「大遅刻だけどことよろだでぇ」
『新年一発目って事で、ちょっと短めです』
「ごめんちゃい!」
(背納サイド)
─ダパォッ─
「ッ・・・!」「っ~♪」
肉を打つ感触。内臓を抉った手応え。
飛んでくる反撃。鋭い熱。
あぁ、矢張り出久だ。ボクを満足させてくれるのは、出久しか居ない!
「ッシッ!」「チアッ!」
出久のカーフキックに合わせて跳躍し、両脚で出久の腹に組み付く。そして両手も掴んで組み伏せ、テールスピアを眼前に突き付けた。
「・・・はぁ、参りました」
「宜しい!」
ポンと跳んで立ち上がり、出久を引っ張り起こす。
「うげぇ・・・内臓が滅茶苦茶になっちゃってる・・・」
「結構本気で打ち込んだからね。でも上手いこと散らしてたじゃん」
「散らさなきゃ五臓六腑がスムージーになってるよ・・・うへぇ、痣が・・・」
出久が腹を捲ると、ボクが殴った場所が赤黒い痣になっていた。こんなダメージを叩き込まれても、怯まず反撃してくるなんて・・・あぁ、何て愛おしい弟子だろうか。
「あー・・・うっとりしてるとこ失礼。終わったかな?」
「えぇ、終わりましたよ」
若干引き気味のオールマイトに返し、頬を親指で拭う。血を滲ませる一文字の浅い切り傷は、出久の指に鋭く斬り付けられたものだ。出久の鍛え上げた指はそのコントロールによって、錐にもナイフにも鎖鞭にもなる。僕にも負けない全身凶器だ。
と言うか、ボクと違って何所がどう言う武器として作用するか一目じゃ絶対分からない事を考えると、下手すりゃボクよりタチが悪い。
「出久、大丈夫か?」
「うん。もう治ってきた」
「兄弟子回復早ない?」
「当然さ。出久が今まで、何体のゼノモーフを産んできたと思う?」
出久の肉体は細胞の一片まで、ボクの侵略改造液でバッチバチに調整してある。つまり、ゼノモーフのそれにかなり近い体質になっている訳だ。故に、化物の回復力の片鱗を持っている。
「あー、訓練は出来るって感じで?」
「オフコース♪」
「モーマンタイですよ、オールマイト」
「そ、そうか。それは良かった・・・では今回の訓練、説明しよう!」
そう言って、オールマイトからの説明が始まった。
要するに、工業地帯で立体機動を駆使しながら指定されたポイントまで競争、と言う訳だ。ボク達の十八番だね。
因みに、ゴール側にはカメラがあって、スタート地点からモニター出来るようになっている。
「ではクイーン、オープンボイスチャットを」
「オッケー」
マックスとドクがスマホでボイスチャットを開始し、其処にボクが参加する。そして2人はそれぞれ駆け出し、全体を見渡せる高所に陣取った。
『Start!!』
『さぁ始まりました立体機動レース!各選手綺麗なスタートを切りましたがおぉっと速い!速いぞ1番人気緑谷選手!』
『それを追う4番人気瀬呂選手!2番常闇選手!3番麗日選手!』
スタートと同時に始まるドクとマックスの実況。最早お家芸と化したそれを聞きながら、戦況を見遣る。
にしても、何でこんな競馬みたいな実況なんだろうか・・・
『さぁ緑谷選手逃げる逃げるッ!瀬呂選手らもかなりのハイペースで追うが、追い着けないッ!次元が違ァうッ!』
『前方に落下し続ける事で加速する母上と違い、射出と巻き取りと言う2つの手順が必要な瀬呂選手はどうしてもワンテンポ遅れてしまいますからな』
ドクの言う通り、其処が速度面での瀬呂君の弱点だね。
射出と巻き取り。この2つで移動するには、肘のロール機構の回転方向を凄まじい頻度でスイッチし続けなければならない。対する出久はと言うと、超反射神経で足場を見極め、それを最もエネルギーロスの少ない角度で蹴り、常に重心は前のめり。動作は蹴り付けるという1つだけだから、必然的に速い。
『おぉっと此所で常闇選手!影の多い低空から差すか!差すか!差したァァッ!瀬呂選手2番目から3番目に転落ッ!』
おっ、常闇君はパワーが増す下側を駆けたらしい。良いね、競わず持ち味をイカす戦法は好きだ。
『到着ゥゥゥ!緑谷選手、堂々の一着ゴールイン!』
『2着、どうにか差し切った常闇選手!3着、課題が見えた瀬呂選手!
4着は母上の妹弟子、麗日選手!加速力に難ありだったか!』
若干渋い顔をしてゴールする麗日さん。だが出久が一言二言言って頭を撫でると、照れくさそうにはにかんだ。多分、前よりも身体が酔いに耐えられてるとか、加速系能力無しにしては十分速いとか、そういう風に褒めたんだろう。
「ケッ、イケメンがよ」
「ああなりたければ日頃の行い改めろよエロ葡萄」
醜い嫉妬を吐露する雄英の恥部に簡単なアドバイスを送りつつ、ボクもスタート位置に着く。すると、非常階段で待機していた新顔がスルリと現れた。
手首からエレゲンのような触手が伸びているのが特徴で、体型はかなりスリムだ。
「じゃ、行こうか」
「分かりました。クイーンに羞じぬ結果を、御覧に入れて見せましょう」
「それは楽しみだ。期待しているよ────
───
──
─
「クッソがァァッ!!アイツより遅ェェェェッ!!」
結果。爆豪一着。アプトム2着。3着がボクで、4着は砂籐君。びりっけつは切島だ。
で、爆豪はタイムで出久に勝てなかったから荒れてる。餓鬼かいアイツは。
「クイーン・・・申し訳、御座いませんッ・・・!」
「え?」
何かアプトムが跪いた。凄い落ち込んじゃってるけど・・・
「クイーンから
あー、それで気に病んでるのか。全く、忠誠心が強くて良い子だけど、そんな思い詰めなくて良いのに・・・
「何が無様なもんか。良くやったよお前は。寧ろ、最初の実験的運用でこれなら大成功に近い。
ボクを追い抜き、あの爆豪にギリギリまで喰らい付いたんだ。それも生まれて間も無く、加えて
大した奴さ。胸を張れ」
「クイーンッ・・・!はっ、有り難きお言葉!」
「あぁ。それに、これでお前が最高の
「・・・触出少女、ちょっと良いかな?」
「おや、どうしました?」
何かオールマイトが深刻そうな顔で近寄って来た。
「その、後天的に付け加える、ってどう言う意味かな?」
「ん、あぁその事。
コイツはベースが肉親喰らいなんでね。遺伝子の経口摂取によって、その個性を完全にコピー出来るんですよ」
「何だとッ!?」
おうおう怖いよオールマイト。何か眼が青く光ってるし・・・
「つってもまぁ、血縁者に限るっていう制約があるんですがね。最初は実験的にエレゲンの形質を摂取させてみました。
結果は大成功!手首の鞭に、発電や蓄電、磁気反発による空中浮遊など正にパーフェクト!」
「そ、そうか・・・」
「・・・何か古傷でも?」
「あ、あぁ。まぁね・・・」
「そう。じゃあ聴かないでおきます。時が来れば、まぁ出久には話してやって下さい」
「あぁ、有り難う」
正直、オールマイトがどんな経験してようがどうでも良いしね。
「さて、皆を見ていこうか」
『伸びる伸びるアンデルセン選手!安定性が段違いだァァッ!』
「南ァ~無ゥゥゥ三ンッ!!」
『先頭ティグルヴルムド選手速い!足運びが的確だぞォ!』
「狙った的は外さないからね!」
『おぉっと、先行を許してしまったぞグリード選手!』
「ケッ、俺様はスピードより白兵戦向きなんだよ。どーにもならねぇ所で張り合う程、引き際知らねぇ訳じゃねぇ」
『名前と裏腹に適材適所をしっかり理解してますね。素晴らしい』
『あちゃーやっちゃった!ブラキディオス選手、コースを爆破解体してしまい失格です!』
「やっべぇやっちまった!」
「いやぁ~面白かったねぇ♪」
「そうだね。まぁ、ちょっとアクシデントはあったけど」
施設をちょっと壊しちゃったから、ブラキがオールマイトから注意されてた。まぁ良いだろう。
「そう言えばせっちゃん。ちょっと違和感があったんだけど・・・その背骨、どうしたの?」
「ん、あぁ、コレね」
出久が指摘した通り、今のボクの背骨は少し露出し、骨格質の生体装甲になっている。
「調整を施したのは兵士だけじゃ無い。只それだけの事さね。まぁ、気配でも探ってごらん?」
「・・・っ!?」
出久の顔が、珍しく驚愕に染まる。
「ま、まさか、これって・・・」
「うん、多分その通りだね」
「・・・手段を選ばないのは知ってたけど、まさか此所までとは・・・」
「当然だよ。こちとら侵略性寄生生物だよ?その本質は、侵蝕と汚染、そして進化。
率いる軍が進化するんだ。それに伴い、頂点たるボクも進化する。何の不思議があろうものかね」
「思い付いても、する事じゃないと思うんだよねぇ・・・」
「ボクを何だと思ってる。自他共に認める化物だぞ?普通とは掛け離れた存在さ」
「それは知ってるけど・・・」
「ま、今はまだ使えないんだけどね。ドクのアイテムの仕上がり待ちさ」
しかし、第1実験は成功した。次は第2実験。ボクの身体に、幾つ
「クイーン!このアプトム、何時か必ずや雪辱を果たして見せます!」
「おう!その為に焦らず強くなれ!」
うーん、このアプトムの忠犬っぷりよ。ガイバーのアプトムも、最初はこんな感じだったっけ?
「アイテムかぁ。奥の手?」
「そ。このプロジェクトの内容は極秘だからね。出久にも内緒だ」
「ふぅん。無茶はしても良いけど無理はしないでね」
「分かってるって!」
寧ろ無茶しかねないのはボクの腹心・・・特にドクなんだよなぁ。
アイツ、ケロッとした顔であの
「そう言えば、ゼクちゃんは今日居ないんだね」
「ん、あぁ。ゼクトールは用事があってね。暫く出て来られないよ」
第2実験の被検体は、ボクとゼクトール。ボクは女王としての支配力があったから簡単だったが、ゼクトールは少し訳が違う。あの子はボクと違い従属種だから、手術の手間が少し多かったらしい。
結果、今ゼクトールは行動不能状態。身体の調整を重視して、手術室で絶対安静状態だ。ボク達ゼノモーフの細胞は、かなり我が強いからね。中枢神経系ともなれば尚更だ。
「うーん、何かとんでもない事になる気がするなぁ」
「期待しといてよ。予想の斜め上に抉りこんであげるから」
「勘弁して・・・」
「カハハハ♪」
出久の溜息に耳を貸さず、ボクはカラカラと笑う。最早誰もボクらは捕らえられない。止められはしない。
(NOサイド)
「首尾はどうかね?ドク」
「は、少佐殿」
夜。山の中に建てられた施設の中で、マックスがドクに語り掛ける。
「現在、体組織の融合率は67,9%。今朝に比べ、12時間で約9%上昇しています。また、段々と馴染む速度も上がっているようです」
「ならば結構」
マックスが満足げに呟き、円筒形の水槽にペタリと触れる。
その中には、培養液に浸され、口にチューブを繋がれたゼクトールが居た。全身に電極パッドが貼られており、モニターには脳波、心音、そしてスキャン画像が映し出されている。
「電磁パルスによる筋繊維の萎縮予防も、かなり効果的なようです。これならば、リハビリ時間も、一日あれば事足るでしょう」
「それは良い。強靱であってこそ、ハイパーゼノモーフというモノだ」
「よう、お姉様方」
報告を送受する2人の間に、小柄な影が割って入る。
「おぉ
ファーストズーグ専属
「お遣い物が済んだから、持って来たよ。ったく、人使いが荒いったら・・・」
ぼやきつつもニヒルな笑みを絶やさず、ウォルターは持っていたアタッシュケースを作業机に置く。今此処に居る彼女は、武器職人ウォルターでは無く、執事ウォルターだ。
「あぁ、ご苦労。冷蔵庫の物を好きに食べなさい。風呂と寝床も使い給え」
「あぁどうも。ふぁ~ぁあ・・・ったく、
大きな欠伸をして、バトラー服のネクタイを緩めるウォルター。そして通風口に糸を飛ばし、その中に飛び込んで姿を消した。
「ククク。全く、扉ぐらい使い給えよ」
そう言ってマグカップに注がれた砂糖たっぷりのバーホーテンのミルクココアを飲み、マックスは笑う。その側の画面には、彼女らの計画名が表示されていた。
to be continued・・・
~キャラクター紹介~
緑谷出久
現代忍者主人公。
縦横無尽に立体機動を行うその様はまるで忍者スレイヤーの世界観。実際速い。
背納のストレス発散の為に組み手を行い、結果久し振りに良いのを貰った。内臓がめちゃくちゃになるようなダメージでも直ぐに復帰する。半分人外の体質。
触出背納
化物主人公。
何かまたマッドな事してる。実験台に自分を使う事に躊躇が無い。
アプトム
肉親喰らいの能力を受け継いだハイパーゼノモーフ。初手はエレゲン。
忠誠心の強い、所謂忠犬キャラ。故に言動がちょっと堅く、尚且つ大袈裟。
背納の鬼札。
アレクサンド・アンデルセン
塩崎茨の能力を受け継いだハイパーゼノモーフ。
頭部と背中から茨の触手を生やし操る能力を持つ。衣装は神父では無く尼。背納が仏教徒だからね。
高速移動の手段は、スパイダーマンのドクターオクトパスのように触手で立体的に跳び回る感じ。
ティグルヴルムド・ヴォルン
発目明のハイパーゼノモーフ。
動体視力と望遠視力に特化している。メインウェポンは弓。
グリード
切島のハイパーゼノモーフ。
炭素硬化の能力として覚醒した。俺様キャラだが実は頭が切れる。モットーは適所で最善を。
ブラキディオス
爆豪のハイパーゼノモーフ。
手首全体に爆薬汗腺が発生しており、また皮膚はナックルグローブのような甲殻となっている。また尻尾は鎚矛のようになっており、打撃力に優れる。
ウォルター・C・ドルネーズ
ファーストズーグ専属
何やら不穏な名前の組織のリーダーもさせられているようだが・・・
轟君を轟ちゃんにするの、ぶっちゃけアリ?
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アリ。やっちまえ。
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流石に自重しろバカ。ダメに決まってんだろ
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まずは薔薇を咲かせてからだ。