魔法少女リリカルなのは バカの参戦    作:セイイチ

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第五十七話

 扇の放った魔力弾の光の中に入っていった明久。

 それを見ていた扇は光が止むのと同時に、自分の目を疑っていた。

 さっき自分は特大の魔力弾を確かに吉井明久にぶつけたはずだ。

 そして、それが見事に命中するさままでしっかりと確認したのだ。

 それなのに

 

 「それなのに、なんでお前が生きてるだけじゃなく、そんな姿になってんだ!!」

 

 扇の前にいる明久は、つい先ほど魔力弾を受けた時の姿とは、全然違う姿だった。

 扇の目に映っているのは、表面は赤色と黄色で混成された鱗を纏い、背中からは翼が生え、腰の辺りからは尻尾が生えた、生物だった。

 その姿に明久の原型は見受けられないが、扇はこれに似たような姿を見た事があった。

 それは、自分がドラゴンユニゾンを使用した時の姿にそっくりだった。

 違うのは色くらいなものだ。

 そこから考えられる結論は一つ。

 あの生物は吉井明久のユニゾンの姿で、あれはユニゾンを発動させた、自分の敵だと言う事だ。

 

 「お前がユニゾンになるって言うなら、俺だって容赦しねぇ。ここからは俺もユニゾンを使ってやる!」

 

 扇は言うや否や、速攻で自身の体の全身を緑の鱗で覆い、明久同様、翼と尻尾を生やして、100%のユニゾンを使った。

 本来、扇は未だ半分程の力でしかユニゾンを扱えないのだが、明久が100%のユニゾンを使ってくる以上、そんな事は言ってられない。

 明久が全力で、自分が半分の力しか使わなかった、自分が負けるのは明確だ。

 扇に取っては、力が扱えないからと言って、力を出さないわけにはいかないのだ。

 だが、そんな想いの中、全力のユニゾンを使った扇に、明久は容赦ない攻撃を仕掛けた。

 

 「がはっ!?」

 

 ドスッ!! と言う鈍い音と一緒に遥か上空へ飛ばされた扇。

 明久が扇の胸に手加減なしの全力の拳を叩きこんだのだ。 

 それでも殴られた扇は、なんとか体勢を立て直し、明久が近づいてくる前に、今度は自分から仕掛けようと、無数の風の刃を地上にいる明久に目がけて放ってきた。

 遥か上空から、地上に向けての攻撃。

 当然、この二人の間にいる”ゆりかご”外周で戦っている人たちにも被害は出ていた。

 つい先ほどから、自分達の上空から下方にめがけて、凄い勢いで人が飛んでいったり、今度は逆に下方から上空に凄い勢いで人が飛んでいったかと思うと、次はその瞬間、上方から風の刃が無数に飛んでくるのだ。

 被害が出ないわけがない。

 もちろん、その分ガジェットも大量に破壊して自分達の敵は凄い勢いで減っているのだが‥‥‥‥‥‥‥

 だが、こんな風に他の人が迷惑している中、明久はその風の刃の中に躊躇なく飛び込んで行き、いくつもの刃に傷をつけられながら、扇の目の前へと迫り、今度は回し蹴りをかまして、扇はそれを避ける事ができず、一気に真横に吹き飛ばされてしまった。

 

 「ぐっ! ゲホッ、ゲホッ!」

 

 (くそっ! なんなんだアイツ!? ボロボロになりながら無理やり近づいてきやがった! 攻撃を避ける気なんかないのか!?)

 

 さっきまで攻撃を避けまくっていたのに、急に自らの体を顧みず特攻を仕掛けてきた明久に、扇は少なからず動揺させらていた。

 戦い方がコロッと変わったのだ。無理もないだろう。

 

 「おい、雷炎龍!! 少しは避けようって気はないのか!?」

 

 扇はそう叫びながら、明久に向けて巨大な風の渦を放った。

 これで、少しでも明久を引き離して、一度呼吸を整えるつもりだったのだ。

 だが

 

 「‥‥‥‥‥‥‥まじか‥‥‥‥‥」

 

 明久はその風の渦すら避けようとはせずに、ただひたすら真っ直ぐに、最短距離で扇に近づく事しか考えていないようで、今度も風の渦の中に飛び込んで行き、ボロボロになりながら扇の目の前に現れて

 

 「っ! ヤバイ!」

 

 至近距離で口から炎に雷を纏わせた砲撃を放ってきた。

 扇はそれを避ける事が出来ずに、真面に食らっていた。

 そして気づいた。

 

 「くっそ‥‥‥‥野郎、既に意識ねぇな‥‥‥‥‥‥?」

 

 明久がユニゾンを使用した、その瞬間からユニゾンをコントロールできていなかったと言う事実に‥‥‥‥‥‥

 

 

       ☆

 

 

 「‥‥‥‥‥ここはどこだ? 僕は死んだのか?」

 

 僕は目を覚ますと、光なんてものは一筋たりともなく、ただただ暗いだけの、自分がちゃんと立っているのかどうかさえも分からない。

 そんな暗い空間にいた。

 

 『くっくっくっ。死んだらこんな所にいねぇよ』

 

 僕の呟きのような声に、姿は見えないが誰かが反応して、声を出してきた。

 暗闇の中から、誰の声かも分からない声が響いてくるのは、かなり気持ち悪かった。

 

 「『誰だ! 出て来い!』」

 

 『てか?』

 

 「‥‥‥‥‥‥え?」

 

 姿なき声は、完璧に僕の声に被せて、同じことを言ってのけた。

 なんなんだコイツは?

 いったい何者なんだ?

 

 『くっくっくっ。不思議そうな面してやがるな。俺はお前の事なら何でも知ってるんだぜ? こんな事くらいで、そんな不思議そうな面すんなよ』

 

 何でも知ってるだって?

 なんなのコイツ? もしかして

 

 「『ストーカー?』」 

 

 また声を被せられる。

 

 『くっくっくっ。いやいやいや。ストーカーじゃねえよ? 俺はお前自身なんだから、ストーカーとは言わないだろう?』

 

 コイツがボク自身? どういう事?

 コイツが何を言ってるのか、僕にはサッパリだった。

 

 『くっくっくっ。段々意味が分からなくなってきたか? じゃあ、ここらでバカなお前のために、俺の正体を教えてやるよ』

 

 そう言って、姿なき声は一度、ここで言葉を止めた。

 とりあえず、もったいぶるのと、僕をバカ呼ばわりするのを止めてもらいたい。

 

 『さっきも言ったが、俺はお前だ。姿を見て驚くなよ? ‥‥‥‥‥スリー、ツー、ワン!』

 

 謎の声がカウントダウンを終えると、一瞬で暗闇の世界から、真っ白な世界へと様変わりした。

 そして、僕の目の前には

 

 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥え? 僕‥‥‥‥‥‥‥?」

 

 色は真っ黒だが、それ以外は僕と何ら変わらない僕が立っていた。

 

 『俺はお前だと言ったろ? ここはお前の心の中。そして俺はもう一人のお前だ』

 

 ‥‥‥‥‥‥‥‥わけが分からない。

 僕は確か、扇の巨大な魔力弾に当たっていたはずだ。

 なのに、今はここに居るってどういう事なんだ?

 

 『くっくっくっ。まだ理解できてないようだな。流石は俺だ。理解力が半端なく低いな』

 

 「うるさい! 今の説明じゃ僕以外の人だって、理解できないよ!!」

 

 あんな説明で理解できる人がいたら、それはその人が頭が良すぎるだけで、決して僕に理解力がないわけじゃないはずだ。

 

 『安心しろ。そんなに必死にならなくても、バカなお前でも理解できるように考えてある』

 

 ‥‥‥‥‥‥‥なんか僕に理解力がないみたいな口ぶりは気に入らないけど、とりあえず説明とやらを聞いてやるか‥‥‥‥‥

 

 『まずはこれを見ろ』

 

 そう言って、偽僕が、モニターをだして、何かの映像を映し出す。

 その映像に映っているのは、誰かが戦っている姿だった。

 

 「今、このモニターで戦ってるのって‥‥‥‥‥‥‥‥‥だれ?」

 

 僕は誰が戦っているのか、全く分からなかった。

 ‥‥‥‥‥‥‥だって、ここに映ってるのは二人は、身体が鱗に覆われていて、背中から翼を生やして、腰からは尻尾を生やしてる怪物だよ!?

 分かるわけないでしょ!?

 

 『はっはっはっ! そうか分からんか! なら、教えてやろう。‥‥‥‥‥‥‥これは、たった今起こっている戦闘で、赤と黄色の方はお前だよ』

 

 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥は‥‥‥‥‥‥‥‥‥?」

 

 コイツは何を言ってるんだ?

 これが僕? はは。あり得ないよ。

 

 「僕は今、ここに居るんだよ? どうやったら、これが僕になるのさ?」

 

 これが僕なら、僕は今現在戦っている事になる。

 だけど、僕にその感覚は一切ない。

 なら、これはどう考えても、偽僕の言っている事が嘘だって事に‥‥‥‥‥‥‥

 

 「‥‥‥‥‥‥‥嘘だよね?」

 

 偽僕の表情は真面目な顔で、冗談や嘘を言っているようには思えなかったので、思わず僕は質問していた。

 だが、帰って来た答えは、僕の求めた答えとは違っていた。

 

 『本当の事だぞ? あれはユニゾン状態の姿だな。で、お前は今暴走してる状態なわけだ』

 

 「暴走!? 確かユニゾン状態で暴走したら、死ぬんじゃなかったっけ!?」

 

 今の話が本当なら最悪だ。

 扇に負けて死ぬんじゃなくて、自分の力を暴走させて死ぬとか考えられない。

 だいたい、そんな死に方は元龍の話を聞いた時から、一番嫌だと思っていた死因だ。

 

 『ああ。あれな。死ぬのはお前の人格だけだぞ? お前の体は命尽きるまで、永遠と暴走し続けて、目に入る全ての物を破壊しつくすぞ』

 

 「なにそれ!? 死ぬより嫌なんですけど!?」

 

 それはつまり、僕の体で、なのはやフェイト達だけでなく、助けようとしているヴィヴィオまでも壊す、つまり殺すって事でしょ!?

 そんなの僕には耐えられない!

 ‥‥‥‥‥‥‥何とかしないとっ!

 

 「暴走を止める方法って何かないの!?」

 

 僕は最も最悪な事態を避けるべく、偽僕に暴走を止める手段を聞いたんだけど

 

 『ああ。暴走を止める方法か‥‥‥‥‥‥‥ないぞ?』

 

 なんとも残酷な答えが帰ってきた。

 

 『だいたい止める必要はないだろう? このまま破壊させろよ』

 

 「そんなのダメに決まってるでしょ!? 目に映る全てを破壊するなんて、絶対にダメだ!」

 

 『ええ~? 俺は破壊好きだぜ? いいじゃん。形あるものはいずれ壊れるんだからさ』

 

 コイツは本気で言ってるんだろうか?

 仮にもコイツはさっき、『俺はお前だ』なんて言ってたくせに‥‥‥‥‥‥

 

 「だからって、それを勝手に壊しても良いわけじゃないんだよ!! と言うか、破壊が好きなんて言ってる時点で、お前は僕の偽物だ!」

 

 『ん~? 偽物かどうかはともかく、俺はお前自身だぜ? それも負の感情だけで集まったお前だ‥‥‥‥‥‥』

 

 負の感情? 

 僕が何の事だか分からないでいると、コイツは続きを話していった。

 

 『お前、扇の魔力弾を食らう直前に自分自身に”怒った”よな? あれが原因で俺は生まれた』

 

 言っている意味が良く分からないな。

 何が言いたいんだ? コイツは?

 

 『そうだな‥‥‥‥‥‥まず話しておいてやると、お前が魔力弾を食らう直前にザボルグとテスタロスの意識が戻ったんだ。つまり、掛けられていた封印は全て解除されたわけだ』

 

 「そこから、なんでお前が出てくるの?」

 

 ザボルグたちの力が戻ったのは、何となくだけど僕だって気づいていた。

 じゃなきゃ、僕は暴走状態とは言えユニゾンにはなれなかったはずだから、そう言った意味でも、何となく気づいていた。

 

 『問題は力が戻るタイミングだ。お前は色々と特訓して力を上げていっていた。そんなお前が本来の力を取り戻したザボルグとテスタロスの力を一気に貰うとどうなると思う?』

 

 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥強くなる?」

 

 それ以外には何も思いつかないけど‥‥‥‥‥‥‥?

 

 『まぁ、正解だ。じゃあどう強くなるか? また問題だ。お前はこの一週間、何の修行をしていた?』

 

 「えっと、確か扇の練習をしながら‥‥‥‥‥‥」

 

 『バカ。そっちじゃね。寝てる時だ』

 

 寝てる時? 寝てる時は確か、精神世界でザボルグとテスタロスの二人と一緒に‥‥‥‥‥

 

 「ドラゴンユニゾンになるための特訓?」

 

 『はい。正解! その特訓の成果が元龍の力が戻ると同時に開花したんだろうな。お前は魔力弾が直撃する瞬間、ユニゾンになっちまったんだ』

 

 ‥‥‥‥‥‥‥なんだそれ?

 そんな絶妙なタイミングで、ユニゾンになったりしたのか? 僕は‥‥‥‥‥‥?

 

 『もちろん俺も、タイミング良すぎ! と思ったが、そのおかげでお前は大したダメージもなく、生き長らえる事ができたわけだ』

 

 「と言う事は、僕が扇の巨大な魔力弾を受けた時、僕はユニゾンになってたわけだね?」

 

 『そう言う事だ。この瞬間はお前は無意識だったにせよ、ユニゾンのコントロールもできていたし、命が助かったんだから、ラッキーだったんだろうな』

 

 「僕がラッキーだったなら、なんで今こんな事になってるんだよ!?」

 

 暴走して皆が傷つくなんて事になったら、それは最早ラッキーじゃない。最悪だ。

 そんな事になるぐらいなら、僕はユニゾンなんかにならず、死んだ方がマシだった。

 ホントになんでこんな事になったんだ!?

 僕の叫びに対してコイツは、楽しそうに答えた。

 

 『お前がユニゾンになった時、自分に怒ってただろう? 普段怒りなんて持たないお前が、怒りを持つって事は、それはつまり、理性を抑えられてなかったって事だ。扇が教えてくれただろう? 理性をコントロールできない奴は死ぬってな』 

 

 ‥‥‥‥‥‥‥‥そんな‥‥‥‥‥‥‥そんなバカげた理由で、僕は暴走したって言うのか‥‥‥‥‥‥‥?

 

 『元々、この技はお前向きじゃねえ。戦ってる最中に、どうしたって憎悪は生まれる。お前と違って憎悪を普段から感じてる奴じゃないと、この技は向いてねえんだよ。要は魂が腐ってる奴向けなのさ』

 

 ‥‥‥‥‥‥扇がユニゾンを使えるようになった時点で、僕には最初から勝ち目なんてなかったって事か‥‥‥‥‥‥‥

 はは。同じような力を持っていても、腐った魂の奴らの方が強いって‥‥‥‥‥‥ホントなんて理不尽な力なんだ‥‥‥‥‥

 いや、悪いのは僕か‥‥‥‥‥。

 戦いの中で、どんなに憎悪が生まれても、それに感化されなければいいだけの話。

 要は僕の心が弱かったんだ‥‥‥‥‥‥‥‥

 皆、ごめん。

 本当にごめん。

 力じゃなくて、心なんかで負けて、本当にごめん‥‥‥‥‥‥

 

 『ははは。無様だな。これだよ。お前のその姿が見たくて、俺はお前を呼んだんだよ! お前、本当に最高だぜ!!』

 

 僕の姿を見て、歓喜する僕の負の感情とやら。

 これだけの憎悪を僕が常に持っていたら、僕がこんな憎悪に心で負けなければ。

 そう思うだけで、僕の目から涙が零れてきて、僕の”白金の腕輪”の上に涙が落ちる。

 

 『ははは! 泣く程かよ! いいね最高!』

 

 ‥‥‥‥‥‥‥こんなゲスに心を折られて涙を流す僕は、皆からみたら、どう思うかな?

 やっぱ、皆呆れるかな? それとも怒るかな?

 まぁ、どっちにしても褒めてはくれないだろうな‥‥‥‥‥‥‥‥

 ”白金の腕輪”を見て、僕は”向こう”で僕の事を送り出してくれた人たちの顔を思い浮かべた‥‥‥‥‥‥

 

 次に、僕は自分の首元にぶら下がるロケットペンダントに視線を向けた。

 ヴィヴィオとなのはとフェイトと僕。

 四人で撮った写真をいつでも持ち歩けるようにと言って、ロケットペンダントに入れた写真。

 僕は六課の皆の顔も順番に思い出した。

 そして、まだ皆がそれぞれ命を懸けて、戦っていると言う事も同時に思い出した。

 

 「まだだ」

 

 『ああ? なんか言ったか?』

 

 僕がボソリと呟いた事に反応する偽物。

 

 「まだだって言ったんだよ!!」

 

 僕は今度はコイツにもハッキリと聞き取れるように、今日一番のデカい声で叫んでやった。

 

 「まだ僕は死んでない。まだ誰も僕は傷つけていない。なら、まだ間に合うって言ってんだ!!」

 

 『お、おいおい? 一度暴走したら、元に戻る方法なんて――』

 

 「ないなら作ってやる! これは僕の力が暴走した事なんだ。だったら、僕が新しく暴走を解く方法を作ってやる!!」

 

 僕の気合いに言葉を無くす偽物。

 今の僕に対して、相当驚いているようだ。

 

 「どうしたの? 僕の事なら何でも知ってるんでしょ? だったら僕が、少しでも可能性が残ってる限り最後まで諦めないって事も知ってるでしょ? こんな事くらいで、驚いたよう面すんなよ」

 

 最初に言われた、似たような言葉をソックリ返してやった。

 ふぅー。これで少しはやり返せたかな?

 と、僕が満足していると

 

 『は、はは、ははは。何を言うかと思えば‥‥‥‥‥ねえよ! そんな可能性1パーセントだってねえよ! 今までだって、一度暴走したら止まらなかったんだ。お前が‥‥‥‥‥お前みたいなバカが、そんな事できるわけねえだろう!!』

 

 偽物があざ笑うかのように、再び僕の心を折ろうとしてくる。

 けど

 

 「だったら黙って見てろよ! 僕は今までだって、どんなに無理と言われようと大事な事だけは絶対に乗り越えて来たんだ! これから先だって、それは変わらない!」

 

 初めての試召戦争でのBクラス戦。(Aクラス戦はこれからクリアーするから問題なし)

 ”清涼祭”での常夏コンビとの決勝。

 入れたくないけど、強化合宿の時の鉄人との一騎打ち。

 体育祭での教師との野球大会。 

 そして”こっち”に来るために必要だった、腕輪回収の説得。

 どれも全部やりきってきたんだ。

 だったら、これからの大事な事、一度は連れ去られたヴィヴィオを助け出す事も、自分の力の暴走を止める事も、全部上手くやって見せる!

 

 「確か、暴走するのは理性を上手くコントロールできなかった時だったよね? だったら、理性をコントロール出来れば良いわけだよね?」

 

 理性をコントロールする。

 言葉で言うのは簡単だ。けど、実際に行動に移すのは難しい行為だ。

 しかも今回は、理性を保つんじゃなく、取り戻してコントロールしないといけない。

 ゼロじゃなくてマイナスからのスタートだ。

 並大抵の事ではきっと不可能だろう。

 

 『できるわけがねえ。そんな事ができたら、今ままでの暴走していった奴らだって無理だったんだ。それをこんな歴代一位のバカが歴史が塗り替えられるなんて、ありえねえ』

 

 ‥‥‥‥‥‥歴代一位のバカはいくらなんでもバカにし過ぎだと‥‥‥‥‥‥‥ん? 塗り替える?

 

 「そうか!! 怒りで暴走したなら、他の感情でその怒りを完全に塗り替えればいいんだ!!」

 

 そうすれば、暴走した原因は消える。

 原因が消えれば暴走も止まるはずだ!

 と、僕が解決法を見つけて、喜んだんだけど

 

 『ぷっ! あははは。無理に決まってんだろう? あははは』

 

 偽物には盛大に笑われた。

 

 『いいか? それに気づいた所で遅すぎだ。お前の体は暴走して戦闘中。戦闘してればケガをさえられ怒りや憎しみと言った、負の感情は直ぐに湧く。相手を傷つけても相手が怒り、憎まれ、負の感情が伝染する。そうして増大していった負の感情を消せる程の気持ちを直ぐに出せるわけがないだろう?』

 

 偽物は笑いながら、尚も言葉を続けてくる。

 

 『いいか? 今、お前の感じる負の感情は全て俺に来るんだ。つまり、俺を一撃で完全に消せないだけの気持ちがないと、暴走は止まらねえ!』

 

 「要はお前の負の感情よりも、大きい気持ちがあれば、お前は消えて暴走は止まるんでしょ? 分かりやすいじゃないか!」

 

 暴走も止まって、僕の負の感情が全て消える。

 一石二鳥だね。

 僕はそう思い、首元のペンダントを強く握りしめた。

 一瞬で沸き起こり、尚且つ消える事のない、負ではなく正しい心。

 そんなもの、今の僕には一つしかない。

 ヴィヴィオを助ける。何がなんでも助け出す!

 今の僕の感情で、これに勝る物なんて何一つとして存在するわけがない。

 なにせ、その目的のためだけに、僕は今日”こっち”に来たのだから‥‥‥‥‥‥

 だから、ヴィヴィオ、なのは、フェイト、六課の皆。

 

 僕に力を貸して下さい。

 

 僕はそう願いを込めて、ただひたすらに、ヴィヴィオを助ける。

 これだけを思って、頭の中を六課やヴィヴィオだけの事でいっぱいにする。

 

 「うおおおおおおおおおおお!! 絶対に助けて見せる!!」 

 

 最後には、僕は実際に声にも出して、叫び続ける。

 すると、モニターに映っている暴走している僕も、胸の辺りに手を当てて叫び声を上げてた。

 そして最後には

 

 『うがぁっ! ぐっ! ば、バカなっ! こ、この俺がこんな所で、きえる、なんて、うああああああああ!?』

 

 僕の目の前にいる、負の感情の塊が消えさり、僕の目の前にはユニゾン姿の扇が映るだけとなった。

 

 




次回、戦闘終了!

今日の午前7時に予約しときますんで、良かったら見てやってください!

最終回までラスト2話!
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