13号戦後です。
先程の激闘が嘘のように氷海のさざ波がたっている。そんな氷海に立っている者は1人、金色の髪を靡かせて少し複雑そうに自分の足元に浮いている人造人間を見据えている。人造人間からは所々機械音が鳴っていて人造人間が限界という事を知らせている。
その内立っている方が言った
「俺の勝ちで良いか?」
そう聞いた人……光輝は超サイヤ人2を解いた。逆立っていた髪が重力に従い元に戻った。人造人間……13号は光輝の言葉を聞きながら空を見ている。そんな空には何故か白鳥が飛んでいる。
そしてゆっくりと……悔しそうに言った
「アア……オマエの……カチだ」
極寒の氷海に浮きながらもその顔は寒がっている訳では無い。そしてゆっくりと言葉を紡ぐ
「負けたと言う……のに……何故か胸がスッキリとしている」
そう少しその口を微笑みに変えている。光輝はそんな13号を見下ろしながらゆっくりと口を開いた
「勝負ってさ……勝ったら当たり前だけど嬉しいし負けたら悔しい。俺の場合は負けたら皆無くなっちまうからそんな事考える余裕が暫く無かったけど」
俺は13号を見ながら言葉を紡ぐ。俺は人造人間が悪い人達ばかりだとは思ってはいない。そりゃあ17号や18号のせいでトラウマもあるけどだからと言って全員ヤバい奴とは思わない。
ユージオやアリスにユイちゃん、そしてアンダーワールドで出会った沢山の人達のおかげだ。勿論アンダーワールドにもどうしようもないクズはいたがそれでも俺はあの人達が好きだ。
「俺がその感情持ったのは仲間達のおかげだ。勝つ事だけが重要じゃない、人間なんだから負ける時だってある。負けた時は悔しかったし次勝つための努力をした」
17号や18号に負け祖父やレイン達に励まして貰った後、光輝は悟空に修行をつけてもらった。今では17号や18号に勝てる。
そして負けた事の悔しさがあったのはこの時だけじゃない。笠木に家族を皆殺しにされた時もそうだが「勝負」に限れば光輝はSAOにてレインと光輝の「師匠」には結構な回数負けた。勝ったのは最後の1回だけだ。
「お前は仲間の事を目的を遂げる為の道具だと思ってたのかもしれないけどさ……お前は仲間と一緒に戦ってた時の方がずっと強かったよ。戦闘力じゃなくて心の面で」
それは本当に思った事だ。シーラスによるパワーアップでは無く吹っ切れた事による進化は光輝が焦った程だ。
13号は仲間の部品を吸収しパワーアップした。それは元々プログラムされていた強化方法なのかもしれない。しかし合体した後にもパワーアップを果たしたのは間違いなく13号自身の底力だ。
13号は光輝の言葉に答えない。13号の体から機械音が鳴りバチバチと鳴っている。それは13号の限界を知らせているようにも見える。
「オレは……孫悟空をコロス為に作られた。だがそんな事に縛られず……戦う事がこれ程楽しかったとは……」
ただ戦う為の人形として13号達は作られた。そこに自分の意思はなかったつもりだった。プログラムされた通りに悟空を殺す事が自分の存在意義なんだと。しかし光輝との戦いや説教でその気持ちが揺らいだ。
そして命令を捨て戦った。結果は負けてしまったが命令を遂行出来なくて悔しいのでは無く勝負に負けて悔しかった。
「俺もさ、戦う事は誰かを守る為の手段。お前みたいな普通の人にはどうする事も出来ない奴らに対抗する為の手段として戦ってきた」
最初は笠木から愛美を守る為、そして櫂や楓達を守る為に修行していた。今思い返せば小学生がする様な事では……いや高校生以上でもする様な事でも無かった。
重りなんてものを作ってもらい自分の体を何度も壊しかけ限界を超えてきた。家族を守れなかったと言う懺悔が当時の光輝にはあった。流石にあの時程自分の事は責めていない。何故なら家族とは光輝が今背負ってる剣で繋がっている。キリト達との思い出も。
「でもな、戦いってそれだけじゃない。誰かを超えたいから修行する。戦いが好きだから戦う。誰かを守りたいから戦う」
最初は未来の悟飯、2つ目は悟空や絶剣のユウキ、3つ目はベジータやキリト。悟飯の場合は平和にして仲間達の仇を取るためにだっただろうが。
「戦う理由なんて人の数だけある。それ自体は否定しない。自分の利益の為に他人を陥れようとする奴なんて腐る程見たからな」
笠木やVRMMOを含めるとPoH達ラフィンコフィン、そしてALOの所謂横取りプレイヤー。VRMMOならばプレイの一貫としてはプレイスタイルという事で光輝は特に不満は無い。それがゲームというものだとキリト達に教えられたからだ。最もPoH達は現実と同じSAO内だったから憤然たる思いがあるが。
「でもそいつらは良い意味でも悪い意味でも自分に従っていただけ。それが嬉しい時もあればムカつく時もある」
後は言いたい事は分かるよな? と言う顔で13号を見た。13号はその顔を見て少しだけ口角が上がる。
自分の意思が無い人生はつまらない
さっき光輝はそう思ったし今も思っている。確かに誰かに従うだけなら楽だし考えないで済む。でもそれで自分の本当に欲しいものが手に入るかと言われたら首を傾けざるおえない。
「お前が最初からプログラムなんてされてなかったら良いライバルになれたのにな」
最初、敵として出会ってしまったからこんな状態になっている。それは悟空を殺すというプログラムのせいでもある。13号はそのプログラムをぶち壊したがそれがもっと早かったら……となったのだ。
13号はゆっくりとその手のひらを空へ向けた。大空を飛んでいる鳥にその手を向ける
「アア……そうだ……な」
そしてその手のひらはまたゆっくりと水面へ戻り光輝が13号の顔を見ると眼を閉じ安らかに……人造人間だが安らかに眠り始めた。
ドクターゲロが……正確にはドクターゲロのコンピューターが作った人造人間と初めて思いが通じあったと光輝は思った。
心中では何とも言えない気持ちになっている。
「お兄さん」
光輝は耽っていたが悟天のその声に後ろを向いた。少しボロボロな悟天とトランクスがそこにいた。
「その人は悪い人なの?」
「そりゃそうだろ。いきなり俺達を襲って来たんだぜ?」
悟天の言葉にトランクスが思った事を普通に言った。2人の言葉を聞きながらも光輝は少し寂しそうな顔をした。それでも悟天の問に答えた
「さあな。こいつの善悪は正直俺にもよく分からない。悟空さんを殺す為に動いてたこいつらだけど、プログラムされた人造人間13号から意志を持った人造人間13号になってたと俺は思う」
光輝はそう言いつつ13号の亡骸を背負って飛んだ。悟天とトランクスは顔を見合わせついてこうか悩んだが追った。光輝は氷河地帯を抜け草原まで来た。そして軽く穴を気合い砲で開けてその中に13号を入れた。そしてまた土を被せ墓標が無かったので自分の剣の1つを取り出し突き刺した。
「お前は強かったよ。お前は完全機械型だからあの世って概念あるのか分からないけど俺が死んだらまた戦おう」
悟空達の世界にはあの世という概念が存在する。天国だったり地獄だったり。生前の行動によって行き先が決まる。
13号が行くのは間違いなく地獄だろう。罪の無い者をこの世界に来る前に殺していたからだ。光輝が懸念したのは言っては悪いが13号は完全機械型、つまり生死は壊れたか壊れてないかという事になる。だからあの世に行ってるかすら分からないという意味だ。
俺は少しその簡易的な墓を見ていたが一息ついて2人に振り向いた。
「2人はどうするんですか?」
「俺達はこの世界をもっと回るつもりだぜ」
「うん!」
「そっか、俺はドラゴンボール探ししないとダメだからここで別れましょう」
俺は2人らしい答えだなと思いながらそう返した。悟天さん達は少し寂しげな表情をしたが直ぐに頷いた。そしてトランクスさんが思い出したように
「そうだ、ドラゴンボール探してるんだったら俺持ってるぜ?」
「え?」
光輝がそんな声を出した所トランクスが「はい」と言って差し出して来た。しかしそのドラゴンボールの星は黒かった。
「これは……」
「お前があの敵と話してる時に見つけたんだ。助けて貰ったお礼にやるよ」
「あ、ありがとう」
光輝はそう言ってその星は黒で星が6個のドラゴンボールを貰った。星が黒という事は……
(究極ドラゴンボールか)
地球の神が分離する前に作ったとされるドラゴンボール。本来の歴史なら銀河中に散らばる筈が歴史がくっついてめちゃくちゃになった弊害か幸運で地球にもあった。それをたまたまトランクスが見つけたのだろう。
受け取ったドラゴンボールを少し見つめた後、腰にある巾着へ入れた。そして悟天とトランクスに言った
「それじゃ、二人ともお元気で」
「うん! お兄さんも元気でね!」
「ばいばーい!」
その言葉に二人はそう返し明後日の方向に飛んで行った。二人を見送った光輝は後ろの墓を見た。
「俺も頑張るよ。お前にさんざん言っておいてくたばるなんて洒落にならないからな。……じゃあな、13号」
光輝はそう言ってその羽織を翻し13号の墓とは反対方向に歩いて行ったのだった。
★
ALO内 47層 光輝・レイン・セブンのホームにて
愛美は自分の足が地に着いた事が分かるとゆっくりと眼を開けた。主に赤に蒼、エメラルドの調度品が部屋を明るくする。光輝にレイン、セブンのイメージカラーで構成された部屋をぐるっと見渡し三人がいないのを見て少しシュンとする愛美。もしかしたらレインたちは光輝がどうしたのか知っているかもしれないと思ったからなのだが。
「えっとフレンド画面は……これか」
愛美はメニューを開きフレンドを探すページを開いた。そうしていたら唐突に後ろが発光した。ページを見ようとしていた視線をそちらに向けるとレインとセブンがログインしてきた所だった。二人も愛美に気が付いた。愛美はフレンド画面を消しつつ不安そうに聞いた
「あの……こんばんわ」
「うん、こんばんわ」
聞きたい事があるはずなのに思わず挨拶をしてしまった
「あの……お姉ちゃん。光輝の事何か聞いてませんか?」
それを聞いた2人は顔を見合わせ聞き返した
「愛美ちゃんにもメール来たの?」
その言葉に嫌な予感が加速する。愛美は頷きメールの内容を教えて貰った。曰く「暫くALOにも……もしかしたら結婚式にも行けないかもしれない。埋め合わせはいつか精神的に」
概ね愛美に送られたメールと同じだ。
愛美はその事を2人に伝えた。
「光輝君……また1人で無茶してるのね!」
そうセブンは無力な自分への怒りかはたまた単純に光輝へ怒っているのか声を上げた。光輝の強さは現実ならばそう簡単にやられるようなものでは無い。だがレイン達は知っている。そんな光輝でも力不足で負けて病んだ時があるのを。自分達の世界を基準にしたら光輝は強すぎるがタイムパトロール先に行けば負ける事も普通にある。未来の悟飯の時がそうだ。
そんな時、自分達は光輝を支える事が出来なかった。連絡手段が無かったのは言い訳には出来ない。辛い時、悲しい時、苦しい時に光輝から来てくれる程の信頼が無かったとも取れるし悪い言い方をすれば迷惑をかけても良いと思わせていなかったからだ。それは気持ちの面でも戦闘力という面でも自分達が頼りなかったからなのでは無いかとレイン達は思ってしまったのだ。そしてそれを証明するが如くグリームアイズにレインはたった一撃で殺されかけ光輝が更に病みかけた。
結果的にその時は過去の祖父の言葉を受け光輝は復活した。SAOからの仲間達じゃなくて家族の言葉で復活したのは当時は嬉しかった。しかし時が経つ事に思う。それは……
「私達は……本当の意味で光輝君の仲間になれてるのかなって」
そうレインは呟いた。愛美はその言葉を聞き訝しげにレインを見つめる。
仲間かどうか……光輝に言えば「当然仲間!」って答えるのは目に見えていると思ったのだ。何故ならSAOの中の出来事を教えてくれた時の光輝は楽しそう、そして嬉しそうに話してくれたからだ。オーグマーを介して見たSAOでも光輝は段々と周りの人達のおかげで顔が明るくなっていたのを覚えている。それまでが辛かったが。
その事を言えばレインは首を振った
「確かに光輝君は心の拠り所にはしてくれているのかもしれない。でも……私達は光輝君を守る事が出来ない」
そう悲哀の色を潜ませ言った。その言葉に愛美は納得してしまった。自分は光輝がどんなに罪を重ねても隣にいると決めた。何故そう思ったのか? 光輝の事が好きで……初恋を終わらせたくなんか無かったと言うのもある。どこぞのアニメみたいに「貴方の罪は私の罪」みたいな事を考えたのもある。
だが……それらは本来光輝の強さに多少なりとも近づけた時に言うべき言葉だ。中途半端な思いで言ったのならば絶対に挫折する。光輝は愛美を恋人として心の拠り所にはしてくれたのかもしれない。だけど……光輝が物理的にピンチの時、自分は助ける事が出来るのだろうか……答えはNoだ。
レインは少し自虚気味に言った。
「SAOの時は私達は光輝君と肩を並べて戦えた。私達にクリアさせる為のゲームだったから私達も戦う為の力があった。光輝君は正に一騎当千って感じだったけどね」
そう当時の事を思い出しているのか懐かしそうに言った。そして寂しそうな顔もした
「でも……現実の光輝君はどんどん強くなってもう……私達の誰も光輝君の強さには追いつけない」
愛美の世界の人々も同様だ。光輝は朱が交わればなんとやらでどんどんその力を身につけて行った。
サイヤ人になり悟空からは界王拳、バーダックからは超サイヤ人、そしてまた悟空からは超サイヤ人2、3へと進化して行った。独自の進化としてリコレクションブレイブもある。
光輝からすればそれらは”守る為”に必要な力だから得たと思っている。レインやセブンにキリト達、そして愛美や櫂達の為だ。だがそれは逆に言ってしまえば……
「私達にはもう戦う力が無いから」
SAOはもう1つの現実だった。そしてそこで得た力は確かにあの世界で自分達を強くしてくれた。だけど今のレイン達には……現実のレイン達には戦う力何てものは無い。そのもう1つの現実のSAOは終わり正真正銘の現実へと戻ってきたのだから。
自分達の身を守る力が自分達には無いから光輝は戦いの頼りではなく心の拠り所としてだけで自分達を仲間と言ってくれるのではないかと思ってしまうのだ
──―戦力では無く戦う為の理由として自分達がいるのではないか
そう思ってしまっている。実際タイムパトロールになったのはレイン達の世界を存続させる為の条件と聞いているからその可能性は普通にある。
しかしそう考えるとショックな事がある。それは……
「光輝君がタイムパトロールしてる中ですっごく落ち込んでた時の事は知ってる?」
愛美はまだSAOの思い出しか見ていない。その思い出すらまだ途中なのだから未来の悟飯の時の事は知らない。なので首を振った。レインは「1週間しか無かったもんね」と納得の声を出して知ってる限りの事を話した。
ある世界へとタイムパトロールに向かった。そこで出会った人の境遇が自分と似ていたから親近感が湧いた。そして人造人間達との激闘、その果ての事を。
愛美はその出会った人と言うのが誰か直ぐに分かった。
(確かに……未来の悟飯は光輝と似ている)
夢を半ば諦め貪欲に修行するのは確かに重なった。そしてそこに至るまでの経緯も。そんな未来の悟飯と光輝は触れ合えばどう思うのか? 言うまでもなく分かる。悟飯を守ろうとしたはずだ。自分と似たような人を光輝が放っておく筈がない。例えそれが正しい歴史だとしても。
しかし光輝は悟飯を守れなかった。挙句の果てに自分の気を光輝に渡しその命を散らした。その死を目の前で見た光輝が壊れるなんて目に見えていた。
「あの時光輝君は……私達を頼ってくれなかった」
そう悲しそうにレインは言った。光輝は心配をかけたくなく誕生日を平和に迎えて欲しかったからと自分に言い訳してレイン達との連絡を絶った。
裏を返せば光輝はレイン達を頼らなかった事になる。唯一の心の拠り所だった筈なのにだ。つまりあの時は……光輝は心の拠り所にすらしてくれなかったという事だ。だから仲間として……姉として自分達の存在意義があるのかもう分からなかった。
「時々思うんだ、私がまだ光輝君と一緒に戦える位強かったら光輝君は1人で抱え込まないんじゃないかって」
肩を並べて戦う事が出来たら光輝はもっと頼ってくれるのではないか? と思うのだ。自分が同じ土俵に立てないから光輝は頼ってくれないんじゃないかと。
愛美はそんなレインに声をかける事が出来なかった。今では愛美よりレインの方が……SAOの人達の方が光輝と長く接しているのだ。そんな人達がそう思うならそうなんだろうと。
(光輝……)
勿論、レイン達が平和に生きるのが光輝の願いであり戦っているのは分かっている。グリームアイズの時が良い例だ。レイン達の平和を光輝が守った。光輝としては強くなるのは色んな意味で当然だと思っている。同時に願うのはレイン達がもう命懸けの戦いに行かず平和に過ごしてもらう事。自分の事なんて良いから平和に生きて欲しい……極端な話そう言う意味なのだ。それがレイン達の為だと光輝は疑っていない。
「頼られないのに……仲間って言えるのかなって」
その言葉に愛美は答える事が出来なかった。
お疲れ様です。
仲間と合体した13号への言及とレイン達の仲間という言葉の悩みです。
自分達はSAOの後は光輝に守られてばかり、挙句の果てに心の拠り所にもしてくれてないのではないか?という疑問。
日常茶飯事で迷惑をかけるのはダメだけど本当に辛い時には迷惑をかけて欲しいというやつ。そうされる事で初めて仲間って言えるんじゃないかと考えるレイン。レインに限らずキリト達も思ってますがね。
(*´∇`)ノ ではでは~