意見陳述会当日の早朝にフェイト達を見送った後、僕は軽く奥義の確認のために自主練をして、汗を流していた。
「‥‥‥‥‥‥スターバスト‥‥ストリーム! からの~ジ・イクリプス!」
正しくは、スターバーストとイクリプスをどうにかして繋げて使う術がないか、模索していたんだけどね。
けどやっぱり何度やっても
「おわぁっ!」
必ず途中で失敗してしまう。
「あー、くそ! あと少しで、できそうな気はするんだけどな‥‥‥」
スターバーストの後、イクリプスを使おうとすると、必ずイクリプスの一撃目か二撃目で足がもつれて転んでしまう。
無理にでも一撃はイクリプスが使えるから、この取り組みは決して無理な事ではないと思う。
もう少し、ちょっとした事があればできそうな気がする。
『マスター、熱心な所申し訳ありませんが、その辺で止めておかないと後でヘロヘロになりますよ?』
と、僕が自主練に精を出しているとドラグーンに声を掛けられる。
「へ? まだ、そんなに長い事やってないいんじゃ――って、もうこんな時間!? 『意見陳述会』始まっちゃってる時間じゃないか!」
僕はドラグーンに声を掛けられて、時間を確認すると既に『意見陳述会』が始まっている時間だった。
「僕も早く指令室に行かなきゃ!」
まだ何の連絡もないと言う事は、おそらく、今は何も問題は起こっていないと言う事だろう。
けど、いつ問題が起こるかなんて分からないし、異変を早急に察知するには指令室が一番だろう。
と言うわけで、僕は指令室に向かったんだけど
「あきひさー」
「ん? あ、ヴィヴィオか、どうしたの?」
指令室に向かう途中で、ヴィヴィオと会い、ヴィヴィオに抱きつかれて足を止める事となった。
「あきひさもどこかいくの?」
ヴィヴィオは寂しそうな顔をして、そんな事を聞いてくる。
‥‥‥‥‥そっか。すっかり忘れてたけど、ヴィヴィオが六課に来てから一度も緊急出動になった事がないんだっけ?
と言う事は、なのはとフェイト、それに他のフォワードメンバーがこんなに長い間、ヴィヴィオの近くにいないなんて事は、初めてなのか‥‥‥‥
訓練で全員が席を外す事は多々あったけど、それでも皆、六課の敷地内には必ずいた。
それが今回、イキナリ皆いなくなってヴィヴィオも寂しいんだ‥‥‥‥‥
「うーん、もしかしたら、もう少しで出て行くかもしれない‥‥‥‥けど、今はまだ六課にいるよ?」
「どれくらい?」
「ど、どれくらい? うーん、そうだな‥‥‥‥‥それはちょっと分かんないや‥‥‥‥。けど、連絡があったら、なのはとかフェイト達を助けに行かなきゃいけないんだ」
いつ問題が起こるか分からないから、正確な時間は僕には分からない。
問題が起これば、直ぐに現場に向かうと言う事しか決まってないんだから‥‥‥‥
「すぐにいっちゃう?」
‥‥‥‥はぁー。ダメだ。こんな寂しそうにしてるヴィヴィオを置いて、指令室になんて行けっこないや。
「いつ行くかは分からないけど、出発するまでの間ヴィヴィオと一緒に居させてくれるかな?」
「うん!」
まぁ、何かあれば出動命令をグリフィスさんが出してくれるだろう。
こうして、僕は指令室に行くのを止めて、しばらくの間ヴィヴィオと過ごす事になった。
と言っても、アイナさんは寮母として色々忙しそうにしていて、ヴィヴィオはアイナさんの手伝いをしていて、ザフィーラはそのヴィヴィオの近くについて回っていて、特に何をするわけでもなかったんだけど‥‥‥‥
☆
「ドクター、妹達と騎士ゼスト、ルーテシアお嬢様、風月さん。配置完了しました」
「くくくくくく。あはははははっ。ふっふっふ」
「楽しそうだな。ドクタージェイル」
「ああ。楽しいさ。この手で世界の歴史を変える瞬間だ。研究者として技術者として心が沸き立つじゃないか。君もそう思うだろう? ドクター竹原?」
『意見陳述会』が間もなく終わろうとしていた時、ある場所にて三人男女がこんな会話をしていた。
一人目は明久を”こちら”の世界に連れてきた竹原。
二人目、ジェイル・スカリエッティ。
そして、三人目にして、ここにいる唯一の女であるウーノ。
戦闘機人Ⅰ、スカリエッティの右腕であり秘書だ。
「さぁ、私には興味がないな。私の興味は元龍だけだ。それ以外はどうでもいい」
「ふふふ。君は相変わらずだな。で? その元龍の事は色々調べられたのかい?」
「ああ。満足だ。私の力で遂に元龍のドラゴンユニゾンまで完成したんだからね」
竹原は本当に満足しているようだった。
と言うのも、一度は明久にボロ負けした風月がどうなろうと、別に構わなくなり風月の力を上げるために行った実験で、自分の求めていた成果以上の結果が風月の体に起こったのだ。
そのおかげで今、竹原は上機嫌なのだ。
「それは良かった。なら君も悔いは無いだろう? ウーノ」
「はい」
「ん? ドクタージェイル。それはいったいどう――ゲホッ!」
竹原は言葉の途中で、口から血を吐き、言葉を中断させられてしまった。
竹原は状況について行けず、視線を彷徨わせて最終的に自分の胸部を見るとナイフの先端が、自らの体から外に向けて顔を出していた。
要は背中から竹原は刺されたのだ。それも体が貫通するほど‥‥‥‥‥
「すみませんね。竹原さん。これもドクターのためです。死んでください」
「そう言う事だ。ドクター――いや、もうドクターではないな。ミスター竹原。君はもう用済みだ。私にとって不利益になる事はあっても、有益になる事はないのでね」
つまり、スカリエッティはこう言いたいのだ。
元龍なんて物を完全にコントロールされては、こちらの立場が危うくなる。
そうなる前に、君にはここで死んでもらおう。
と、こういう事だ。
「扇の事で心配する事はない。彼の扱い方は君を見ていて覚えたのでね。これからは私が彼を使ってあげよう」
「こ‥‥‥の‥‥うらぎり‥‥‥も‥‥の‥‥‥‥」
こうして、竹原は動かなくなった。
すると、竹原の体が一瞬輝き、‥‥‥‥‥しばらくすると体から魔法陣が浮かび上がってくる。
「これは‥‥‥‥‥‥ドクター、この魔法陣は何なんでしょうか? 見た事もない魔法陣ですが‥‥‥」
「これは、竹原の言っていた龍魔法。とやらじゃないかな? どうやらこの魔法、使用者が死ねば痕跡の一切を消すようだね。まぁ、私には関係ないが‥‥‥さて、ウーノ。おしゃべりはこの辺にして始めよう! 世界の新たなる歴史の第一歩を!!」
「はい。ドクター」
☆
僕がヴィヴィオと過ごしてから結構時間が経ち、もう日も大分落ちてきて夕方になっていた。
「『意見陳述会』が始まって四時間ちょっと。もーそろそろ、『意見陳述会』も終わりかな?」
僕はそろそろ『意見陳述会』も終わると思い、直ぐ近くにいるザフィーラに話しかける。
「油断するな明久。会の終わりを狙って、襲ってくる可能性もある。最後まで気を抜いたりはするな」
「それは分かってるよ。予想では今日テロが起こる可能性が高いってなってるんだから」
「それならば別にいい」
さて、このまま何も起こらずに済むか、それともこれから問題が起こるのか‥‥‥‥‥どちらにせよ、ザフィーラの言う通り、まだまだ気は抜けないな。
と、再び気を引き締めた時だった。
『明久君! 今すぐ指令室に来てください!』
隊員呼び出しの放送が流れる。
っ! このタイミングでグリフィスさんから隊舎内放送が流れるって事は、何か起きたと言う事だ。
「ザフィーラ!」
「心得た。お前は早く行け」
「ありがとう!」
僕は手早くザフィーラに後の事を任せて、すぐさま指令室に向かう。
くそっ! やっぱり来たのか!
「こんなに攻めて来るのが遅くなるなら、もう今日は攻めて来なければいいのに‥‥‥‥‥」
と、僕がブツブツ文句を言ってる間に、指令室へと辿りつき扉を開くと
「本部に向かって航空戦力!」
「速い!」
「推定オーバーS!」
どうやら、とんでもなく強いのが地上本部に向かっているらしく、情報の交換をヴィータとしていた。
ヴィータの話によると、本部の中とは連絡も真面に取れない状況らしい。
こちらからも、かろうじでヴィータと連絡が取れるだけで、中とは一切通信が通らない状況だった。
しかも、ヴィータを除く隊長陣は本部の中にいて、デバイスも持ち込み不可のため、現在は丸腰との事だ。
つまり、謎の航空戦力をどうにかしつつ、中に取り残されている隊長陣にデバイスを届ける必要があると言うわけだ。
「オーバーSはアタシとリインがやる! 地上はコイツ等がやる! 明久は至急こっちに向かってコイツ等の援護!」
「「「了解!」」」
ヴィータの指示に従い、地上本部の中へと入って行くフォワードメンバー。
本来なら僕もヴィータの指示に従うべきなんだろう。
けど、なんだ? この嫌な予感は? 何故か、本能ではここから
‥‥‥‥逃げる? なんで僕は逃げるなんて発想が出てきたんだ? 普通なら、今の僕の立場なら
なんで僕は逃げるなんて思ったんだ?
「ユニゾン行くぞリイン!」
「はいです!」
と、僕が変な思考をしていると、ヴィータとリインは既に空へと上がっていて、もうじき敵と遭遇する所まで来ていた。
ヤバイ! 変な事考えてる間に出遅れた!
「ロングアーチの皆! 僕も今から本部に向かうね!」
「はい! ヴァイスさんには既に連絡は通してあります。急いでヘリポートに!」
「ありがとう!」
僕はロングアーチへの挨拶を早急に終わらし、急いでヘリポートへと向かう。
その間も、二つの本能が僕の中で争っていた。
一つは早くこの場から離れろと言う事。
そしてもう一つが、今ここから離れたらいけないと言う事だ。
僕の中には今、二つの相反する本能が争っている状態だ。
「‥‥‥‥なんなんだ? この不安な気持ちは?」
FFF団から逃げてた時よりも、なのはの訓練を受けていた時よりも、扇に殺されかけた時よりも、僕の記憶にある限り、過去最高の嫌な予感だ。
そんな気持ちを持ったまま、僕がヘリポートにつくと
『明久君! ストップ!』
突如、ロングアーチから通信が入り、第一声で動きを止められる。
この感じは何かあったのか?
『今、こっちに高エネルギー反応三体が、高速でこっちに向かって飛来中! 今、シャマル先生とザフィーラが迎撃に出てくれてるから、明久君も先にそっちに向かって!』
どうやら、僕の嫌な予感は当たっていたようだ。
けど、何故だ? なんで僕の嫌な予感は拭い去れないんだ?
「明久! ボーっとすんな! 急いで迎撃に迎え! そんな高エネルギー体が来るなら、それはおそらく戦闘機人だ! しかも、ガジェトまで連れてきてる可能性が高い! 今、六課の最前線で戦えるメンバーの中では、お前が最高戦力だ! きっちり働け!」
目の前のヴァイスさんに叱責される‥‥‥‥‥
この人はホント簡単に言ってくれるね‥‥‥‥
けどまぁ今回、言ってる事は完璧にヴァイスさんが正しいだろう。
今は嫌な予感とか、どうでもいい!
今は、六課を守る事だけを考えなきゃいけないんだ!
『明久君? まだ六課にいるわよね? 敵は三人。私とザフィーラも戦うから、合流しましょう?』
僕が六課の防衛に全力を尽くせるように、頭から余計な事を切り捨てた時、シャマルから連絡が入った。
「了解! 今はヘリポートにいるから、僕は敵が接近してくる方の空に上がるよ」
『分かったわ。私達も今からそっちに向かう』
僕とシャマルは手短に連絡を取り合い、この後どうするかを話した後、直ぐに連絡終える。
「ヴァイスさん!」
「俺は、戦闘機人なんかと真面にやりあえるだけの力はない。内部に侵入してきたガジェットの相手くらいなら、やれない事もないと思うが、長くは持たねえぞ?」
「分かってます。それでも、そっちは任せました。僕達は戦闘機人を」
「おう」
僕とヴァイスさんがこんなやり取りをして、僕がシャマルとザフィーラの二人と合流して直ぐに
「っ! 二人とも危ない!」
二人に向かって砲撃のような物が放たれたので、急いで僕はその砲撃と二人の間に割り込みバリアを展開して砲撃を防ぐ。
っ! 危なかった。即死とは言わないけど、あんなの真面に‥‥‥‥それもなんの警戒もしてない後ろから当てられたんじゃ、タダじゃ済まないぞ!?
これだけでも相手の強さが良く分かる一撃だった。
更に付け加えるなら、この攻撃をした奴は後衛タイプだ。
こういうのに、いつまでもウロチョロされたら邪魔で仕方がない。
先に撃とさせてもらう!
「ドラゴンドライブ! くらえ!」
僕はドラゴンドライブの発動と同時に、雷の斬撃を二発程放つ。
相手は反応しきれていないし、これは決まった!
と思ったんだけど
キィ――――ン! キィ――――ン!
と、二発とも突如現れた人陰によって弾かれてしまった。
「な!?」
そして、僕達三人がその事に驚いていると
「ディード」
最初に砲撃を撃ってきた奴が、誰かの名前を呟くのとほぼ同時に
「ISツインブレイズ」
僕達の後ろから、僕と同じように二振りの剣を持った女が現れて僕達に襲い掛かってくる。
「くっ!」
僕はそれを何とか、防ぎディードと呼ばれていた人影を弾き返す。
「囲まれたか」
「これは少しマズイわね‥‥‥」
僕がディードを弾き返した事により、僕達三人は取り囲まれていた。
これはミスと言うよりも、敵の攻撃を何とかギリギリ防げた状態だったから、こうなってしまったのは仕方がないと言えるだろう。
‥‥‥‥ドラゴンドライブを使ってギリギリって、コイツ等相当強いな。
特に僕の攻撃を防いだ、あのフーデッドケップを被って顔が隠れてる奴。
「オットーお前は早く六課を破壊しろ、雷炎龍は俺がやる。他の二人はディード、お前がやれ」
あの砲撃を撃ってくる奴はオットーと言うらしい。
と言うか、あのフードの奴、扇なのか? ‥‥‥‥声がそっくりだったし、多分間違いないな。‥‥‥‥‥だったら
『二人とも聞いて!』
僕はシャマルとザフィーラに念話を送り、作戦を伝える。
『向こうに扇がいると邪魔だ。先にアイツから叩く。その間、他の二人を抑えてて』
『了解』
『心得た』
扇にはこの前勝ってるんだ。この前と同じように本気の攻撃で一瞬で撃とす!
「行くよ! 二人とも! 奥義! スターバースト・ストリーム!」
この前と同じように、最高速度の速度と最高速の剣技。
これで、一撃で撃とせる!
と、思っていたのだが
「なっ!? 嘘!?」
僕の攻撃、十六連撃の全てが扇に防がれてしまった。
どうして!? この前は少しも反応できてなかったのに!
「あの時とは違う。俺は強くなった。そして俺はもう油断なんてする事はない。お前に勝ち目はもうない」
っ! 言ってくれるじゃないか!
絶対に勝ってやる!
「だったら、二刀流最終奥義! ジ・イクリプ――」
「遅い。風龍の風爆」
「ぐはぁっっっ!!」
扇は僕が、イクリプスを発動する前に僕に向けて大鎌を向けると、そこから竜巻を上から見たような光景の風の渦が僕に襲い掛かってくる。
っ! これは初めて扇と会った時、扇が最後に使った技か!
「「明久(君)!?」」
「よそ見とは随分と余裕ですね」
「しまっ――」
ド―――ン!
「きゃあぁぁぁああ!!」
僕がやれた事により、一瞬意識を逸らしたザフィーラとシャマルが、ディードの攻撃を真面に食らい吹き飛ばされる。
くそ! 僕が扇にやられたりしたから、グダグダじゃないか! どうにかしないと‥‥‥‥‥
「雷炎――いや、吉井明久。お前は俺には勝てない。なぜなら、俺はお前よりも上の力を手に入れたからな」
「上? どういう意味? ドラゴンドライブなら、僕も使えるし条件は同じでしょ?」
僕が現状をどう打破するか考えていると、扇が話しかけてくる。
前はもっと頻繁に話しかけてきてたけど、今回は扇の口数が少なかったから、何事かと耳を傾けると
「俺はDDを超える力、ドラゴンユニゾンを会得した」
「なっ!? ドラゴンユニゾン!? それって確か、できる人がここ最近現れなかったはずじゃ!?」
確か、ドラゴンユニゾンを使えば、暴走と隣り合わせでドラゴンの力を百パーセント出せる技じゃなかったけ‥‥‥‥‥?
「俺はその壁を越えた。お前には決して越えられない壁だ。‥‥‥‥‥これを見ろ」
そう言って、扇がフードを外すと
「「「っ!?!?!?」」」
扇の顔の右半分は龍の鱗のようなが入っていて、鱗の部分は緑色で右目は黄色くなっていた。
「これが、ドラゴンユニゾンの半分の力だ。本来、全身”こう”なると完全なドラゴンユニゾンとなるらしいが、生憎と俺はここまでしか制御ができない。まぁ、お前を潰すのにはこれだけの力があれば充分だがな」
この強さで、ドラゴンの力の半分‥‥‥‥か。
恐ろしいねドラゴンって奴は‥‥‥‥
僕は、たった半分の力を真面に受けたくらいで、両肩両肘の関節が外れて、額からは血を流してるし、口も切ったようで口の中が凄い鉄の味でいっぱいだった。
これが、百パーセントになったら、ホントに星の一つや二つ、一瞬で破壊できてしまうかもしれない、それ位の強さだ。
「今回は、我々の目的は施設の破壊のみです。いくら雷炎龍と言えど、今は殺したらいけませんよ? 風月さん?」
「‥‥‥‥面倒な事だな。どうせコイツ等はまた俺にも、お前達にも牙をむくぞ?」
「その時は、今度こそ抹殺の許可が出ると思いますよ?」
なんだ、それ? まるでいつでも僕達を殺せるみたいないい方じゃないか‥‥‥‥‥
「ちっ。まぁいい。さっさと仕事を終わらせろ。言っておくが、俺は今回も破壊なんてつまらん真似は絶対にしないぞ?」
「分かってます。それはこちらでやります。‥‥‥‥‥IS発動、レイアーム!」
オットーは扇と少し会話をした後、六課の施設に向けて砲撃を複数放ってくる。
くっ! 六課を潰されてたまるか!
「テスタロス!」
『分かってるわよ!』
僕はテスタロスに声を掛け、ドラゴンドライブを二属性から炎の一属性に変更する。
雷の特色は、ただでさえ身体能力が上がっているのに、その上に更に身体能力、魔法のスピードを上げるものだ。
では炎は何なのか? それの答えは簡単だ。炎には身体能力のパワー、魔法の威力を上げる特性がある。
今のこの状況では、バランスよく能力値を上げていても大して意味はない。
今は自分の身を守るより、オットーの攻撃が施設に当たらないようにしないといけないんだから。
「炎龍の拡龍炎!」
僕は炎の塊を数発オットーの砲撃に向けて放つ。
僕の放った炎は全てオットーの砲撃に当たり、一発はオットーに向けて飛んでいく。
やっぱり、どう考えたって、一番厄介なのは扇だけど、邪魔なのはオットーだ。あの砲撃は六課を守る上では危険すぎる!
僕はこの状況でも、まだ勝つ事を諦めてはおらず、オットーをまずは潰しにかかったんだけど
「オットー! はあぁぁぁああ!」
オットーを守るためにディードが炎を斬り裂いてしまった。
‥‥‥‥くそっ! 全力ではないとは言え、威力の上がってるはずの僕の攻撃を、こうもあっさり斬るなんて‥‥‥‥
「関節が外れて、それだけの出血のくせに良くまだ動けるな‥‥‥‥そこの二人もまだ立ち上がるだけの気力は残っているようだし‥‥‥‥‥君たちは三人で良く頑張った。けど、これで終わりだ」
オットーがそう言うと、ガジェットは僕達を襲ってくる。
くそ! 僕達の相手はガジェットで充分だとでも言いたいのか? 舐めるなよ!
僕は地面に落ちてる剣を一本口に加えて、その場で足を強く蹴り、シャマル達の方に向かって走って行く。当然、今度はスピードが大事なので、雷の一属性のドラゴンドライブだ。
「雷龍の迅雷!」
僕は自分の体に雷を纏い、ガジェットを次々と斬り倒す。
走っている時には近くのガジェットに雷も飛ばして、更にガジェットを破壊するスピードを上げると
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
かなり体力を消耗したものの、この場にいて襲ってきたガジェットは全滅させた。
もちろん、内部に侵入を許してしまったガジェットの破壊はできていないけど‥‥‥‥
「両腕が使えなくても、ガジェット如きでは相手にもならないですか‥‥‥‥オットー、私が彼を斬ります」
そう言って、ディードが僕に向かって剣を構えてくるが
「おい、アイツは俺の獲物だ。横取りすんじゃねえ」
扇が割って入り、ディードを止める。
「では、アナタが彼の相手をしてくれるのですか?」
「‥‥‥‥‥アイツ等三人とも相手してやる。お前等に任せると時間が掛かりそうだ。‥‥‥‥‥おら、纏めて掛かってこいよ。気絶ぐらいで済むように、加減はしてやる」
扇がそう言い終わるのと同時に、僕は扇とディードの間に移動して
「そりゃどうも。僕は殺す気で行くから、手加減なんてしないよ!」
扇には本気で殺すつもりで斬りかかり、ディードには雷を放つ。
まぁ、僕が殺す気で行っても、おそらく扇は殺せないから本気でやっても問題はないし、ディードに放った雷はそもそも人を殺せるだけの威力は持ち合わせていない。
とは言え、身体が麻痺してしばらく動けない位のダメージは与えられるけど‥‥‥‥
まぁ、なんにせよこの攻撃なら、いくらドラゴンユニゾン状態の扇にも攻撃を当てられる――ほど、扇は甘くなかった。
「この状態だと力が違いすぎるんだよ」
扇は肩に大鎌を乗せるような感覚で、面倒くさそうに僕の攻撃を防いできた。
‥‥‥‥‥マジ?
「まぁ、お前に勝ち目はないって事だ。諦めろ」
そう言って、扇は僕の胸ぐらを掴み、シャマル達に向かって投げてくる。
その投げられた時の速さは、尋常じゃない程速く、シャマルとザフィーラは僕と衝突した時の衝撃で気を失ってしまった。
僕は僕で、両腕が使えないせいで、受け身も取れずに六課の施設の壁をぶち抜き、施設内へと放り込まれる。
「ゲホッ! ゲホッ! ‥‥く‥‥‥‥‥そ‥‥‥‥‥」
何とか生きてるけど、力が違いすぎる。
このままじゃどうやっても勝てる気がしないや‥‥‥‥‥‥
「ヤベ、目まで霞んできた‥‥血を流し過ぎたかな‥‥‥‥‥」
くそ! ここまでか! ‥‥‥‥皆、ごめん。六課の事、皆の帰る場所守れなかったよ。
と、僕の意識が途絶えようとした時、ヴィヴィオの涙が見えた気がして、わずかに目を開ける。
「あきひさ‥‥‥‥」
と、今度ははっきりと声が聞こえる。
どうやら近くにヴィヴィオがいるようだ。
はは。ダメだ。かっこ悪い所見せちゃったな‥‥‥‥‥ごめん、ヴィヴィオ。
けど、アイツ等施設は壊すつもりみたいだけど、人を殺す気はないみたいだから、今は我慢して隠れててね?
僕じゃアイツには勝てないから‥‥‥‥‥
と、僕がヴィヴィオの心配をしていると
「お? 見っけ。コイツが聖王の器か。六課の施設も破壊したし、コイツを連れて帰れば任務終了だな」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥は?
今、なんて言った? 聖王の器? 誰それ?
僕は霞む目に精一杯集中して、視界を確保しようとする。
そして、何とかして薄らと見えたのは、この前、報告にあった『ガリュー』がヴィヴィオを抱えて、その隣にルーテシアと呼ばれた女の子と、扇の姿だった。
どうやら、聖王の器とはヴィヴィオの事のようだ‥‥‥‥‥って、それだとヴィヴィオが連れて行かれるって事!?
「‥‥‥‥‥‥ま‥‥‥て‥‥‥‥ヴィヴィオを‥‥‥‥返せ‥‥」
今薄れゆく意識の中でハッキリしている事はただ一つ。
このままだとヴィヴィオが連れて行かれると言う事だけだ。
そんな事、絶対にさせるわけには行かない。
「これは流石に驚いたな。まだ意識があるのか‥‥‥‥まぁ、もう足どころか、指一本動かせないみたいだ――なに?」
‥‥‥‥‥舐めるなよ‥‥‥‥
身体のどの部分が動かなくても、剣の一部が体に触れてれば、攻撃はできるんだ。
僕は、初めてシグナムと戦った時、なのはと模擬戦をした時、無意識に攻撃を当てていたらしい。
で、その攻撃をなのはに解説して貰ったら『剣の周りを雷が纏って、その分剣の太さ、長さが変わったんだよ』と、言っていた。
つまり、魔力さえあれば、僕は雷の剣なら、どんな長さでも自由に変えられると言う事だ。
そして、それを知らなかった扇は
「ざまぁ。攻撃当たったぞ?」
かすり傷に過ぎないが確実に頬から血を流していた。
「吠えてろ。屑」
バァ―――ン!
扇は鎌を一振りして、僕の真上の天井に風の斬撃を当てる。
すると天井は崩れてきて、僕の周りに振り落ちてくる。
あ、これ無理だ。死んだな。
と、目を瞑り死を覚悟した時
キュイィーン!!
天井から白金の腕輪が輝きながら落ちてきた。
どうやら、この上はデバイスルームだったようで、そこで研究中の白金の腕輪が偶々落ちてきたようだ。
僕は、この光に見覚えがあるなと思った時には、既に白い光に包まれていて、目の前が真っ白になっていた。