Warrior beyond despair   作:レオ2

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(`・∀・)ノオッスオッス
さしぶりの加筆。2話合体しました。では⊂('ω'⊂ )))Σ≡GO!!


迎合・初めての死闘 改

 土曜日 光輝宅

 

「……おはよう」

 

「おはよう」

 

「おっはよう!」

 

「おはよう」

 

「おー、おはよう」

 

「おはよう」

 

 

 

 光輝が挨拶したら父、姉、母、おじいちゃん、おばあちゃんが返して来た。光輝は少し眠そうな目を擦っている。母が光輝に話しかけた。

 

「今日は起きるの遅かったわね」

 

 光輝は普段は家族の中でもランニングする為に早く起きるほうである。しかし、昨日の愛美に嫌われた事がショックで(実際は嫌われてないのだが)中々寝つけなかったのである。光輝の寝る時間ランキングがあればぶっちぎりでワースト1位だっただろう。

 

「うん。ちょっと寝坊しちゃった」

 

「ふーん、そうなの」

 

 何故か母が微笑んでいるのが見え変な事を勘ぐられないように念を押しとく。

 

「そうなの」

 

 そう言いいつも通りのリビングを見回した。

 光輝は家族が大好きだ。よく心配してくれる母、勉強を教えてくれる父、普段はお調子者だが頭が良くて、弟思いの10歳くらい離れてる姉、よくお話してくれるおばあちゃん。そして自己防衛用の武術と剣道を教えてくれるおじいちゃんである。家には小さな道場もある。

 

 特に光輝はおじいちゃんとよく一緒にいた。教えられる時は厳しいがそれに伴い上がる実力が嬉しくて嬉嬉としてよく学んでいた。あの村田に殴られた時避けようと思えば普通に避けてカウンター浴びせる事が出来た。それをしなかったのは先生にこいつこんなやつですっていうの教える為っていうのと痛い目に合わせたくなかったというそんな優しさである。

 

「何か考え事でもしてたの?」

 

「し、してないよ」

 

 愛美の事で悩んで泣いてたのを知られたくなくそう意地張った。

 

「ふーん」

 

 ぶっちゃけると家族全員『あっ、愛美ちゃんの事だな』と察していたのだが悩んでる時は普段はしっかりしてるのだが愛美関連になるとポンコツになる光輝が可愛くて突っ込まなかった。因みに光輝自身は愛美の事は友達と思ってるが自分の思いには気づいてない。

 

「お、おじいちゃん、今日も稽古しよ!」

 

 母の視線が痛かったので話を変えた。露骨である。

 

「おう!」

 

「うん!」

 

「今日は愛美ちゃんに会わないの〜?」

 

 

 と姉が言ってきた。いじるのが好きなのである。そして光輝は少し頬を赤くしながら返した。

 

「毎日会ってる訳じゃないし.」

 

「へぇー」

 

「べ、別に良いでしょ!」

 

 

 

 そんな最後の賑やかな朝が過ぎていった。

★★★★★

 

 

 同日 夜7時頃 愛美宅

 

「じゃあ行ってきます!」

 

「行ってらっしゃい」

 

 星を見たいならもうちょっと遅い方が良いのだが愛美の認識は取り敢えず暗かったら見えるだろうというそんな子供っぽい認識なのだった。……実際子供なのだが。

 

「ご迷惑かけないようにね」

 

「う、うん。わかってる」

 

 そう嘘をつきながら光輝の家に行く振りをして高台に向かった。

 

★★★★★

 

 20分後 高台

 

「着いた〜。ふぅ、疲れたー」

 

 そう言って高台のベンチに座る。

 

「わあ、お星様が下にいた時より見える〜! 綺麗だな〜」

 

 そして思い返されるのは昨日の光輝の事

 

「……なによ、こんなに綺麗じゃん、光輝の嘘つき」

 

 愛美には知る由もなかったが光輝は昔に山の頂上付近でキャンプした事があり、その時の星空と比べたからあまり星見えないと言ったのでありその後に見に来たこの普通より多少高いだけの高台から見える星空では満足出気なかっただけである。

 

 まあ、それを言わない光輝も悪い。

 

「……光輝と見たかったな」

 

 そう無意識に言ってしまう。

 

「へぇ、君みたいな可愛い子にそう言ってもらえるなんてその子は果報者だな」

 

「だ、誰!?」

 

 バッといきよいよく振り向いていたのは1人の男性だった。

 世間的に見ればイケメンの部類に入るであろう顔とよくジムにでも行くのだろうか、引き締まった体型をしている人だった。

 

「待っ、待った待った! 怪しい者じゃないよ!」

 

 愛美の射抜くのような視線に思わずと言った感じでそう言って降参のポーズをする。

 

「えーと、座ってもいいかな?」

 

「……どうぞ」

 

 そう言われて隣のベンチに座った。

 

「……あの」

 

「ん? なんだい?」

 

「もしかして、天才科学者の笠木理玖さんですか?」

 

 と愛美は聞いた。この人は割と有名人だ。確か人間の体についての科学者で何か趣味で空手をやっていた筈だ。別に愛美が率先して見た訳では無い。光輝の家にお邪魔した時についてたテレビにこの人が映っていた。確かに大学は東京だったからここにいることも別段不思議では無い。

 

「そうだよ。いやー君みたいな可愛い子ちゃんにも知られてるなんて光栄だなぁ」

 

 言ってる事は完璧にやばいやろーである。そう直感的に感じた愛美は辛辣に返す。

 

「いえ、この前たまたまテレビで見ただけです」

 

「そうなのか」

 

「はい」

 

 また無言になったが笠木が聞いた。

 

「君がさっき言っていた光輝君ってのはどんな子なのかな?」

 

 愛美は少し不機嫌そうな声で返した。

 

「なんでそんな事聞くんですか?」

 

「君にそんなに思われてる子がどんな子なのか知りたいだけだよ」

 

「…………」

 

 愛美は言うか迷った。が、別に減るもんじゃないと思い言い出す。

 

「……同じ学校で同じクラスに通ってるクラスメイトです」

 

「へー、それだけ?」

 

 正直言うのもどうかと悩んだがこれも減るもんじゃないと思い言った。

 

「私虐められてたんです。この青い髪と目のせいで。『ガイジン、ガイジン』って言われて、どんなに違うって言っても聞いてくれなくて、もう泣くことしか出来なかった私を助けてくれたんです」

 

「ほう、かっこいいじゃないか。その光輝君」

 

 光輝が褒められて嬉しくなった愛美は笑って返す。

 

「はい! 私もそう思います。それにあんな事言ってくれた時は凄く嬉しかった」

 

「あんな事って?」

 

「私を虐めてた人は先生怒られて謝って来たんですけど、やっぱりまた虐められるかもしれない。そう思ってたら怖くて怖くて。そんな時に光輝にどうしたの? って聞かれて正直に言ったんです。『怖い』って。そしたら『愛美が危ない時は絶対僕が守るから大丈夫!』って言われて、そうしたらもう怖く無くなったんです」

 

 

 

 自分の誇りに思う話なんだろうか凄く誇らしげに語る。

 

 笠木の不敵な笑みに気づかずに。

 

 

 

「へぇー、じゃあさしずめ光輝君は君の王子様って事かな? 

 

「お、王子様って」

 

 一瞬で頬を赤くする。

 

「それでその王子様とは今日は一緒じゃなかったのかい?」

 

 愛美は暗い顔になる。

 

「……いえ、誘ったのに行かないの一点張りで。子供だけなんて危ないって」

 

「まあ、確かに子供だけでは危ないけど星を見るだけなら別に危なくないと思うけどなー」

 

「光輝はもう何年も前から世界中で起きている無差別殺人に狙われたらどうすんだよって言ってました」

 

 それを聞いた瞬間笠木の表情が変化した。所謂悪い顔である。

 

「……へー、でもその彼の言う事もあながち間違ってないと思うけど君はなんで言う事聞かなかったのかな?」

 

「だってそれが起きているのは世界中なんですよ? そんなたまたま日本、それもここら辺にいる可能性なんて殆どないのにビビる方がおかしいんです」

 

 沈黙の時間が過ぎて

 

「よいしょ」

 

 そう言って笠木は立ち上がった。

 

「帰るんですか?」

 

「ああ、探し人は見つかったからね」

 

「誰を探してたんですか?」

 

「それは今にわかるさ」

 

「?」

 

 分からないと愛美は思った。自分が来た時は誰もいなかったし、この人がここに来てからも誰かを探してる素振りを見せなかったからだ。しかしまあ、自分には関係ないだろうと思い会話する。

 

「そうですか」

 

「あー、そうだ。1つだけ言っていいかな?」

 

「なんですか?」

 

 笠木が近づいてくる。その時愛美は嫌な予感がした。

 

「君はさっきそんな無差別殺人者がこんな近くにいる可能性なんて殆どないって言ったね?」

 

「は、はい」

 

 愛美の体が嫌な予感で埋められていく。

 

「でもね、覚えといた方がいいよ、可能性を0にしない限り油断しちゃダメだよ!」

 

 そう言って勢いよく愛美をベンチに押さえつけた。

 

「な、何するんですか!」

 

「何って今君が言ったじゃないか! 無差別殺人の事をね!」

 

 そう言って笠木は狂気の顔になった。

 

「ハハハ! ちゃんと光輝君に言われた通りに来なかったら殺されずにすんだのにねえ!」

 

「え、う、嘘」

 

「君には残念だが本当何だよね。ひひひ!」

 

 愛美は恐怖で動けない。逆にこんな場面で動けた方がすごい。

 

「まあ君のエネルギーを貰った所でそんなに今と変わらないだろうから選ばせてあげるよ」

 

 そう言ってナイフを取り出した。

 

「これはね、ただのナイフじゃないんだよ。刺した人間の生体エネルギーを刺してる限り奪い続けるんだ。聞いた事ないかい? ほぼ皮だけの死体ってのを?」

 

 愛美は見た事はないが知っている。

 

「あ、あ」

 

「そうさ、あれは僕がやったんだ。僕の壮大な実験のためにね!」

 

「さ、さっきは。さ、探し人が見つかったって……」

 

 そう震える声を出して聞く

 

「あー、あれかい? それはね、君だよ」

 

「え、な、なんで?」

 

「次はこの町の誰かを殺そうと思ってたんだけどね、出来るだけ生体エネルギーを持ってそうな人をね。しかし、君は大人になったら美人さんになりそうだから君に急遽変更したのさ」

 

「な、何を?」

 

「簡単な事さ、君が僕のものになるかそれとも、ここで死ぬか。それを選ばせてあげるよ」

 

 小一にえらい事言うやつである。

 

「こんな事してても、誰かがすぐに来てくれるわよ」

 

 苦しそうに言う。

 

「残念だがこの高台はお昼ならいざ知らず夜になると殆ど人なんて来ない。既に調査済みだよ。そしてこの高台からの逃走ルートも調べてある。僕が何度も世界の低脳な警察から逃れてるを忘れてるのかい?」

 

 笑って希望を断つ。そして割と真面目に気持ち悪い顔で詰め寄る。

 

「さあ、どっちだい? 僕の女になるか……、ここで殺されるか。さあ、選べ!」

 

「光輝が……助けに来てくれる、はぁはぁ、もん」

 

「ハハハ! 来るわけないだろう! 行かないって言ったんだろう?」

 

「来る……もん。だから誰があなたの……女になるもんですか! はぁはぁ、私は光輝のお嫁さんになるんだもん!」

 

 そう無我夢中で叫んだ。

 

「そうか、ならば僕の崇高な実験のために死ねー!」

 

 ナイフが愛美めがけ振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こっちを見ろ!」

 

 振り下ろす瞬間そんな声が聞こえ笠木の視界を光で埋められた。

 

「く、な、何だ?」

 

 ダン! 

 

 何かが蹴られる音が聞こえ風きり音と共に笠木の視界は一気に上に向けられた。

 

「グワーッ!」

 

 笠木が吹っ飛んだ。少しじたばたした後吹き飛ぶほどの威力の攻撃したのは誰だと見る

 

「何だ、何が起きた!」

 

 そんな笠木の前にはこの高台の入口にあったドッヂボールが転がっていた

 

「な、な」

 

 驚いて前を見ると愛美の隣に笠木にとっては見知らぬ竹刀を2本背負って手に懐中電灯を持ってる少年が笠木を睨んでいた。

 

「だ、誰だお前は!」

 

「こう……き」

 

 愛美の顔も驚愕と安堵の顔で埋まっている。光輝が自分の危機に来てくれたのだ。乙女としては嬉しいに決まっている。

 

「きて、くれたんだ」

 

 光輝が優しげな顔で振り返った。だがその顔は安堵の色もあった。

 

「うん。良かった。間に合って」

 

 笠木が声を荒らげて聞いてくる。そりゃそうだ。もう少しデンキ人を殺すという快感を·····それも笠木基準で可愛い女の子の絶望しながら死ぬ様を見れたというのにそれを邪魔されたのだ。·····ぶっちゃけ言うならヤバいやつこの上ない。

 

「何だ、なんなんだお前は!」

 

 再び前を向きながら答える。その眼光は愛美に向けてたものとは180度違った。

 

「西沢、光輝!」

 

 光輝は彼にしては珍しく怒った顔になり言った。その迫力は並の小学一年生では出せない迫力だ。村田など足元にも及ばない。

 沈黙が場を支配して少したって動き出したのは笠木であった。

 

「なっ、お前は今日来ないんじゃなかったのか!」

 

 先程の愛美との会話を思い出しながらそう聞く。愛美も光輝の言葉を待っていた。愛美も何故光輝がここにいるのか全く分からない。何故なら自分がここに来る事を反対したのは他ならない光輝なのだ。

 

「いや、なんで来ないと思ったのかは知らないけど確かに最初は来ないつもりだった。だけど訳あってやっぱり来た。1つはただの嫌な予感。そしてもう1つは愛美のお母さんの電話だ」

 

「え、お母さん電話してきたの?」

 

 愛美がそんな素っ頓狂な声を出しながら聞いた。母には連絡は良いと言ったから母の電話がここに来る要因とは思わなかったのだ。光輝は目を笠木から離さず答える。

 

「ああ、電話来て取ったのが僕なんだけども挨拶もそこそこにいきなり迷惑かけたらごめんなさいね? って言われていきなりそんな事言われるから理由を聞いたらお前が家にご飯食べに行ったって言われたからどんどん嫌な予感が大きくなってくから。取り敢えずお前が嘘言ったのを報告して竹刀持ってこの高台にまで来たらこいつがお前にナイフを振り下ろそうとしてた所だったってわけで咄嗟にこのライトで照らして入口にあったそのボールを蹴ったって訳だ」

 

 そう理由を言ったら笠木が笑いながら言う。気持ち悪いったらありゃしない。

 

「ふっふっ、こいつなんて失礼じゃないか。僕を知らないのかい? この世紀の天才科学者の笠木理玖を!」

 

 だが光輝は即答する。

 

「知らん。僕はそもそもあまりテレビ見ないし見るとしても武術系のテレビしか見ない」

 

 そこ迄言った所何かどこかで見た事あるなともう一度少し見たら

 

「ああ、そう言えば1回テレビで見た事あるな。まあどうでもいいが」

 

 本当に心底どうでもいいと言う顔した。そんな光輝にプライドの高い笠木が我慢出来るはずなく

 

「き、貴様! さっさとそこをどいてその子を渡してもらおうか。最も君にはその後死んでもらうが」

 

 言ってる事は支離滅裂である。

 

 こんな奴と愛美は2人きりだったのか。気持ち悪いったらありゃしない。愛美を……俺の愛美を傷つけようとしてる奴に絶対に負けない……

 

「そんな事言っといて素直に退くと思うのか?」

 

「いや、思ってないさ」

 

 そう言って光輝めがけて走る。光輝はライトを左手に持ってるから左手は使えない。だが光輝は冷静に尚且つ大声で言った。

 

「愛美! 高台の下にある交番に行ってお巡りさんを連れてこい!」

 

 高台の下には交番がある。さっき光輝も目の前を通って通り過ぎる瞬間に中に誰かいるか見たが2人ほどいた。

 

「で、でも光輝は?」

 

 笠木は話してる間に近づいて右手に持ってるナイフで突きだした。だがその動きは雑くどこも洗練されてる感じはしなかった

 

「死ねーっ!」

 

「はぁ!」

 

 光輝は笠木の右の手首に左手の甲を当てナイフを逸らし、そしてがら空きになった腹に右の拳で一撃決めた。

 

「がはっ!」

 

 少し後ずさる笠木、光輝の一撃は小一から生み出される威力では無い。そしてそんな笠木を見ながら光輝は叫ぶ

 

「僕の事はいい! 早く行け!」

 

「で、でも!」

 

「良いから行け! 僕をを助けたいなら全力で走って呼んでこい!」

 

 早く連れてくる事が回り回って光輝を助ける事になる。愛美はそれに気がついた。

 

「わ、わかった!」

 

 そう言って出口まで走り振り返り光輝の背中に少し涙ぐみながら言った。その声は不安な声だった。

 

「死んじゃダメだよ?」

 

「僕は、いや。俺は死なない」

 

 そう一言言い合って愛美は駆けて行った。距離自体はそんなに無いが高台なだけあって坂道が割とあるから少し遅くなるかもしれない。

 足音が遠ざかるのを聞きながら光輝は2本の竹刀の内1本鞘から取り出し片手で構える。

 

「いやー、驚いたよ。まさか竹刀だけを持ってるから剣道だけをしていたのかなと思ったのに武道もしていたとは」

 

 そう獲物が逃げられ代わりにイラつく少年が目の前にいることにイライラしながらも早々に逃げなければならないが事にに追いかけられたらどっち道パーだ。ならここで痛めつけて追えなくした方がいい。道が入り組んでたりするが反対に走っていけばもう道路だからだ。

 

「武術系のテレビを見ると言ったろ。だったらそっちの道も行ってると考えるのが普通だ。自称天才の割に変な所で抜けてるな」

 

 そう小一の割に悪い顔をした光輝。そんな光輝の一言が笠木のプライドを傷つける。

 

「……言ってくれるじゃないか。君には絶望を与えないとダメみたいだな」

 

「生憎だがそんなもんは与えられたくないし、与えられない。俺がここでお前をお巡りさんが来るまで足止めするからだ」

 

「調子に乗るな!」

 

 その掛け声と共に突っ込んで来る。出される突きを躱すまたは受け流す。もう普通の小一なら致命傷をグサグサやられてる所だが光輝は渡り合う。しかし偶にカスってってカスった所から血が出て来る。光輝は一旦後退したが

 

「くっ!」

 

「ほらほらどうした!」

 

 笠木は光輝が後退したから自分が押してると勘違いして突っ込んだ。だが光輝が何も無く後退する筈なく

 

「くらえ!」

 

 そう言いながら投げてきたのは懐中電灯だ。笠木はいきなりのそれに反応出来ずに顔を手で覆った。

 

「なっ」

 

 目を隠し懐中電灯が顔にぶつかった。凄い音と共に懐中電灯が壊れ一瞬で周りは軽い明かりしか見えなくなった。そしてそうやって顔を守ったのが決定的な"隙"。がら空きの体に竹刀が叩きつけられた。

 

 何かの試合ならばいざ知らず俺……そして愛美の命がかかってるのに卑怯もラッキョウもない。……何かどこかで聞いた事あるセリフだから頂いた。

 

「がっ」

 

「まだだーっ!」

 

 そう言ってまた竹刀を縦に振るう。だが笠木も割と冷静に立て直して

 

 カっ! 

 

 そんな音と共に振り下ろされる竹刀がナイフで止められる。笠木の顔はそれはそれは憎悪になっていた。

 

「調子に乗るな!」

 

 元より大人と子供の戦いであり、その元々の力量差はかなりある。それが光輝が武道をやってると言ってもそうそうその力関係が変わる訳ではない。大人の笠木が光輝の右手の竹刀を弾くのは時間の問題だ。右手……の竹刀だけならばであるが。

 

「僕に楯突いた事をあの世で後悔するが良い!」

 

 そんな小物臭いセリフを吐きながら竹刀を弾いてトドメを刺そうとした瞬間笠木の右の腹部に強烈な痛みが走った。

 

「グハッ!!」

 

 思わず後ずさり痛みに耐えながら光輝を見た。

 

「はぁぁぁ!」

 

 光輝が2本(……)の竹刀を持って突撃してきた。

 

「な!? グハッ! がはっ!」

 

 無数の竹刀の嵐が笠木を襲う。顔面、腹、腕、ありとあらゆる場所が竹刀で叩きつけられる。笠木は何とかどれかを掴もうとするのだが痛みのせいで捕まえれなかった。だが徐々に光輝の力が……光輝からすれば出なくなっていった。笠木はそれで自分のナイフの事を思い出してニヤっとしながら行動した。

 

「ふっ!」

 

 がしっ! 

 

 その弱まった時を狙って左の竹刀を掴んだ。そして調子が良いみたいに高笑いする

 

「くっ!」

 

「ハハ、どうした力がどんどん弱くなってるぞ!」

 

「くそ、な、なんで力がでないんだ」

 

 そう思わず呟いた光輝に笠木はそう言えばみたいな顔をして言った。

 

「そうか、君には言ってなかったな。このナイフは僕の特注品でね、あの子に説明した時はこれが刺さってる間はその刺してる相手の生体エネルギーをとるって言ったんだけどね? 正確にはカスったりしても生体エネルギーをとるんだ」

 

「なっ!?」

 

 光輝は幼いが頭は良い方である。……まあ愛美の気持ちには気づいてないが。そんな光輝には笠木の言ってる事は分かる。

 

「ふっふっふっ」

 

 カスる度に生体エネルギーを持ってく事とはすなわち戦えば戦うほど光輝が不利になるという事。更に光輝はこの高台に来るまでに家からダッシュしていた。だからその分体力も無くなっていった。光輝が勝つ為には短期決戦が必要だった

 

「はぁ、はぁ。くそ、短期決戦じゃないとダメだったか」

 

「そういう事だよ!」

 

 そう言って竹刀ごと光輝を持ち上げナイフを突き刺そうと右手を突き出した。ギリギリで竹刀ごと離し躱そうとしたが左手腹部にカスった。光輝は掠った時表情を歪めたそして空中にいる間は時がスローモーションになった

 

「くそ! なっ、しまっ!」

 

 ドンッ! 

 

 笠木の左の拳が小さな体に入った。

 

 

 

「グハッ!!」

 

 そう言って吹き飛ぶ。その時に右の竹刀が手から離された。転がって倒れる。光輝の服は所々破れ血が出ている。笠木の力も弱まってるが故戦闘不能になる事はなかったが何度も掠ったりしていたせいでそのまま直ぐには立てない

 

「はぁ、はぁ、手こずらせやがって」

 

 倒れた光輝に近づき何度も殴る。

 

「がはっ! グハッ! かハッ!」

 

「僕に、逆らう、から、こうなるんだ!!」

 

 その絵はもう誰かがいたら悲鳴が上がる光景だった。夜だしまさかこんな所で起きてるとは誰も思うまい。

 

「はぁはぁ……」

 

 そしてとうとうナイフを振り上げた。

 

「君には一撃で死んでもらうよ。時間がないからね。じゃあ今度こそ死ねーっ!」

 

 

(ああ、僕は死ぬのかな。でも頑張ったから皆許してくれるかな?)

 

 スローモーションで振り下ろされるナイフを見ながらそんな事を思う。その瞬間に様々な思考が動き出した。

 残された家族、自分が死んだ後の家族の顔が浮かんだ。皆泣いている。悲しそうな顔で泣いている。

 そして愛美も泣いている。悲しそうな顔で泣いている。そして泣きながら愛美が離れて行く。

 

(ああ、こんなに皆を悲しませるのかな?)

 

 僕は親不孝の息子になるのだろうか? 6年間育ててくれたお礼も何もしないままあの世に行くのだろうか? でも·····愛美は守れたから良いのかな? 

 

『毎日お寝坊してるのかな〜?』

 

『名前で、呼んで』

 

『ありがとう、助けてくれて』

 

『死んじゃダメだよ?』

 

 光輝の走馬灯のように愛美とお話をするようになった頃を思い出した。あの後からでも笑い、悲しみ、何か変な事したのだろうか叩かれたりしたが嫌な気分ではなかった。最初見た暗そうな顔をした愛美よりも笑ってる愛美が好きなのだ。そして先程自分と愛美で約束したことを思い出した。笠木のナイフが迫る中光輝は目を見開いて

 

(俺は死ぬ訳には)

 

「いかないんだーっ!」

 

 顔を逸らしナイフを躱すと同時雄叫びを上げながら小さな頭で頭突きする。

 

「がはっ!」

 

 笠木はいきなりの反撃に反応出来ずに頭突きを食らった。そのまま思わず目を閉じる。だが光輝からすれば好機だ。

 

「ダリゃーっ!」

 

 そのままありったけの力でぶん殴った。 そのぶん殴りは笠木の顔面に見事に入った。

 

「グハッ!!」

 

 少し後ずさり、睨みつけてくる。鼻血が出ている。そして思いっきり叫ぶ。光輝は立ちながら答える

 

「しぶといんだよ!」

 

「そう簡単に、死ぬ訳にはいかないんだ」

 

 俺はそう血だらけの体で答える。こいつを逃がしたらまた誰かが死んでしまう。そんな事は絶対にさせない。そして光輝は皮肉げな顔で笠木に言う

 

「ハハっ……、何だよ。小一相手に大分手こずってるな」

 

「ならとっとと死ねーっ!」

 

 もう一度突進してくる。俺はそんな笠木を見ながら寸瞬で思考する

 

(勝負はあいつのナイフが本当に当たるかどうかの所で避けての一撃、これしかない!)

 

 憎悪の顔で走って来る。ほんとに武道家なのかと思うくらい傍から見れば思うがそんな事はどうでもいい。というより光輝からすればそっちの方が有難い。

 またもやスローモーションの世界が形成される。

 

(あいつと俺の身長の関係上100%の力であのナイフを刺すのならどうやっても俺の顔に刺すのがベスト)

 

 笠木はナイフを突き出した。コースは光輝の顔面に直撃コースだ。だが思いっきり腕を伸ばして来ているからカウンターには対応出来ない。それを光輝は直感で悟った

 

(まだだ、まだ、まだだ)

 

 そして笠木の顔が勝利を確信した顔になった。だが光輝からすれば隙だらけだ。だから 

 

(今だ!)

 

 ナイフスレスレで躱しながら光輝は小一故に小さい拳を握って

 

「はぁぁぁ!」

 

 強烈なアッパーが笠木に突き刺さった。笠木は一瞬白目むいて浮き上がった。

 

「かっ! は!」

 

 笠木は思いっきり背中から倒れた。が、光輝も体力での限界で倒れた。そのまま5秒ほど2人とも倒れていた。だが笠木は奥歯をかみ締めながらも立ち上がった。その執念を別の所で使えれたら良いのだが笠木はそうしなかった。

 

「よくも……、よくも……」

 

 そう呪怨を言いながら光輝に近づく。

 光輝は体力が尽きて動けない。そんな光輝に今度こそナイフを振り上げた

 

「はぁはぁ、くっくっく。今度の今度こそ死ねーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前何してる!」

 

 

 

 そんな声と共に笠木の視界は光で埋められた。この状況で言うべきではないがデジャブである。

 

「光輝!」

 

 2人のお巡りさんと一緒に愛美が帰ってきた。少し遅くなったのは説得が大変だったのかもしれない。笠木は露骨に慌てた顔になった

 

「く、クソ! 絶対にお前らを絶望させてやる!」

 

 そう言って逃走し始める。夜の中では分かりにくい道を通って逃げて行った。どこからそんな力が出るのだろうか? 

 

「待て!」

 

 2人のお巡りさんの内1人が追った。

 

「救急車は呼んだから、ここで待ってて!」

 

「はい」

 

 そう言ってもう1人も追って行った。そして愛美は

 

「光輝、光輝!」

 

 怪我人を全力で揺さぶっていた。

 

「痛! 痛いからやめて!」

 

 光輝がそう涙ぐみながら言う。内心は安堵で一杯だった。

 

「よ、良かった。良かったよ……、ほんとに」

 

 そう言って光輝に抱きついた。光輝はそんな経験が初めてだから·····愛美に抱きつかれた事は今までなかった。

 

「え、えと、その」

 

 そんな戸惑う声を出す光輝。

 

「う、う、う」

 

「……泣いてるの?」

 

 光輝はそう思わず聞いた。愛美はあの日以来笑う事が増えた。だから泣いてるのを見るのは久しぶりだった。

 

「当たり前……でしょ?」

 

 そう愛美は答える。その状態のまましばらくたってサイレンが聞こえて来た。

 

「ごめん‥なさい」

 

「……なんで謝るの?」

 

「だって‥ちゃんと光輝の言う通りにしてたら、光輝はこんな怪我しなくて良かったのに」

 

 まあ顛末だけ聞いとくなら確かにその通りなのだが多分というか絶対に光輝程心配性はいないだろう。世界中なのだから。·····まあ後に笠木が研究とかなんとか言って行っていた国ばっかりという事が分かったのだが。光輝はそんな愛美を慰める。

 

「こうなったのは僕の力不足何だから、愛美は関係ないよ」

 

「でも……」

 

「迷惑かけたって思うならちょっと寝させて?」

 

 割と真面目に眠い。もう疲れきってるからだ。今にも眠りに落ちそうだ。

 

「うん、わかった」

 

 そう言って光輝の頭を自分の膝においた。所謂膝枕である。光輝は何か力が出ないのをいい事にされ·····愛美が割と無意識にしたのだが……戸惑った声を出す。

 

「な! えっと」

 

「ふふっ、お母さんによくしてもらうんだ」

 

 そう愛美が泣き顔と笑顔を継ぎ足したような顔で言う

 

「そう、何だ」

 

「うん。おやすみなさい、光輝」

 

「うん。おやすみ。愛美」

 

 それが光輝と愛美の一旦の別れの合図であった。




お疲れ様でしたm(*_ _)m
(*´∇`)ノシ ではでは~

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