捕食少女の闘争アカデミア   作:エターナルドーパント

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第7話 化物の愉悦

(背納サイド)

 

「うっわ、何これ・・・」

何時も通りに森を駆け抜け登ってくると、校門前にカメラを持ったマスメディアの報道陣が大量に群がっていた。

皆が皆、異口同音に『オールマイトの授業はどうだ』、『オールマイトはどんな教師だ』etc・・・

口を開けばオールマイトオールマイト、それ以外の言葉忘れたのかコイツら。

「ジャラゼスバ。ゾグギバス?グギギン」

「どうするも何も、ドク。普通に通るよ。あぁ言うのは相手しないに限る。ハァ、面倒臭い」

後ろのドク、マックス、シュレディンガー、そして百ちゃんから生まれた平ウォーリアーのマリスもうんざりしてる。

「あ、すいません!オールマイトについて少し―――」

「黙れ。邪魔だ、退け」

「ヒッ!?」

殺気と同時に()()()()をぶつけてやると、リポーターは情けない声をあげてへたり込んでしまった。

ボクの身体構造は、基本的にゼノモーフ。そしてどうやら、ゼノモーフの声には他生物の恐怖を掻き立てる特殊音波が含まれているらしい。それを意識的に練り上げたのが、この恐怖音波だ。まぁ何度も喰らうと耐性が付くみたいだけど。

 

「テメェ等も、退けッ!邪魔だッッ!!」

 

眼を見開き、恐怖音波を最大ボリュームで放つ。するとあら不思議、まるでモーゼの海割りみたく、人垣が左右に綺麗に別れた。

「行くよ皆。情報なんてくれてやるものか。自分達が未来の戦士を追い込んでいると気付いてすらいない、正義気取りの脳足りん共なんかに」

ポケットに手を突っ込み。、門を潜る。きっと今、ボクの眼は吊り上がっているのだろう。

 

―――――

――――

―――

――

 

「ハァ・・・」

昼休み。好物のカツ丼を前にして、出久がらしくも無く溜め息を吐いた。

「そんなに嫌なのか?俺は君が適任だと思うが・・・」

「そうそう!的確な指示飛ばしてくれるし!」

「適任なんかじゃ無いよ」

相変わらず顰めっ面で丼とにらめっこしながら、飯田君とお茶子ちゃんの意見をピシャリと否定する出久。

「僕には皆を纏めるリーダーシップも、そもそもリーダーとしての意欲も無い。そんな僕が嫌々やるより、飯田君みたいな意欲的な人が就くべき役職だよ。クラス委員長っていうのは」

何の話かと言えば、さっき投票で決まったクラス委員長について。結果は、飯田君が2票、出久が3票、他はほぼほぼみーんな自分に入れたのか1票だった。

因みにボクは飯田君に入れて0票。まぁ既にクイーン椅子に座ってるわけだし、 これ以上リーダーの役職はいらない訳よ。指揮するのだって、ファーストズーグで精一杯だしね。

 

―ヴィーッ!ヴィーッ!―

 

「おんっ?」

唐突に鳴り響くアラート。同時に、気怠げだった出久の眼が瞬時に吊り上がる。ボクも弁当を食べていた箸を置き、周囲からの情報に意識を向けた。

『警告!警告!セキュリティー3突破!』

警報の内容を聞き、周囲の先輩方が一気に浮き足立つ。どうやら相当マズイ状況みたいだね。

「ちょいちょい失礼。これ今どういう状況?」

「知らねぇのか!敵が入ってきたんだよッ!!」

へぇ、成る程。不法侵入か。

なーんて悠長に納得してる場合じゃないね。周囲が大パニックになってるし。

「うっわ、皆落ち着いて~!」

「ハイハイ、テーブルに着いといて」

人の波に流されそうになってる飯田君とお茶子ちゃんを、さっきまで座っていた椅子に引っ張り戻す。因みに出久は全部避けてた。

「マリス、ちょっと行ってくる」

「え、クイーン?行くってどちらに?」

マリスに答える事無く、ボクは靴を脱いで壁まで跳躍。窓まで登り、敵の姿を視認した。

「・・・ハァ?」

そして、自覚出来る程素っ頓狂な声をあげる。

見えるのは、カメラと収音マイクを抱えた大群・・・つか、マスゴミ共だ。

「・・・ドク、ニコ生だ。あと各SNSでリアルタイム拡散しろ」

「既にやっておりますよクイーン」

「パーフェクトだドク」

「お褒めいただき感謝の極み」

見れば、ドクは既にスマホを構えてニヤニヤ笑っていた。

「ねぇクイーン。アイツ等どうする?」

「待ち給えよマリス。私にアイディアがある」

ニコニコの良い笑顔で、指を立てるマックス。何をするつもりなんだか。

「クイーン、此方へ」

「え、ボクも行くの?」

「おぉ少佐殿、もしや、アレですな?」

「あぁ、アレだともドク」

待って、アレって何?何で意図的にテレパシーを遮断してるの?ねぇってばさ・・・

 

―――

――

(NOサイド)

 

ある男に唆され、思考停止して不法侵入を続けるマスメディアのスタッフ達。その横の並木には、気配を消したドクが仕掛けたカメラがある。そのカメラはリアルタイムで現状を各種SNS、動画サイトにアップロードしており、某笑顔の動画サイトでは既にコメントの嵐である。

「では、行きますかな」

「あぁ。さぁ、IT'S A SHOW TIME!!」

マックスのフィンガースナップと同時に、軽快な音楽が流れ出す。そのBGMに報道陣が足を止めると、マックス達は動き出した。

マックス、ドク、シュレディンガー、マリスは、報道陣の前でステップを踏む。普通なら、変わった歓迎にも見えるだろう。

 

肩に()()を担いでいなければ。

 

―トゥルルル トゥットゥルルットゥ♪トゥットゥルルールトゥルッ♪―

 

あまりにもシュールな光景に硬直する報道陣を他所に、ゼノモーフ達はその棺桶ダンス・・・ガーナ式葬送の再現を続ける。

棺桶を肩に乗せたままコサックダンスのようにバタバタと脚をスイッチさせたり、膝にのせてその上でハイタッチしたり・・・

「あ、あの、あなた方は一体・・・?」

ダンスが一段落ついた頃、漸く正気を取り戻したレポーターがゼノモーフ達に質問を投げ掛ける。

「黙れ」

しかし、その質問は重圧を伴った一言で踏み潰された。

「だれがその口を開いて良いと言った?慎み給えよマスゴミ諸君」

頬を吊り上げながら、マックスは報道陣を罵倒する。それに対し相手は苛立ちを見せるが・・・

 

―バガンッ―

 

それを言葉にする前に、棺桶の蓋が吹っ飛んだ。

「ふぅ、棺桶って意外と寝心地良いね。デップーには不評だったけど」

そして、棺桶から背納が起き上がる。作戦を聞いた背納は、目元と口角を吊り上げてノリノリの様子だ。

「所でさぁ・・・お前らがしてるのって、不法侵入だよね?」

麻痺した思考を現実に引き戻すと同時に、恐怖音波で威圧。すると報道陣の顔はみるみる内に青くなり、大多数が腰を抜かしてしまった。

「さっき警察呼んだからね、もうすぐ到着するんじゃないかな~。

あ、逃げても無駄だよ?お前らの害獣レベルな違法行動、ぜーんぶリアルタイムでSNSとかに流してるからね~♪

おぉ、スゴいスゴい!ねぇねぇ見てよ~、ニコ生なんて、今視聴者数が5万8913人!平日昼間でも、見る人は見るんだねぇ~♪

あ、もう特定班が住所見付けて拡散してる!あ~ぁあ、君達のせいで、今日から家族全員後ろ指差されながら生きる事になっちゃったねぇ♪しかも会社の顔にも泥塗っちゃったから、蜥蜴の尻尾宜しく切り捨てられるかな?かな?

アッハハハハ~♪ざ・ま・あ❤️」

天使のような微笑みで、一切容赦の無い鬼畜言動をぶつける背納。他人の情報を飯代にする報道陣にとっては皮肉な事に、今度は自分達の情報が他者の食い物にされる側に転落してしまった。

「このよーに!バカな事をすると、とんでもないしっぺ返しを喰らうのがこの世の中です♪

皆も気を付けようね♪以上!現場の化物でした!」

ドクが構えるスマホに締め括りの挨拶をし、背納は無様に逃げ出そうとしている報道陣に振り返る。

 

「誰が逃げて良いっつたゴラァ!!」

 

そして再び恐怖音波で嚇し、硬直させた。

「マリス、SNSをしっかりチェックするんだよ。人間の悪意を知るには、それが一番だからね♪

クハハ♪キャハハハハハハハハハ♪」

恐怖と絶望の板挟みになった報道陣の耳に、悪魔の嘲笑が響いた。

 

to be continued・・・




~キャラクター紹介~

触出背納
恐怖を掻き立てる声を操る化物主人公。ゼノモーフの声って、そんな効果ありそうだなーと思った作者の思い付きで習得。
今回で、敵に対してどれ程えげつない行動を取るかが露見した。彼女は人の悪意さえ、巧みに利用して見せる。
「気に入らない奴等を集団で追い詰める。君達人間から学んだ悪意のひとつさ♪」
因みに相澤先生は胃を痛める。

モンティナ・マックス
悪意大好きゼノモーフ。地味に初めて少佐呼びさせたかな?

ドク
自主的にカメラを回し、更に複数の媒体に同時アップロードを行った今回のMVP。
因みにこの後も、この件に関するスレにグランドプロフェッツォルのペンネームで被害情報等を大量にばら蒔き、更に炎上に拍車を掛ける。
「いやはや、愚かなサル共を手玉にとるのは堪りませんな♪」

マリス
がっしりしたウォーリアー。今回の一件で人の悪意を学習し、生まれ持った残虐性を使いこなすべく目覚める事となる。

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