魔法少女リリカルなのは バカの参戦    作:セイイチ

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第四十六話

 「ごめん。ここは止めよう清水さん」

 

 僕は清水さんの知り合いに会いに来て、直ぐにこんな言葉を発していた。

 

 「なぜです? Dクラスに何か問題でもあるんですか? 因みに美春もDクラスなので言動には注意して下さい」

 

 不思議そうな顔をして僕に聞いてくる清水さん。

 先に断っておくけど、僕は決してDクラスが嫌いだからとか、Dクラスが怖いからDクラスに来たくないわけじゃない。

 僕がDクラスに近づくのが嫌な理由、それは単純に

 

 「玉野さんが教室にいるからだよ! あの人とはちょっと関わりたくないと言うか、出来れば避けていたい人物なんだよ!!」

 

 玉野美紀。Dクラス所属で三つ編みの女子生徒だ。

 彼女は一見おっとりしているように見えるが、騙されちゃいけない。彼女は何故か僕の事をアキちゃんと呼び、僕を見かけると直ぐに女装させようとしてくる人だ。

 僕にとっては危険人物である。

 

 「はっ! 今アキちゃんに名前を呼ばれた気がします!」

 

 ヒィィィィ!! なんて良い勘を持ってるんだ!? やっぱり玉野さんは危険だ! 玉野さんは何を考えてるのか全く分からないし!

 

 「清水さん。一生のお願いだ。玉野さんだけは、玉野さんだけは勘弁して下さい!!」

 

 僕は清水さんに必死に頭を下げる。なんなら土下座をしても良い位だ。

 

 「いえ、その勘弁してくれと言われても、アナタのすぐ後ろに美紀がいるんですけど?」

 

 「へ? すぐ後ろに?」

 

 僕は清水さんに言われて、ゆっくりと後ろを振り返ると

 

 「アキt――吉井君! 久しぶり! イキナリだけどよし――アキちゃんがいない間にアキちゃんが似合いそうな服をいっぱい作ったんだ!! 着てみてくれる‥‥‥‥‥よね?」

 

 僕の後ろにはフリルの付いたスカートや、メイド服、腰の周りに大きなリボンを付けた服等、大量の服をッ持っている玉野さんがいた。

 

 「さらばだ」

 

 今までの疲労を全て忘れて全力で走り出す僕。

 

 「あ、待ってアキちゃん! この服なら絶対に似合うから着てみて!!」

 

 一目散に逃げ出した僕を尋常じゃないスピードで追いかけれくる玉野さん。

 くっ! なんて速さだ。このままじゃ追い付かれるのも時間の問題だ!

 

 余談だがこんな話がある。

 玉野美紀という女生徒は吉井明久には全く興味がなく、吉井明久の女装姿である、アキちゃんが大好きであると。

 そして玉野美紀は吉井明久をアキちゃんにする為ならば、通常時の何倍もの力を発揮する。

 更にはアキちゃんは最高と宗教をDクラスに布教させる等、とにかくアキちゃん――ではなく吉井明久に取っては、最悪の人物なのである。

 

 「待ってアキちゃん!! 絶対に似合うから逃げないで!」

 

 「断る! 僕は女装する気なんて更々ない!」

 

 「そんな事言わないでアキちゃん! アキちゃんはそんな男物の服なんて着ちゃいけないわ! 本当の姿に戻って!」

 

 「玉野さん! 君こそ僕の本当の性別を思い出すんだ!」

 

 「え? ”男の娘”でしょ?」

 

 「男の”子”だよ!!」

 

 ダメだ! 前から分かってた事だけど、玉野さんの頭はおかしいみたいだ。

 

 「アキちゃん‥‥‥‥‥‥しばらく見ない内に、自分の性別を忘れちゃうなんて‥‥‥‥‥」

 

 「忘れてないよ!! 自分の性別を忘れるってどういう状況なの!? 性別を忘れた――と言うより、性別を勝手に変えたのは玉野さんでしょ!?」

 

 「そんなアキちゃん酷い! ‥‥‥‥‥‥けど大丈夫。この服を着たら、アキちゃんだって本当のアキちゃんを思い出せると思うわ!」

 

 「全然大丈夫じゃない!!」

 

 そんな事になったら、僕はもう男ではなくなっていると思う。

 それこそ本当に男の娘になってしまう。

 やはり僕は捕まるわけには行かないようだ。

 

 「おおぉぉぉおお!! 捕まってたまるかぁぁぁ―――!!」

 

 

 

       ☆

 

 

 

 「うぅ。酷い目にあったよ‥‥‥‥‥」

 

 「よくトランス状態の美紀から逃げられましたね‥‥‥‥‥‥正直、アキちゃんになって帰ってくると思ってました」

 

 「あははは。まぁちょっと色々あってね? なんとか逃げ切れたんだよ‥‥‥‥‥」

 

 あの後、僕はなんとか玉野さんを振り切り、清水さんと合流していた。

 僕は玉野さんから逃げる時、玉野さんの身体能力はちょっと尋常じゃなかったので、少し魔法を使わせてもらった。

 本来ならバレたらマズイので、使うべきではなかっただろうけど、今回に限ってはおそらく問題ないだろう。

 なぜなら、僕が魔法を使っても、しばらくの間玉野さんは僕を追いかける事が出来ていたのだから‥‥‥‥

 玉野さんって実は魔法を使えるんじゃないか? と思わされたレベルだった。

 

 「それで? 美紀から署名は貰えたんですか?」

 

 「無茶言わないでよ‥‥‥‥‥」

 

 あの玉野さんに話が通じるわけないし、何より面と向かって話す事ができるような状況じゃなかった。と言うか、魔法を使って逃げるのが精一杯なのに話し合いなんかできるはずがない。

 

 「全く、情けない豚野郎ですね。これじゃ何のために美春が美紀を紹介したか分からないじゃないですか」

 

 僕としては出来れば玉野さんには会いたくなかったよ‥‥‥‥‥‥

 

 「まぁでも、もらえなかったのなら仕方がありませんね。次の候補者の下に向かいましょう」

 

 「お願いします‥‥‥‥‥」

 

 そしてお願いですから、もう玉野さんには会いませんように‥‥‥‥

 

 

 

 「で、清水さんの後に連いて来たわけだけど、なんでAクラス?」

 

 玉野さんに見つからないように細心の注意を払いながら、僕は清水さんの後ろについて来たんだけど、僕が連れて来られたのは、何故か二年Aクラスの教室だった。

 

 「何故って‥‥‥‥美春の知り合いがAクラスの人だからに決まっているでしょう? そんな事も分からないんなんて、さすがは豚野郎ですね」

 

 酷い言われようだ‥‥‥‥‥

 けどまぁAクラスの人を紹介してくれるなら、さっきみたいな事にはならないだろうから、そこは安心できるし、この罵倒にはあえて何も言うまい‥‥‥‥‥

 と、僕がもやもやした気持ちで、尚も玉野さんに見つからないように隠れていると、清水さんに近づいてくる一人の影――と言うか久保君がいた。

 

 「おや? そこにいるのは清水さんじゃないか。Aクラスに何か用でもあるのかい?」

 

 「ちょうどいいタイミングで会えましたね」

 

 そして清水さんの知り合いとは久保君の事だったようだ。

 さっきの玉野さんの時と比べると、随分と良い知り合いだな。

 なんせ久保君は僕に被害が全くないどころか、むしろ僕が困ってると率先して助けてくれる人物なんだから。

 何故か皆は僕が久保君に会った言うと、本気で体の心配をされたりするんだけどね‥‥‥‥‥ 

 

 「ちょうどいいタイミング? 清水さんは僕に用があるのかい?」

 

 「まぁそうですね。美春に用があるわけじゃないですけど‥‥‥‥‥」

 

 清水さんが久保君と会話をしながら僕の方に視線を向けてくる。

 これは多分、いつまでも隠れてないで早く要件を済ませろって事だろう。

 

 「ん? どういう事だい? 清水さんに用がないなら何故僕に――」

 

 「や、久保君。久しぶりだね」

 

 「よ、吉井君!? いつの間にそこに!? 僕とした事が吉井君に気づかないなんてっ! って、吉井君ががここに居ると言う事は?」

 

 「うん。清水さんの紹介で久保君にお願いが――」

 

 「引き受けよう!」

 

 「早っ!」

 

 僕のお願いの内容を聞く前に承諾する久保君。

 即答するにも程があると思うのは僕だけだろうか?

 まだお願いの内容どころか、最初の一言目を言いきってもいないのに‥‥‥‥‥‥もしかして先に僕のお願いの内容知ってたのかな? 

 けど、こんな会話を前にもした事があるような気がするのは気のせいだろうか?

 

 「それで吉井君。僕に頼みたい事とはどんな内容なんだろうか? 僕にできる事なら全力で協力させてもらうよ」

 

 どうやら内容は一切知らなかったらしい。

 その割に即答して僕を助けてくれようとしてくれるなんて、久保君は本当にいい人だね!

 

 「実は久保君にお願いしたい事って言うのは、この紙に署名して欲しいって事なんだ」

 

 そう言いながら、僕は久保君に署名のための紙を渡す。

 

 「別に白金の腕輪を君が使うのは構わないが、どうして休学する必要があるんだい? そもそも白金の腕輪は試召戦争の時に使う物なんだから、休学すると使用ができなくなって本末転倒だと思うんだが‥‥‥‥」

 

 署名の紙に目を通した久保君の疑問。

 どうやら久保君は、僕が白金の腕輪を使う事には反対ではない見たいだけど、休学すると言う事に関しては反対のようだ。

 確かに白金の腕輪の正しい使い方だけを知っていて、裏の使い道を知らない久保君からしたら僕の行動は奇妙だと思うのが自然なのだろう。

 何の疑いもなく僕が休学すると言う事実だけで協力してくれるのは清水さんだけのようだ。

 

 「えぇっと、それはそのなんて言うか‥‥‥‥‥」

 

 魔法の事を話して、腕輪のもう一つの使い方を説明すれば、簡単に話が終わるんだけど、魔法の事をあまり広めるのもよくないのないので口ごもってしまう僕。

 魔法の説明抜きでどうやって僕に説明しろと?

 

 「あら、吉井君。久しぶりね? Aクラスに何か用なの?」

 

 「もしかしてボクの事を見に来てくれたのかな? もしそうなら嬉しんだけどね♪」

 

 僕がどうやって説明しようか悩んでいると、Aクラスの教室から秀吉の姉である木下優子さんと、この学園でムッツリー二に続く保健体育の成績の持ち主である工藤さんが僕等の方へと歩いてくる。

 

 「いや、吉井君が僕にお願いがあると言うから、少し話をしていたんだよ」

 

 「え”? 吉井君が久保君に‥‥‥‥‥?」

 

 何故だろう? 工藤さんが凄い信じられないような顔しているのを見てると、一刻も早く詳しい詳細を二人に話さないと大変な事になるような気がするのは‥‥‥‥‥

 僕は早く説明するべきだと本能が伝えてくるので、木下さんと工藤さんに事情を説明する。

 と言うか、まだFクラス五人以外の人達の署名の数も足りてないし、二人にも協力してもらおうと、久保君の時と同じ説明をする事にして、二人に話す。

 

 「ふーん。つまり、白金の腕輪を使うためには署名が必要で、そして何故腕輪を手に入れた途端、吉井君は休学したいと言い出したのか久保君が聞いていた。と言う事ね?」

 

 流石の理解力を持つ木下さん。

 Aクラスでもトップレベルに位置する彼女には今までの事を一度説明しただけで完全に理解したようだ。

 

 「おっしゃる通りです。あと、出来れば二人にも署名に協力して欲しいなーと思ってたりするんだけど‥‥‥‥‥」

 

 「まぁ確かに久保君の疑問も最もだけど、学園長が一度は渡した物だし、吉井君が腕輪を持ってるのは大会に優勝した景品としてなんだから、アタシは別にサインしてあげてもいいわよ?」

 

 え? マジで? 真面目な木下さんの事だから、休学するのに協力はできない。とか言われると思ってたのに、あっさり協力してくれるなんて、正直予想外だ。

 

 「え!? 優子本気なの!? 吉井君が休学するのに協力するの!?」

 

 「ええ。もちろん休学して何をするつもりなのか話してもらってからだけどね?」

 

 どうやら物事とはそんな簡単には進まないようだ。

 世の中って厳しいんだね‥‥‥‥‥‥‥

 

 「それにいくら吉井君でも、何の理由もなく学校を休学するような愚かな事はしないと思うから、休学するのには何か理由があるんだろうしね?」

 

 「確かにいくら吉井君でも無駄に休学するなんて考えられないね。うん。ボクも吉井君が何をするつもりなのか知りたいし、吉井君が休学して何をするつもりなのか教えてくれたら、ボクも吉井君に協力してあげるよ♪」

 

 「君達、最初に吉井君が頼んできたのは僕なんだが‥‥‥‥‥まぁでも、この際それは置いておこう。吉井君、僕も理由をちゃんと話してくれたら、協力する事を約束するよ」 

 

 ‥‥‥‥‥‥どうやら休学したい理由をちゃんと説明しないと、三人は協力してくれないみたいだ。

 いったい僕はどうすればいいんだろうか? いやまぁ、説明するのは良いんだけどね? 魔法の事をどうしたらいいか分からないから困る。

 雄二達に説明してるから、今さら魔法の事を隠しても仕方がない気もするんだけど、それを広めるのはあんまり良くない気がする‥‥‥‥‥‥僕は本当にどうするべきなんだろうか?

 

 「これは願ってもない展開です豚野郎。豚野郎がちゃんと話せば署名は一気に三人分集まり、アナタがここから消えるのに大きく前進します!」

 

 ‥‥‥‥‥どうやら僕には選択肢なんてないようだ。

 ちゃんと説明するように迫る三人に加えて、協力者である清水さんまでもが説明するべきだと言う言い分になった事で、僕に説明しないと言う選択肢は完全になかったようだ。

 

 「‥‥‥‥‥‥はぁー。分かった、話すよ。けどこの事はあんまり広めるべきじゃないと思うから、他の人には言わないでね?」

 

 こうして僕は、雄二達に話したのと同じように、ここにいるメンバー全員に魔法の事を含め、僕が三か月間何をしていたのか、僕が腕輪を使いたい本当の理由を話したのだった。

 

 

 

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