまでも無いね。挑発するのが、最も手っ取り早い。
でも···それだけが理由なら、此処で挑発する理由は無いよねぇ?何でかな?」
「ッ!」
戦法の狙いを、寸分違わず言い当てられた。しかし、物間は異常なまでに不快感を覚える。何か、もっと根幹的な部分まで見透かされているような。
「···ハッ。僕はただ、君たちの自分勝手な行動を批判しただけさ」
「そうかな?僕には、何だか個人的な怨念が籠ってるように感じたんだけど···もしかして、何かコンプレックスでもあるのかな?」
出久の柔らかい、しかし刺のある問い掛けに、物間の目尻がピクリと震えた。
「物真似、コピー。それは、味方や敵がいなければ、無個性と変わらない。戦闘ならさっきのように煽れば済む事も多いが、ことレスキューでは事前にコピーでもしておかなきゃ、動き様が無い」
「おい、止せよ」
「でも君は此処にいる。きっと、すごく努力したんだろうねぇ。色んな苦難にぶつかりながら···」
「止せって···」
「いやはや、すごいよ君は。だって···」
「おいッ!止め―――」
「どんなに他人に、
「ッ!!」
飄々とした表情だった、苦虫を噛み潰したようなそれに変わる。
「どれだけ否定されても夢を諦めず、また相応に現実も見て努力した。君の皮肉は、その努力によって染み付いた、半ば習性のような物なんじゃないかな?」
「···き、君は何が言いたいのかな?」
「別に?強いて言うなら···今更野暮な事を言うもんじゃない、って所かな。
雄英体育祭のバトルトーナメントなんて、規格外同士の衝突にならない訳が無いじゃないか。見に来てるって事は、当然それを織り込み済みなんだよ。君にとやかく言われる筋合いは無い。
あと、背後に注意」
「え···ッ!?」
―バァンッッ!!―
「がッ!?!?」
振り返った物間の眼前で、回り込んでいた背納の
「フンッ!」「シャッ!」
―ドドンッ―
爆音で思考が吹き飛んだ隙に、左肩前方に背納が、右肩後方に出久が、それぞれウェイヴパンチを叩き込んだ。
打ち込まれた衝撃で、物間の身体は反転。意識も刈り取られ、崩れ落ちる。
「どうもこんにちはプレデリ診療所です。どんな症状ですか?A組が憎たらしくて堪らない?花粉症ですね!お薬として拳を処方しておきました!KA・TA・TA・TA・KI☆
これであなたも肩凝り知らず!花粉症に関係無い?いやいやそんな事は御座いません♪
今日の診察は終わりです!お大事に、
気絶した物間にジョークを落として、背納は敷居を乗り越えた。
「さて、次はいよいよ決勝だ。ちゃんとボクを殺してくれよ?」
「あぁ。ご期待に添えるよう、全力で殺してあげる」
にこやかに交わされる会話の内容は、とんでもなく異質。そしてその会話にクラスメイトが固まる中、背納がアクションを起こした。
「んちゅっ」
『ッッ!?!?』
何と、出久にキスをしたのだ。クラスメイト達は顔を赤らめアワアワと狼狽えるか、キャーキャーと騒ぐか···若干2名程血涙を流す者もいる。
―ゴプッ―
「んぐっ···ぷはっ!もうせっちゃん!このタイミングで?」
送り込まれた粘液を飲み込み、出久は咎めるような口調で背納に問う。
この粘液は、接種した者の体質を変異させる改造液だ。最近出久に教えた能力である。
「大丈夫!耐酸性上げただけだから!
あ、そうそう。ウォルターに頼んでた
「あー、うん。分かったよ」
「じゃ、後でね?愛弟子♪」
「···はぁ」
出久は溜め息を吐きながら、控え室に向かう背納を見送るのだった。
to be continued···
~キャラクター紹介~
緑谷出久
どうも、現代忍者デクです。ニンニン。
とんでもない技を繰り出したママ男子。全力を引き出す為に防戦で余裕を見せたのは、坂口拓さんがチームにやっている教育方法そのまんま。
サンダーブレイクの原理としては、ワンフォーオールの《内部にエネルギーを受け入れ、蓄える》と言う性質を応用したもの。習得したのは、オールマイトから受け取って浜辺で練習している時。
また、転生者である背納から精神面の教育も受けた為、この世界の名前の法則に気付いている。啓蒙が高い。
今回物間に対して行ったのは、心の鍵開けの応用。相手の仕草から心理状態を読み取り、痛い所をほじくり返して精神ダメージを与える攻撃。マジの戦闘なら、ここに物理的な攻撃も叩き込んでトラウマを植え付ける。
轟焦凍
出久にデレデレになる子。
原作よりもかなりスッキリしている。今回の闘いを通して、出久を全力で胸を借りられる頼もしい格上と認識した。
因みに最後のサンダーブレイク時、出久の事が天使に見えて見蕩れていた。
背納がいきなり出久にキスした時、ちょっとイラッとした。
触出背納
化物主人公。出久が啓蒙高い原因。
賭けに大勝ちし、無事エンデヴァーに産み付ける事に成功。
出久が物間に話し掛けた時、徐々に距離を詰めていた所から何をしようとしてるのか察して物間の背後に回り込んだ。そしてウェイヴパンチ!
因みに敵に対しては拳だけでなくテールスピアやリストブレイドも処方してくれる。これであなたも病気知らず!
轟君を轟ちゃんにするの、ぶっちゃけアリ?
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アリ。やっちまえ。
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流石に自重しろバカ。ダメに決まってんだろ
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まずは薔薇を咲かせてからだ。