TSUBAMEを斬りたいのでSAMURAIになりたいと思います。 作:天丸
という思い付きから生まれた作品。どうしてこうなった…。
初投稿作品なので暖かい目で見守ってやってください。
『ΝewWorld Online』。かつてない程の自由度を誇るVRMMOとして今人気急上昇中のゲームで、装備やアイテムなどの種類も豊富で、条件を満たすとスキルの取得が可能であるため、やり込み要素も多いらしい。
何故私がこれを手にしているかというと、本日、同僚兼友人がおすすめゲームだからやる、と言って渡してきたのだ。友人は既にやり込んでいるらしく、折角譲り受けたのにやらないのも勿体ないと私も機材を揃えた。初心者の私でもできるのか些か不安でもあるが、まあ普段から仕事漬けの私を気遣ってわざわざ購入してくれたのだし、人の厚意には甘えておこう。
とは言ったものの、何分この手のゲームは初めてなので遊び方どころか何を楽しめばいいのかすら分からん。普段やっているゲームといえば○トリスやぷよぷ○なのでそもそものジャンルが違う。魔法やHP、MPといった基本的な用語は説明書に書いてあったので覚えたが、中身までは分からない。友人は冒険して敵を倒したりアイテムを集めたりして楽しめばいいと言っていたが、どんなものか想像もつかん。一体どんな風にプレイすればいいのか……。まあ、なるようになるか。
早速ハード機体の設定を済ませ、ゲーム開始の準備を整えたところで、私はゲームを起動させた。
洋風の建物が建ち並び、多くのプレイヤーが集まる城下町に一人の男が現れた。
腰まで伸びる群青色の長髪を後ろで結い、腰に刀を携えた蒼い双眸の青年──誰あろう、私である。身長や顔は弄れなかったが、髪型と目の色は自由に変更できたので思い切ってイメチェンしてみた。我ながら結構様になっていると思う。
容姿はバッチリなので、次はステータスだ。ステータス、と唱えるとパネルが浮かび上がりステータスを表示する。
コジロウ
Lv1
HP 38/38
MP 16/16
【STR 0〈+18〉】
【VIT 0】
【AGI 60】
【DEX 40】
【INT 0】
装備
頭【空欄】
体【空欄】
右手【初心者の刀】
左手【初心者の鞘】
足【空欄】
靴【空欄】
装飾品【空欄】【空欄】【空欄】
スキル
なし
ふむ、特に問題はない。友人からのアドバイスで『ステータスは自分のプレイスタイルに必要なものにだけ振っておけ』と言われたので【AGI】と【DEX】に振り、友人から教わった速攻クリティカルアタッカーというものを目指すことにした。ちなみにプレイヤーネームは本名の下の名前をそのまま採用している。刀を選んだ理由? かっこいいからだが何か?
それにしても話には聞いていたとしても何とも現実味のある世界である。建物やプレイヤーを見ればここが電脳空間だと理解できるが、景色だけを見れば現実と遜色ない。確かにこれは面白い。始めてまだ何もしていないが見ているだけでも楽しくなるのだから、実際にやってみれば確実にハマるだろう。これは滾る。
もう辛抱たまらんとばかりに私は町から外に出た。暫く進んで行くとすぐに木の生い茂る森に入ったので、獲物となるモンスターを探していく。するとすぐ側の茂みからモンスターが飛び出して来た。
飛んで火に入る夏の虫とはこのことだ。ククク、我が刀の錆にしてくれるわ。
「ハァッ!」
刀を鞘から抜刀し、正面からモンスターに一閃、すれ違いざまに首を斬り捨てる。すると、モンスターは鳴き声を挙げ、エフェクトと共に散っていった。
ふっ、決まった(ドヤァ)。
なるほどどうしてこれはなかなか快感だ。何と言うか無双している感じが凄い。確かにこれは積みゲーにはないものだ。気分も高揚しているせいかもっと敵を斬りたくなってくる。
ヒャッハー、この調子で狩り続けてやるぜェ!
暫くモンスターを辻斬りし続けていたら段々このゲームの仕組みが分かってきた。どうやら頭、首、心臓のいずれかを斬り捨てるとクリティカル判定になり、通常の攻撃よりも遥かに高いダメージを出せるようだ。STRにまったく振らなかったので心配だったが、DEXを上げていたおかげか今の所クリティカルヒットも多発しているため、殆どのモンスターが一撃で倒せた。
それに、モンスターを狩っているといつの間にかこんなスキルも手に入った。
【一意専心】……クリティカル発生率が10%上昇する。
取得条件……クリティカルヒットを途切れさせることなく一定数連続で繰り出す。
このスキルを手に入れてからは比較的にクリティカルが出やすくなったので効率がぐーんと上がった。ついでに武器の基本スキルも取得していた。
しかし、この辺りの敵は粗方狩り尽くしてしまったのでこれからどうするか。町に戻るにしては早い気がするし、移動しようにも何処へ行こうか。
なんとなく、遠くを見渡しているとかなり先に山があるのが見えた。折角なので行ってみようと思うが、歩いて行けば確実に数時間はかかりそうだ。
よし、走るか。
身を屈め、低い姿勢から勢い良く走り出す。ステータスポイントの六割を【AGI】に振っていたため、そこそこのスピードになるとは思っていたが、想像よりもかなり速い。景色が流れるように変わっていく様と身を切る風の心地良さから更に足に力が入る。もっと速く、もっと速くと一心不乱に走る。そのままスピードを落とすことなく、数十分走り続けているといつの間にか山の麓に到着していた。
『スキル【疾走】を取得しました』
はぁはぁ……死ぬ……死んでしまうぅ……調子に乗って馬鹿みたいに走るんじゃなかった……。
その場に倒れ伏し、息を整えながら先程取得したスキルを確認していく。
【疾走】……AGIが20%上昇し、DEXが3%上昇する。
取得条件……全力疾走の状態で一定距離を走りきる。
おお、これはかなり良いスキルなのではないだろうか。速さが20%上昇する上にクリティカルが更に出やすくなるというのだから更に効率よくモンスターを狩れるようになる。瀕死になるまで走った甲斐があった。
暫くその場で休み、汗を引かせていく。
それにしてもこんな遠くまでよく来たものだ。ここまで来たのだからせめて何かしらあってくれないと困る。休みながら山を見上げていると、山の中腹に何か建物が建っているのが見えた。
あれは、小屋か?
大きさや形からして小屋に間違いないと思うが何故こんな所に。体力が回復したのを見計らって、その小屋の正体を確かめるべく、登山を開始した。
【疾走】のおかげで今までよりも更に速くなっているため、山を登ることが困難ではなかったのが救いだ。
暫く登り続け、目的地に辿り着くやいなや、思いもよらぬものが目に飛び込んできた。
……何故にこんな山奥に畑?
そこには平らな土地に耕した跡が残っており、農具が置いてある。一体何故こんな所に畑があるのかと不思議に思いながら辺りを見渡すと、奥に山頂へ通じる道を発見した。
「待たれよ」
取り敢えず行ってみようと足を踏み出した瞬間、何処からともなく声を掛けられた。辺りを見回すと、岩の上に老人が佇んでいた。
「いやはや、こんな所までやってくる物好きがいようとは。何とも酔狂な御仁だ。拙者は剣聖と呼ばれている者だが、我が剣に適う者が現れず暇を持て余していてな。今はそこの畑を耕しながらこの道の番人をしている。ここを通りたくば拙者を斬り伏せてからにして貰おう」
背中に長い刀を背負った老人が嗄れてはいるが流暢な声で一息に話し尽くすと、半透明の青いパネルが浮かび上がり、【クエスト 剣聖の試練】と表示されていた。
達成条件は剣聖の撃破。制限時間はなく、敗北しても失敗にはならないらしい。
どうやらこの先に行こうとすると、クエストが発生するようだ。しかし、山頂に行く前に門番がいるとは。恐らく山頂には大層レアなアイテムか何かあるのだろう。このチャンス、逃す手はない。
私はクエストパネルに了承の意を示した。
「ならば構えるがいい」
老人は軽やかな動きで岩から降りると、刀を抜いた。私も呼応するように腰の刀を抜き、油断なく構える。
「剣聖・名無し、いざ参る」
そして、私と老人は同時に刀を振り抜いた。
型月の佐々木小次郎は幼少期、山奥に隠居した剣聖の剣技に魅了されて剣の道に入った。ということなのでオリキャラとして登場させてみました。
ステータスを少し変更しました。