TSUBAMEを斬りたいのでSAMURAIになりたいと思います。 作:天丸
作者「うーむ、英霊剣豪要素入れるかどうか迷うなぁ。とりあえずガチャ回そ」
アサシン・パライソ NEW!
アーチャー・インフェルノ NEW!
作者「入れろということですね。分かりました」
ローマは来なかったよ……
その日、町の広場には多くのプレイヤーが集まっていた。
屈強な体と巨大な武器を持った荒くれ者から華奢な体と荘厳な杖を持った魔法使いまで、それはもう『
そんな人混みの中にまた一人、何者かが参入してきた。
その男は、紺を基調とした和装に雅な立ち振る舞いで周りの者を魅せる。広場にいる淑女達はその爽やかな横顔に見蕩れ、叡智を宿したようなキレのある双眸にときめく。
そして、腕に覚えのある戦士達はその流れるような無駄のない動きから冷や汗を流し、背中の異様に長い得物を見てそれが相当な業物であることを見抜くと身震いする。
その男はその場において良くも悪くも注目を浴びていた。その視線から感じられるのは羨望、情愛、嫉妬、畏怖。きっと彼こそがこの集団において最強の人間なのだろうと誰もが理解した。
そう、その男こそ誰あろう────私である。
肩慣らしに軽く飛燕を屠ってからイベント広場に来たら、ちらほらとこちらを見てる奴らがいたので勝手に脳内でナレーションしてみた。虚無感が凄いから二度としない。
それにしても何故か先程からこちらをちらちらと見てくる輩がいる。別に侍風の衣装などこのゲームでは珍しくもないだろうに。それにしても、彼等の視線がどこか憐れみを含んでいるのは気の所為だろうか。いや、気の所為ではない。
あ……あの大盾使いの目……。うっかりで死んでしまう間抜けを見るように生暖かい目だ。
同情の目だ……。「かわいそうだけどイベントが始まったら、運悪く瀕死になったところを躓いた少女にトドメを刺される運命なのね」ってかんじの!
まあ、何故そんな視線を此方に向けているのか不思議だが、もうじきイベントが始まることだし、そちらに集中しよう。
「ふむ、始まる迄もう暫し時間に余裕がある。ステータスの確認でもしておくとしよう」
今回は準備するのは装備だけで良いので最後にスキルなどを確認しておこうと思う。
ステータスパネルを表示させ、上から順に一つ一つ舐めるように確認していく。
この一週間、剣技向上とレベル上げの為に延々と飛燕に挑んだお陰か、レベルは鰻登りに上がっていった。剣技に関しても無駄な動きを殆ど消せるようになった上に、刀を振るう速度にも磨きがかかった。
それでも技のキレは剣聖の方が数段上なのだからあの人にはもう一生敵わない気がする。そもそも、NPCと比べる事自体おかしいのだろうが。
やる事も終え、待ちぼうけていると上空から珍妙な声が響いてきた。
何やら縫いぐるみのような仔竜がイベントの説明をしている。どうやらあれは司会進行役のようなものらしい。今時の若い子はああいうのを可愛いと愛でるのだろうか。社会人のおっさんにはよく分からん。
ルールを簡潔に纏めると、イベント用に用意したマップで三時間プレイヤー同士で殺し合って一番多い奴が優勝ということらしい。
少々違う気もしなくもないが些事である。
するとあの縫いぐるみ───どらぞうと言うらしい。漢字で書くとすれば
どうやらもう開始のようだ。折角なのでここはここぞとばかりにかっこつけてから行くとしよう。
「はてさて、己が剣技、どこ迄通用するか……試させて貰おうか」
『ッ!?』
最後の言葉だけ低い声で言ったら結構 強キャラ感出たなぁ。などと呑気なことを思いながら、私を含め全てのプレイヤーが光と共に消失した。
彼は知らない。
度重なる飛燕との戦いで、その剣はより敏捷に、その技はより精妙になり、剣聖と同等にまで至っていることを。
そのステータスが、レベルが、最早
そして、プレイヤースキルに至っては
そんな彼が発した言葉に、数人の上位プレイヤーが気圧されていた事を。
その事実を、彼はまだ知らない。
──コジロウのステータス──
Lv46
HP 38/38
MP 16/16
【STR 0〈+18〉】
【VIT 0】
【AGI 260〈+120〉】
【DEX 100〈+100〉】
【INT 0】
装備
頭【空欄】
体【剣聖の陣羽織】
右手【物干し竿:長刀術】
左手【空欄】
足【剣聖の袴】
靴【剣聖の草履】
装飾品【燕の子安貝】【空欄】【空欄】
スキル
【一意専心】【疾走】【千里疾走】【挑戦者】【超加速】【不屈の意志】【心眼(偽)】【透化】【宗和の心得】【模倣】【刹那無影剣】【燕返し】【気配感知】【燕の早業】
────────────────
「ふむ、ここは……森か」
光と共に体が消えたかと思えば、そこは広場ではなく鬱蒼とした木々の生い茂る森。こういった転移は何度か経験したが、やはり急に視界が変わるというのはいつになっても慣れない。
そんな事を思いながら私はその場から一歩下がる。すると、先程までいた場所に屈強な大男が両手斧を地面にめり込ませていた。【気配感知】でこの場に私以外の人間がいることには気付いていたので、躱すことは容易い。大男は躱された事に驚愕している様子で、一瞬、私を見失ってしまう。
その隙を見逃してやるほど私は甘くなく、刀を抜き、容赦無く素っ首にスルりと刃が通り抜ける。その後、数える間もなく、大男は光となって消えた。
「名乗りも無しに無粋……とは言えぬか」
そう呟きながらも、私の喉笛を狙う短剣遣いの突きを逸らし、滑るように袈裟から斬り落とす。同じように短剣遣いは光と消えた。
息付く暇もないとはこの事なのだろうが、私からすれば生温いの一言に尽きる。何方も一撃で仕留めようとするばかりで、二の太刀、三の太刀の事を考えていない、丸っきり素人の動きだ。
まったく、近頃のプレイヤーは同時に三つの斬撃ぐらい放てないのか。え、その理屈はおかしい?
それにしても数が多いな。【気配感知】で感じただけでもこの辺り一帯に数十人もの人間が潜んでいる。奇襲を仕掛けるつもりなのだろうが、同じ考えの人間がこうもいては隠密の意味がないのではなかろうか。
取り敢えず、斬ればいいか。
私は足に力を込め、大地を蹴り飛ばす。一歩の内に潜んでいた二人を斬り捨て、二歩の内に三人の首を飛ばし、五歩の内に半数まで数を減らす。
魔法も、矢も、突きも、薙ぎも、その悉くを紙一重で躱し、首を断つ。
後は語る迄もなく、一分にも満たぬ間にこの辺りは私を除いて無人となった。
「ふむ、ざっとこんなものか」
しかし、無駄を殆ど抑えたとはいえ、少しの無駄でも技のキレは一段落ちてしまう。この無駄を無くせば三十秒以下で事を成せただろう。やはり鍛錬あるのみか。
いや、それにしても弱い。もう少し手間取ると考えていたが、皆一太刀で逝ってしまった。余人よりも強い自覚はあったが、まさかこんなに呆気ないとは。
やはりそう簡単に強者とは出遭えないということか。
「ならば、此方から出向く迄よ」
このマップ中を走り回ってプレイヤーを辻斬りして行けば、いつかは強者にもかち合うだろう。そうと決まれば私はいの一番に駆け出す。大地を踏み締め、刀を振るい、興奮と共に駆け抜ける。
つまりどういうことかと言うと、いつものバーサークタイムである。
死んだプレイヤーだけが良いプレイヤーだ!!
お馴染みの良くないハッスルをしてから一時間程時が経過しただろうか。私はフィールドの広大さに驚いていた。
このマップ、広いだろうとは思っていたが、此方の想像を遥かに超えていた。何処まで行っても森、森、森。抜け出せたと思えば岩だらけの荒野、荒れ果てた廃墟。
イベント用のマップだからと甘く見たが、ここまで本格的に作り込まれていると知った時には、素直に感嘆の声を上げた。
その道中、辻斬りをしまくったせいか、かなりの数のプレイヤーに狙われるようになったが、無論、一人残らず返り討ちにしてやった。
またつまらぬものを斬ってしまった……。
現在、私は一際高い岩の上からフィールド中を俯瞰している。ここならば戦闘の激しい所も分かるというものだ。
今のところ最も激しいのは、森の北の方での炎だろう。先程から火の玉や火柱が立つなどして、あの辺り一帯火の海と化しているが大丈夫なのだろうか。あれ、どう見てもただの火事なのだが。
流石にあの中に飛び込むのは自殺行為なのでやらない。どう考えても辿り着く前に燃え尽きる。
他に誰か強そうなのはいないかと探していたその時、森の中を二つの影が駆け抜けていった。その速さは尋常ではなく、只者ではないと素人目から見ても分かる。
自然と私の足は、その二つの影の消えた方向へ向かっていた。
走る、走る、走る。
互いが互いを睨み合い、少しの隙も見逃さんと血眼になって睨み合い、互いの姿が木の幹に隠れた次の瞬間に鋼がぶつかり合い、甲高い金属音を発する。刃の鍔迫り合いにより、武器は悲鳴を上げる。
相対する二者、その内の女が刀を振り抜き、同時に後ろに飛んで距離をとった。
「おいおい、逃げるだけじゃあ俺は倒せないぜ」
「よく言う、先程から私のスキルの範囲外に逃げている男のセリフとは思えんな」
「ありゃりゃ、こいつは痛いところをつかれたな」
二人の男女、カスミとシンは軽口を言い合いながらもその視線は相手の武器から外れておらず、常に攻撃を警戒している。
それもその筈、カスミは既に刀スキルを発動させ、シンに浅い傷を負わせ、その脅威を充分その体に刻んでいた。故に、シンも最大限に警戒し、片手に装備した盾を構え、堅実に戦っていた。
もしここで勝負を急いて飛び込んでいれば、カスミは攻撃を盾で防がれシンに斬られるだろうし、シンが飛び込めば彼が攻撃するよりも速くカスミのカウンターで斬られるだろう。
互いに動けぬ膠着状態、それを破ったのはシンの方からだ。
「本当はもうちっと温存しときたかったが仕方ねぇ、奥の手を見せてやる」
溜息混じりにそう言うと、シンは自らの目の前に片手剣を構えた。そこにカスミは隙を見出したものの、飛び込んだ瞬間に身体中を
「へぇ、今 飛び込まなかったのは正解だぜ。そんなことしたら俺の【崩剣】の餌食になっていただろうからな」
シンがその場で【崩剣】と唱えると、その剣の刃が十に分かれ彼の周りを縦横無尽に飛び始めた。
「まだ俺の名を教えていなかったな、俺の名はシン。俺の【崩剣】はご覧の通り十に分けた刃を自由自在に操るスキルだ。お前の刃が一に対して俺の刃は十。精々 耐えてみせるんだ、なッ!」
シンが柄だけになった片手剣を振るうと、それに連動するように十の刃がカスミへと殺到する。カスミは何とか刃を刀で弾き、防いでいるが徐々に手傷を負わされ、刀も当たらなくなってくる。こうなっては最早ジリ貧である。
「そらそらどうしたァ! もう打つ手なしか!?」
相手は攻撃の手を緩める素振りもなく、この刃はカスミの急所を貫き、その刃を赤く染めるまで止まることはないだろう。
「……致し方ないか」
カスミは強めに刀を振るい、【崩剣】を出来るだけ遠くに散らし、納刀する。その流れるような一連の動きを見て、察せられない程シンは愚かではない。スキルが来る。そう直感したシンは盾を構えようとするも───既に手遅れだった。
「【一ノ太刀・陽炎】」
構えた直後に技は発動しており、シンの懐に瞬間移動したカスミは鯉口を切り、瞬時に抜刀すると共に一閃。瞬く間の抜刀術にシンは為す術もなくその身を斬り裂かれた。
「スキルを温存していたのはお前だけではない。あまりこの技は見せたくなかったが、お前程の剣士ならば見せるに値すると判断した」
語りながらも静かにゆっくりと刀を鞘に収めていき、最後に己が認めた相手に賞賛を贈る。
「私の名を教えていなかったな。カスミだ、覚えて逝くといい。【崩剣】のシン」
「……ああ、いいな。いい二つ名だ。お前程の遣い手にそう言われるのなら、剣士冥利に尽きる。だが、次は負けねぇ」
そう言い残し、短く笑いながら満足そうにシンは光に包まれて消えていった。
カスミは一息付き、彼との戦いの感慨に耽っていた。あれ程の剣士と戦う事はもうないだろうなと小さく微笑みながら、またプレイヤーを斬る為に足を踏み出そうとし───背後から聞こえてくる拍手の音に振り返る。
「いやはや、お見事。何とも気持ちの良い勝負であった。良いものを見させて貰った」
声を掛けてきた男はカスミのすぐ後ろの木の枝に腰を下ろしている。男はカスミと同じように和装に身を包み、その身の丈程の長刀を背中に背負っている。
カスミは【気配察知】のスキルを取得しているため、自身の周りに人がいれば否応にも気付く。しかし、あろうことかこの男の口振りからすれば二人が戦っていた時からずっと観戦していたらしい。
「……何者だ」
動揺を隠すように感情を抑え、あくまでも冷静な態度を装う。この時点で男が格上である事にカスミは気付いていた。ここまで近付かれても気付けなかったのがその証拠だ。だからこそ、心だけは上をいかなくてはならない。そうしなければ、万に一つの勝ち目も潰えるから。
「なに、ただの刀を振り回す事が取り柄の青二才だ。そう警戒してくれるな」
その姿に見覚えがないという事はこのゲームで名のあるプレイヤーという訳ではないだろう。という事は、このイベントで顔を出した隠れた強者。その腕がどれ程のものか皆目見当もつかないが、どうせ直に知ることになる。
「何用、と聞くのは無粋か。構えろ、相手になる」
「有り難い。手前は山に篭って燕相手に刀を振り回していただけ故、強者との勝負は久方振りでな。年甲斐もなく昂っている」
「ふっ、それは私も同じ事だ。まさか立て続けにこれ程の剣士に出遭えるとは。純粋なプレイヤーならば唾棄すべき展開なのだろうが、私としては寧ろ待ち望んでいたものだ」
「ふむ、何方も一本の棒切れに命を懸ける阿呆ということか」
「はっ、違いない」
そう、昂っているのは何もコジロウだけではない。シンという腕の立つ剣士を態々 相手にしていた時点で、カスミもどうしようもなく剣というものに魅入られてしまっている。
その証拠に彼女は今、笑っている。相手が自分よりも強いと理解して、万に一つの勝ち目があるかないかの相手だと理解した上で、彼女は過去最高に昂っている。シンに続いてこうも強者と立ち合えるこの幸運に彼女は感謝してもし足りない。
最早 イベントなど、ポイントなど忘却の彼方。今、彼女の脳内を支配しているのは圧倒的な闘争心。それ以外は放棄したも同然で、ただ目の前の強敵に脳のリソースの総てを注ぎ込んでいる。
「改めて、刀術遣い カスミ」
「我流 コジロウ」
「「いざ、尋常に」」
「「勝負!! 」」
向かい合うは剣姫と剣鬼。
此より起こるは万夫不当の遣い手同士による空前絶後の大一番。
果たして勝利を掴むは何方の剣か。
その戦いの火蓋が、切られた。
書いてて思った事。
ステータス盛り杉田智和。
あれ、カスミってこんなキャラだっけ?
作者は地の文を大袈裟に書くという悪い癖があります。気にならない方はこれからもそのままご愛読ください。気になる方はこれからは我慢して読んでください。
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