TSUBAMEを斬りたいのでSAMURAIになりたいと思います。   作:天丸

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一回書いたやつが途中で気に入らなくなって書き直した末にできたものです。
そのため、チェックがいつもよりガバいので不備があれば感想欄に御記入ください。

兵庫や滋賀は8日に登校らしいですね。インドアな作者は休校延長を要請します。



第五歌 SAMURAIと修行

 鍛え直さねばなるまい。

 

 昨日、うっかりで剣聖と同じ末路を辿ったコジロウです。

 何があったのか簡潔に説明すると、爆走して余所見してたら転んで瀕死になって駆け寄って来た少女のドジっ子パワーで光の粒子になった。

 何を言って(ry

 

 昨日の失態を踏まえ、私は思った。これは私の力不足のせいなのだと。

 確かに昨日の惨事は傍から見ればただの私の運が悪かったのが原因だろう。ただ偶然が重なって起きた不幸な事故だろう。

 しかし、私は思う。真の達人ならば、どんな状況でも何事にも反応できるのではないかと。

 そう考えれば、私があんな目にあったのは不運でも不幸でもなんでもなく、私の力が足りなかったことが原因だとはっきり分かる。そう、全ては私の実力不足が原因なのだ。決して私の運が悪い訳じゃない。多分私は幸運Aくらいあるから大丈夫。

 

 では、どうするか。決まっている。鍛え直せばいいのだ。

 己の心を、技を、体を一から見つめ直し、かつての自分を超える。そうすればあのような事態は二度と起こらないだろう。レッツスパルタ。

 

 そういう訳で私は修行場として決めた飛燕のダンジョンの入口にいる。

 何故ここに決めたのかといえば、修行といえば山篭りが定番ということで見知った山でダンジョンもあるここが絶好の修行スポットだと思った次第である。

 

 さて、場所を決めたはいいが、ただ我武者羅にモンスターを倒すだけでは修行にはならない。修行には明確な目的と自らを追い込むための()が必要である。そして、今回の修行の目的は何事にも反応できる“対応力"を養うことだ。

 そのことを念頭に置いて考慮した結果、今回の()としてこの布を用意した。

 無論、これは何の変哲もないただの布だし、汗を拭うためのものでもない。これは目隠しをするためのものである。

 

 そう、私は今回、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()するのだ。

 

 かの有名な願いを叶えてくれる七つの玉を集める物語や海賊の王を目指す物語では、気という概念を読むことで、周りの状況を目で見るよりも正確に感じ取っていた。もちろんこれはあくまで空想の話だが、ここは仮想空間。それの再現まではできなくとも、似たようなスキルくらいはあると思う。

 

 今回の修行の目標は、見えずとも敵の気配を読めるようになること。これができるようになれば、私は更に上の領域に踏み込めるだろう。そして、うっかり躓くこともなくなる。良い事づくめである。

 

 そうと決まれば早速目隠し布を装備し、視界を完全に封じる。目の前には真っ暗闇しか映っていない。装備は整えてあるし、ポーションもしっかり持って来ている。

 準備が万端なのを確認し、私は覚悟を決めてダンジョンに飛び込んだ。

 

 入口の石に躓いた。

 

 

 ダンジョンに入ってからはゆっくりと歩いて山道を登っていた。刀を白杖代わりに、手探りで進んでいく。こうでもしなければ、とてもではないがろくに歩く事もできない。

 暫く山道を進んでいくと、前方から唸り声が聴こえてきた。モンスターだと気付いたものの、声だけでは何のモンスターなのか判別がつかない。取り敢えず様子見で、声の方向に向かって刀を振るった。しかし、刀はモンスターを捉えることなく空を切る。

 そして吠える声が聴こえ、直感的にその場から飛び退いた。

 

「ぐぅッ!」

 

 しかし、回避が遅かったようで、モンスターの爪は深々と私の腕を抉った。

 痛手を負ったが、そのお陰でモンスターの正体がライオン(キメラ)であることが分かった。このダンジョンのモンスターは殆ど把握しているため、声では分からずとも攻撃の仕方でどのモンスターかは判別できる。

 敵が分かれば後は容易い。こいつは引っ掻き攻撃をした後は光弾を放つ習性があり、光弾を放つには数秒のタメが必要だ。だから引っ掻き攻撃を終えた今がチャンスである。

 

「【颪三連】!」

 

 斬り払いではさっきのように空振る恐れがあるので、攻撃の来た方向に素早い三連突きを繰り出す。突きは見事に相手の眉間、鼻根、鼻先を捉え、貫いた。すると、ライオン(キメラ)は「Gyaooo!」という断末魔の声を上げ、消えていった。

 

 戦闘を終えた私は傷を癒すために、ポーションを飲む。先程負った傷が癒えていくのを感じながら、想像以上の難易度に少し心が折れそうになった。

 常ならば片手間で殺せる相手にこのざまだ。先程は一体だけだったので何とか対処できたが、ダンジョンでは複数のモンスターと戦うことなどざらにある。この状態でモンスターの群れと遭遇でもしたら目も当てられないだろう。視界塞がってるけど。

 

 そんなことを考えていたせいか、自身の周囲から複数の鳴き声が聴こえてきた。この感じからして、目も当てられないような状況が早速舞い込んで来たようだ。

 

「いやはや、どうやら道は険しいようだ」

 

 刀を握り締め、私は鳴き声の聴こえる方向に向かって突貫した。

 

 

 あれから数時間後、私は通常と変わらない動きでモンスターに対して刀を振るっていた。

 明らかに動きは先程までより良くなっているだろう。目隠しした状態でモンスターを狩ること幾星霜、遂に私は気配を掴むことに成功していた。

 とは言ってもこれはついさっき取得したスキルの効果に過ぎないが。

 

【気配感知】……自分を中心に半径10メートルの円の中の状況、環境を完全に感知する。

 取得条件……視界を閉じた状態で、モンスターを50体以上討伐する。

 

 このスキルを手に入れてからは、自分の周りの状況が目を閉じていても視えるようになり、目が見えている状態と変わらない動きが可能になった。

 どのような感じかと言えば、サーモグラフィーが一番近いかもしれない。周りの環境がシルエットのみで頭に浮かぶため、人物や個体の特定はできないが、敵がどこにいるのかなどは把握できる。

 

「ふむ、こやつで最後か」

 

 最後のモンスターを斬り捨て、血を振るい落としてから刀を鞘に納める。

【気配感知】で視たところ、もう周りに敵はいないので、これでここら一帯のモンスターは掃討した。となれば後は仕上げだけだ。

 私の足は自然と山頂に向かっていた。

 

 

 山頂に着いた私はそのまま足を止めることなく鳥居を潜った。すると、周りの気配ががらりと変わり、鳥の羽ばたく音が上から聴こえてくる。

 

「相変わらず、落としがいのある首よ」

 

 実に二度目の邂逅、以前と同じ組み合わせ。しかし、向こうが万全なのに対して、こちらはステータスでは幾つか劣っている上に目隠しというハンデを負っているため、明らかにこちらが不利な状況だろう。

 だが、実力という点に関しては、こちらの方が優っている。

 

「いざ参る」

 

 私が駆け出すと共に、飛燕は翼から羽根を射出する。前回は防ぐほかなかったこの攻撃だが、今の私には通用しない。

 私は本物となんら変わらないその弾幕に怯むことなく突っ込み、羽根を足場に縦横無尽に駆け上がった。

 そして、間合いに入り込むと同時に技を繰り出す。

 

「【石花】」

 

 斜め上への斬撃は飛燕の腹を切り裂く。悲痛な叫びを上げる飛燕に更に追撃を試みるが、嘴による攻撃を察知し、腹の傷口を踏み付け、後ろに跳んで回避する。まさしく傷口を抉る行為に飛燕は苦悶の声を漏らすが、すぐに持ち直し、着地している私を睨みつける。

 

 すると、飛燕は低空飛行でフィールド中を飛び始めた。やがて飛燕の速度は音速に到達し、誰の目からも追えないようになる。これこそが奴が魔物と称される所以。その翼であらゆる敵を切り裂き、その嘴であらゆる敵を刺し貫く。私も殺されかけた恐るべき技だ。

 

 だが、この戦いの始まりに述べたように、私と奴の差は歴然なのだ。

 

 飛燕はとうとうその翼で私を切り裂くべく向かってくるが、私はそれを最小限に抑えた動きで躱す。掠りもしなかったことに飛燕は驚愕を覚えるが、まぐれだろうと再度狙いをつけてやってくる。だが、更に私は凄まじい速さで突撃してきた飛燕を跳んで躱す。

 その後も私は飛燕の攻撃の悉くを躱し続けた。そして、私と飛燕の攻防が数十分以上行われ、とうとう飛燕の超高速飛行に限界が来た。明らかにスピードは落ち、息も絶え絶えな飛燕に対して、私は汗をかくことも息を切らすこともなく、悠然と佇んでいる。

 疲れ果てた状態の飛燕を一瞥し、私は終わりを悟り構えをとった。

 

「終わりだ。来い」

 

 その言葉に飛燕は、最後の力を振り絞り、今の状態で出せる最高速度で突っ込んでくる。私は向かってくる飛燕を【気配感知】で捉え、間合いに入った瞬間に絶技を放った。

 

「【秘剣・燕返し】!」

 

 全くの同時に放たれた三つの斬撃は、首、左翼、右翼を完璧に捉え、その全てを斬り落とし、再び燕は地に墜ちた。

 それを感触で察知した私は、布を解き、目隠しを解いた。

 

「刀身に歪みなし。まったくの無傷であった」

 

 完全勝利に酔っていると、飛燕の死骸が消え、ぽとりと何かを落としていった。拾い上げてよく見るとそれは琥珀色の石のようで、真ん中に燕の紋章が入っていた。取り敢えずそれをインベントリにしまいこむと同時に無機質な声がフィールドに響いた。

 

『スキル【燕の早業】を取得しました』

 

「またスキルを取得したか。重畳重畳」

 

 このスキルとアイテムは町に戻ってから確認することに決め、今日の修行を終えた私はそのままモンスターを蹴散らしながら下山した。

 

 

 町に戻って来た私はそのまま宿屋に直行し、受付を済ませ、部屋のベッドに腰掛けた。

 

「さて、今回の戦利品は如何程か。刀を振るうのに役立つものであれば良いが」

 

 早速戦利品の確認を始めることにして、飛燕の落としたこの石から見ていくことにした。

 

 ・燕の子安貝

【AGI +50】

 浄化回復:自身の状態異常を解除し、HPの3割を回復する。一日に5回使用可能。

 

 ほう、これはかなり良いアイテムだ。常々、HPの回復手段が乏しいと思っていたが、これがあれば日に五度が限界だが、回復できる。それに状態異常の解除というのも魅力だが、これの一番良いところはノーモーションで発動できることだ。戦闘の合間に発動できるというのは地味かもしれないが、実に助かる。

 このアイテムはどうやら装飾品に分類されるようなので、早速装備しておいた。

 

「次はスキルだが、思えばどちらも燕に関するもののようだ。まあ、燕を斬って手に入れたのだから当然と言えば当然よな」

 

 そんな呟きを漏らしながらその内容を確認する。

 

【燕の早業】……回避する度に、その戦闘の間だけクリティカル威力が5%ずつ上昇していく。

 取得条件……自分よりもAGIの値が上の相手の攻撃を、連続で20回躱す。

 

 ふむ、こちらも単体ではパッとしないが、他のスキルと組み合わせれば強力だな。特にこのスキルは私の戦い方に非常に合っていると言えるだろう。

 

 修行も無事に完了したし、戦利品はどちらも非常に優秀な性能であることに私は大層ご満悦である。明日は日曜だし、今日は月見酒と洒落込むとしよう。

 それにしてもゲームの中でも飲み食いできるのだから最近の技術は凄いと思う。そろそろドラえもんとか本気で作れるんじゃないだろうか。

 

 

 翌日、私が目覚めると運営から通知が来ていた。なんでも、一週間後に第一回イベントを執り行うらしい。内容は、ポイント制のバトルロワイヤルで、死亡回数や与ダメージ、被ダメージも評価に入るようだが、基本的にはプレイヤーを倒した数を競うらしい。それから上位十名には限定の記念品が贈られるようだ。

 

 イベントの内容を見終えると同時に、私の顔には笑みが浮かんでいた。

 参加者全員によるバトルロワイヤル、それはつまりこのゲーム中からプレイヤーが集められるということだろう。

 正直な話、ランキングにも限定の記念品にも興味はないが、ゲーム中のプレイヤーが集められるのだから、強者とも戦えるということだ。それは俄然興味がある。無論、強者との命の取り合いを楽しみたいという気持ちもあるが、それ以上に今の己の技がどれだけ相手に通用するのか試してみたい。

 剣聖を斬り、飛燕を倒して手に入れたこの技を持って刀を交え、激しい剣戟の末に勝利してみたい。

 欲を言えば乱戦ではなく、一対一の決闘が好ましいが、それを望むのは欲張りというものだろう。乱戦ならば乱戦で総てを斬り伏せるのもまた一興というものだ。

 

 兎にも角にも、一週間後に備えて更に力を磨いておこう。そのために、今日からはダンジョンボスにのみ挑むことに決めた。雑魚をいくら蹴散らしたところで豆粒程度の経験にしかならないが、ダンジョンボスのみを狙えばそれなりに力も付くだろう。

 会社については、この際なので溜まった有給休暇をここで消化する。ちなみに我が社は今時珍しいクリーンなホワイト企業なので、有給手当はしっかり貰えている。私が社畜体質なのは元からなので安心して欲しい。

 

 さて、憂いも絶ったところで、早速ダンジョンに向かおう。

 

 待ってろよ飛燕。今会いに行くからな! 

 




飛燕「来ないで」

白杖…目の不自由な方などが持つ、補助用の白い杖。


作者はイベントの追い込みがあるので次回の投稿はもう暫くお待ちください。
※4/19、最後の方を編集しました。
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