第五十五話
”ゆりかご”に向かったなのは、はやて、ヴィータの三人は”ゆりかご”内部へ侵入しようとしていたが、内部へ侵入するのは容易な事でなかった。
理由の一つとしては、”ゆりかご”周辺にはガジェットが大量に出現していたのだ。
しかも、叩いても叩いても”ゆりかご”の中からガジェットが次々と出てきて、真面に侵入できそうなルートを探す事もできないのだ。
だが、それよりも侵入が容易でない理由は、ミッド地上の航空魔導師隊が”ゆりかご”の外壁を調べ、侵入ルートを探そうとするのだが、その度に一人の男に邪魔されてしまうのだ。
「あ~あ。つまらん。もっと強い奴はいねえのか? 退屈過ぎて欠伸が出るぜ‥‥‥‥‥‥‥」
”ゆりかご”の上で、欠伸をしながら眠そうにしているのは扇風月。
隊員達の邪魔をしているのはコイツだった。
「てか、お前等に何回も言ってやってるだろう? 侵入したいなら俺を倒せって。俺の後ろの壁は耐久が低いから、俺さえ倒せば侵入できるって」
扇はこう言うが、実際問題扇を倒すなんて、一隊員達では束になって向かっても無理だろう。
なぜなら、扇は実質一人で六課を壊滅させたような奴だ。
普通にやって勝てるはずがない。
かと言って、扇を無視して別の入り口を探せば、背後から風の刃が次々と襲ってきて調査所ではない。
つまり、ガジェットの大群だけでも面倒なのに、扇がいるこの状況では侵入など、ほぼ不可能と言っても良いレベルだ。
(あかん! こっちはガジェットの量が多すぎて、向こうにまで手が回らへん! かと言って、このまま扇を突撃部隊だけに任せても、勝機はない。どうしたらええんや!?)
はやては、扇がいる事で戦力のバランスが違い過ぎるこの状況で、どうするべきか悩んでいた。
扇を止めるのは絶対条件としても、なのはやヴィータには”ゆりかご”内部への道が開かれた時に突撃してもらわなければならないので、二人には余計な体力を使う余裕なんかない。
全力の明久とザフィーラ、シャマルの三人係りでも止められなかった扇と戦えば体力が大幅に消耗するのは必然――いや、下手をすれば体力を失うだけでなく最悪負ける事だってあり得る。
(それだけは絶対にあかん。私等の勝ちは”ゆりかご”を止める事や。扇を止めたり、倒したりする事やない。かと言って、この場で指揮を取ってる私が戦っても勝てる保証はない。それどころか、もし仮に負ければ、指揮を執る人間がいなくなってまう)
しかも、はやてが戦うとすれば、全力の勝負は避けられないだろう。
そうなれば、戦っている最中に指揮を執れる余裕もなくなる。その瞬間、この戦場が終わる事は目に見えていた。
だから、はやては困っているのだ。
”ゆりかご”を止めるのが最終目的。
そのためには”ゆりかご”内部にいるヴィヴィオを止める事と、エネルギーの供給源になっている駆動路を止めるは絶対条件だ。
そして、その両方があるのは”ゆりかご”内部。
”ゆりかご”内部に入るためには扇を止める事が絶対条件になる。
この場において、”ゆりかご”を止めるための絶対条件が多すぎて、戦力が足りていないのは誰の目にも明らかだった。
(くっ! あかん。どう考えても、あと一人おらな話にならへん)
指揮を執れる人間か、一時的にでも扇を確実に足止めできる人間のどっちらか、一人いればこの状況を打破できる。
逆に言えば、そのどちらかがいないと、この状況を打破する手段がない。と言う事だ。
(こうなったら、シグナムに来てもらって、扇を足止めしてもらうか? けど、それをしたら何か起こった時に一瞬で終わる。‥‥‥‥‥‥‥‥なんで、こんな時にアキ君はおらんねん!! 元の世界に帰ったにしても、スカリエッティに捕まってるにしても、せめて扇を倒してからにしてくれればいいのに!)
元の世界に戻っていたとしても、それは明久に取っては本来の目的を果たしたに過ぎないし、仮に捕まっていたとしても、それだけ敵が強かったと言う事なのだから、明久には責任がない、
そんな事は、はやても分かっている。
分かっているが、それでもそう思わずにはいられない状況なのだ。
(‥‥‥‥‥‥‥‥‥しゃ-ないな。おらん人間を頼っても、勝機はないしな。シグナムを動かすわけにもいかへん。こうなったら、どっちかしかない)
なのはとヴィータの二人で扇を絶対に撃墜してもらって、その後、侵入してもらう”ゆりかご”内部での仕事がハードでない事に賭けるか、自分が扇に勝ち、尚且つ扇と戦ってる間に部隊が壊滅せずに持ち堪えられる事に賭けるか。
どちらも当たる確率は10パーセント以下だ。
前者に関しては、確率はほぼ0パーだろう。
扇を足止めするではなく、撃墜すると言うのがハード過ぎる仕事の上、”ゆりかご”内部が楽なんて事はどう考えてもあり得ない。
対する後者は、なのはとヴィータが”ゆりかご”内部に侵入するまで足止めをして、二人が侵入したあと離脱。
これなら扇とずっと戦い続けるわけではないから、自分が扇との戦闘を中断すれば、その時からまた指揮を執れる。
なら、部隊が壊滅せずに持ち堪えられるかもしれない。
戦闘好きの扇が、はやての戦いを途中で中断してくれたらだが‥‥‥‥‥‥‥‥
(‥‥‥‥‥‥‥‥‥どっちも可能性が低いのは一緒やけど、私が戦う方が少しだけ確率が高いかな?)
はやては色々考えた結果、答えを出した。
そして、はやてがその答えを皆に伝えようとした時だった
「みn――」
「どわぁぁぁあああああああ!? って、なにこれ!?」
どんどん浮上していっている”ゆりかご”よりも上空から、この場にいる多くの人からすれば単なる間抜けな声が、はやてからすれば、間抜けな声だが自身がこの状況で最も欲していた声でこの三か月で聞き慣れた声が響いてきた。
なぜ、あんな所から絶叫して現れたのか凄く不思議で仕方がなかったが‥‥‥‥‥‥‥
(まぁ、今はそんな事どうでもええ! 活路が見えた!)
「アキ君! 今すぐ”ゆりかご”に向かって、特大の砲撃撃ちこんで!!」
☆
僕、吉井明久は今、もの凄く後悔していた。
理由は、イキナリ空の上から地上に向かってドンドン加速しながら、落下していたからだ。
なぜ、こんな事になったのか?
それは、ほんの少し前の事が原因だ‥‥‥‥‥‥‥
僕はヴィヴィオを助け出す為、魔法が世間に認知されている世界に行こうとして、”白金の腕輪”を使っていた。
色々あって、この腕輪が唯一、”向こう”の世界と”こちら”の世界をつなげることができるアイテムだからだ。
僕が腕輪を使用するために魔力を腕輪に注ぎ込むと、僕は白い光に包まれていた。
ここまでは順調だった。
問題なのはこの次だ。
僕が光に包まれて転移しそうになった時、唐突に僕はザボルグに声を掛けられていた。
『小僧。結局、お前はドラゴンユニゾンを会得できなかったのだから、今のままでは勝ち目がないぞ? 封印されていると言う我等の力を解放しなくていいのか?』
「ああ。そう言えば、ザボルグ達は力を封印されてたんだよね? ってことは、力を封印される前は今よりも強かったって事だよね‥‥‥‥‥‥‥? 今でも充分強い力なのに‥‥‥‥‥‥」
『なんだ、怖いのか? 封印を解いた時の我等の力を制御できるか不安などとぬかすのか? お前は?』
「ん~‥‥‥‥‥‥正直少しはね? けど、その力も使いこなさないと敵に勝てないんだったら、使いこなしてみせるよ」
『ふん。言うではないか。ユニゾンも出来ん小僧のくせに』
「ぐっ‥‥‥‥! 出来なかったわけだから、言い返せない‥‥‥‥‥‥。けど、そこまで言うって事は、封印された力を解放したらユニゾンにも対抗できるの?」
『さぁ? 正直、我は封印されていた事など全く知らなかったから、どれほどの力かは知らん』
「‥‥‥‥‥‥‥自分の力でしょ? 封印されて力が弱くなったら、普通気づくんじゃないの‥‥‥‥?」
封印された事に気づかないって、鈍感にもほどがあると思う。
僕も良く皆に不本意ながら鈍感と言われるけど、さすがに力が弱くなったら気づくと思う‥‥‥‥‥
『知るか。知らもんは知らんのだ。因みにテスタロスも知らんと言っていたぞ?』
「え? じゃあ、封印されてる力って、大した事なかったのかな?」
『それは解いてみない事には分からんな‥‥‥‥‥‥。封印されてる力が大した事ないのか、我らの記憶すらも封印してしまう程の力なのかもしれんしな』
どっちにしても少しは絶対に強くなれるなら、封印は解いておくべきかな?
と言うわけで
「じゃあ”向こう”に着いたら、この団子を食べる事に――」
――するよ。
と言いかけて、ザボルグが質問をしてきた。
『それは即効性があるのか? 徐々に封印が弱まるタイプなら、封印が解かれる前に戦いになるなんて事もあり得るぞ?』
「さぁ? どうだろう? 僕も知らないや‥‥‥‥‥‥」
第一、封印の解除に即効タイプとじわじわタイプとかの種類がある事も知らない。
『封印の解除は基本的に即効性だろうが、封印してる奴が独学の上、お前の祖先だからな‥‥‥‥‥‥なにがあるか分からんから、先に食っとけ』
その僕の祖先は、君の子孫である事も忘れないでね?
あと、僕の祖先は君も一緒だと言う事を、忘れないでもらいたい‥‥‥‥‥‥‥
まぁでも、ザボルグの言う事は一理ある。
姉さんの話を聞いた時の初代の印象は、適当な人だったからね。
念のためにザボルグの言う通り、先に食べた方が良いかもしれない。
「それもそうだね。分かったよ。一応、念のために今から食べるよ‥‥‥‥‥‥‥いただきます‥‥‥‥」
僕は穂海ちゃんから貰った団子を一口で食べて、ザボルグたちの封印とやらを解いた。
そして、僕はこの瞬間を後悔したのだ。
今にして思えば、当たり前の事なのだが、今僕は転移するために必要な魔力を供給させるため腕輪に魔力を注ぎ込んでいる。
そんな時に、少しか強大か不明ではあるが強くなり、魔力もデカくなる団子を食べれば、腕輪に注ぎ込んでいる魔力も自然と強くなり
「あ」
僕がその事に気づいた時には腕輪が必要としている魔力なんか、一瞬で超えてしまっていた。
結果腕輪の白い光は輝きをよりいっそう増して、腕輪が暴走して転移される場所が遥か上空になってしまったのだ。
そして今、僕はザボルグに言われるがまま封印を解除した事を後悔しながら、落下を続けているのだった。
「どわぁぁぁあああああああ!? って、なにこれ!?」
僕は自分が落下していく中、真下に超巨大な船? のような物を見て、驚きの声を上げる。
しかも、周りにはガジェットが大量にあるし、ホントどうなってんの!?
「なんか良く分かんないけど、とりあえずセットアップ!!」
僕は良く状況を理解していないながらも、とりあえずBJとドラグーンを構える。
良く分からない事が起こったら、とりあえず身を守れ。
これが僕が生きている間に学んだ、最も重要な事だ。
と、その時
「アキ君! 今すぐ”ゆりかご”に向かって、特大の砲撃打ち込んで!!」
どこからともなく、はやての声が聞こえてきた。
「え? ”ゆりかご”? ”ゆりかご”ってなに!? と言うか、今の声はやてだよね!? この状況はいったいなんなの!?」
僕は困惑の声を上げながらも、いつでも砲撃を撃てるように魔力を溜めながら叫んでいた。
『状況をイマイチ読み込めずにいるくせに、魔力は溜めてる辺りは流石ですね』
それは身体が勝手に動いただけなんだよ‥‥‥‥‥‥
言わないけど‥‥‥‥‥‥
『まぁ、どうせその咄嗟に行動できるのは全部、元の世界での経験なんでしょうけど』
分かってるなら言わないで欲しい‥‥‥‥‥‥
悲しくなるから‥‥‥‥‥
『まぁ、特大な砲撃と言ってますし、あの巨大船が”ゆりかご”だと思いますが‥‥‥‥‥‥‥‥どうします?』
ドラグーンは”ゆりかご”がどれなのか、簡単に推測して僕に質問してくる。
つまり、ドラグーンが言いたいのはこういう事だろう。
”ゆりかご”がどれかは分かったけど、それが何なのかは不明。それで本当に撃つのか? と
けど、僕は迷わずに
「雷炎龍の粉塵!!」
砲撃を”ゆりかご”に向けて打ち込んだ。
まぁ、状況をイマイチ理解してないのは確かだけど、攻撃目標は分かったわけだし、何よりはやての命令なんだから迷う事なんて何もないし、問題もないよね?
予想外な事が起こっている以外は‥‥‥‥‥‥
その問題とは
ドォ―――――――――ン!!
僕が想定していたよりも、遥かに強大な砲撃を撃ちこんでしまったのだ。
どうやら、パワーアップは少しではなかったみたいだ‥‥‥‥‥‥‥
僕が驚いている間にも、僕の砲撃はどんどん”ゆりかご”に向かって飛んでいき、”ゆりかご”に直撃しそうになった瞬間
ドガァ―――――――――ン!!
僕の攻撃は”ゆりかご”には直撃せず、爆炎を上げて”ゆりかご”の少し上空で相殺されてしまった。
これを見て、僕はため息を吐かずには入られなかった。
「‥‥‥‥‥‥‥あれを、完璧に相殺されたって事はイキナリか‥‥‥‥‥」
「よぉ。また会えたな」
爆炎の中から、声が聞こえてくる。
「僕としては会いたくなかったんだけど?」
「そうか? 俺は会いたかったぜ? この前は殺し損ねたからな」
爆炎の中から聞こえてきていた声は、徐々に近いづいてきて、最後にはその声の持ち主が爆炎の外に姿を現して、僕はその声の持ち主と相対する事になった。
「今度は殺傷禁止なんて面倒な拘束はねぇ。せいぜい覚悟してろ」
覚悟しろと言われて、覚悟なんてできるわけがない。
それに扇は一対一で戦うつもりのようだけど、僕にその気は全くない。
さっき、はやての声が聞こえたから、近くにいるはずだ。
はやてと合流して二対一で戦わせ貰おう。
僕はそう考えて、直ぐにはやてと合流しようしたんだけど
『アキ君!』
『明久君!』
『明久!』
はやて、なのは、ヴィータの三人から一斉に念話が送られてきた。
どうやら、近くにいたのははやてだけじゃなく、三人いたようだ。
『明久君、今までどこに行ってたの? てっきり元の世界に戻ったと思ってたけど、もしかして捕まってたの?』
「一応”向こう”に帰ってたんだけど、色々あって戻って来たんだ。そんな事よりなのは達はどこにいるの?」
はやてだけじゃなく、なのはやヴィータも近くにいたのは好都合だ。
今なら、三人と協力して扇を倒す事も出来るだろう。
そう思って、僕は皆と合流しようと皆のいる場所を聞いた。
『アタシ達は”ゆりかご”近辺でガジェットを叩きながら、内部に侵入できるルートを探してる所だ』
と言う事は、僕等の下の方で戦ってる中に皆いるって事か。
なら合流するのは簡単だね。
僕が下に行けばいいんだから。
そこまで把握した僕は、扇から離れるように降下しようとしたんだけど
『帰ってきて早々で悪いんやけど、アキ君はそこで扇の相手をしててくれへんか?』
はやてから入って来た念話の声は、こんな物だった。
『時間がないから、簡単に今の状況を説明すると、シグナムは緊急のために地上に、フェイトちゃんはスカリエッティのアジトに、フォワード四人は市街地付近で戦闘機人と戦ってて、アキ君の援護に迎える人は誰もおらん状態や』
帰ってきてイキナリ聞く情報が、こんな状況報告ってどういう事?
休憩する時間もなく戦闘が始まってて、しかも到着して早々に化け物じみた奴と戦わされて、あげく援軍は出せない状況って、新手のイジメじゃないだろうか?
『それと、ヴィヴィオは”ゆりかご”内部におる。ヴィヴィオの救出と”ゆりかご”を止めるために、なのはちゃんとヴィータには”ゆりかご”内部に突撃してもらわなあかんし、私はここで航空部隊の指揮を執ってるから、私等も援軍には向かわれへん』
さらに残念なお知らせが僕に届く。
直ぐ近くにいるはずの三人までも、仕事が溜まっていて僕に援軍するのは不可能なようだ。
『無茶を承知でお願いや。最悪、”ゆりかご”を止めるまでの間だけでええから、扇風月を止めておいてほしい。‥‥‥‥‥‥‥頼めるか?』
「それ、僕に選択肢ないじゃない‥‥‥‥。どうせ皆は援軍に来れず、扇は僕の命を狙ってるんだから、僕に拒否権なんてないよ‥‥‥‥‥‥‥」
まったく、自分から戦いに参加しに来たとは言え、一応僕は民間人なんだけどな‥‥‥‥‥‥‥
ヴィヴィオを助けるためとは言え、ハードな仕事を任されたもんだ‥‥‥‥‥‥‥。
「久しぶりに会ったって言うのに、はやては無茶苦茶だな‥‥‥‥‥‥」
『それでも引き受けてくれるんやろ?』
「‥‥‥‥‥‥‥ヴィヴィオの事は頼んだよ? 僕はこれ以上は働かないからね?」
『こっちは任せとき! こっちが終わり次第、アキ君の援護にも――』
「いいよ。どうせ、そっちもハードな仕事なんでしょ? 扇と戦う意外に仕事はしない代わりに扇は僕一人でやるから、こっちは気にしないで」
戦闘機人と戦うのも、スカリエッテイと戦うのも、敵の本拠地でもある”ゆりかご”内部に侵入する組もハードワークなのは分かりきってる事だ。
それらの仕事をこなした後に僕の援軍にくるなんて、ハードワークなんて物じゃないだろう。
なら、僕が一人で扇を相手するしかない。
僕は腹を決めたのだった。
『明久君、本当に一人で大丈夫なの?』
「大丈夫。‥‥‥‥‥‥って言いたいんだけど、分からないや‥‥‥‥‥‥」
なのはの声で、直ぐに覚悟が揺らぐ僕。
ダメだ。これ以上、皆と話してたら、本当に一人で戦えなくなる。
「まぁ、やるしかないんだから、やれるだけの事はやるよ。だからヴィヴィオの事は任せた!! 目の前でヴィヴィオを連れ去られた責任は僕にあるんだから、扇は僕が倒す!」
僕は再び腹を括り、覚悟を決めて、今度は高らかに宣言をして、強制的に念話を切った。
こうでもしないと、僕はいつまで経っても扇と戦えなかっただろうからね‥‥‥‥‥‥‥
「もう遺言は話したのか?」
僕が念話を切ると、扇が話しかけてきた。
どうやら今の念話中に攻撃してこなかったのは、僕等の会話が終わるのを待っていてくれたようだ。
「お前が大好きな仲間との会話は今のが最後だ。その思い出を持ったままあの世に行け。俺からの手土産だ」
待っていた理由は、とてつもなく気に入らないが、とりあえず現状を把握できたし、僕の仕事もハッキリしたから良しとしよう。
「悪いけど、僕は死ぬ気はないよ」
”向こう”の皆とも死なないって約束したしね。
「それにお前は僕に倒されるんだから、僕を殺すのも不可能だよ!!」
そう言って僕は、扇に向かって突撃した。
今ここに雷炎龍VS風龍の世界を賭けた戦いが開幕した。