”ゆりかご”が起動した事により、ミッド全域を巻き込んだ広域次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティが引き起こした事件を世間ではジェイル・スカリエッティ事件、またはJS事件と呼んでいる。
そのJS事件から一年と少し、桜舞うこの季節。
大勢の生徒が集まる中、僕は今日、卒業式を迎えていた。
『答辞。卒業生代表、霧島翔子!』
「‥‥‥‥‥‥‥はい」
去年のあの日、僕は扇と文字通り、命を懸けて戦い勝利を収めた後、気を失い、地上に落下する所をはやてに助けられたらしい。
僕は当初、かなりの重傷だったようで、病院に即搬送。
一か月も寝たきりで、医者には『一生目覚めないかもしれない。覚悟だけはしておいて下さい』とまで言われていたらしいけど、僕は今、普通に生活して、こうして無事に卒業を迎える事が出来ていた。
「‥‥‥‥‥‥‥まず初めに、ご来賓の皆様――」
あの日、JS事件を起こしたスカリエッティと戦闘機人、召喚士ルーテシア、扇、彼らを全員逮捕し、”ゆりかご”を航空艦隊が破壊した事により、JS事件は解決した。
その後の彼らの進路は、罪を認めたかどうかで大きく処遇が分かれていた。
JS事件の後、罪を認めて、事件捜査に協力的な姿勢を見せた戦闘機人たちはミッド海上の隔離施設に行き、厚生プログラムを受けている。
ルーテシアとアギトは比較的罪が低くかった事もあり、このプログラムを受けていたが、既に解放されている。
逆に罪を認めず、捜査に非協力的だった、数体の戦闘機人とスカリエッティ、扇、この者達は魔力を封印された後、それぞれ別の世界の拘置所に入れられていた。
ただ、竹原に関しては、スカリエッティが殺したと供述していて、実際、スカリエッティのアジトに竹原の遺体は存在していた事もあり、検死を行った結果、妙な痕跡はあるものの、竹原本人の遺体である事が認められ、死亡と言う事になっていた。
かくして、ヴィヴィオも無事に助けて、JS事件を解決した後、僕は普通に文月学園に通い、今日卒業式を迎えたのだ。
そして、あの日の戦いで、壊れてしまったドラグーンだけど
『あのマスターがいよいよ卒業ですか‥‥‥‥‥‥‥‥本当に大丈夫なんですかね?』
(しっ! 今、卒業式の真っ最中なんだから、静かにしててよ!)
このように、シャーリーに直してもらって、相変わらず場所もタイミング考えず、性格まで完全に直っていた。
どうせなら、この性格も直して欲しかったとも思うが、完全に直ってくれて嬉しく思ったのは言うまでもない。
『なんですか? その態度は? せっかく、保護者席にマスターの知り合いが来ているのを、教えてあげようと思って、声を掛けてあげたんですけど?』
さっきのセリフの中に、そんな要素は微塵もなかったんだけど‥‥‥‥‥‥‥
まぁ、一応知り合いが来てるみたいだし、誰が来てくれたのか位は確認するか‥‥‥‥‥‥
僕は、ドラグーンに言われた位置を目立たないように、視線だけで確認する。
すると、そこには
(あ、皆‥‥‥‥‥‥‥)
あの時期、僕がお世話になった人たち
なのは、フェイト、はやて、ヴィータ、シグナム、シャマル、ザフィーラ、リイン、スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、シャーリー、アルトさん、ルキノさん、ヴァイスさん、グリフィスさん、他の六課のメンバーも来てくれていたし、あまり面識のなかった、ユーノさん、アコースさん、フェイトのお兄さんのクロノさん、それに聖王教会のトップであるカリムさんとその部下であるシャッハさん等、忙しいはずの皆の姿があった。
そして、その中にはJS事件で僕が助け出そうとしていた少女、ヴィヴィオの姿も見えた。
『あの時の関係者、勢ぞろいですね』
(本当だね。もう皆、そえぞれ違う部署で働いてて、かなり忙しいはずなのにね‥‥‥‥‥‥)
後半のメンバーの配置は変わらないけど、六課のメンバーの配置は今は大きく変わっていた。
元々、六課は一年間だけの部署だったみたいで、六課はお役目を終えて、今は六課のメンバーはそれぞれ違う部署に異動していた。
『確か、はやてさんは守護騎士の皆さんと一緒に特別捜査官として地上本部に勤務してるんでしたよね?』
(うん。そこにアギトを加えて八神一家だね)
隔離施設から出てきたアギトは、未だ敵だった時にシグナムと色々あったようで、現在は主に、シグナムと行動を共にしていて、今では八神一家の一員になっていた。
今日は来ていないようだけど‥‥‥‥‥‥
『で、フェイトさんは執務官に戻って』
(シャーリーとティアナはフェイトの執務官補佐として、一緒に働いてるね)
『で、アルトさんは地上本部のヘリパイロットに正式採用、ヴァイスさんはヘリパイロット兼狙撃手に戻ったんですよね?』
(ヴァイスさんが狙撃手として、凄腕だったって言うのには驚いたよね)
『グリフィスさんは本局次元航行部隊に転属して、事務官として艦船の事務業務を担当』
(ルキノさんは、そのグリフィスさんの補佐を務めつつ、操舵手補として艦船操舵手への道を歩んでいる)
『エリオさんとキャロさんは』
(二人そろって、自然保護隊に転属)
『ヴィヴィオさんは』
(本人の希望で聖王教会系列の魔法学院に入学)
『スバルさんは』
(特別救助隊で大活躍中)
『なのはさんは』
(戦技教導官、空戦魔導師として現場で活躍中)
『皆さん、本当に忙しい立場の人ばかりですね?』
まったくだ。
この一年、学校に通いながら、週に5回のペースでヴィヴィオに会うために、シャーリーが腕輪を解析して新しく作った、次元転送装置を使い続けていた僕とは大違いだ。
『マスターは遊び過ぎです。何度ヴィヴィオと遊ぶためだけに学校を休んだりすれば気が済むんですか?』
(えーっと、10回くらい?)
『24回です!』
細かい奴だな‥‥‥‥‥‥‥‥。
10回も24回も大して差なんかないだろうに‥‥‥‥‥‥‥‥
まぁ、これからは”向こう”で暮らす事になるんだから、そんな事にはならないはずだから、目を瞑ってほしい。
『はぁー。マスターみたいな人を卒業させるなんて、この学校は大丈夫なんですかね?』
(そりゃまぁ、出席日数と成績が足りてたら誰でも卒業できるしね)
『‥‥‥‥‥‥‥‥‥マスターは両方ともギリギリでしたけどね。特に二年の時なんか、特別補習までしてもらって進級してたじゃないですか』
(分かった。僕が悪かったから、もうこの話は止めよう)
‥‥‥‥‥‥‥‥どうして卒業式の日に、こんな話をしないといけないんだろうか?
卒業式と言うのは、もっと感動や寂しさで涙を流すものだと思ってた。
まさか、過去の悲しい出来事を話されて、情けなさで泣きたくなるとは思いもしなかったよ‥‥‥‥‥‥
と、僕が過去の出来事を振り返っている間に、霧島さんの答辞もいつの間にか終わっていて、卒業式そのものがもう終わろうとしていた。
『―――回、文月学園、卒業式を終了します。‥‥‥‥‥卒業生、起立!』
こうして、僕の卒業式は無事、終了したのだった。
☆
卒業式が終わった後、僕は屋上に来ていた。
何だかんだ言っても、結局僕はこの学校が好きで、最後にこの学校を目に焼き付けておきたかったのか、それとも気まぐれで来たのかは分からないけど、気が付いたら僕は屋上に足を向けていた。
そして、それは僕だけじゃなく
「なんだ明久。お前もやっぱりここに来たのか」
「‥‥‥‥‥‥‥‥予想通り」
「これで全員そろったわけじゃのう」
雄二、ムッツリーニ、秀吉の三人も屋上にいて、ここから見る事のできる最後の景色を目に焼き付けていた。
「全く。最後の最後までこの四人で同じ所に来るとはね‥‥‥‥‥‥‥」
思えば、バカをする時はいつも一緒だったように思う。
三年間つるみ続けた僕の悪友たち。
「まぁ、考える事は同じだったって事だな」
「え~。雄二と一緒にしないでよ」
僕は雄二程バカじゃないよ?
「あほ。それは俺らのセリフだ」
「‥‥‥‥‥‥‥激しく同意」
「否定する要素がないのう」
三年間バカにし続けたって言うのに、最後までバカにするのかコイツ等は‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「まぁ、バカがいたおかげで三年間、退屈する事はなかったな」
雄二がそう言うと、この場は一気に静かになった。
けど、そんな沈黙も長くは続かず、すぐに終わりを告げる。
「もう、行くのか?」
「うん。この後、出発」
僕は雄二の問いに答える。
雄二達には、僕が卒業したら”向こう”に行く事は伝えてある。
本家から、僕が”こっち”に帰省するのは年に一度だけしか許されていない。
もちろん、何かあればいつでも戻ってきても良い事になっているけど、用もなく戻る事が許されているのは一年に一回だけだ。
あまり頻繁に帰ってきたら、”向こう”で暮らす意味がないからと言う理由らしい。
そして、僕は卒業と同時にミッドに移り住む事になっている。
「寂しくなるのう‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥静かになる」
「年に一回は帰って来るよ? それ以外にも何かあれば戻って来るし、一応携帯のメール機能は使えるみたいだしね」
「じゃが、今までは毎日のように会っていたのが、イキナリ会えなくなるじゃろう? 少々寂しく感じるのは仕方あるまいて」
「それは僕だけじゃなくて、皆もでしょ? 皆それぞれ進路が違うんだから‥‥‥‥‥‥」
雄二は日本一の一流大学に進学。経営について本格的に勉強するらしい。
ムッツリーニも中堅大学よりも少し上の教育学部に進学。体育教師を目指すらしい。
そして秀吉は去年から芸能事務所に入って、既にアイドル俳優として活躍中。男女ともに若手人気ナンバーワン俳優だ。
皆、それぞれ進路が違い、今までのように簡単に会えなくなるのは僕だけじゃない。
「まぁ、進む道はそれぞれ違うが、俺達はここで出会って、これからもダチを続けて行くんだ。今生の別れでもあるまいし、そんなに寂しがる事はねえよ」
「そうそう。一年の時からの付き合いじゃない。僕も何かあれば帰ってくるし、一年に一回は絶対に帰って来るんだから」
「思えば、あの頃から毎日のようにバカ騒ぎしとったのう」
「‥‥‥‥‥‥‥‥懐かしい」
僕等は、バカ騒ぎをして過ごした三年間を思い返していた。
「こうして思い返すと、バカ騒ぎの9割が明久が原因だな」
「待って! それは雄二にだけは言われたくないよ!!」
どさくさに紛れて、罪を全部僕に被せようとするなんて、なんて奴なんだ。
僕が原因の奴の大半は雄二も一緒だったって言うのに‥‥‥‥‥‥。
「‥‥‥‥‥‥‥‥どっちにしろ、俺は被害者」
「「エロの大半はお前が原因だ!!」」
「‥‥‥‥‥‥‥そんな事実は認められていない」
本人は首を振って、否定しているが、エロに関するバカ騒ぎの大半は数こそ少なかったけど、ムッツリーニが原因なのは間違いない。
覗き騒動の時は、僕等が原因だったけど、それ以外は基本ムッツリーニの責任だと声を大にして言える。
「相変わらず、お主らは賑やかじゃのう」
「「待って(待て)秀吉! うるさいのは雄二(明久)であって僕(俺)じゃない!!」」
「‥‥‥‥‥‥‥‥両方ともうるさい」
「「お前も騒ぎの原因だよ!!」」
「息までぴったりじゃな」
「雄二と息があってても、嬉しくも何ともないよ!」
「その言葉、そっくりそのまま返してやるぜ!」
僕と雄二はお互いに睨み合う。
そして
「「ぷっ。あははははははは」」
僕等は同時に笑い出した。
それに釣られて、秀吉とムッツリーニも笑い出す。
はは。今までだって、散々くだらない事でケンカしてきたけど、ここまでくだらない事でケンカしたのは初めてだ。
それも卒業式の日だって言うのに。
どうやら、僕等は卒業式であろうバカ騒ぎをするのは止められなかったようだ。
僕等はしばらく笑い続けた後、再び、ここから見る最後の景色を眺めた。
「そう言えばさ‥‥‥‥‥‥‥」
僕は景色を見ながら、何となく頭に浮かんだ事を聞こうと、雄二に声を掛けた。
「ん? なんだ?」
「雄二はいつ霧島さんと結婚するの?」
「ブ――――――――――!!」
「わ、汚いな。気を付けてよ」
僕が雄二に何となく気になった事を聞くと、雄二は自身が飲んでいたジュースを盛大に吐き出して、思いっきり噎せていた。
「ごほっ、ごほっ! て、テメェ‥‥‥‥‥‥‥イキナリ何てこと聞いてきやがる!」
「え? だってお互い好き同士でしょ?」
お互いに好き同士で、霧島さんがあんなに結婚したがってるんだから、近い内に結婚するもんだと思っていた。
「誰が好き同士だ! 俺はそんな事は一言も――」
『翔子。今まで、俺はお前から散々逃げてきたが、もう逃げたりしねぇ。だから、俺の気持ちを聞いてくれ』
雄二の言葉に音声を被せるようにムッツリーニの持つ録音機から、雄二の声が聞こえてきた。
それに気づいた雄二は
「――言ってな‥‥‥‥‥‥‥‥‥おい、待て、ムッツリーニ。お前、それをどこでっ‥‥‥‥‥‥!」
顔から汗を大量に流して、引きつった表情をしていた。
どうやら、あの録音機には
「‥‥‥‥‥‥‥‥盗聴器は屋上にも仕掛けてある」
「止めろぉ―――――!! その録音、直ぐに消せぇぇぇ―――――――――!!」
雄二の聞かれたくない秘密が入ってるのは間違いないようだ。
ならば!
「ムッツリーニ! 雄二は抑えたから続きを早く!」
僕は暴れる雄二を力づくで止めて、ムッツリーニに続きを流すように促した。
「‥‥‥‥‥‥‥‥任せておけ」
「任せ(られるか)――――!? ム―――――!! ム――――!?」
ちっ! しぶとい奴だな。今度は気を抜かず、しっかり押さえてやろう。
一度、僕から逃げようとした雄二を、もう一度拘束しなおして、今度こそ録音機に僕は耳を傾けた。
『翔子、俺は、俺はお前と釣り合える男になる! 霧島財閥を背負える男になるための勉強を大学でする。だから、今は無理だが、大学を卒業して、俺がお前と釣り合える男になれたら、俺と結婚してくれ!!』
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
‥‥‥‥‥‥‥え? 何、今の?
え? 告白? プロポーズ?
なんにしても、え? 雄二がまさかの?
「‥‥‥‥‥‥‥なんか言えよ‥‥‥‥」
沈黙の中、雄二だけが声を発した。
その顔は、顔を赤く染めて恥ずかしそうにしていて、見ているこっちまで、恥ずかしくさせた。
どうやら、今のはムッツリーニの手作りではなく、本物のようだ。
と言う事は、雄二はあと四年後に結婚するのか‥‥‥‥‥‥
「‥‥‥‥‥‥‥‥すまない。俺も中身は初めて聞いたんだ。特に悪気があったわけじゃない‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
いや、悪気がなくても、盗聴って犯罪だからね?
でも、ムッツリーニの事だし、言っても仕方ないよね‥‥‥‥‥‥‥
「クソ! 俺だけこんな目に合うのは納得いかん! お前等も巻き込んでやる!」
雄二はそう言うけど、僕等にそんな話がないと巻き込むのは不可能じゃないかな?
雄二だって、ムッツリーニの録音機がなかったら、
「‥‥‥‥‥‥‥俺にそんな話はない」
「嘘付け! ムッツリーニ、お前は既にネタが上がってる! お前、工藤愛子と同じ大学を希望して、二人で勉強してたらしいじゃねえか」
「‥‥‥‥‥‥‥っ! なぜそれを!?」
「翔子が工藤から聞いて、俺は翔子から聞いた」
凄い連係プレイだ。
工藤さんとムッツリーニの情報は、この連携を通して雄二には筒抜けと言っても良いだろう。
逆にこれから雄二と霧島さんの情報はムッツリーニに筒抜けになると思うけど、それは今と大して変わらないから、あえて何も言うまい。
「二人とも意外とやるもんじゃのう。ムッツリーニなんかは、去年までは工藤の事は何とも思っていなさそうじゃったのに、まさか一年の間で付き合うとこまで進んでいたとは」
全くだ。
永遠のライバル!! みたいな感じだったのに、いつの間にそんな展開になったのか不思議だ。
「‥‥‥‥‥‥‥‥そんな事実は認めらていない」
「工藤さんとのお泊り会は楽しかった?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥最高」
ホント、相変わらず正直な奴だと思う。
「で? 明久? お前はどうなんだ?」
雄二がムッツリーニの事を暴露した後、僕に詰め寄ってきた。
まぁ、三年間秀吉は女子からも男扱いされず、本人は男だと主張していたんだから、秀吉に恋人がいないのは誰の目からも明らかなので、次に僕が追い詰められるのは自然な事だ。
けど
「それ、僕に聞いて意味あるの?」
どうせムッツリーニの事だから、既に知っているだろうし、僕がここで言わなくてもムッツリーニが話してしまうだろう。
ムッツリーニも雄二に暴露された以上、僕の情報をムッツリーニが隠すような事は絶対にしない。
むしろ、僕も巻き込もうとするだろう。
雄二の奴も録音されてたんだから、僕の奴も録音されてるのは間違いないしね。
「まぁ、一応自分で言う気があるのか確認しただけだ。ムッツリーニ頼む」
「‥‥‥‥‥‥‥‥既に準備はできている」
そう言って、ムッツリーニは既に準備していた録音機の再生ボタンを押した。
『アキ、急に呼び出したりしてごめんね?』
『私達、どうしても明久君に一度は言っておきたい事があるんです‥‥‥‥‥‥』
録音機からは、卒業式の一週間前に僕が美波と姫路さんの二人に呼び出された時の音声が流れてきた。
『『アキ(明久君)、ずっと好きでした。ウチ(私)も一緒に連れて行ってください』』
『‥‥‥‥‥‥‥‥ごめん。二人とも。二人を一緒に連れて行く事はできない』
‥‥‥‥‥‥‥録音機から聞こえる自分の声を聞くのって、かなり恥ずかしいな。
壊しちゃおうかな?
僕が自分の声が録音機から聞こえてくるのに耐えきれなくなって、無言で録音機を壊そうと決意したら、事前にそれを察知した雄二とムッツリーニが僕を押さえつけてきた。
「ちょ!? 二人ともなにするのさ!?」
「最後までお前は動くな! 一度、諦めたなら最後まで大人しくしてろ!!」
「‥‥‥‥‥‥‥自分だけ逃げようなんて許さない。一蓮托生」
くっ! なんて勘のいい奴らなんだ!
僕が押さえつけられたまま、録音された音声はどんどん流れ続けた。
『僕に取って二人は凄く大事な人達だ。けど、それは恋愛感情じゃない。‥‥‥‥‥‥‥そして多分、それは一生変わらないと思うだ‥‥‥‥‥‥‥』
『‥‥‥‥‥‥‥‥それでも、ついて行きたいって言ったら?』
『二人は僕に取っては本当に大事な人だ。だからこそ、そんな大事な二人に、変に希望だけ与えるわけにはいかないよ‥‥‥‥‥‥‥‥。それに‥‥‥‥』
『‥‥‥‥‥‥明久君には私達とは違う大切な人がいる。ですか?』
『え?』
『なに不思議そうな顔してるのよ? ウチ等はずっとアキの事を見て来たんだから、それくらい分かるわよ』
『明久君のお家の人に”向こう”で住めって、明久君は嫌がりませんでしたよね? それって、”向こう”に明久君に取って、大切な人がいるからだと思ったんです』
「そうなのか? お前、”向こう”に好きな人いるのか?」
雄二が録音の中身を聞いて、僕の上に乗っかりながら、そんな事を聞いてきた。
「それが人に物を訪ねる態度か? こんな事しながら、聞いてくる奴に教える義理はない!」
「どうせお前の事だから、バカみたいにこの後答えるんだろう?」
『‥‥‥‥‥‥‥‥‥僕って、そんなに分かりやすい?』
雄二の予想通り、肯定してしまう機械の中の僕。
ちくしょう! 僕のバカ!
『分かりやすいですよ‥‥‥‥‥‥‥だから、明久君の気持ちが私達に向いてないって事も直ぐに分かっちゃいました』
『全くよ。‥‥‥‥‥‥‥アンタは分かりやす過ぎるのよ。おかげで、この一年、ウチと瑞希がどれほど悩んだ事か‥‥‥‥‥‥』
『まぁ、そのおかげで、色々分かったんですけどね?』
『分かったって‥‥‥‥‥‥‥‥何が?』
『これからのアキに取って、何が大切かって事よ』
『? どういう事?』
『明久君はこれから”向こう”に行くわけですよね? そしたら、明久君に取っては知らない場所で暮らす事になります。その明久君には支えてくれる人が必要って事です』
『ん? ますます意味が分からないんだけど‥‥‥‥‥‥?』
『要するにウチや瑞希は”向こう”でアキの支えになれないって事』
『思えば、私達は明久君が他の女の事と仲良くするのが許せなくて、嫉妬してお仕置きとかしたり良くしましたよね?』
『でも、それはウチたちの気持ちの事だけで、アキの事を考えてはいなかった』
『そんな私達に、これから支えが必要になる明久君を支える資格はないんです。ましてや、今の明久君は魔法の力を手にして、”ここ”とは別の世界に行くんですよ? 魔法を使えず、私達の知らない場所に行く明久君の支えになる事は私達には無理なんです』
『アキ、さっきウチらがさっきした告白は、この気持ちに踏ん切りをつけるためにしたの‥‥‥‥‥‥』
『明久君の事を考えず、自分達の気持ちだけで行動していた私達では、明久君の”大事”な人にはなれても”大切”な人になれないのは分かっていました。でも、最後に気持ちくらいは伝えたかったんです』
『だから、そんな優しい言葉はいらない』
『私達の関係を、本当に”大事な人”と言う関係だけにするために、一言、ハッキリと私達に言葉を下さい。それで、私達の気持ちを終わらせて下さい』
『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥分かった。すぅ―――――――っは―――――――――――――』
録音された僕の声は、ここでいったん途切れて、大きく深呼吸した。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥ヤバイ。凄い恥ずかしい。
さっきまで茶々を入れていた雄二も、今は真剣に聞いていて、誰も声を発さず、録音された声だけが鳴り響いていた。
『僕は二人とは付き合わない!! 二人は一生、僕の親友だぁ―――――――――!!』
『『‥‥‥‥‥‥‥‥ありがとう(ございます)アキ(明久君)』』
それを最後に録音機の音は止まった。
「こんだけ引っ張って、最後は結局友達――いや、親友だったな。親友で終わるんだな」
うるさい。
あの時は僕も、美波も、姫路さんもテンションがおかしかったんだよ!
実際、あの後二人から『あそこまで言うつもりはなかった。本当はずっと友達でいて欲しいって言うだけのつもりだったから、あの時の事は忘れろ』と言われていた。
まぁ、残念ながら、ムッツリーニが録音していたようなので、これは記憶ではなく記録として残ってしまったわけだけど‥‥‥‥‥‥‥‥
「それにしても、お主は良くあんな簡単に”親友”などと言えるのう。恥ずかしくはないのか?」
「恥ずかしいよ! 友達とは言えるけど、親友って言うのは何故か凄い恥ずかしいよ!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥その割には、自分から親友と言う単語を選んでいた」
だから、それは僕のテンションもおかしかったからなんだよ!
「ん? おい、明久、お前の親友たちが、お前の知り合いと話をしてるぞ?」
「だぁ―――――――!! 言ってる側から、親友、親友言うな――――――――って、あれ?」
僕が雄二に言われて、屋上から校門を見てみると、美波と姫路さんが、なのは、フェイト、ヴィヴィオの三人と話をしていた。
一応、JS事件後に六課の皆に僕の友達を紹介してるから、面識があるのは知ってたけど、あーやって僕のいない所で話しをするほど、仲が良くなっているとは思わなかったな‥‥‥‥‥‥‥‥
「何してるんだろう?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥どう考えても、明久関連の事」
「え!? 僕の話!?」
いったい何を話されてるんだ!?
と、僕は不安になる一方だった。
「なんじゃ? 明久は女子の話の内容が気になるのか?」
「普段はあんまり気にならないけど、内容が僕の話なら凄く気になるよ!」
どんな悪口を言われているのか、気になって仕方がない。
その後の僕の被害に関わるんだから‥‥‥‥‥‥‥‥
「なら、さっさと行ってこい!!」
雄二はそう言うと、僕を屋上から放り投げてきた。
「ええっ!? ちょ、なんで!?」
僕は地面に激突する寸前に、魔法を使って衝撃を和らげ、無事に着地する。
あ、危なかった。
僕じゃなかった、地面に激突していたところだ。
僕は雄二に文句を言おうと、屋上を見上げたら
「じゃあな、明久。戻ってきたら連絡入れろよ」
「‥‥‥‥‥‥‥‥連絡を待っている」
「待っておるぞ」
三人はそう言って、僕の死角に入って行き、僕の前から姿を消した。
「‥‥‥‥‥‥なんだそりゃ‥‥‥‥‥」
こんな一方的な別れ方をするなんて、強引な奴らだ。
とは言え
「まぁ、僕等らしいと言えば、僕等らしいか‥‥‥‥‥‥‥」
良く考えなくて、普段から同じよ感じだったので、気にしない事にした。
普段通りに別れる。
それは、今度会うのが随分先になっても、僕等が再開した時、この日の僕等と同じように、普段通りに再開できると言う事だから‥‥‥‥‥‥
ピロン♪ ピロン♪
僕が皆と別れるのと同時に、僕の携帯に二通のメールが入った。
差出人は、僕の友達、姫路さんと美波からだった。
『卒業おめでとうございます。今会ったら、きっと泣いちゃうと思うので、メールでお別れをさせてもらいますね?
同じクラスになったのは二年生と三年生の二年間だけでしたが、この二年間は凄く楽しかったです。
今なのはさん達と少し、お話しをさせてもらいましたけど、悪口とかは言ってないので安心してくださいね?
内容は、後で自分で聞いてみてください。
それでは、また会える日を楽しみにしていますね♪
姫路瑞希』
『アキ! 卒業おめでとう!
三年間、アキのおかげで退屈しなくて楽しかったわ。
これからはヴィヴィオのお手本になれるような大人になりなさいよ?
もし、ヴィヴィオがバカな子になったらアキのせいだからね?
それと、さっきなのはさん達と少し話をしたから、覚悟しときなさい。
最後になったけど三年間ありがとう。
また会える日を楽しみにしてます。
島田美波』
「‥‥‥‥‥‥‥‥悪口は言ってなくて、安心していいんだよね? でも覚悟はしないといけないの‥‥‥‥‥‥‥?」
僕はどうすればいいんだ?
二人のメールからは、どう判断すればいいのか、良く分からなかった。
とは言え、二人ともメールを送ってきたと言う事は、今日は会うつもりはないようだ。
きっと、あんな話をしたとは言え、一週間やそこらでは気持ちを整理するのは難しかったんだろう‥‥‥‥‥
けど、二人はこれで僕等はただの友達になれると言った。
なら次、僕が戻ってきた時には、二人とも会う事が出来るだろう。
そう思って、僕は今日、二人に会おうはせず、真っ直ぐなのは達のいる校門へと向かい、三人と合流した。
「お待たせ三人とも」
「ううん。卒業式だもん。お話ししたい人とかいっぱいいたでしょ?」
「まぁ、そんなに数は多くないけどね? それより、さっき美波と姫路さんからメール来たんだけど‥‥‥‥‥‥何を言われてたの‥‥‥‥‥?」
僕は恐々と二人に何を言われていたのか聞いてみた。
けど、そんな恐々と聞く必要は一切なかったようで、なのはとフェイトの二人は笑いながら答えてくれた。
「そんなに怯えなくても大丈夫だよ。明久君の事を頼まれただけだから」
「僕の事を?」
「うん。明久は『バカで鈍感で色々抜けてるけど――」
酷い言われようだ。
僕の友達は最後まで容赦がないな‥‥‥‥‥‥
「――いつも一生懸命で、とっても優しい人だから、支えてあげて下さい』って言われてたんだ」
「もちろん、『任せて下さい』って答えておいたよ?」
‥‥‥‥‥‥‥どうしよう? 凄い恥ずかしい‥‥‥‥‥‥‥
これは確かに、悪口は言われてないけど、覚悟はしておかないといけない内容だった‥‥‥‥‥‥‥
「それで、明久? ここに来たって事は、もう出発していいの? 次は一年後まで来れないんでしょ?」
「うん。大丈夫。もうしっかり記憶には留めたし、皆には挨拶を済ませてあるから」
「そう? ならもう出発する?」
「うん‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
僕はそう返事をして、ヴィヴィオを肩車して、もう一度だけ校門から学校を見た。
「パパ? 大丈夫?」
「‥‥‥‥‥‥‥ごめん。もう一回だけ見たくなっちゃって‥‥‥‥‥‥もう大丈夫」
ヴィヴィオにパパと呼ばれた僕は、そう答える。
「それじゃ、家に帰ろう」
そう言って僕は両手をなのはとフェイトの二人と繋いで、最初に一人で白い光に包まれたように、だけど、今度は四人で腕輪の発する白い光に包まれて行き、新しい幸せな場所へと向かって、この世界から姿を消したのだった。
――――――――魔法少女リリカルなのは バカの参戦 完結――――――――
と言うわけで、プロローグを含めて、全60話。
魔法少女リリカルなのは バカの参戦 遂に完結です!
この作品、思いつきで書き始めたわけですが
こうして完結する事が出来たのは
長い間読み続けて下さった、読者の皆様のおかげです!
ホント、読者の皆様には頭が上がりません。
さて、今話を持って魔法少女リリカルなのは バカの参戦は完結したわけですが
この話はこの話として、新しく
魔法少女リリカルなのは バカの参戦Ⅱを連載したいと思います!
(タイトルは良いのが思いつかないので安易に決めました)
Ⅱは、この話の続きに当たり、完全にオリジナルの物語になりますが
良かったら見てやって下さい。
もちろん、これも思いつきですが
↑
おい!
最後に、もう一度お礼の言葉を送ります。
ご愛読、ありがとうございました!