捕食少女の闘争アカデミア   作:エターナルドーパント

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『【朗報】めっちゃ良くしてくれる気さくなおっちゃん上司がゼロレンジ体験者だった』
「モチベ上がってんなぁ」
『辞めたい辞めたいと絶望してたけど、あの人となら頑張れる気がするわ』
「おう、頑張ってんな!」


第25話 化物の対決/少年の開戦

(背納サイド)

 

「行くよゼクトール、ダーゼルブ、エレゲンにザンクルス」

「はっ」

「御意」

「承知」

「了解」

朝。ボクはハイパーゼノモーフに新たなメンバーを加え、ホテルを出た。

ザンクルスは、狙い通り腕にブレードが生えたスラッシュモーフになった。しかも拳の上からジャマダハルみたいな刃が生えていて、手は普通に物を掴めると言うから素晴らしい。

「さぁてと、今日は見付かるかなぁ···肉親喰らい」

未だ見ぬ強敵を夢想しながら、ボクはファットの事務所へと脚を進めた。

 

―――

――

 

「へぇ、そっちもまずまずなんだね」

『そうだね。昨日は自殺しようとしてた子の話も聞いてあげられたし。

新しいコスチュームも、結構使い勝手が良いから助かってるよ』

昼前。特に何事も無くパトロールを終えたボクらは、電車に乗ってちょっぴり遠出する。その間は暇だから、出久とイヤーカフスで通話中だ。

「じゃ、仇狩り頑張ってね」

『そっちもね。僕以外に殺されちゃダメだよ?』

「ハハハ、分かっているともさ」

そう挨拶を交わして、通話を切る。目を閉じて少し意識を集中すれば、別車両に分散して親衛隊員が乗って居るのが分かる。

ボクの隣と前には、ゼクトール、ダーゼルブ、ザンクルス。更に近くには、ドクとマックスも座ってる。

出久の方にもウォルターを付けてあるし、万に1つも死にはしないだろう。億に1つあるかどうかだ。

「おっ、投資が当たりました。1000万程増えましたよ」

「おぉ!でかしたぞドク!」

···何かヤバい会話が聞こえたけど、まぁ流すとしよう。そう言えば最近、口座の残高確認してないなぁ···ヤバい事になってるんだろうなぁ。管理してるのがあの自重知らずのドクだし。全く誰に似たのやら···あ、ボクだわ。方向性が違うだけだわ。

「グギギン。ゴソゴソゼスジョ」

「ん、パバデデスジョ」

スマホをポーチに仕舞い、席を立つ。

「···流石に、ボディスーツでも着るべきかな」

何か周囲の男の子達がドギマギしてる。まぁ、ほぼビキニアーマーみたいなもんだしなぁ。ボクの強酸血もガラスや炭素は侵食しないし、カーボンファイバーの通気性の良いやつでも注文しとこ。

「お、クイーンちゃん。ほな行こか」

「了解、行きますかね」

電車が駅に停まると、ファットを先頭にゾロゾロと降りる。

かなり視線が集中しているのが気配で分かるが、周囲からすればどう見ても敵な連中を連れてファットがズンズン歩いてるんだから、仕方無いっちゃ仕方無い。

 

「なぁ、あれってもしかして···」

「あぁ、間違いねぇ。少佐殿の演説カマした雄英生だ」

「すげぇ度胸してるぜ···」

 

お、どうやらHELLSINGを知ってる子も居たみたいだね。

うむ。この歪みと狂気で満ちた世界で生きるには、HELLSINGの精神論はまさに教科書だからね。

 

「うわ、エッロ···」

 

―カシャッ―

 

···うん、盗撮(ソレ)はダメだね。

(エレゲン、やれ)

(承知しました)

「ん?あれ?ど、どうなってんだ!?」

後方から、不届き者の狼狽える声が聴こえてくる。そんな盗撮魔を鼻で嗤い、エレゲンは持ち上げていた触手を下ろした。

指向性の電子ビームを打ち出す、所謂電子銃。エレゲンはそれを、体内の通電回路を操作する事で再現したのだろう。ブラウン管テレビなんかにも使われていたものだが、エレゲンのそれは出力が桁違いだ。それこそ、精密機械を即座に破壊する事が出来る処か、強くすれば遠隔で人を感電させられる。

しかも、一極集中の指向性故に目標を精密に狙う事が出来る。更にエレゲンは電磁波ソナーによって、敵方を精密に観測可能。謂わば、ピンポイント狙撃してくるEMP兵器だ。精密機械を使う相手になら、圧倒的に有利だね。

「あー、クイーンちゃん。事務所出る前も言うたけど、この辺は結構、そのー、治安が宜しゅうあらへんでな。気ぃ付けるんやで」

「あぁ、分かっていますとも。そもそも狩りとはそう言うもの。どんな奴が来ようとも、狩り返り討つだけですよ」

「クククッ···」

「フフフ···」

ドクとマックスが獰猛な笑みを浮かべ、それに続いて着いて来た親衛隊員も低く笑う。

「っ···そ、そうか!ほなら頼もしいな!」

一瞬青ざめたものの、直ぐにまた歩き出すファット。こうやって気丈に振る舞えるのもまた、彼が人気者である由縁だろう。

「この辺りでは最近、新しいタイプの()()()()が流行っているらしいですな」

「おぉ、流石ドクちゃん。よぅ調べとるな」

「トリガー、ねぇ」

トリガー···個性因子の働きを強化し、一時的に個性出力を大幅に引き上げる薬物。昨日のコンビニ強盗が使った奴もその類いだ。

聞くところによれば、エレゲンの宿主となったあのデンキウナギ君も、トリガーの過剰投与で人間態に戻れなくなったらしい。

「まぁ、トリガー自体は否定しないさ。ボクの緊縛封印術式(クロムウェル)だって、脳内麻薬を過剰分泌させて火事場の馬鹿力を出すものだし。戦闘には使えるもん使って、勝率あげるのは当然さね。不粋だの何だのと言うのは、それを赦される一部の達人か試合しか出来ない素人かだ。

ただ、其処に快楽目的のドラッグを混ぜ混むのは気に食わない。薬に酔わずとも、闘いに、血に酔えば良いものを···それでは、手段と目的がまるであべこべだ。戦いを目的に薬を使う筈が、逆に薬を使う為に戦う事になる。それでは最早、飢えた獣と何の違いがある?

薬物に魂を売り飛ばすような害獣は、即刻刈り取らねば···否、狩り取らねば!撫で斬り根切り根絶やさねばッ···!」

「ちょッ、落ち着きぃや!クイーンちゃんの過去に何があったか知らんけど、そう過激になったらアカンって···」

···あぁ、分かっているともさ。そんな事は不可能だと。

武術、買収、毒・麻薬···これらが無い国は存在しない。それらは国を回す為、常に一定の需要があるからだ。幾ら芽を狩り潰そうが、根っこの部分はキリが無い。

(グギギン!リヅゲラギダ!)

(!ジョブジャダダ!)

「ッ!クイーンちゃん!敵や!」

散会させていた親衛隊から報告が飛び込み、一拍遅れてファットにも通信が入ったらしい。

ボクはビルの壁面を駆け登り、ゼノが発するシグナルに向かって最短距離で駆け抜ける。

ビルとビルの間を飛び越え、電柱を足場に道路上を跳躍。数十秒も掛からず、野次馬の叫び声が聴こえて来た。

 

「ヴオォォォォォォォオオオオッ!!!!」

 

ビルから飛び降りながら、腹筋、肋骨、背骨の丸めまで全て使っての、即興で出し得る最大音量の猿叫。喉が若干掠れた気がするが、まぁどうでも良い。

暴れていた醜いキメラのような敵はその声に驚き、此方を振り向いた。口許は血で染まっており、地面には喰い殺されたのであろう死体が転がっている。

『あ゛···セナ、ちゃん···?』

「あ?」

コイツ、何でボクの名前を···取り敢えず、連絡するか。

(マックス!)

(送れ)

(ファットガムに伝達。敵コードネーム《肉親喰らい》と接敵、戦闘許可求む)

(了解···通達完了)

『クイーンちゃん!どうやら君が一番早う着いたらしいな。しゃあない!戦闘許可は出すが、殺したりしたらアカンで!』

「それは向こうの出方に依るねぇ」

通信を切り、再度意識を前方の肉親喰らいに戻す。どうやら律儀に待っていてくれたらしい。

『久し振りィ···だよねぇ?』

「知り合いだったっけ?」

『酷いなァ···ボクの家に、ちょっとだけ住んでたじゃない』

「···もしかして、親戚の何処かの子かな?」

そう言えば、盥回しにされた家の中には子供がいるとこもあったな。当時小学生だったろうに、良く覚えてたもんだよ。

『ネェ見てセナちゃん!俺の個性!』

そう言って、腕から歪な刃やねじくれたスパイクを生やす。更に全身の筋肉が肥大化し、黒い鱗に覆われた。

「そんなに溜め込んだのか」

『ウン!今までズッとガマンしてたケど、もうそんナ事しないよ!ボクはもう、ダレにもボクをバカにさせない!ハハハハッ!』

あぁ、これは···発狂してるな。それも、中途半端に。

表情こそ笑ってるものの、眼はまるでガラス玉。人間としての生気が消え失せている。

『あぁ···セナちゃん、いい匂イがスるなァ···

セナちゃんも、美味しそう』

バギャリと生々しい音を立てて、不揃いで鋭い牙が並ぶ口腔が開かれた。

臼歯の存在しないそれは、さながら肉を切り裂き丸呑むサメのそれ。切島鋭児郎も中々のギザ歯だったが、あれ以上だ。

「成る程、君も腹の底の狂気(バケモノ)に呑まれたか。

まぁ良い。ボクも君も、欲しがっているモノは同じだからね」

ゴキリと首を鳴らし、肩甲骨を引き出す。同時にリストブレイドとシミターブレイドを展開し、地面にギャリギャリと擦らせた。

『イただキマス』

「喰えるものならお好きにどうぞ!大火傷するかもだけどね!」

 

―ギャギリンッ―

 

両腕のブレイドを擦り付け、火花を散らす。それを合図に、奴は殴り掛かって来た。

『ア゛ァァァァァッ!』

力任せのテレフォンパンチ。図体がデカい分だけ拳の面積も大きいが、ボクなら何の問題も無い。

 

―ガギャギリンッ―

 

「···へぇ?」

シミターブレイドで拳を弾き上げながら、脇下に潜り込みリストブレイドの外縁の刃で腹斜筋辺りを撫で付けるように斬る。しかし、真っ黒な鱗は火花を散らしこそしたものの、その下の肉までは刃が通らない。

「この臭い、硫化鉄?···成る程、ウロコフネタマガイ(スケーリーフット)か」

ウロコフネタマガイ。インド洋中央領海の熱水噴出孔で発見された巻き貝であり、硫化鉄で出来た鱗を纏う事から鎧の足(スケーリーフット)とも呼ばれる。

良く見れば、肩の辺りには貝殻の名残であろう黒いアワビのような殻がある。まさかこんな個性が身内にいたとはね。精神的に色々参ってたせいか、意外と覚えてないもんだ。

『アハハハハッ!ぜーんぜん痛クないヨ!セナちゃァァァァんッ!!』

狂ったように笑いながら、今度は左腕に生えたブレードで斬り付けてくる。だが此方も馬鹿じゃない。リストブレイドの刃の窪みで受け止め、左ガントレットを振り下ろして叩き折った。

 

―バギャッ―

 

『イッテェェェェエ!?!?』

「ふーん、金属じゃないと思ったら、骨刀身(ボーンブレイド)か」

金属光沢の無いその刃を見てみれば、中には骨髄が入っている。

へし折られたボーンブレイドからは血が溢れ出すが、直ぐ様引っ込めて止血した。どうやら最低限頭は回るみたいだ。

にしても、中々攻撃的な個性だな。両親の個性は、それぞれスケーリーフットとボーンブレイドだろう。拳から飛び出していたスパイクも、ボーンブレイドの応用かな。

「まぁ、スケーリーフットは兎も角ボーンブレイドは要らないかな。凶器は四肢と尻尾で足りてるし。ほら、何時までヘバってんのさ」

『殺スッ!死ねッ!シネェッ!!』

まるで癇癪を起こしたように、肥大化した腕を振り回す。貝類の筋力は、種類によっては抵抗や水圧の強い海底で大きく跳躍する程。世間一般の鈍間なイメージとは裏腹に、意外と馬鹿に出来ないモノがあるからねぇ。それに、あの鱗。掠っただけでも紅葉おろしにされそうだ。

『クッソォォ!喰ワレロ!喰ワレロヨ!セナァァァァッッッ!!』

「クハハハハハッ!6年以上技を磨き上げた筋金入りの化物を、お前如き童貞捨てたばかりのど素人になんざ殺せると思わねぇこったなァ!

緊縛封印術式(クロムウェル)第1号、解放ッ!」

脳内麻薬を大量分泌し、視界が真っ赤に染まる。口から溢れた唾液を滴らせ、重心を大きく落とした。

そして地面を足の指で掴むように蹴り出し、コンピューターガントレットに付いていた武装を掴んで突き出した。

 

―ガギョンッ―

 

『ゴグァッ!?』

腹に叩き込んだ棒状の武器を引き戻し、リストブレイドで頬を斬り付ける。流石に僅かだが通ったようで、血を吹き出しながらすっ飛んだ。

左手に持った棒状の武器を軽く捻ると、特殊警棒のように両端が伸び、先端に三叉槍のような刃が展開する。

コンビスティックと呼ばれる、プレデターの武器。伸縮自在の槍だ。

「そのご自慢の鎧、剥いでやる!」

真っ黒な鱗を、コンビスティックで突く、突く、突く。そしてその三叉の穂先は一突き毎に鱗を剥がし、血を吹き出させた。

更にリストブレイドやレイザーディスクも使い、邪魔な鱗を削ぎ落としていく。

『アァァァァァッ!!イタイ!イタイィィィ!!』

悲鳴は上げるものの、依然戦意の喪失は見られない。寧ろ暴れ続けているまである。まぁ、周りに矢鱈目ったら当たり散らさずボクだけに向かってきてるのは素直で良い子と言えるけど。

(マックス、状況)

(周囲の邪魔物は排除しました。他のプロも到着済みですが、クイーンの闘いに少しフリーズしていますね)

(よし。連携も取れないし邪魔だから待機させといて。これはボクの獲物だから)

(了解)

『ウガァァァァッ!!』

「おっと危ない」

隙有りと見てか、殴り掛かって来る肉親喰らい。ボクは拳をシミターで流し、同時に膝を上から蹴り抜いた。

 

―ボギャッ―

 

『ギャァァァァァァアッ!?!?』

膝関節が砕け、逆向きに曲がる。更に両肩も打ち据え、神経を麻痺させた。

「ほら、どうした?もうおねむの時間かい?糞餓鬼」

リストブレイドを噛ませ、即席のギャグにする。そして頭を掴み上げ、眼を合わせてやった。

「フン、同じ化物の血が流れているかと思ったが···期待外れも良いとこだ。唯々狂気に呑まれ、力を振り回す···いや、違うな。()()()()()()()()()()だけ。最早化物じゃない。血に飢えた只の(けだもの)だ」

 

―バギッ―

 

『アガァァァァァ!?!?』

右肩から波を送って、顎を外す。

其処からインナーマウスを食道に挿入し、胚を3()()産み付けた。

「お前の力は、獣が振るうには勿体無い。ボク達が有効活用してやるよ」

トントンッと軽く地面を蹴り、後ろに下がる。そしてコンピューターガントレットを向け、バシュッと言う音と共にアラミド繊維製のネットを撃ち出した。これもプレデターの装備であり、机の上に置いといたコスチューム要望書類にドクが勝手に書き出した武装の1つだ。

頭から上半身にスッポリ覆い被さるように包み込むアラミドネット。更に、それをパラコードで絞って拘束する。

「はぁ、全く喰い足りない···やはり、獣狩りでは所詮こんなものか···ボクを満足させられるのは、出久だけだ」

出久との死闘を愛おしく想いながら、そう呟く。ヒーロー達も集まって来たし、間も無く拘束輸送車、通称処女(メイデン)がやって来るだろう。

貞操のお堅いお嬢様ってネーミングか?腹の中に人入れて運ぶなら母親系の性質だと思うんだがなぁ。それに付ける名前が処女とはこれ如何に。

兎に角、目標は達成した。これでボクは、次のステージに進化出来るだろう。

ゼノモーフの本質は、()()()()、そして()()にある。漸く、2つ目のステップを踏めるのだ。

 

(出久サイド)

 

―シャリッ―

 

「ん···ヨシ···」

研いでいたカランビットの刃を指紋で撫で、切れ味を確認。作業を終えて、シャープナーをコスチュームボックスにしまう。

最後に刀身を黒錆剤で安定させ、ウェストサポーターに付いたホルスターに収納した。

「オイ坊主、行くぞ」

「あ、ハイ。分かりました」

装備を手早く確認し、ソウルイーターを装着。アタッシュケースを手にダークグリーンのパーカーを羽織り、グラントリノと一緒にボロアパートを出る。

表街道は赤い夕日で照らされており、既に街頭の影はかなり伸びていた。

現在時刻、1700(ヒトナナマルマル)。今日はこの時間から、活動開始だ。

「しかし、リクエストが保須(ほす)か···丁度、()()()()()()が出てるんだってな。関係あんのか?」

「ええ···まぁ、そうですね」

グラントリノが問い掛けに、短く答える。

ヒーロー殺し···今、世間を賑わせている敵だ。風貌は真っ赤なマフラー、目元を覆うマスク、全身に携帯した無数の刃物、と言った具合らしい。

ウォルちゃん曰く、使っていた刀はボロボロに刃こぼれしていたとの事。恐らく、苦痛を与える為にわざとそうしているのだろうとも言っていた。しかも、その刀は銘の刻まれていない、謂わば闇刀であると来た。

日本刀は本来、それを造った刀匠が銘を切り、管理機関に登録する事を義務付けられている。それを放棄していると来れば、完全に違法な物品だ。

と、話を戻そう。

「止めなくて、良かったんですか?」

「コラ、見くびるなよ坊主。お前さんが止めて止まるタマじゃねぇ事ぐれぇ、ちっと見りゃァ分かる」

「これはこれは···」

どうやら、良く分かってくれているようだ。これなら心配無さそうだな。

「だが、それはそれとして···1つ聞いとく。

お前さんの()()は···()()()()()、怨みか何かか?」

「···」

グラントリノの言う()()···恐らく、僕の腹の奥底の悪意を見抜いての事だろう。やはり、敵わない。

「···いいえ」

たっぷりと間を置き、僕はそう答えた。

「詳しく全てを話す事は出来ません。でも···大事な友達の、そのまた友達の無念です」

 

――ジュンが、ヒーロー殺しにやられちまったんだ···ギリギリ生きちゃいるけど、丸3日経っても眼を覚まさねぇって···

なぁ、出久のアニィ!無理は承知で、お願いだよ!俺のダチの···()()()()()()()()()()()()()()()()()バカな俺に、1人だけ後ろ指差さず昔と変わらず接してくれた、大好きなダチの無念を···仇を···ッ――

 

溢れる嗚咽。零れる涙。友達に降り掛かった理不尽を、自分の事のように···否、それ以上に深く悲しむ、優しい男からの頼み。友達故に、答えたいと思った次第だ。

「ふぅーん···まぁ、濁ってりゃ蹴っ飛ばしてでも止めるかと思っちゃいたが···しっかり澄んだ眼ェしてやがるな」

「勿論です、プロですから」

「有精卵が何言ってやがる」

「あたっ」

映画ネタで返したら蹴られてしまった。うーん、コマンドー知らないかぁ。

「あと、冷静さ欠いて叫びながら正面突撃するんじゃねぇぞ。ガス抜きされちまうからな」

「あ知ってた?コマンドー知ってたんですか?」

「おうよ。ガキの頃からな」

おぉ、これは嬉しい。こういう好きな作品を共有出来る人を見付けるのは最高だ。

···まぁ、僕の教科書たるRE:BORNを知ってる人には会った事無いんだけど···

「スィ、ママ♪」

「あ、ウォルちゃん」

駅に着くなり、何時ものバトラー服姿のウォルちゃんと合流。全員で切符を買い、新幹線に乗る。

〈ショウちゃん、そっちはどう?僕はこれから保須に行くよ〉

〈こっちもだ。これから、保須に行く。会えたら良いな〉

〈そうだね〉

()()()()()()の現状を確認し、フフッと微笑む。精神的にも安定してるし、問題も無さそうだ。

「おっ、クイーンは目標達成だってさ」

「ん、連絡来た?」

ウォルちゃんの報告にパッとLINEを見てみれば、ニヒルに片頬を吊り上げてピースサインをしているせっちゃんの写真が。

「あー、でもこれは···」

「不完全燃焼だねぇ、この顔は」

これは不満に妥協して呑み下し、目標達成出来ただけ良しとしよう、って顔だ。

多分、相手が詰まらなかったんだろうなぁ。

〈帰ったら相手してあげる。頑張ってね〉

〈\(゚∀゚)/ヤッター〉

秒で顔文字が帰って来た。これは大分餓えてるな···

まぁ、求めてるハードルが高過ぎるっていう問題もあるけどね。

 

『次は~、保須~、保須~』

 

「と、そろそろ着く···あぶッ!!」

 

―ガギャァァンッ―

 

窓の外に、一瞬チラリと見えた何か。僕が反射的に頭を守ると同時に、それは新幹線に直撃。壁を突き破り、車内に転がり込んだ。

その正体は、飛行能力のあるヒーロー。しかし背中のジェットパックのようなサポートアイテムを初め、全身に纏ったプロテクターはひび割れ、砕け、ひしゃげている。そして、その惨状は外見に限ったものである筈も無く。

左上腕骨は砕け、右手の指は歪に歪んでいる。左大腿骨に至っては、折れた断面が皮膚を貫き露出、所謂開放骨折と呼ばれる状態になっていた。

「クソッ!」

 

―メリメリメリメリッ バギッ―

 

その状態を見て悪態を吐いた瞬間、新幹線に開いた大穴から更に金属が捲られ、裂き千切られる音が聴こえてくる。

そちらに眼を向けると、其処には見たくもないモノがいた。

異常に細長い両腕に、ホルマリン漬けにされたような真っ白な肌。そして何よりも、露出した脳に直接埋め込まれた4つの目玉。

(脳無―――――!)

認識と同時に、ワンフォーオールで神経系を加速。眼球を即座に転がし、周囲を確認。

 

―ドドガンッ!―

 

そして、脳無の向かいにある壁に跳躍。其処から三角跳びで方向転換し、脳無の腹に肘を叩き込んだ。

奇しくも、そのタイミングはグラントリノが脳無を蹴り飛ばしたのと同じだった。

2人分の衝撃を諸に流し込み、脳無を車外に叩き飛ばす事に成功する。

「チッ、坊主!許可は出しとく!あんま派手するんじゃねぇぞ!」

了解(ヤー)ッ!ウォルター!報告ッ!」

「脳無複数!上空に有翼飛翔タイプ1体!眼下に最低3体の近接タイプ!」

「了解!車体を防衛、負傷者の応急手当て!個別判断で下のヒーローの援助!」

「スィ、ママ!」

外に出たウォルターからの報告を受け取り、指令を返す。ウォルターはグローブからワイヤーを飛ばし、自分のテリトリーを瞬時に確立した。

「この時間帯だと···4滴染色ぐらいで良いか」

アタッシュケースに設けられた注入孔に、ペットボトルの水と紺色染色液を入れる。それを持ったまま、僕は線路に出た。

「ア゛アァァァ···」

肉を抉るつもりで肘を叩き込んだ脳無だったが、既に起き上がっている。

陽月剣を抜き、両肩と両股関節を斬った。大本になる神経の束を破壊したので、普通は動けない。

「ア゛ア゛ァァァッ!!」

「チッ」

しかし、コイツは平然と動いて反撃して来た。どうやら普通じゃないらしい。

「神経そのものが多い。その上、昆虫みたいな神経節もあるっぽいか···」

迫り来る腕を捌き、中指の第二関節を突き出した拳を、まずは左大胸筋と脇の隙間に撃ち込む。

「オ゛ガッ!?」

すると、左腕の力が弱くなった。上手く行ったらしい。

(神経節があるであろう場所···全て、打ち込んでやる)

思考を引き延ばし、針に糸を通すようなパンチのラッシュを開始する。

左肩、右肘、脇腹、首筋、太股、股関節···時には中指を開いて、刺突攻撃も織り混ぜる。

「ノッキングウェイヴ···」

とある漫画のトンデモ技術を、僕なりに再現したもの。敵の神経系が集中している場所に当たりを付け、其処に一極集中のウェイヴを染み込ませる事で、神経伝達を物理的に阻害する。

後遺症が残る危険があったり、前回の脳無は衝撃吸収型だったりしたせいで使う機会が無かった。そもそも、幾ら僕でも神経は見抜けない。サメ系のロレンチーニ瓶のような電磁波センサーでも無い限り、神経系の位置の掌握はほぼ不可能。言ってしまえば当てずっぽうで、そこそこ運が必要なのだが···今回は、上手く行ったみたいだ。

5秒経ったかどうかで、脳無は膝から頭ごと崩れ落ちた。

「ウォルター!この脳無の拘束を!念の為に手足から口まで一切の自由を奪っておいて!」

「了解!」

列車は完全にウォルターに任せて、僕は線路上から跳躍。指で空気を弾いて勢いを殺し、街頭を蹴って衝撃を吸収。そのまま地上に降りる。そして、目の前にいた下顎に直接脳ミソが乗っている眼の無い黒い脳無の脇下に滑り込み、陰月刀で下から肩関節を抉った。

そこから素早く刃を引き抜き、更に逆脇、首筋、肩口、尻側股関節を切り刻む。

 

―ボギャッ―

 

最後に脚払いを掛け、肘関節を踏み砕いて固定した。

2体目、処理完了。

「飯田くーん!クソッ、何処に行ったんだ!」

「···マニュアル?」

今必要としているワードを、脳が聞き分けた。首だけで振り向くと、其処にいたのは飯田君の職場体験先、水を操作する能力を持つヒーローであるマニュアルがいた。

「失礼、マニュアル。行方不明なんですか?飯田君が?」

「き、君は雄英の!そうなんだ!つい5分ぐらい前までは、一緒にいたのに···」

···成る程。規則を重んじる真面目君そのものみたいな飯田君が、無断で単独行動か。その原因には、1つだけ心当たりがある。

「此処までは、どんなルートで?」

「え?あっちの通りを道なりに、だけど···」

「了解」

それだけ分かれば十分。其処ら中歩き回ってないなら好都合だ。

僕は指差された方向に、勢い良く走り出す。そしてその片手間に、アタッシュケースのロックを外した。

 

to be continued・・・




~キャラクター紹介~

触出背納
不完全燃焼な化物主人公。
ちょっと露出多めなのを気にし始めた。
人海戦術で即座に目標を発見し、見事目的を達成。しかし戦闘では無く蹂躙となってしまい、絶賛イライラ中。
今回始めて使った武装は、コンビスティックとネットランチャー。どちらもAVPに登場する武器である。
自分と言い肉親喰らいと言い、化物タイプの生まれやすい家系だなーと思っている。
3体の胚を産み付けたが、親衛隊員に加えるのは1体。残りの胚の使い道とは···?

エレゲン
デンキウナギの性質を持つハイパーゼノモーフ5人衆の1人。
素体は、外伝《ヴィジランテ》に登場したデンキウナギ君。しかしコミックスはBOOK・OFFで立ち読みした程度のため、彼が現在まで無事かは分からない。後からご都合主義が発動するかも。
能力は、全身の細胞での発電と放電。更に体内の電気抵抗の操作から電磁波センサー、電子ビームの照射までかなり多岐に及ぶ。

ダーゼルブ&ザンクルス
今回は顔見せだけ。
ダーゼルブは大柄でマッシブ且つ全身真っ赤。ザンクルスは対称的に細く、腕の甲側から生体ブレードが生えている。イメージはハガレンのエドがオートメイルの装甲で錬成した剣。
今回は待機してたが出番無し。なので能力の細かい解説も無し。

緑谷出久
現代忍者デクです、ニンニン。
相変わらず洞察力が異常。LINEでやり取りしてた《ショウちゃん》については、まぁ言わずもがな。
原作と違って、既にオールマイトとは別の流れを編み出してほぼほぼ使い熟している為、グラントリノからは戦闘許可を貰っている。
因みに、今回のトンデモ技術であるノッキングの原点は言わずもがな《トリコ》。正確にはアイスヘル編の鉄平が、トミーロッドをノッキングした時のインパクトノッキング。神経系まで結構弄くってあるであろう脳無を行動不能にするとかマジで何なんだコイツは···まぁ失敗する時もあるっぽい。今回は所謂初登場補正。
その次の脳無も、瞬時に無力化。ヒト型生物の身体の破壊方法を熟知し過ぎている。
今回で、ベン・トー回の最後に出た彼がどんな人物か、まぁ大まかに分かった事でしょう。

ウォルター・C・ドルネーズ
ファーストズーグ専属の執事(バトラー)であり、同時に出久の武器職人(ブラックスミス)
彼女が居なければ出久が新幹線からすぐに離れられなかったので、地味にお手柄である。
武器職人をしている都合上、武器に込められた意図等に敏感。

轟君を轟ちゃんにするの、ぶっちゃけアリ?

  • アリ。やっちまえ。
  • 流石に自重しろバカ。ダメに決まってんだろ
  • まずは薔薇を咲かせてからだ。
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