台所に立とうとする二人を、何とか止める事に成功した僕は二人がまた余計な事を言いだす前に、晩御飯を早急に作り、美波を含めて四人で少し早い夕食を食べていた。
もちろん
「さて、夕食はアキ君が作ってくれた事ですし、デザート位は姉さんが――」
「安心して姉さん。もう僕がプリンを作って、今は冷蔵庫の中に入れてあるから」
姉さんたちがデザートを作るとか言い出すのも予想済みなので、デザートの方にも手抜かりはない。
僕だって伊達に姉さんの料理を食べ続けてきたわけではない。
姉さんの考える事は大抵の事なら分かっている。特に料理に関する事なら100%理解しているのだ。
そんな僕がデザートを姉さんに作らせるなんてミスを犯すわけがない。
「あら、そうなんですか? それは残念ですね‥‥‥‥‥‥‥‥。せっかく姉さんが腕によりを掛けて姉さん特性のゼリーでも作ろうと思ってたんですけど」
「気持ちだけで! 気持ちだけで充分ありがたいよ、姉さん!」
あ、危なかった‥‥‥‥‥‥
数あるデザートの種類の中から何が入ってるのか確認する事の出来ないヨーグルトをチョイスするとは‥‥‥‥しかも姉さん特性となると、本当に何を入れるか分かった物じゃない。
姉さんにヨーグルトを作らせなかった僕。ナイスだ。
僕は数分前の自分の行動に感謝の気持ちでいっぱいになった。
この後は何事もなく、僕の作った料理とデザートだけを食べて、僕達は夕食の時間を終えた。
「ふぅー、さて」
僕は食事を終えると直ぐに、食卓から席を立つ。
もちろん目的は姉さんの持つ例の写真だ。あれが姉さんの手元にある間は、僕は安心して夜も寝られない。
というわけで、僕は写真を盗み出し、データを完全消去するべく、リビングから出て行こうと行動したのだが
「アキ君? 食事が終わって直ぐに席を立つなんて、どこに行くつもりなんですか?」
姉さんによって引き止められてしまう。
ちっ! やはり見逃してはくれなかったか‥‥‥‥‥‥‥
だが、姉さんのその発言も想定内だ。
「ちょっと汗を掻いたから、服を着替えに部屋までね。姉さんは美波達に話があったんでしょ? 二人の相手をしてあげてよ」
こう言えばいくら姉さんでも、二人を置いて僕を追いかけてくる事はないだろう。
これなら僕がどこで何をしていようと姉さんに見つかる心配はない。
完璧だ。
「そうですか。分かりました。ですが、姉さんの話とはアキ君にも関係のある話なので、アキ君も早く戻ってきてくださいね?」
「うん。了解」
どうやら時間は限られているようだが、とりあえず自由時間を手に入れる事には成功した。
後は僕の本来の目的を果たすべく行動するだけだ。
まずは姉さんの部屋に行って、例のブツを見つけに――
「ではアキ君が戻ってくるまで、お二人には私のアキちゃんコレクションの中から、お好きな物をプレゼン――」
「って、ちょっと待てぇ―――――い!」
まさか僕が探しに行こうとしていたブツがこんな所に置いてあったとは。
しかもUSBメモリーもここにある。
と言う事は、今姉さんの部屋に行っても、置いてあるのはパソコンだけでデータを完全消去する事はできないと言う事を意味している。
くっ! やはり姉さんは手強い‥‥‥‥‥っ!
「なんですかアキ君? イキナリ大声を出すなんて、みっともないですよ? あ、お二人とも自由に写真は見て下さいね?」
「大声を出させてるのは姉さんだよ!! なんで二人にその写真を見せるのさ!? 二人がそんな写真を見せられても、反応に困るだけ「「良いんですか!? ありがとうございます!!」」って、うぉい!! そこの二人! そこの二人もその喜びようはおかしいよ!?」
「「え? 普通でしょ(じゃないですか)?」」
はぁ、はぁ、はぁ。
ダメだ。さっきのでツッコミ疲れて、これ以上ツッコミが追い付かない。
かくなる上は
「てぇい! この写真は没収! ついでにこのUSBメモリーは破壊だ!」
強硬手段。実力行使だ。
「「ああぁっ!! せっかくウチ(私)の持ってない写真だったのに――!」」
何故だ? 写真も没収したし、USBメモリーも破壊したのに、僕の尊厳が一向に守られたような気がしないのは何故なんだ?
「安心して下さい。二人とも。まだパソコンの中にデータが残っていますから」
そう言って姉さんは一度自分の部屋に戻り、部屋からノートパソコンを持ってリビングへと戻ってきた。
「わぁー。あしがすべったー」
姉さんが部屋に入って来た途端。
姉さんの不意を突く形で、僕は盛大に姉さんの方へと転んで、その勢いのまま姉さんの持っているパソコンに向かってダイビングする。
バキッ! バキッ! バキッ!
僕のダイビングの結果、見事にノートパソコンは真っ二つに折れていた。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」」
ふぅー。姉さんが持っているのがノートパソコンで良かったー。
っと、やりきった感を出してる場合じゃなかった。
これは事故だと言う事をアピールしておかないと、後で僕が大変な目に会うんだった。
「いやー、ごめん、ごめん。なんか足が滑っちゃって‥‥‥‥‥‥ごめんね?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」」
あれ? さっきから姉さんも、姫路さんも美波も動かないけど、どうかしたんだろうか?
「あのー‥‥‥‥‥‥姉さん? だいじょうごぶへらぁっ!?」
僕は突如動かなくなった三人が心配になり、壊れたパソコンを持ったまま固まっている姉さんの顔を覗き込むと、イキナリ左頬に衝撃が走った。
もの凄く痛い!
「って、あれ? 姉さん? どうして無言で僕の上にまたがってるの‥‥‥‥‥‥‥?」
僕が衝撃のあまり床に倒れ込むと、次に僕が気づいた時には既に姉さんが僕の上に乗っかっていた。
その表情は、はんにゃよりも怖い顔をしている。
完全に無表情なのに、目だけは殺意を持った人のような目をしているのだ。
ハッキリ言って、FFF団の嫉妬が限界を超えた時よりも怖い。
今の姉さんの表情を見たら、嫉妬で燃えているFFF団であろうと逃げ出すに違いないと、断言できるほどだ。
そして、その姉さんの怒りは僕に向いているわけで‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「ぐふっ! ぶへぇっ! ごはっ! ぐっ! がはぁっ!」
僕はひたすらに姉さんに殴られ続けたのだった。
その後の事で僕が覚えていたのは、恐怖のあまり二人で抱き合う姫路さんと美波の姿だけだった‥‥‥‥‥‥‥
☆
「では余計な事をしている間に、凄く時間が経ってしまいましたが、本題に入るとしましょう」
結局あの後、無言で僕を殴り続けていた姉さんに姫路さんと美波の二人が、「あの、ごめんなさい! 玲さん!」「すみません、玲さん! 私達にお話しがあるんですよね? ごめんなさい!」と彼女たちは一切悪くないのに、謝りながら姉さんを止めてくれたおかげで、なんとか2、3百ッ発殴られれるだけ僕は許されていた。
姫路さん達が僕を殴るための機械と化した姉さんを止めてくれなかったら、尚も折檻は続いていただろう。
なんとも恐ろしい話だ‥‥‥‥‥‥‥
「ですがその前に。アキ君。顔が随分腫れていますよ? 一度病院で見てもらったらどうです?」
自分で傷つけていて何を言うか。
でも、一応自分で傷つけた事に責任を感じて、僕の心配をしてくれ――
「このままでは、話が終わった後に先程の続きをする事ができません」
てるなんて事はなく、自分がこの後もう一度僕を殴れるように準備をしようとするとは‥‥‥‥‥‥
我が姉ながらなんと恐ろしい‥‥‥‥‥‥
「あ、あの、玲さん? これ以上はさすがに‥‥‥‥‥‥‥。アキの顔が大変な事になっちゃいますよ?」
「そうは言いますが美波ちゃん。私のノートパソコンはアキ君の手によって、既に大変な事になっているんですよ?」
「た、確かにパソコンを壊すのはどうかと思いますけど、さすがにこれ以上は‥‥‥‥‥‥‥パソコンはもう復元はできないんですか?」
「それは無理ですね‥‥‥‥‥‥‥‥。このパソコンには仕事で使うようのパソコンではなく、プライベートなデータ、つまりアキ君の写真しか入っていなかったので、再作成できるようなデータではないのです」
そんな僕の写真しか入ってないパソコンを壊しただけで、僕は2、3百ッ発も殴られたの?
「他に写真を保存してるデータはないんですか?」
「残念ながら‥‥‥‥‥」
「そうなんですか‥‥‥‥‥‥それじゃあ、どうやっても復元できないんですね‥‥‥‥‥‥」
三人は本当に残念そうな顔をしている。
まったく、僕の写真(女装+寝顔)のデータが消えたくらいで何をそこまで残念がる必要があるんだか‥‥‥‥‥
「ですが、アキ君が協力してくれたら、完全には修復できませんが前回よりも素晴らしいデータを作る事は可――」
「そんな事より!! 姉さん!」
なにやら邪悪な雰囲気を事前に察知した僕は、反射的に大声でこの話を中断させていた。
なんだ!? このまま話を続けていたら僕は男としての尊厳を完全に無くしていだろう気配は!?
僕の本能がこの話は非常に危険だと警報をだしているので、僕は本能に従い全力でこの話を避けて、長い間放置されていた姉さんの本題とやらの話を持ち出す。
「本題の入ろうって言ってから、随分と話が脱線してるよ? ほら、あまり時間を掛けると二人が困るだろうから早く本題を話しちゃおうよ!」
「ああ。そう言えばそうでしたね。お二人に話があると言うのをすっかり忘れていました」
自分で二人を呼んでおいて、呼んだ理由を忘れるほど、僕の写真のデータを気にするなんて‥‥‥‥‥‥‥‥
いったいこの姉はどれほど写真に執着していると言うんだ?
僕は実の姉の変態度がこれほどだと認識させられて、今まで以上に姉さんに恐怖を抱いたのだが
「実はお二人に話と言うのは、アキ君の事なんです」
急に姉さんが真剣になり、僕の思考は一度クリーンにされた。
「明久君の事、ですか?」
「はい」
これまでの空気と打って変わり、突如流れる真剣な空気。
さっきまでバカ騒ぎをしていたのが、随分昔の事に感じられた。
それほど真剣な空気。
まだ概要は一言も発せられていないのに、こんな空気を一瞬で作るなんて‥‥‥‥‥
姉さんはいったいどんな話をするつもりなんだろうか‥‥‥‥‥?
「もうアキ君が皆さんに話してしまったかもしれませんが‥‥‥‥‥‥‥。お二人はアキ君が魔法を使えるようになったのはご存知ですか?」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥え?
今、姉さんはなんて言った? 魔法って言わなかった‥‥‥‥‥‥‥?
‥‥‥‥‥‥いやいやいやいやいや。ちょっと待って欲しい。
確かに僕は魔法が使えるようになった。けど、あれ? 僕は姉さんにその事を話したっけ?
僕は姉さんの不意を突かれる突然の発言に、困惑せずにはいられなかった。
「はい。アキから聞いたので、それは知ってます」
「この話をされたって事は、玲さんも明久君から聞いたんですよね?」
二人は姉さんが魔法の事を知っているのは、僕が姉さんに教えたからだと思っているようで、普通に対応していたのだが、僕に取っては意味が分からない状況だ。
誓って僕は姉さんに魔法の事は教えていないのに、どうして姉さんが魔法の事を知ってるんだ‥‥‥‥‥‥‥?
「いえ。私はアキ君からは何も聞いていません。ただ、皆さんよりも先に知っていた――と言うより、気づいた? いえ、報告された。と言う方が正しいでしょうか?」
ますますわけが分からない。
聞かされたでも、気づいたでも、報告されたでも、何でもいい。
けど、どうして姉さんが魔法の事を知っているのか?
それが全く分からない。
「先に断っておきますが、今から話す事は他言無用ですよ? 聞く人が聞けば国を、それどころか世界をも巻き込んで大変な事になるかもしれない話ですからね」
姉さんの言葉に、唾をのみ込んで頷く姫路さんと美波。
姉さんの話はいくら何でも言い過ぎだと思うほどだったが、姉さんの表情は本気で、声のトーンからも姉さんがこれから話す話が嘘ではないと信じるには充分だった。
「ありがとうございます。これはおそらくアキ君も知らない話でしょうから、アキ君もしっかり聞くようにしてください。なによりアナタが大きく関わってくる話です」
姉さんはそう前置きをしてから、話を語り始めた。
「そうですね、まず言っておかないといけないのは、吉井という苗字が世の中には多く存在していますが、その中でも私やアキ君の吉井と言う苗字は他とは系統が違うと言う事です」
姉さんが語りだした話は最初から難しくて、僕には良く分からない話だった。
出だしからこんな感じで、僕は最後まで姉さんの話について行けるのだろうか?
幸先不安である‥‥‥‥‥‥‥
「つまり、明久君と玲さんは世の中に出回っている吉井と言う苗字の人と、昔は親戚だったかもしれないと言う可能性がゼロと言う事ですね?」
「はい。男が結婚する時は普通に相手の方も吉井と言う苗字になりますが、女が結婚をする時も婿養子を貰わないと結婚できない事になっていますから、吉井家が始まった時の当主の血は外部に一度たりとも流出していませんので」
僕より数段頭の良い姫路さんは完璧に理解しているようだが、僕は姫路さんの確認を聞いて、ようやく少し理解した程度だ。
美波は美波で、難しそうにしながらも何とか付いていけているようだ。
つまり、このままだと僕一人だけが取り残されてしまうという悲しい結果に‥‥‥‥‥‥‥‥
それだけは何としても避けるべく、僕はよりいっそう集中して姉さんの話を聞く事にする。
「ですが、今でこそ婿養子という物が世間でも普通。とまでは言いませんが、少しは理解されるようになりましたけど、昔は婿養子など滅多に取れる物ではなかったので、昔の一族の女性の中にはこの掟を破ろうとした人もいたそうです」
あれ? なら、外部に初代ご先祖様の血が流出してるんじゃ‥‥‥‥‥‥?
と言う僕の疑問は、姉さんの次の言葉で消されてしまった。
「ですが、それを吉井家が許すはずもなく、掟を破ろうとした者達は全員、二択を迫られる事になりました」
二択?
僕には外部に僕の血族がいないと言う時点で凄く嫌な予感しかしなかった。
「その二択とは、一、結婚を諦める。二、吉井本家の監視の下生活を行い、子ども作る事を固く禁ずる。作れば子供は吉井の本家で養子として預かる。と言う残酷な物ばかりです」
あれ? 絶対に『よそで結婚するか、ここで死ぬか、どちらか選べ!』的な選択肢だと思ってたのに、それはないんだ。
どうやら僕が思ってたより吉井家と言うのも、血塗られた一族じゃなかったみたいだ。
「もちろん。これは今の掟で、昔は生か死の二択だったようですけどね」
あ、やっぱり昔は血塗られた一族だったんだ‥‥‥‥‥
僕にもその血が入ってるって考えると、凄く複雑な気分だな‥‥‥‥‥‥‥‥
「と言うわけで、吉井の血が外部に出ていない事を皆さんに分かって貰った上で、先程の続きです。なぜ、吉井がこのように徹底的な血の管理をするのか? それは私達の初代の先祖が原因なんです」
そう言えば、この話ってこれで終わりじゃなかったんだっけ?
今の話だけでも充分衝撃的だったのに、これからまだ話が続くなん‥‥‥‥‥‥‥‥ん?
初代先祖? それって‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「私達の初代先祖は、涼月明守ザボルグと日ノ原焔テスタロスと言う人達の子どもだったそうです」
やっぱりあの二人の子孫か!!
って、それは僕の先祖と言う時点で当たり前か‥‥‥‥‥‥‥‥
「その子は、ある年までは普通の子で特殊な力なんて何一つなかったそうです。ですが、ある日を境に普通の生活は終わりを迎える事になったのです」
あれ? 凄く親近感が湧くのは何故だろう?
今まではごく平凡な人だったのに、突然特殊な力を得たって言う話が、なんだか他人事とはとても思えない。
「その子は突然、雷と炎。両方を自由自在に操れるようになったそうです」
雷と炎。
つまりは僕と同じ力に目覚めたわけだ。
そりゃ、親近感も湧くわけだ。
「その子は力をより良い世の中にするために利用しようと、コントロールする特訓を始めたそうです。そしてその過程の中、その子は驚愕の事実を知る事になりました。それは自分の力の源が、伝説の話で、この世界を作ったと言われる存在”元龍”の力だと気づいたのです」
あー。やっぱり。
途中からそんな気がしてたんだ。
どうせこんな事だろうと思った。
この人、まるっきり僕と同じだし、これくらい簡単に予想できてしまった。
この分だと、続きも聞かなくていいかな?
と、僕は思い始めたんだけど
「ですが、この伝説はこの世界の物ではなく、別の世界の伝承です。つまり私達は本来の血筋で言えば、この世界の住人ではないと言う事です」
姉さんの話は思いもよらない方向に進んでいき、無視するわけにはいかない展開になってきた。
「その事を知ったその子はアキ君とは違い、聡明な子で自身の事も、自身の力の事も良く理解していました」
ちょっと、姉さん!?
今の話の流れで、僕とは違いって言う必要あった!?
「その子は自分の力をこの世界の住人が知れば、それを止める手段を持つ人がいない以上、かならず禍を起こすという事に考えがいたったそうです」
まぁ、確かに魔法文化がない、この世界では言いなり魔法なんて物が現れたら、取り合いにになるだろうね‥‥‥‥‥‥‥‥
「そこでその子は自分の力を、ありとあらゆる手段を用いて封印する事にしたのですが、ここで問題が発生します。それはこの力はあくまで血の影響であって、その子が自発的に手に入れた物ではないと言う事です」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥それは僕にも言える事だよね‥‥‥‥‥‥
僕に吉井と言う血が流れていなければ、ザボルグとテスタロスの力を受け継ぐ事は決してなかったわけなんだから‥‥‥‥
って
「それの何が問題なの?」
血のおかげで力を持つ事になろうとも、それを使うのは自分自身なんだから、それを封印しようが使おうが個人の自由であって、何ら問題はないと思うんだけど‥‥‥‥‥‥?
「‥‥‥‥‥‥‥‥はぁ――――――。アキ君、アナタはやはりバカの極みだったんですね‥‥‥‥‥‥‥」
随分と長い溜息をついて、僕をバカにする姉さん。
さすがに今のは酷すぎない?
「いいですか? この話の大事な部分は”元龍の力を魔法で封印する”と言う部分です。その子の血に魔力が流れているのに、その源を封印すると言う事は、血を封印すると言う事ですよ? そんな事が出来るわけがないでしょう? そんな事をしたら血が流れなくなり死んでしまいます」
‥‥‥‥‥‥確かにその通りだ。
血を封印したら、血が通わなくなって普通に死んでしまう。
「じゃあ、その子は力を封印したって事は、そのまま死んだの?」
「いえ、その子が封印しようとしたのは力の源ではなく力です。なので、封印されたのは元龍の力の一部だけです」
と言う事は‥‥‥‥‥‥え?
ザボルグの力もテスタロスの力も現在も封印されたままって事?
今でも充分凄い力を持ってるのに?
僕は驚愕の事実を思わぬところで聞いてしまった。
「ですが、いくら力が弱くなったとは、魔法のない世界で元龍の力を持つと言う事は最強を意味します。封印したところで、悪人に力を利用されれば禍が起こる事に変わりはありません」
力を弱くしても最強って、どんだけだよ。
「そこでその子は考えました。『そうだ。自分がこの世界から消えて、自分が最強ではない世界へといけばいいんだ! そうすれば誰かが力を悪用しようとしても、誰かが止めてくれるし!』と」
なんだ!? その解決法は!?
確かに、その子の言う通り魔法が存在する異世界では、僕は最強じゃなかったけども!
そんな適当な考えでいいのか!?
「ですが残念ながら、別の世界へ行く手段がありません。かと言って、このまま力を放置する事もできない。その子はここで最後にして最高の案を思いつきました」
ほぉ。さすが姉さんが聡明と言うだけあって、その子は賢い子だったみたいだね。
けど、最高の案が思いついたなら、どうして僕は元龍の力を得る事になったんだ?
僕は聡明な子ではないので、この現象がどうして起こったのか理解できなかった。
どうして僕は、その子みたいに聡明に生まれなかったんだろうか? 同じ元龍の力を受け継いだものどうしなのに‥‥‥‥‥‥‥‥
「その子の案とは『そうだ。今行く手段がないなら、子孫に任せればいいんだ』というものでした」
「はい、先祖バカ!! 何が聡明だ! 結局問題を放り出して、人任せにしただけじゃないか!!」
一瞬でも聡明だと思って、尊敬した僕の気持ちを返せ!
「だから、アキ君。最後まで話を聞きなさい。いいですか? ‥‥‥‥‥‥‥面倒になってきたので適当にいきますよ」
『子孫に任せる考えは我ながらナイスだ。だが、子孫に悪人が出ないとも限らない。どうすればいいんだ? ‥‥‥‥そうだ! 条件付きで封印すればいいんだ! 条件は別の世界に行けた子孫がいたら、その時に血の濃さをを戻して、それまでは力に目覚めないように血を薄くする条件で封印すればいいんだ!』
「と言うわけで、こうして初代は吉井と言う家を作って、掟も作ったのです」
「適当! ホントに凄い適当に話した!」
けど、とりあえず僕がどうして力に目覚めたかは理解した。
元教頭(笑)に”向こう”に飛ばされた事で力が目覚めたってことなんだろう。
「因みにバカなアキ君のために説明しときますと、その子とは初代先祖です。初代先祖は血が外部に流出する事で、どの子孫が条件をクリアして力を目覚めさせたのか、完全に管理するつもりだったのです。‥‥‥‥‥‥‥‥さらに補足ですが、初代の子孫が力に目覚めたら、今度はその子の子孫の血に力が宿るので、初代の子孫は力を受けついだ子以外は、力に目覚める事はないそうです」
あ、なるほど。だから厳しい掟を作って、血を流出させないようにしたのか。
その子孫を発見次第、別の世界に飛ばすために。
そして、その飛ばした子孫以外の子は力を目覚めさせる事はないから、飛ばす必要はないと‥‥‥‥‥‥‥ん? と言う事は?
「ようやく気づいたようですね。アキ君。アナタはこれから”こちら”の世界で生きて行く事はできません‥‥‥‥‥‥‥初代の念願を叶えられる唯一の子なんですから‥‥‥‥‥‥‥‥」