魔法少女リリカルなのは バカの参戦    作:セイイチ

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第四十九話

 雄二とムッツリーニを仲間に引き込んだ僕は、この勢いのまま秀吉にも協力してもらおうと、ムッツリーニの情報を元に、秀吉に会いに屋上まで来ていた。

 

 「やはり来たか明久」

 

 「その口ぶりだと僕が秀吉に会いに来るのが分かってたみたいだね」

 

 最初ムッツリーニから秀吉の居場所を聞いた時は、なんで屋上なんかにいるのかと思ったけど、どうやら秀吉は僕が秀吉に話をしに来る事を予想して、屋上まで来ていたようだ。

 こういう気遣いをしてくれる辺り、秀吉は流石だと思う。

 

 「昨日姉上から明久に呼ばれるかもしれんと言う話を聞かされたからの。無論、話の内容も知っておる」

 

 「ホント話が早くて助かるよ」

 

 雄二とムッツリーニもだけど、皆僕の事を良く理解してくれてるとつくづく思わされるよ。

 秀吉がこう言ってくれると言う事は、秀吉も僕に協力してくれる気になってくれた――

 

 「じゃが、わしは協力するとは一切言っておらんぞ?」

 

 というわけではないようだ。

 くっ! まさか秀吉がこんなフェイントを仕掛けてくるとは思ってなかったから、真面に騙されてしまった。

 

 「まぁ、確かに一言もそんな事は言ってないな。むしろ今まで否定的だった秀吉が、こうして待ち構えている時点で何か考えてると思うのが普通だろうな。もし今ので簡単に騙される奴がいたら、ソイツはただのバカだろうな」

 

 うるさい! 黙れバカ雄二!

 貴様の隣に騙された僕がいるんだから、そんな事を大声でのたまうんじゃない! 恥ずかしいじゃないか!

 

 「‥‥‥‥‥‥そんなの明久くらい」

 

 しかもこの二人わざと大声で言ってやがる。

 本当に質の悪い奴らだな‥‥‥‥‥

 

 「雄二とムッツリーニが明久と一緒にいると言う事は、二人は何かしらの取引で明久に協力していると言う事かの?」

 

 さすがは秀吉。伊達に僕等と長い事一緒にいるわけではないようだ。

 僕達の事を実に良く分かっている。

 

 「そうだ。その様子だと、木下姉から明久の事も聞いてるみたいだな。それで? 秀吉も何か取引をしようって言うのか?」

 

 「‥‥‥‥‥‥今なら簡単に取引できる」

 

 「いや、普段からお主らに取引を持ちかけようと思えば、簡単にできると思うんじゃが‥‥‥‥‥‥‥」

 

 それは否定しない。

 僕等は頻繁にピンチに陥るから、僕等と取引するのは結構簡単だったりする。

 ただ、その場合は逃げる僕等に追いついてもらわないといけないんだけどね? じゃないと取引がどうこうの前に話をする事も出来ないんだから‥‥‥‥‥‥

 

 「わしは明久と取引したいわけではない。ただ本当に明久は不利な状況を覆せるのか確かめたいのじゃ」

 

 要するに僕が”向こう”で一度ボロ負けしている僕に取っては不利な相手に勝てるのかどうかを確かめたいって事なのかな?

 

 「それなら既に証明されてるだろう? コイツは成績最低点数で、上位のクラスの奴らと何とか生き残ってきたんだから、不利な状況でもコイツができると言ったら何とかできるのは分かってる事だろう?」

 

 「それは明久が負けている点数よりも、相手より召喚獣を動かすのが得意だったからじゃろ?」

 

 確かに秀吉の言う通り、僕が今まで試召戦争で上位のクラスの人達と戦えたのは操作技術が相手より上だったからに他ならないので、秀吉の言い分に全く返す言葉がない。

 

 「なら秀吉、お前はどうやってそれを確かめるつもりだ? まさかお前が明久と召喚獣バトルをするつもりなのか?」

 

 雄二が質問すると、秀吉は小さく。だけどしっかり口の端を上げて、雄二の質問を待っていたと言わんばかりに秀吉が答えた。

 

 「わし等は今まで多くの試召戦争をこなして、明久程ではないがそれなりに操作技術が上がっている。じゃが、まだ明久には敵わん」

 

 まぁ、僕も皆と同じだけ試召戦争をこなしてるし、それにプラスして雑用もこなしていたわけだから、それは当然だよね。

 むしろそれで僕の方が下手だったら、僕は召喚獣を動かす才能が欠片もないんじゃないかと思ってしまうレベルだと思う。

 

 「そこで明久にはわしと、明久よりも点数の高い生徒の二人と戦ってもらいたい。それに勝てたら、わしは明久に協力しよう」

 

 要するに、僕VS秀吉&成績優秀な生徒で勝負するってわけだよね?

 で、それに勝てば秀吉は僕に協力してくれると。

 うん。実に分かりやすいルールだね。内容はかなり厳しいけど‥‥‥‥‥‥

 

 「分かった。その勝負乗るよ秀吉」

 

 正直、絶対に勝てるなんて自身は全くないけど、ここで逃げたら、おそらく秀吉は二度と僕に協力してくれる気は起こさないだろう。

 なら、僕にここで逃げるなんて選択肢は端っからない。逃げたら終わりなんだから‥‥‥‥‥

 

 「初めに言っておくが、教科はお主の得意な日本史ではなく古典じゃぞ? しかももう一人の人物が誰かも未だ教えておらんのじゃぞ? それでもやるんじゃな?」

 

 「当然。第一、これは僕が不利な状況でもちゃんと勝てるかどうかの実験でしょ? ならどんな勝負でも僕は逃げないよ」

 

 それにもう一人って言うのも、ある程度予想がついてるからね。

 まぁ僕の予想通りなら、この勝負は圧倒的に僕が不利――なんてレベルじゃなくて、ほぼ勝ち目ゼロだと言っても良いレベルだと思うけど‥‥‥‥‥‥

 

 「お主がそこまで言うのなら、わしも手加減は一切せんことにするぞ。では姫路、西村教諭、頼むのじゃ」

 

 「は、はい。頑張ります!」 

 

 「はぁー。私情で召喚獣を出させる事は本来なら認められないんだが、学園長から今回はお前等がやる事にはできるだけ協力してやれと言われたからな。今回だけ特別だからな?」

 

 秀吉に言われて出てくる二人。

 鉄人は立会人として出てきて、姫路さんは秀吉の味方として、秀吉に呼ばれたんだろう。

 鉄人は予想外だけど、姫路さんに関して僕の予想通りだ。

 正直、僕の予想が外れてた方が僕的には嬉しかったんだけどな‥‥‥‥

 まぁ今はそんな事より、せっかく姫路さんが自分から僕の前に現れてくれたんだから、今の内に姫路さんにもダメもとで説得を試みてみるか‥‥‥‥

 

 「ねぇ姫路さん? 一応聞いておきたいんだけど、この勝負に勝ったら姫路さんも僕に協力してくれたりするの?」

 

 「え? 明久君、この状況で私達に勝てる気でいるんですか?」

 

 驚いた表情を隠そうともせず僕に尋ねる姫路さん。

 うん。まぁその気持ちは良く分かる。

 僕だって、さっき姫路さんが出てきたら、ほぼ勝ち目がないと思ってたくらいだしね?

 けど

 

 「勝つよ? 僕には負けられない理由があるんだから絶対に勝つ」

 

 だからと言って、僕には負けなんて許されない。

 ヴィヴィオを助けるために、この勝負は意地でも負けられないんだ!

 

 「ふふふ。そんなに”向こう”にいる女の子が大事なんですか? 私や美波ちゃんがこんなに”向こう”に行って欲しくないって言ってるのに‥‥‥‥‥」

 

 ‥‥‥‥‥‥あれ? 姫路さんの周りの空気が凄い勢いで冷たくなってきてるんだけど‥‥‥‥‥なんで?

 

 「しかも、ここ最近清水さんと一緒に行動してたそうですね? 私や美波ちゃんでなく」

 

 「いや、あの、姫路、さん? それは二人が僕に協力するのを拒否してた時に、偶々清水さんが僕に協力してくれてたからだよ?」

 

 「ふふふ。ええ。いいですよ? もしも、絶対に100%あり得ませんけど、明久君が私に勝てたら協力してあげますよ。その代わり、私に負けたら覚悟して下さいね?」

 

 だめだ。もう姫路さんは僕の話を聞いていないっ! しかも姫路さんの纏ってる空気だけでなく、表情まで冷たくなってきてるし、目なんか全然笑ってないし、何よりもドス暗い負のオーラが姫路さんの周りに目に見えて漂っている。

 これは間違いなく姫路さんは、本気だ‥‥‥‥っ!

 

 「さて、じゃあ目が覚めたら呼びに来てくれ明久」

 

 「‥‥‥‥‥教室にて待っている」

 

 姫路さんの状態を見て、僕が何か言う前にそそくさとこの場から去っていく、雄二とムッツリーニ。

 おのれ! 二人とも僕を見捨てたな!?

 

 「ちょ、ちょっと待ってよ、二人とも!! 今、目の前で親友が死にそうな目に会ってるんだよ!? 助けようと言う気はないの!?」

 

 「いや、お前が自分で秀吉の誘いに乗ったんだろう? しかも、姫路のあの様子じゃ勝っても負けても結果は変わらんだろう」

 

 「‥‥‥‥‥‥お前の事は忘れない」

 

 ムッツリーニよ、どうして今その言葉を使う? 君の中では、すでに僕は帰らぬ人になっているとでも言うんだろうか?

 まぁ、今の状況ではその可能性は非常に高いんだけど‥‥‥‥‥‥

 いや、姫路さんを補習室に送りにして、その後は約束の署名だけ貰って逃げ続ければ何とかなるか?

 幸いにも姫路さんは体が弱いから、単独では僕を捕まえる事なんてできないだろうし、もしかしたら一度”向こう”に行ったら、その間に僕への敵意がなくなる可能性だって‥‥‥‥(ブツブツ)」

 

 「何をブツブツ言っておるのじゃ? 良く聞き取れんが、お主がブツブツ言ってる間に雄二達は教室に戻ってしまったぞ?」

 

 「え? なにか言った? 秀吉――って、ええ!? もういないし、あの二人!」

 

 僕が姫路さんをどうするか考えてる間に、雄二とムッツリーニは既に教室に帰ってしまっていた。

 なんて素早い二人なんだ‥‥‥‥‥‥

 あんな薄情な奴等には、いつか復讐を

 

 「ふふふ。覚悟はいいですか? 明久君?」

 

 っ!? こ、怖い! 目が、目が怖い!!

 今まで彼女たちに制裁を加えられた、どの時よりも今の姫路さんが一番怖い!

 どうやら今は薄情者な二人にどう復讐するとか考えている場合じゃないようだ。

 

 「うむ‥‥‥‥‥。今のお主を攻撃するのは良心が痛むのじゃが、これは勝負。本気で行かせてもらうぞ、明久よ! 試獣召喚(サモン)じゃ!!」

 

 「‥‥‥‥試獣召喚(サモン)っ!」

 

 二人の呼びかけに応じて、二人にそっくりで、身長がおよそ80センチくらいしかない小さな召喚獣がでてくる。

 秀吉は袴姿で薙刀を持った召喚獣。

 姫路さんのは騎士甲冑を来て、大きな大剣を持った召喚獣だ。

 

 古典

 Fクラス 木下 秀吉 132点

      姫路 瑞希 379点

 

 「待つんだ秀吉! 君は本気でこの状況の中戦うつもりなの!?」

 

 「すまぬがこれも勝負。お主の不運まで、わしは面倒を見きれん!」

 

 「そんなぁ~」

 

 なんて事だ。秀吉だけは違うと思ってたのに‥‥‥‥‥

 こうなったら期待はできないけど、鉄人に助けを求めるしか――

 

 「吉井、お前も早く召喚しないと敵前逃亡と見なし、お前の不戦敗にするぞ?」

 

 分かってたよ! 初めから鉄人が僕の味方をしてくれるなんて事があり得ない事くらい分かってたよ!

 くっそ~、こうなったら何が何でも勝ってやる!

 

 「試獣召喚(サモン)!!」

 

 僕は姫路さんの説得を諦めて、召喚獣を召喚する。

 現れたのは、僕の顔にそっくりで、学ラン+木刀と言ったような装備だった。

 

 古典

 Fクラス 吉井 明久 76点

 

 ‥‥‥‥‥‥‥‥分かってた事だけど、戦力の差が酷すぎる。

 向こうの合計点数は500越え。

 それに対して僕の点数は76。こんなの真面に戦って勝てるわけがない。

 

 「行きます!! 覚悟して下さい、明久君!!」

 

 僕が絶望的な差を前にどうするべきか迷っていると、姫路さんは怒りのせいか、深くは考えずに召喚獣をMaxスピードで突撃させてきた。

 しめた! どんなに強い召喚獣でも、ただ真っ直ぐ突っ込んでくるだけなら、いくらでも対処のしようはある!

 

 「ま、待つのじゃ姫路! 明久相手に闇雲に突撃しても攻撃など当たりはせんぞ!」

 

 姫路さんとは対象に冷静な秀吉が姫路さんを止めようとする。

 良い判断だ、秀吉。

 けど、もう遅い!

 僕は真っ直ぐ突っ込んで来る姫路さんの召喚獣の動きに合わせて、僕の召喚獣を右に少し動かして姫路さんの攻撃を避けて、その際足を姫路さんの召喚獣に掛けて姫路さんの召喚獣を転ばせる。

 

 「今だ! 今の内に削れるだけ削ってやる!」

 

 転ばせた姫路さんの召喚獣に少しでもダメージを与えるため、木刀で姫路さんの召喚獣を袋叩きにする僕の召喚獣。

 その光景は、木刀に学ランという格好のせいか、女の子を虐めるチンピラを見ているようだった。

 

 「‥‥‥‥‥‥吉井、この光景はどうにかならんのか? この光景はあまりにも酷いぞ?」

 

 鉄人は呆れながら、僕に文句を言ってくる。

 確かにこの光景は酷いけど、圧倒的に不利な状況である僕にはあまり選択肢なんてないんだから、これくらいは見逃して欲しい‥‥‥‥‥

 

 「そこまでじゃ明久!」

 

 姫路さんにダメージを与え続ける僕に向かって、秀吉が召喚獣を突撃させてくる。

 しかも秀吉の召喚獣は薙刀なら届く距離、僕の武器である木刀では届かない位置に正確に召喚獣を動かしてきた。

 僕はそれに気づくと、姫路さんにダメージを与えるのを途中で中断して、その場からジャンプして二人と一気に距離を取る。

 

 古典

 Fクラス 吉井 明久 76点

 

      VS

 

 Fクラス 木下 秀吉 132点

      姫路 瑞希 308点

 

 「っと! 危ない、危ない。流石だね、秀吉。召喚獣のコントロールがかなり上手くなってるね」

 

 「わしは試召戦争の時は最前線で戦う事が多いからのう。あれだけ戦えば多少は上手くもなろうて」

 

 確かに秀吉の言う通り、秀吉は試召戦争の度に前線へと配備されていた。

 召喚獣は動かす頻度が多い程、慣れて行きコントロールが上手くなるから、前線で戦い続けた秀吉の操作技術はかなり高い物になっている。

 

 「まったく、ただでさえ点数で負けてるのに、操作技術まで互角なんて事になったら、僕にどうやって勝てって言うのさ?」

 

 「よく言うのじゃ。いくら操作が上手くなったとは言え、まだ”観察処分者”として教師の雑用を数多くこなしてきたお主と比べれば大した事ないじゃろうに」

 

 どうやら秀吉に慢心はないようだ。

 確かに秀吉の言う通り、僕の方が召喚獣を操るのに慣れている分、秀吉よりコントロールは上手いと思う。

 けど、それを秀吉が驕って、慢心してくれれば付け入る隙もあっただろうに‥‥‥‥‥‥

 ホント、秀吉は手ごわいね。

 

 「むー。良くもやってくれましたね、明久君!」

 

 「そりゃ勝負なんだから攻撃位するよ」

 

 攻撃しなかったら僕がやられるだけじゃないか。

 そんなのやだよ。

 ”観察処分者”の召喚獣は他の召喚獣とは違い、教師の雑用をするために物体に触る事が出来る特別仕様で出来ている。

 その分、召喚獣がダメージを受けると、召喚獣が受けたダメージの何割か、僕に返ってくるフィードバックなんて機能まである。

 つまり、召喚獣がやられると、僕にも痛みが来ると言うわけだ。

 それなのに、ホイホイやられるようなバカはいないだろう。

 

 「でも、抵抗できない女の子を木刀で何回も叩くなんて、酷いじゃないですか! もう許せません!」

 

 何故だろう? 勝負なんだから僕は悪くないはずなのに、言葉だけ聞いてたら僕はとんでもなく悪逆非道な奴に聞こえてしまうのは‥‥‥‥‥‥

 けど、これで姫路さんが熱くなってくれるのは好都合だ。

 あまり刺激しすぎると、何をしてくるか分からなくなって危険だけど、少し熱くなる位なら相手の動きが読みやすくなって、僕に取っては好都合だ。

 

 「落ち着くのじゃ姫路! 今のままでは明久に勝つ事など、できはせんぞ!」

 

 ちっ! 秀吉め、余計な事を!

 これで姫路さんが落ち着いたら、また戦いにくくなるじゃないか!

 ただでさえ、さっきのラッシュでも姫路さんの点数を100点も削れなかったって言うのに‥‥‥‥

 

 「大丈夫です! 私は落ち着いています! その証拠に、この勝負に勝って明久君にどんな風にオシオキするかもしっかり考えています!」

 

 ひぃ~! 勝負の最中になんて事を考えているんだ姫路さんは!?

 オシオキの事を考えると、恐怖で足が震えてくるじゃないか!

 けど、これはチャンスだ。

 秀吉の声は空しくも、姫路さんには届いていない。

 つまり、姫路さんはまだ落ち着けていないと言う事だ。

 今ならまだ叩ける!

 

 「姫路さんには悪いけど、僕は素直にオシオキを受ける気はないよ! それに、今の姫路さんなら怖くも何ともないし、姫路さんは後回しにして、まずは秀吉から倒させてもらうよ!」

 

 そう言って僕は召喚獣を秀吉に向かって走らせる。

 もちろん、さっき言ったのは嘘だ。

 ホントは怖い。凄く怖い。もうチビリそうなくらい怖い。

 姫路さんの攻撃が一発でも真面に当たれば、僕の召喚獣なんて一瞬でチリにされるだろう。

 そんな一撃必殺な攻撃力を持つ姫路さんが怖くないはずがない。

 けど

 

 「勝負の最中にまで、私を無視して木下君の所に行くなんて‥‥‥‥‥明久君はそんなに木下君が良いんですか!? もう絶対に許しません!」

 

 こう言っておけば、姫路さんが怒るのは間違いと思ったよ!

 ただ、秀吉の方が良いと言う発言の意味は分からないけど‥‥‥‥‥

 まぁ、今はそんな事より勝負に集中するとしよう。

 

 「そう思うのなら、僕を止めてみるといいよ。姫路さん!」

 

 「言われなくてもそうします!」

 

 そう言って僕に向けて突っ込んでくる姫路さんの攻撃を、僕は最小限の動きで全て上手く避けきり、秀吉の目の前に到着する。

 

 「っ! 逃がしません!」

 

 もちろん姫路さんが僕を追いかけるのを止めるはずもないので、姫路さんの召喚獣も一緒だ。

 結果、僕は前方に秀吉、後方に姫路さんと前後で挟まれる形となった。

 

 「っ!? ま、待つのじゃ姫路! このまま攻撃したら、明久の思うつぼに――!」

 

 秀吉はこの形を見て、直ぐに感づいたようだけど、姫路さんは気付かなかったようで、何の疑いもなく大剣を大きく振りかぶり、僕の背中に向けて大剣を振り下ろす。

 

 「くっ! やむ得ぬ!」

 

 秀吉も姫路さんが止まらない事を察知すると、前から僕の心臓めがけて薙刀を突いてくる。

 これで前からは秀吉の突き、後ろからは姫路さんの大剣。と、僕の退路が完全になくなったかのようになるが

 

 「っ!? 仕方ない! とべえぇぇぇぇ!!」

 

 僕は秀吉が突きをするために出してきた薙刀の峰の部分に向かって飛び、さらに峰の部分を足場にして二段ジャンプを試みる。

 そしてその試みは見事に成功して、僕の召喚獣は秀吉の召喚獣よりも後ろへと着地する。

 

 「「な!?」」

 

 これでこの一瞬の間だけ、僕等の立ち位置は前から

 秀吉 僕 姫路さん。となっていたのが

 僕 秀吉 姫路さん。となる。

 さらに二人は僕に攻撃を仕掛けていた。

 ターゲットである僕が急に消えたからと言って、二人の攻撃を急に止める事は不可能だ。

 よって、二人はお互いに攻撃しあう事になった。

 

 「そんな!」

 

 「くっ! やはり明久の狙いは同士討ちさせる事じゃったか!」

 

 秀吉の突きは僕が薙刀を足場にした事により、少し軌道が落ちて姫路さんの胸ではなく腹部に。

 姫路さんの振り下ろした大剣は軌道を一切変えることなく、秀吉の首に当たり、一瞬で首を落としてしまった。

 

 古典

 Fクラス 吉井 明久 68点

 

      VS

 

 Fクラス 木下 秀吉 DEAD

      姫路 瑞希 212点

 

 今の一撃で秀吉は戦死。

 姫路さんも、それなりに点数の高かった秀吉の攻撃を真面に受けた事により大ダメージを受けていた。

 僕の点数が減っているのは、攻撃を避けるために大ジャンプをしたため、着地する際に少しダメージを受けてしまったからだ。

 

 「ふぅー上手くいったー。本当はノーダメージでやり遂げるつもりだったんだけど、そんなに上手くはいかないか‥‥‥‥‥‥‥」

 

 本当は秀吉が僕の考えに気づいた時、秀吉が攻撃じゃなくて回避しようとしたら、秀吉の体を掴んで遠心力の力を使って、僕と秀吉の場所を入れ替えるつもりだったんだけど、予想外に秀吉が攻撃してきたから、無傷でというのは無理だったのだ。

 まったく、姫路さんの一撃必殺の大剣が目の前に迫っているにも関わらず、回避行動を一切しなかった秀吉の根性にやられるとは思いもしなかったよ。

 

 「あ、す、すみません木下君!」

 

 「いや、気にするでない姫路よ。今のは明久が上手すぎたし、明久の運が良かったんじゃろう。あんなの十回やって一回成功したら、奇跡なレベルじゃろうって」 

 

 流石は秀吉。

 良く理解してらっしゃる。

 秀吉の言う通り、あんなのが成功したのはまぐれだ。

 次同じで状況で、同じことをすれば間違いなく失敗すると断言できる。

 この勝負に負けたら、僕はヴィヴィオを助けに行く事が叶わないって大事な勝負だったのに、ホント秀吉のせいで危ない賭けをやらされたよ。

 

 「それより姫路。いい加減落ち着くのじゃ。明久が最近、清水と一緒に行動していたのはわしらが協力をしなかったから、偶然会った清水に協力してもらってたんじゃろうって」

 

 「え? そうなんですか?」

 

 「(ガクシ)そうだよ! さっきもそう言ったでしょ!? いったい君は最初の僕の話の何を聞いてたのさ!?」

 

 思わず転びそうになる僕。

 やっぱり最初に思った通り、姫路さんは僕の話を何も聞いてなかったんだろうか?

 

 「なにもじゃな」

 

 どうやら秀吉も僕と同じ意見のようだ。

 

 「じゃあ、どうして明久君は皆が反対してるのに”向こう”にいる女の子を助けに行こうとするんですか?」

 

 「なんでって‥‥‥‥‥‥僕が助けたいから? と言うか、僕が弱いせいで捕まったのに僕が知らんふりとかあり得ないでしょ」

 

 「でも、元々明久君には関係のない話だったんですよ? 元教頭先生の陰謀がなかったら、明久君はその子と知りあう事も」

 

 「でももう僕の知り合いなんだ。僕に取っては”こっち”にいる皆と何ら変わらない、大切な人なんだ。それに、この三か月間で凄く僕を助けてくれた人達も、その子を助けるために必死で戦うと思う。その中には僕よりも小さい子達だっている。その中で僕だけ逃げる事なんてできないんだ」

 

 「「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」」」 

 

 僕の言葉に沈黙する秀吉、姫路さん、鉄人の三人。

 三人はそれぞれ何を思っているのか知らないけど、しばしの間沈黙を続けていたが、その沈黙を姫路さんが破る。

 

 「木下君。ごめんなさい。私、もうこれ以上戦えません。私は、私は明久君に協力してあげたいです」 

 

 「姫路さん‥‥‥‥‥」

 

 「‥‥‥‥‥‥そうじゃな。それに、この状況では明久が不利な状況を本当に覆せるのかという実験も、意味をなさんしの。これくらいのハンデなら明久はいつも覆してきたんじゃし、わしも明久が無事に帰ってくると信じる事ができそうじゃ」

 

 「秀吉‥‥‥‥‥‥‥」

 

 「では、木下、姫路両名の棄権により、この勝負は吉井の勝ちとする。‥‥‥‥‥‥‥木下の補習は今回は特別に目を瞑ってやるから、古典のテストを後日(・・)受けにくるように」

 

 鉄人はそう言って、静かにこの場を後に

 

 「って、痛ぁっ!!」

 

 せず、何故か僕の頭をグーで殴ってから、この場を後にした。

 

 「いったぁ~。鉄人めぇ~どうして今の流れで僕を殴ったりするんだよ‥‥‥‥‥‥それに補習の鬼のくせに、秀吉が戦死したにもかかわらず、補習はなしで、後日古典の試験だけ受けに来いって言うのも、鉄人らしくないし‥‥‥‥‥」

 

 僕が鉄人の不快な行動を恨めしく思ったり、不思議に思ったりとごちゃごちゃ考えていると、姫路さんが鉄人の心理を解説してくれる。

 

 「えっと、まず明久君が叩かれたのは、明久君の想いは良く分かったけど、明久君が危険な場所に自ら進んで行く事に対しては完全には納得できなくて、結果的には一発叩く事で頑張れと言う激励の意味と、無茶ばかりするなって言う二つの意味があったんじゃないでしょうか?」

 

 なるほど‥‥‥‥‥

 なら、叩かれたなんて優しい言葉じゃなくて、どつかれたって言葉の方が適切だと思うけど、とりあえず鉄人なりのエールだと思う事にして、殴られたのは許してやる事にするか‥‥‥‥‥‥

 もう少し手加減しろって気持ちもあるから、納得はできないけど‥‥‥‥‥‥

 

 「木下君に関しては、明久君の意思が決して変わらない事を悟った西村先生が、明久君と親しい友達である木下君に、少しでも明久君の力になれるようにしてくれたんじゃないでしょうか? 明久君は急いで”向こう”に行かないといけない状況ですし、学園長先生が出した条件をクリアするために西村先生が、直々に力を貸すわけにもいかないでしょうから、遠回しに木下君に任せたと言う意味なんじゃないでしょうか?」

 

 「ホントに? 姫路さんの解釈は、鉄人を良いように思い過ぎな気もするな‥‥‥‥」

 

 あの鉄人がそこまで僕の事を思ってくれるなんて‥‥‥‥‥‥

 

 「でも、そう考えた方が明久君としては嬉しいですよね? 西村先生の指導はいつも相手の事を思っての指導ですから、きっと今回も明久君の事を考えての行動だと思うので、きっとそうだと思いますよ?」

 

 ホント、姫路さんはお人よしと言うか、なんというか‥‥‥‥

 まぁでも、確かに姫路さんの言う通り、鉄人を疑うよりは姫路さんの解釈の方が僕も気持ち的に嬉しいし、そう言う事にしておくか。

 それに秀吉と姫路さんから署名を貰えたから、これで残すは美波だけって思うと気分が良いし、このいい気分をわざわざ壊す必要もないしね。

 僕は姫路さんの解釈を信じる事にして、秀吉や姫路さん達に対する気持ちと同じように、鉄人にも感謝の気持ちを送ったのだった。

 

 

 

 ノルマ達成まで残るは島田美波、ただ一人。

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