TSUBAMEを斬りたいのでSAMURAIになりたいと思います。 作:天丸
それから作者はfgoのイベントに行ってきますので、次回の投稿は暫くお待ちください。
早期投稿は犠牲となったのだ…イベントの犠牲にな……。
私コジロウ、今山の中にいるの。
とまあメリーさんならぬコジロウさんな私だが、現在、飛燕のダンジョンの入口にいる。何故いきなりこんな所にいるのかということはひとまず置いておいて、先日取得したスキルの確認からしようと思う。
あの世にも恐ろしい魔鳥、飛燕をスタントマンもびっくりな大立ち回りの末に見事討ち果たした私だったが、その後に取得したスキルの確認もせずにログアウトしたため、まだどのようなスキルか分かっていないのだ。あの時は剣聖を倒してからのダンジョン攻略だったからか、終わったあとで津波のように疲れが押し寄せてきて限界だった。最後の方はおかしなテンションになっていたが、あれが俗に言う深夜テンションである。
何はともあれ早速、装備スキルの確認からしていこうと思う。
確か【自己再生】と【霊基再臨】というスキルが設定されていたはずだが、【自己再生】はまだ何となくニュアンスで分かるが、【霊基再臨】はまるで検討もつかない。一体どういうスキルなのか見てみるとする。
【自己再生】……この装備は破損しても、一定時間経つと元通りになる。
ふむ、これは予想通りのスキルだ。一点物だから壊れるくらいなら戦う時は別装備にしようと考えてもいたが、これなら問題なく着続けられる。
それから気になる【霊基再臨】だが、どんなものなのだろう。
【霊基再臨】……レベルに応じて姿を3つまで変えられる。レベル1の状態で第一段階、レベル20の状態で第二段階、レベル40の状態で第三段階。
どうやらレベルに応じて柄や着方を変えられるらしい。戦闘には何の関係もないスキルだが、装備している者を飽きさせない面白いスキルだ。例えば戦っている時に「私の本気を見せてやろう」とか言ってこのスキルを発動させたら熱いと思う。
装備スキルはこれだけなので、次は飛燕を倒した後に取得した三つのスキルだ。どれから確認しようか迷うが、ここは私が気になっているものから選ぶことにする。
まずは【刹那無影剣】からだ。名前からして凄く強そうだが……。
【刹那無影剣】……攻撃時、AGIの値の50%がSTRの値に上乗せされる。
取得条件……飛燕を戦闘開始から10分以内に撃破する。
おお、これは嬉しい。今までステータス的に火力不足が否めなかったが、遂にその沼からも脱却できる。それはそうと取得条件だが、強いスキルな分、取得条件も頗る難しい。相手の特性から防御力はないに等しいが、攻撃を当てるのには苦労するどころか並のプレイヤーなら目で追うことも難しい。それを短時間で倒すなど至難の業だろう。
なんか自画自賛してる気がしてきたのでこれ以上はやめておく。
次は確か【長刀術】というスキルだったか。これは【長刀の心得Ⅴ】がレベルアップして一気に【長刀の心得Ⅹ】になった時に取得したスキルだったと思う。見るからに長刀を扱うスキルだがどんなスキルなのだろう。
【長刀術】……以下の長刀スキルを内包している。
・【颪三連】……高速の三連突きを放つ。
・【風車】……後退しつつ斬り付ける。
・【雀刺し】……移動して斬り付ける
・【石花】……斜め上に発生の速い斬撃を繰り出す。飛び道具を打ち消す。
・【春雷】……前方に発生の速い斬撃を繰り出す。飛び道具を打ち消す。
・【痺れ鯰】……斜め下に発生の速い下段の斬撃を繰り出す。飛び道具を打ち消す。
・【鬼殺し】……相手の攻撃を受け流して斬り付ける当て身技。
・【風流し】……相手の攻撃を受け流して体勢を崩す当て身技。
取得条件……スキル【長刀の心得】を限界までレベルアップさせる。
なぁにこれぇ。何で一つのスキルにこんなにスキルが入っているのか説明して欲しい。というか一つ一つの説明を読んで気付いのだが、これ全部剣聖が使っていた技だ。スキル名こそ唱えていなかったが、どれも喰らったことのある技ばかりだ。ということは剣聖はこれをスキルではなくただの剣技として使っていたと? やっぱ化けもんだわあの爺さん。
これは後で物干し竿のスキルスロットに装填しておこう。
最後に【燕返し】だが、説明の必要がない。何度も見ているし、何なら模倣だが使っているのだから。
だが、まだ見ぬ発見もあるかもしれないので念の為に確認しておく。
【燕返し】……限定的な多重次元屈折現象を引き起こし、並行世界から呼び込まれる3つの異なる剣筋が、完全に同一の時間に相手を襲う長刀専用スキル。
取得条件……飛燕を同時に3つの斬撃を繰り出して撃破する。
…………わけがわからないよ。本当に何だこれ。多重次元屈折現象? 並行世界?? こいつは一体何を言っているんだ(困惑)。
取得条件とか私以外で取得できるプレイヤーいないと思う。同時に三つの斬撃とか腕二本しかない我々人類にできる訳がない。本当に何でできたんだろう私。
まあ、これはもう“なんか凄い技"っていう認識で捉えておこう。
色々とよく分からないこともあったが、これでスキルの確認は終わりだ。
さて、ここからが本題だ。本日この山にやって来た理由だが、ずばり、お金稼ぎである。実を言うと、このゲームを始めてからほぼ全ての時間を剣聖への挑戦に費やしていたので、現在、私は圧倒的金銭不足に陥っている。具体的にはポーションを買い込んで一晩宿に泊まって飲み食いしたら全部消し飛んだくらいの金銭難である。このままではアイテムやスキルの購入もままならない。そういう事情でダンジョンに出稼ぎに来ているわけだ。
それに、お金稼ぎだけでなくレベル上げとスキルの試運転も兼ねているので一石二鳥ならぬ一石三鳥である。飛燕だけに。
こうして立ち止まっている時間さえもったいないので、早速ダンジョンに突入したいと思う。突入してすぐに先日も倒した
ふはははは! 貧弱! 貧弱ゥ!
途中から良くないハッスルをしてしまったが些事である。え、剣聖の真似はどうした? 心の中なので何を言おうと関係ないね。
私の攻撃は最早全てクリティカルを発生させるので、どんなに硬いモンスターだろうと数撃で倒せる。逆に向こうは回避能力の高い私に為す術なく殲滅されていく。
この調子でダンジョンの入口から
そんなこんなで狩り続けているとあっという間に日暮れ間近になってしまった。金もある程度貯まったし、レベルも上がったので今日はこれまでとする。今日は町の宿に泊まって明日もここで周回するとしよう。
沈みかけの太陽が足下を照らす中、流れる景色を楽しみながら私は全力疾走で帰路を辿っていた。あれ程時間のかかった距離も、今では息を切らさず片道五分で走破できる。これも日々の鍛錬の賜物である。
『スキル【千里疾走】を取得しました』
「む、何やらまたスキルを取得したか」
走っているとスキルを取得したので、横着をして足を止めることなく確認してみる。
【千里疾走】……走行時、自身のAGIの値を50%、DEXの値を30%上昇させる。
取得条件……合計走行距離が3900キロメートルを超える。
そんなに走っていたのかと驚愕すると同時に、よく考えれば行きだけだとしても百回以上この距離を走っていれば、この結果は当然と言えば当然なのかもしれない。
それにしてもこのスキルを取得してまたスピードが上がった。この速さで転んだりしたらとてつもない大惨事になりかねない。まあ、そんなことは躓きでもしない限り起こりえないので大丈夫だろう。
しかし、この日の私は運が悪かった。具体的に言うなら幸運Eになっていた。もし私が今日このスキルを取得していなかったら、もしスキルの確認をしながら走るという横着をしていなかったら、もし道端に人が横たわっていなかったら、もしその人物がモンスターによって覆われていなかったら、この惨事を未然に防ぐことができただろう。
「へ?」
視界が地面を捉えると同時に私の体が突然宙に浮いた。どんどん地面が迫ってきて、遂に私の顔は地面と零距離接近することとなった。
「ぶがッ! ぐべッ! ぐぼはぁッ!」
情けない声を出しながら転がる私は実に滑稽だっただろう。だが、それも仕方がない。自動車も斯くやといったスピードで転べば、現実ならばミンチになっているだろう。逆にゲームだからこの程度で済んだと思うべきなのだ。
まあ何が言いたいかと言うと、現実だろうがゲームだろうが痛いものは痛い。
フラグ回収早くない? という言葉が脳裏を過ったが、今はそれどころではない。恐らく私の顔面は今、人様にはお見せできないグロ映像と化していることだろう。実際にHPゲージが残り1まで減った。まさかこんな所で【不屈の意志】を使う羽目になるなんて誰が想像した。
「す、すいません! つい寝ちゃってて! あ、あの! 大丈夫ですか!?」
私が躓いたおかげでモンスターが逃げたらしく、自由の身になり起き上がった少女が大盾を片手に走り寄って来る。そんな少女の足下には石が埋まっており、案の定その石に足を引っ掛けた。驚愕の声を上げながら倒れてくる少女の手には大盾があり、その落下地点には地面に這い蹲る私。
あ、死んだわこれ。
少女の大盾は私の頭にクリティカルヒットし、私は光と共に消えた。
「し、知らない人おぉぉぉぉぉぉ!!」
夕暮れの空に、少女の悲痛な叫びが溶けて消えていった。
──とある掲示板
【NWO】やばい大盾使い見つけた
1 名前:名無しの大盾使い
やばい
2 名前:名無しの槍使い
kwsk
3 名前:名無しの魔法使い
どうやばいの
4 名前:名無しの大盾使い
何か西の森で大ムカデとかキャタピラーとか狼とかに取り囲まれて寝てた
5 名前:名無しの槍使い
は?
普通死ぬだろ、いくら大盾使いでも
6 名前:名無しの弓使い
強力な装備だったとか?
7 名前:名無しの大盾使い
見た感じは初期装備だった
思い出すだけでも気持ち悪くなるわ
何で毒虫の中で熟睡できるんですかね
8 名前:名無しの魔法使い
その状況で死なないのはダメージを無効化してる? としか……
9 名前:名無しの大剣使い
どんな奴?
10 名前:名無しの大盾使い
身長150ないくらいの美少女
動く速度からしてAGIはほぼゼロっぽい
ちなみに俺がそいつと同じ事したら一瞬で溶けますはい
11 名前:名無しの魔法使い
防御に極振りか?
まあでも隠しスキルでも見つけたとかかもしれん
12 名前:名無しの大盾使い
んで、まだ続きがあるんだよ
13 名前:名無しの槍使い
kwsk
14 名前:名無しの大盾使い
その美少女のことじゃないんだが、物凄い速度で走る侍がいた
15 名前:名無しの魔法使い
なにそれ
16 名前::名無しの槍使い
妖怪?
17 名前:名無しの弓使い
UMAでは?
18 名前:名無しの大盾使い
んでだ、道端で寝てたその美少女に躓いてそのスピードのまま顔面からいった
19 名前:名無しの大剣使い
うわぁ
20 名前:名無しの弓使い
痛い痛い痛い
21 名前:名無しの魔法使い
おいばかやめろ
22 名前:名無しの槍使い
おいおい死んだわそいつ
23 名前:名無しの大盾使い
それで瀕死の侍にその美少女が駆け寄って、足下にあった石に躓いて大盾を侍の頭にクリティカルさせた
24 名前:名無しの魔法使い
やめて! もう侍のライフはゼロよ!
25 名前:名無しの弓使い
なんて惨いことを……
26 名前:名無しの槍使い
あァァァんまりだァァァァ!
27 名前:名無しの大剣使い
侍が何をしたっていうんだ!
28 名前:名無しの大盾使い
そして侍は光となって消えた
29 名前:名無しの魔法使い
侍ィィィィィ!!
30 名前:名無しの弓使い
惜しい人を亡くした
31 名前:名無しの槍使い
侍が死んだ!
32 名前:名無しの大剣使い
この人でなし!
33 名前:名無しの大盾使い
やばい大盾使いのスレが不幸な侍のスレになってしまった
まあ、また何か見かけたら書き込むわ
34 名前:名無しの魔法使い
よろしく
35 名前:名無しの槍使い
侍についてもまた何かあったら別スレ頼む
36 名前:名無しの大盾使い
了解
「もしもし楓? こんな時間にどうしたの」
「理沙……どうしよう、私………人を殺しちゃった」
「!?」