魔法少女リリカルなのは バカの参戦    作:セイイチ

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第四十五話

 署名活動を始めてから二日目。

 つまり、僕が”こっち”に帰ってきてから五日目の事。

 僕は昨日一日中走り回って、たった一人にしか署名が貰えず、このままではマズイと言う事は理解していたのだが

 

 「この豚野郎! アナタは本当に休学するつもりはあるのですか!? もっとシャキッとしなさいシャキッと!!」

 

 僕は署名活動に関しては、積極的に協力してくれると言う清水さんに怒られるほど、覇気のない状態だった。

 もちろんやる気はある。やる気は満ち溢れているんだけど、身体は思うように動いてはくれないのだ。

 なぜ僕がこんな状態になっているのか?

 それは昨日の夜の出来事が原因だった。 

 

 

 

      ☆

 

 

 

 署名集めを始めて一日目の夜。

 この日は散々走り回ったにも関わらず、たった一人にしか署名が貰えずで、疲れと成果が比例していないと思わせる一日だった。

 

 「今日は疲れたな‥‥‥‥こんな日は早く寝るに限るね」

 

 時刻は午後九時。

 普通なら絶対に寝たりしない時間だ。

 僕の記憶では、こんな早い時間に寝るなんて小学生以来だと思う。

 そんな小学生以来の行動を取るほど僕は疲れていたのだが

 

 「‥‥‥‥‥‥またか‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 僕がベッドに入り、睡眠を取ろうと目を瞑ると目の前には前にも見た光景。剣道場のような場所に立っていた。

 眠りにつこうとしたら、知らない場所にいる。こんな状況、そう滅多にあるものではないんだろうけど、生憎と僕はこの現象に遭遇するのは二回目だ。

 

 「‥‥‥‥‥‥‥‥今度はいったい何の用なの? テスタロス、ザボルグ?」

 

 「あら、今回は混乱してないのね?」

 

 そりゃあそうだ。前にも同じ事が起こってるんだから、そんなに驚いたりはしない。

 この状況で僕が思ってる事はただ一つ

 

 「今回は僕に何をさせるつもりなの? 今日は僕、結構疲れてるんだけど?」 

 

 疲れた。今日はもう寝たい。

 ただそれだけだ。 

 

 「大丈夫よ。この世界でなら、アナタは精神的に疲れるだけで肉体的には何の疲れも感じないわ。だって、アナタの肉体は今、ちゃんと休んでいるんだもの」

 

 精神的に疲れては、休んでると言わないと思うのは僕だけなんだろうか?

 

 「おい、そんな無駄に話してないで、さっさと始めたらどうだ? ただでさえ時間がないんだ。急いだ方がいいんじゃないか?」

 

 「え? 時間がないってどう言う事? ザボルグ?」

 

 時間がないとはどういう事だろうか? ここでは現実世界とは時間の流れが違うから、時間が足りないという事はないんじゃなかったっけ?

 

 「ん? ああ。小僧には理解できなかったか‥‥‥‥‥‥相変わらずバカだな」

 

 「誰がバカだ! 何の脈絡も無しに理解できる人なんているわけないでしょ!? 人をバカにしてないで、ちゃんと説明してよ!!」

 

 「ああ。そうだな。バカにはちゃんと説明しないと伝わらないのだったな」

 

 ザボルグの人を憐れむような目。

 この野郎、本気で僕の事をバカだと思ってるな?

 

 「お前も今日気が付いていただろうが? ウェザードの力を持つ輩に勝てると思っているのか? お前は”向こう”に帰った後どうやって小娘を助ける気だ? 今のお前の力では、奇跡が起こっても勝てやしないぞ?」

 

 「ゔっ! そ、それはその、皆で――」

 

 「六課メンバー全員で戦って、奇跡みたいな出来事が三回程起これば、互角の戦いができるかもしれないな」

 

 そんなに差があるの!? 確かにあの時の扇は尋常じゃない強さだったけど、そこまでしてようやく互角って‥‥‥‥‥。ユニゾン使うとそんなに桁違いになるのか‥‥‥‥‥

 

 「当然だろう? ドラゴンユニゾンとは本来ドラゴンの力を百%引き出すものだ。DDのように力を借りるわけではないのだから、それ位の差はあると思え」

 

 そっか。そんなに差があったのか‥‥‥‥‥‥‥‥と言う事はおそらく、あの時の扇は本気ではなかったと言う事だろう。

 ‥‥‥‥‥‥‥‥そんな相手に僕は”向こう”に帰って勝てるのだろうか? ヴィヴィオを助けだせるのだろうか? それ以前にヴィヴィオを助けられる可能性は一パーセントだけでもあるのだろうか? 希望なんて最初からないのではないか?

 今まで、次元が違うとは思いつつも、皆で力を合わせれば勝てると思っていた僕に、突如現れた絶望とも言える事実。

 これだけで僕が不安になるには充分すぎる材料で、心が折れるのも時間の問題かと思われたのだが

 

 「だから、これからお前は寝ている時間は毎日ここで特訓してもらう。それこそ奇跡に近いがお前がユニゾンできるようになれば、これらの問題は全て解決だからな」

 

 ザボルグの言葉によって、再び希望が出てくる。

 確かにドラゴンユニゾンがそこまで出鱈目な強さなら、僕自身がドラゴンユニゾンできるようになれば力は互角、扇にだって勝てるようになるかもしれない。

 けど、それには大きな問題が一つある。

 

「僕にできるの? ドラゴンユニゾンは最近では使える人がまるでいなかったって話だよ?」

 

 僕の記憶が確かなら、ドラゴンユニゾンを使えた人は、最近の記録では皆無だと言う事だ。 

 普通に考えて、扇が特別凄いからユニゾンを使えるようになっただけで、僕までユニゾンを使えるようになるかは分からない。

 

 「バカ者。バカが難しい事を考える必要はない。第一、お前がそんな事を悩んで何になる? お前自身が小娘を救うと決めたのだろ? なら、誰に不可能と言われようとも自分で決めた事をやり遂げるためなら何でもする覚悟を決めろ」

 

 ザボルグ‥‥‥‥‥

 ザボルグって本当に偶にだけど良い事言うよね。

 確かにザボルグの言う通り、ヴィヴィオを助けるには不可能と言われようと何だろうとやるしかないんだ。だったら、悩む事なんて何もない。

 

 「そうだね。じゃあ死ぬ気で特訓してユニゾン使えるようになってやる! けど、どうして急にユニゾン使えるように特訓してくれる気になったの? 二人は僕がユニゾン使えるようになっても、使うなって前は言ってたのに‥‥‥‥‥‥‥」

 

 初めて二人に会った時、僕がドライブの力を貰うために初めて精神世界に行った時、二人は僕に力をくれるための条件として『ユニゾンは使うな』と言ってきた。

 それなのに、今は会得するために特訓までしてくれると言ってきている。

 

 「今でもできる事なら、使って欲しくないわよ? けど使えなかったらアナタが死んでしまうのは目に見えてるもの。‥‥‥‥‥‥‥私達の本音を言えば、アナタにはこの世界に残ってもらって、平穏に暮らして欲しいと思ってる。けど、アナタはそんな事絶対にしないでしょ?」

 

 「まぁ、ヴィヴィオを助けずに、黙って見て見ぬふりなんてできないし、何が何でも助けに戻るつもりではあるよ。それで例え僕が死んだとしても‥‥‥‥‥」

 

 ‥‥‥‥‥‥今の言ってから気づいたけど、なんてこっ恥しいセリフなんだ‥‥‥‥‥‥

 まさか、マンガとかで良く読むセリフを僕がいう事になるとは思わなかった‥‥‥‥‥。このセリフはマンガだからこそ言えるセリフだな。実際に使ってみると恥ずかしさが尋常じゃない。

 

 「恥ずかしいのなら、最初からそんなセリフ言わなければいいのに‥‥‥‥最初言い切った時は男らしい、かっこいい顔だったのに、そこで赤面したら台無しよ?」

 

 どうやら、恥ずかしさは気持ちだけじゃなくて、顔にまで出ていたらしい。

 なにこれ? なんて羞恥プレイ?

 

 「まぁとにかく、これからのお前は小娘を助けるまでの間、夜は特訓、昼間は帰るための条件クリアのための行動だ。”向こう”の状況が分からん以上、休む暇など無いと思え? 下手をするとお前が帰った時、既に手遅れと言う可能性もあるからな」

 

 っ! そうか! 僕が”向こう”にいた月日と、”こっち”で行方不明になっていた月日が同じと言う事は、時間軸は一緒って事だ。

 しかも最悪な事に”向こう”で起こっている事を、僕が把握する事はできない。

 なら署名を貰えず、いつまでも”こっち”にいるわけにはいかない。そんな事していると、ようやく”向こう”に行けるようになっても、ザボルグの言う通り、手遅れになってしまう。

 どうやら僕には本当に遊んだり、休んだりしている時間はないようだ。

 

 「ようやく小僧が”時間がない”と言う意味を理解した所で、さっそく特訓に入るぞ? このままでは本気で時間が足らんからな」

 

 「うん! 宜しくお願いします!」

 

 こうして、僕は夜は特訓、昼間は活動で忙しい僕の新生活が始まった。

 

 

 

       ☆

 

 

 

 と言うわけで、昨日の晩、ザボルグとテスタロスに本気でしごかれた僕は、身体はしっかり休んでいたはずなのに、僕の思っていた特訓よりも厳しかったため、翌日にまで疲れを持ちこしてしまったのだ。

 僕の感覚的には徹夜したような気分だ。

 もちろん体はしっかり寝ていたので、実際には徹夜ではないんだけど‥‥‥‥‥‥

 

 「って豚野郎! アナタは美春の話を聞いているのですか!?」

 

 「へ? あ、いや、はい! なんでしょう?」

 

 僕は疲れのあまり、清水さんの話を聞き逃して清水さんに睨まれる事になる。

 

 「人の話はちゃんと聞きなさいと、小学校の時に言われなかったんですか!? いくらFクラスの豚野郎とは言え、人語くらい理解できるでしょ!? それとも人語すらも分からない豚野郎なんですか!?」

 

 ‥‥‥‥‥‥人の話を聞かないのは、僕よりもむしろ清水さんだと思う。

 確かに今回は僕が聞いてなかったけど、普段話を聞いていないのは清水さんやFFF団の皆なんだから‥‥‥‥

 とは言え、今の僕のコンディションは最悪なので、ここで余計な体力を使いたくないので、余計な事は言ったりしないが‥‥‥‥‥

 

 「全く、良いですか? もう一度だけ言いますよ? お姉さまや姫路さん、その他の豚野郎三人の署名は絶対に必要とは言え、頑なに拒否し続けるのならば、後回しにして先に他の四人分を集めた方が良いのでは? と言う話です」

 

 なるほど‥‥‥‥確かにその考え方はありだな。

 どうせ雄二達以外の生徒から、後四人分署名を集めないといけないんだから、先に他の人から集めると言うのは良い考えかもしれない。

 先に他の署名を集め終えてから、雄二達に集中した方が上手くいくような気もする。

 

 「じゃあ清水さんの意見を採用するとして、誰にだったら署名を貰えるかな? Fクラスの人間は五人以外はカウントされない事になってるから、清水さんの知り合いに誰か署名してくれそうな人いないかな?」

 

 と言うか、清水さんの知り合いに署名して貰えないと困る。 

 ババアから、Fクラスからは雄二達五人以外の署名は認めないと言われてるから、僕が署名を頼める人なんて数えるほどしかいない。

 だから全員とは言わないけど、数人くらいは清水さんの知り合いに頼むしかないのだ。

 

 「そう言うことでしたら、うってつけの人物が二人‥‥‥‥‥‥いませんね」

 

 「いない!? 今二人いるって言いかけなかった!?」

 

 今うってつけの人が二人いるって言いかけたよね!? なのにどうしてイキナリいないなんて事になるの!?

 

 「いえ、豚野郎の願いなら即座に聞いてしまいそうな人物が二人程思いついたんですが、今回のアナタの目的を知ったら協力してくれないような気がしたので‥‥‥‥‥‥」

 

 ん? どういう事? 僕のお願いは聞いてくれるけど、今回の僕の目的、つまり休学するための協力はしてくれないって、いったいどういう事なんだ?

 

 「まぁでも、他に当てがあるわけでもないし、話をするだけしてみようよ。もしかしたら協力してくれるかもしれないしさ」

 

 もしかしたら奇跡的に上手く署名を貰えるかもしれないしね。

 少しでも可能性があるなら、その人達にも声を掛けるべきだろう。

 

 「豚野郎がそこまで言うのなら、美春には止める理由はありません。いいでしょう。美春が紹介してあげます」

 

 てなわけで、僕と清水さんは清水さんの知り合いに協力を仰ぐために、清水さんの知り合いに会いに行く事となった。

 

 

 

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