魔法少女リリカルなのは バカの参戦    作:セイイチ

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第三十六話

 あのちょっとした事故から二週間。ティアナはすっかりいつも通りに戻り、フォワードメンバーの間でも、深い話をしたりと、皆楽しく過ごしていた。

 まぁその代わり、僕等が強くなってもいるので、訓練内容が以前に比べてかなりきついものになったりしてるんだけどね。

 まぁ、そんな感じで僕等が日常を過ごしていた、ある日の訓練後

 

 「はい。今朝の訓練と模擬戦も無事終了。お疲れ様!」

 

 そう言ってなのはは、訓練場で座り込んでいる僕達に笑いかけてくる。

 なのはもティアナ同様、普段通りでこの前の事故を引きずっている様子は見られないし、一安心だ。

 

 「でね? 実は何気に、今日の模擬戦が明久君を除く、皆の第二段階クリアの見極めテストだったんだけど」

 

 「「「え!?」」」

 

 僕以外のフォワードの皆はなのはの言葉に驚きの声を上げる。

 まぁ、皆が驚くのも無理はないね。

 僕のデバイスと違って、皆のデバイスはリミッターが掛けられてる状態だ。そのリミッターを一段階とはいえ、解除するための試験が知らない内に行われていたと聞けば、驚くのも自然だろう。

 と、皆が驚いてる間に

 

 「どうでした?」

 

 なのはは後ろに立っている、フェイトとヴィータ、シグナムに質問をする。

 けど、そう聞くなのはの表情には、結果は既に分かっていそうな表情だった。

 ああ。この顔は多分

 

 「合格」

 

 だと思ったよ。

 なんだか隊長陣は皆嬉しそうにしてるし、これは皆も分かって――

 

 「「はやっ!」」

 

 おらず、スターズ二人が突っ込みを入れる。

 どうやら、僕が気づけたのは試験のメンバーではなく、客観的に見れていたからのようだ。

 

 「ま、こんだけみっちりやってて、問題があるようなら大変だって事だ」

 

 そう思うのなら、少しは訓練の量を減らして欲しいと思うのは、僕だけだろうか?

 実は未だに、僕の訓練量は皆の倍近くだったりする。

 流石に訓練が厳しくなってからは、量を減らしてはくれたけど、未だに皆よりも体力があるという事もあって、皆より多いままだ。

 あれから、脱走しようと試みた事は一度もないし、そろそろ許してもらいたいんだけど、そう甘くはないようだ。

 

 「私も皆、いい線いってると思うし、これにて二段階終了!」

 

 「「やったー!!」」

 

 試験に合格した皆は、大いに喜んでいた。

 まぁ、合格って事は認められたって事だし、そりゃ嬉しいよね。

 

 「デバイスリミッターも一段階解除するから、後でシャーリーのところにいってきてね?」

 

 「明日からはセカンドモードを基本形にして訓練するからな」

 

 「「「はい!!」」」

 

 皆は、元気よく返事をしたんだけど、僕はヴィータの言葉に疑問符を浮かべていた。

 ん? 明日? まだ今日の午前の訓練も終わっておらず、早朝訓練しか終わってないのに”明日から”の訓練はって事は

 

 「今日はもう訓練終わりなの!?」

 

 って言う事だよね!?

 僕が期待しながら、そう聞くと

 

 「相変わらず、お前はそう言う事だけは理解が早いな」

 

 シグナムが肯定してくれる。

 よっしゃ――!! 僕の予想通り、今日の訓練はこれでおしまいだ――!

 

 「皆、入隊日からずっと訓練づけだったしね」

 

 僕は一人ではしゃいでたんだけど、他の皆は未だ状況が飲みこめていないようで、お互いに顔を見合わせている。

 そんな皆に向かって、ヴィータとなのはが、

 

 「まぁ、そんなわけで今日は全員一日休みだ」

 

 「街にでも出かけて、遊んでくるといいよ」

 

 ここで初めて、休みと言う単語を使い、皆に理解させる。

 これにより、ようやく皆は今どういう状況か理解すると、さっきの試験合格を言い渡された時よりも盛大に喜んでいた。

 こうして、僕達フォワードは休暇を貰う事ができたのだった。

 

 

     ☆

 

 

 急な休暇を貰った僕達フォワードは、各々休暇を満喫する事にしていた。

 スバルとティアナの二人は、ヴァイスさんからバイクを借りてティアナの運転で街まで遊びに行くらしいし、エリオとキャロも電車と徒歩で街に出ると言っていった。

 因みにシャーリーはエリオに細かい指示を色々出して、エリオ達の初デートを成功させようとしていたけど、多分エリオ達はデートと言う感覚は全くないように思う。

 まぁ、二人で遊ぶという事に関しては、計画も必要なのかな? と思わなくもないけど‥‥‥‥

そして、肝心の僕はというと

 

 「ん~、はぁー。やっぱり外で昼寝するのって気持ちいいな~」

 

 一人で六課の敷地内にある芝の上で寝転び、ダラダラと過ごしていた。

 

 『マスターは遊びに行かれなくて良いんですか?』

 

 と、ドラグーンが僕に話かけてくるけど

 

 「まぁ、ティアナ達はバイクでお出かけで、エリオとキャロは何だかシャーリーがデート計画なるものを作ってエリオに渡してたから、邪魔するのも悪いしね。それに」

 

 ぶっちゃっけ僕としては、せっかく休みをもらったんだからノンビリしていたい。

 どうせ明日から嫌と言うほど鍛えられるんだから、休める時に休んでおかないと、僕の体がもたないからね。

 と言うわけで、僕は急な休暇をダラダラして過ごすという選択肢を選び、今に至るわけだ。

 因みに、ここで一眠りした後は、はやてにゲームを借りて今夜はオールする予定だ。

 ”こっち”の世界に来るまでの僕の日常は、今僕の言った計画のような過ごし方をしていたし、僕の感覚的には場所が違うだけで、昔に戻ったみたいだった。

 

 「まぁ、そんなわけだから僕はちょっと昼寝する事にするよ」

 

 『分かりました。何時頃に起こしたらいいですか?』

 

 僕は普段、目覚ましごときでは満足に起きる事は出来ないから、ドラグーンに起こしてもらっている。まぁ、それでも朝起きれずに結局エリオがお越しに来てくれるっていうパターンもザラなんだけど‥‥‥‥

 まぁ、そんなわけで、今回もドラグーンは僕を起こそうとしてくれたんだけど

 

 「う~ん‥‥‥‥‥今回は起こさなくて良いよ。休暇なんだし、無理に時間を決めて起きる必要はないからね」

 

 僕は、ガッツリ寝るために、今回の昼寝は起こしてもらわない事にする。

 

 『分かりました。それではマスター、良い眠りを』

 

 「うん。お休み、ドラグーン」

 

 こうして、僕は爆睡するべく目を閉じたんだけど

 

 「あれ? なんで?」

 

 何故か目を閉じたはずの僕の目の前に、剣道場のような空間が広がっていて、その真ん中には優しそうな表情をした長髪の赤い髪をポニーテールにした美少女と、不機嫌そうな顔をした金髪の美少年が立っていた。

 なんだろ、これ? もしかして僕は一秒とかからずに、夢の世界へと旅立ったのだろうか?

 

 「‥‥‥‥‥いやいやいや。まさかね。某マンガのネコ型ロボットに頼りっぱなしの少年じゃあるまいし、そんな直ぐに寝れるわけないよね? いくらなんでも、僕はあそこまでバカじゃないし」

 

 確か、あの少年は0点を連発で出すほどのバカだったはずだ。

 流石の僕でも、0点を連発で出した事ないし(単発ならある)僕があの少年みたいになったー。なんて事はないよね‥‥‥‥?

 なんて、僕が混乱していると

 

 「いつまでバカをしてるつもりだ? このバカ」

 

 男の方が、僕に突然話しかけてくる。

 なに!? 突然、知らない人に話しかけられた! 小学生の時に、知らないおじさんに付いて行っちゃダメって言われたのに、知らないおじさんに話しかけられちゃったよ!?

 

 「‥‥‥‥‥おい、何を焦ってるのか知らんが、このバカ、まだ混乱しているようだぞ?」

 

 「そうみたいね。相変わらず面白い子ね」

 

 「‥‥‥‥疲れる。この調子がずっと続くなら、俺は帰るぞ?」

 

 「ダメよ。貴男には、あの子の相手をしてもらわないといけないんだから」

 

 「ならば早くしろ」

 

 僕が混乱している間にも、男は面倒くさそうに、女は楽しそうに二人で話していた。

 えっと? なんの話? 帰っていいなら、僕もここから出してほしんですけど?

 

 「分かったわよ。‥‥まったく。気が短いんだから‥‥‥‥‥さてと、明久?」

 

 女は一呼吸おいてから、僕に本題を話してくる。

 僕は、この女の人の話なんて、まるで聞いておらず、「この人美人だな~、いったいどこの誰なんだろう?」なんて考えていると

 

 シュッ!!  ド―――――ン!!!

 

 僕の横をもの凄い速さで火の塊が通過していき、僕の後方でバカデカイ音が鳴り響いた。

 

 「‥‥‥‥‥え?」

 

 僕は、なんだかこの光景見た事あるぞ? と思いながら、後ろを向くと僕の後ろには大きなクレータができ、そこで火柱が上がっていた。

 

 「少しは私の話を聞く気になったかしら?」

 

 女は手のひらを僕に向けて、こんな事を言ってくる。

 どうやら、今のはこの人がやったらしい。

 そして目が「次は当てる」と僕に警告をしているように見えた。

 そんな目を向けられた僕には

 

 「すみませんでした。もう一度お話をお聞かせください」

 

 謝る以外の選択肢なんてない。

 当然だ。あんな強烈なのを直撃させられたら、死んじゃうよ!

 というわけで、僕は必死に謝ったんだけど

 

 「分かればいいのよ」

 

 あれ? この人、凄く優しい人なの?

 と、僕が拍子抜けするくらい、この女の人は優しかった。

 僕は、この後どうすればいいか分からず、とりあえず

 

 「ど、どうも‥‥‥‥」

 

 と返事をしておく。

 ‥‥‥‥‥仕方ないじゃないか! 僕が謝って、こんなに直ぐ許してくれるなんて経験、ほとんどないんだから(”向こう”の世界では皆無だった)こういう時、どうすればいいかなんて僕の辞書には載ってないんだよ!

 

 「ふふふ。いいのよ別に。‥‥‥‥さて、そろそろ本題を話すけど、今度こそ準備はいいかしら? 因みに三度目はないわよ?」

 

 「はい!! 準備万端であります!」

 

 この人、目が本気だよ‥‥‥‥

 というか、冷静になってみると、この世界って精神世界なんじゃないかな? って言う事は、目の前にいるのは

 

 「じゃあ、一応自己紹介しとくわね。私は炎龍・テスタロス。今の姿は、人バージョンよ」

 

 やっぱりテスタロスだった。

 それなら、優しいのも納得だね。基本的にテスタロスは優しいからね。

 ‥‥‥‥‥もし、これがザボルグだったら、僕は殺されてたんじゃないかな?

 と、思いザボルグの方を見てみると、ザボルグは苦笑いを浮かべていた。

 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥どうしたんだろう?

 ザボルグがあんな顔するなんて‥‥‥‥‥‥‥‥

 今までの彼の言動を考えると、ザボルグがあんな表情をするなんてあり得ない。何かあったんだろうか?

 僕はザボルグの表情を見て、少し――いや、かなり心配になる。

 けど、テスタロスはそんな僕の心配を無視するかのように、僕をここに呼んだ理由の説明を始めた。

 

 「明久、貴男でも分かるように簡単に説明すわね? ‥‥‥‥貴男、今から私達の特訓をこの世界で受けなさい」

 

 ‥‥‥‥‥おかしい。

 確かに僕でも簡単に分かる言葉だ。けど、これはまるで説明になっていないと思う。

 今の説明の中では、僕がなんで特訓を受けなきゃいけないかの説明がまるでない。

 そりゃ、僕は以前、この二人に「強くなりたいから力が欲しい!」的な事を言った気がするけど、こんな唐突になんの説明もなく、特訓だと言われるのはおかしいと思う。

 そんな僕の心の声を完全に無視して

 

 「貴男には剣術を覚えてもらうわ。具体的には私が型を教えて、ザボルグを相手にして実践形式で戦ってもらうわ」

 

 何故特訓なのかの説明ではなく、どんな特訓かの説明を始めてしまう。

 

 「明久に覚えてもらう型は、たったの三つよ。型は他に、いくつもあるけど、貴男の場合は反射神経が良すぎて、奥義以外の技は正直無駄だからね」

 

 「いや、あの、特訓はいいんだけど、その前にせつ――」

 

 「それじゃあ、まずは一つ目! 片方の剣だけを使う六連撃、ファントム・レイブからいくわよ!」

 

 ダメだ! テスタロスって実は人の話を聞かない人種、じゃなくてドラゴン種だ!

 僕がその事に気づき、ザボルグに視線を向けて助けを求めると、ザボルグは念話を使い

 

 『諦めろ。昔からテスタロスは、スイッチが入ると周りの話は聞かん』

 

 とか言われる。

 そっかー、なら仕方ない――ってちょっと待てぇぇぇいいぃぃぃ!!

 

 『おかしいでしょそれ! 普段はあんななのに、スイッチ入るとこうなるなんて!』

 

 『だが事実だ。普段は”あんな”感じなんだが、一度本気になると”こう”なる。昔、俺達が不毛な争いをしていた時は、実はアイツが一番厄介だったしな』

 

 なんだその衝撃の事実は‥‥‥‥‥

 僕のイメージでは

 ザボルグ→乱暴で人の話を聞かない。

 テスタロス→温厚で皆の話しを良く聞いて皆のまとめ役。

 こんな感じだったのに、まさかそれが逆だったなんて‥‥‥‥‥

 

 「ほら、明久。何をボーっとしてるの! 早く私の真似をしなさい!!」

 

 僕がショックを受けてる間にもテスタロスは僕を急かしてくる。

 

 「いや、だから説明を――」

 

 「ほら早くしなさい!」

 

 「いや」

 

 「早くしろって言ってるでしょうが!!」

 

 「‥‥‥‥はい」

 

 僕は結局、テスタロスから何で訓練が休みの日に特訓しなきゃいけないのかとか、そう言った事は聞く事が出来なかった。

 僕がここでテスタロスに教えてもらったのは、片手用奥義の六連撃、ファントム・レイブと、二刀流奥義の十六連撃、スターバースト・ストリーム、二十七連撃のジ・イクリプス。

 この三つの奥義だけだった。

 

 

 

 

 「随分とボロボロだな小僧」

 

 鬼の特訓が終わり、テスタロスに一応の合格をもらって、僕が疲れ切って大の字になって寝転んでいた時、ザボルグから声を掛けられた僕は

 

 「‥‥‥‥‥」

 

 真面にしゃべる事もできずにいた。

 

 「まぁ、俺も結構本気で相手をしてやったし、疲れるのも仕方がないか」

 

 ザボルグの言う通り、僕は結構本気でザボルグにボコボコにされていた。

 テスタロスの講義? のような物で型を教えられた僕は、休み暇も与えられずテスタロスが合格を出すまでの間、連続でザボルグと実践をしていた。

 これが精神世界ではなく、現実世界なら生徒虐待と言って訴えれば確実に勝てるレベルだと思う。

 

 「まぁ、そんなお前にご褒美だ。テスタロスの代わりに俺がお前に色々と説明してやろう。‥‥‥‥と言っても説明する事なんて、ほとんどないんだがな」

 

 ザボルグが説明してくれた話では

 休暇の日に僕をわざわざ呼んだのは、僕は普段なのはの訓練を受けてるから、休みの日くらいしかザボルグ達が教えられる日がなかったかららしい。

 そして、僕がイキナリ鍛えられたのは、今の状態では扇に勝つ事はできず、下手をすれば竹原に殺される可能性がある位、僕が弱かったからだそうだ。

 ‥‥‥‥‥どうして僕はこんな簡単な説明もしてもらえず、こんなボロボロになるまで鍛えられていたんだろうか?

 この程度の話なら、事前に教えてくれても大して時間は掛からなかっただろうに‥‥‥‥‥‥

 

 「それとな小僧。実はさっきから黙っていた事があるんだが‥‥‥‥‥お前のデバイスが、さっきからずっと貴様の事を呼んでいるぞ?」

 

 「へ? それってどういう‥‥‥‥‥」  

 

 僕が何でここに連れて来られて、なんでイキナリ特訓なのかとか、そう言う事を教えてれた後、僕はようやく立ち上がれるまでに回復したんだけど、ザボルグがイキナリこんな事を言いだして、僕は首を傾げる事となった。

 

 「現実世界で何かあったみたいね。早く戻ってあげなさい? 後、戻っても奥義の練習は毎日するように。いいわね?」

 

 「了解! まぁ、せっかく教えてもらったんだし、ちゃんと練習しておくよ」

 

 「素直でよろしい。さて、じゃあ今日はここまでね」

 

 ようやくいつもの状態に戻ったテスタロスに、毎日練習をするように言われた後、テスタロスは僕の目の前に扉を出現させると

 

 「この扉を開ければ、現実世界よ。何が起こったのか知らないけど、頑張りなさい」

 

 「うん。ありがとう二人とも」

 

 そう言って僕は扉を開けて、現実世界へと帰って行った。

 

 

 

 

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