「う、ん」
光輝は昨日の愛美の言葉の後、嬉しさの涙を流し続けいつの間にか寝ていた。それでも手紙は濡らさないように大事にタンスの上に置いといた。そして光輝は今起きて昨日の手紙の事をまた考えてタンスの上の手紙を取ってもう1回読んで見る。また涙腺が緩んで来てるが我慢し読み終えた。
「またね、か」
そして……
(大好き……)
光輝は家族からは何度も好き好きと言われた事がある。それが嫌だと思った事はないし嬉しかった。だけれども·····今の感情はそんな嬉しさとは違うベクトルの嬉しさであった。今まで家族以外の異性に·····ていうか家族以外には好きなどと言われた事がない。だからこんな感情になるんだと思っていた。光輝が手紙の事考えてたらドアをノックする音が聞こえた。光輝は慌てて手紙を丁寧に入れ物に入れて棚に戻しながら言った。
「は、はい。どうぞ」
「失礼します。光輝君おはよう。気分はどうかな?」
その声と共に入ってきたのは櫂さんだった。来るの早いな。病院に泊まっていたのだろうか?
「はい。特に悪くはないです」
「そうか、あんな話した後だから気が滅入って寝れないんじゃないかと思ったけど杞憂だったみたいだ」
そう言って櫂さんは首を竦めた。まあ確かに笠木の事を考えなかったと言ったら嘘になるがそんなのは愛美の手紙に比べればどうでもよくその内捕まるだろって思ってたから寝る前はあまり考えなかったな。そしてただ気になった事を聞いた。
「櫂さんはここに泊まったんですか?」
「いや、病院の近くに家があるんだ。急患とかあったら直ぐに駆けつけられるからね」
「成程」
僕の予想は外れたみたいだ。残念。それはさておいてちょっと恥ずかしいけど聞いてみよう。櫂さんは年上だからきっと良いアドバイスをくれる筈だ。
「あの……、櫂さんって好きな人いますか?」
「どうしたんだい、藪から棒に」
「えっと、そのちょっと気になって」
「そうか、それで質問だね。うん、いるというかもう僕は結婚してるよ」
「えっ!」
そう思い思わず櫂さんの手を見た。確かに指輪があった。昨日は全然そんな素振りなかったから分からなかった。
「ははは、そんなに驚くことかな?」
「あっ、えっと。すいません」
「大丈夫だよ、初めて会う人にあってその事行ったら皆似たような反応だから」
「そうなんですか」
「うん」
「じゃあ、その.」
その言葉で止まった僕の言葉に? ってな感じの顔の櫂さんが見てくる。なんかやっぱり恥ずかしいよ。
「な、何でその人を好きになったんですか?」
ちょっとビックリした顔で見られてる。まあ自分でも何聞いてんだと思わない事もない。だが今の自分には重要だと思ってたりする。だってお姉ちゃんに彼氏なんていなかったしお父さんとお母さんはまだ来てないしおじいちゃんとおばあちゃん何て何で結婚したんだろうと思う程性格は優しいという以外は逆だった気がしたし。櫂さんは腕を組んで少し考えながら言った。
「うーん、そうだね。分からない」
「え、何でですか?」
少し落胆して聞く。
「僕と彼女の場合は無意識だったんだ。いつも小さい頃から一緒にいてそれが当たり前だったんだ」
櫂の奥さん·····名を楓と言うが2人は所謂幼なじみの関係であり紆余曲折画あり去年結ばれ直後に娘が産まれた。
「そう、ですか」
「何でそんな事聞くんだい?」
言うか迷った。正直に言うなら恥ずかしいけどそれでもこの人なら別にいいかなと思い言う事にした。僕は手紙を取って櫂さんに向いた。
「……その。愛美の手紙の最後に……」
そう言って手紙を櫂さんに渡す。それを読む櫂さん。·····だんだんニヤっとしているのは気の所為かな?
「……成程。良かったじゃないか。好きだって言って貰えて」
やっぱりニヤっとしている。ただ問題はそこじゃない。嬉しいのなんて分かってる。けど·····僕は友達だと思ってたし·····プール行ったり映画行ったり近くの公園とかクッキー作りを一緒に教えて貰いながらしたり
「そこは普通に嬉しいんです。でも、僕はどうなんだろうって思って」
「というと?」
「だって今までは愛美の事は友達って思ってました。でも、その……」
「?」
「もし僕のお父さんとお母さんみたいな関係みたいになっても上手くできるのかなと思って」
はっきり言って小一で持つ悩みとしてはどうかとは思うが恋は盲目と言うし光輝もそんな事を気にしていない。光輝は両親がどう出会ってどう結婚したのか知らないと言うよりあんまり興味がなかった。2人が互いが好きで夫婦、これで充分だったからだ。だけれどもいざ自分がそんな状況になったら頭が変になってまともな事すら考えれなかった。だから他人頼りしたのだ。それも信用出来そうな櫂に。そんな櫂はそんな早計な光輝にふっと笑った。光輝は何でなのか分からず困惑しながら聞いた。
「な、何ですか?」
「いや、もうそういう事考えてるんだなと思って。それはちょっと早いと思うけどね。でも僕はね? 結婚するなら一緒にいて安心出来る人が良いと思うんだ。どんなに美人やお金持ちでも結局お互いの相性が悪かったら時間の無駄だと思うから。でもその点君はもう答えを出してるんじゃないかな?」
櫂は光輝も愛美も互いが互いをどう思っているのか分かっている。愛美の気持ちは手紙の通りだろうし光輝だって命を懸けて愛美を守ろうとしたのだ。それもただ嫌な予感と母親の電話だけで愛美の所に駆けつけて死闘をしたのだ。そんな必死になる光輝が愛美をどう思っているのか何て一目瞭然だ。
「え?」
しかし光輝はまだよく分かっていないようである。櫂は穏やかに続けた。
「だって君は愛美ちゃんとの生活を想像したんでしょ? それに君はよく愛美ちゃんと一緒にいた。それは愛美ちゃんと一緒にいるのが安心したからなんじゃないかな?」
櫂も妻といる時は安心するし幸せだ〜と思う。それが結婚するのに1番必要な感情であると櫂は思っている。光輝は愛美との思い出を思い出していた。姉に2人して我儘言って映画連れて行って貰ったりまた姉に2人してねだってプールや山に連れて行って貰ったり。2人で少し遠いショッピングモールまで行ってはぐれてしまってショッピングモール内を泣きながら互いを探したり·····愛美がいれば安心したしいなければ不安になったし·····というより泣いてたし。それがもう答えだ。
「そう、だったんだ」
「うん、そうだと思うよ」
お互いにその後は静かになった。場が沈黙になって5分くらいたった。その間黙っててくれた櫂さんが聞いてきた
「そういえば」
「はい?」
「あの後ご家族の方は来られたんかい?」
その事で思い出して言った。·····決して忘れてた訳じゃない。うん。
「あっ、その事も言おうともってたんです。寝てる間は分かりませんけど多分来てないと思うんです」
「えっ、それはどうして?」
そう聞かれて棚の上の花を指さす。それでわかったようだ。花は昨日よりも色あせてるから必然的に水が変えられてないって事になるから。
「おかしいな、普通なら飛んでくるのに」
家族が意識不明から脱したなら飛んで来るはずなのに来ないとはどういう事だ? と櫂は思った。用事があるのか? まさか旅行に何て行っている訳ないだろうし。光輝は少し厳しい顔をしながらも言った。
「なんか、嫌な予感がします」
「僕も同感だよ。流石に遅すぎる」
そう櫂の見解も聞き光輝は考えてた事を聞いた。
「……今日家に帰ってもいいですか? どうせ明日帰れるはずだったんでしょ?」
「……わかった。ただし僕も行く。それが条件だ」
光輝は恐らく立ってもふらふらだ。まともに歩けるかすら分からない。その位弱っている。勿論鍛え直せば前のように戻れるから問題ないがそれは未来の話であって今の光輝はふらふらだから櫂が付き添いという訳だ。光輝もそう分かったのか頷いた。
「はい、分かりました」
「じゃあ、すまないが今日の夜で良いかい? まあ、その間に来たら来たでいいんだがね」
少し安心するように言った。
「分かりました」
「じゃあ最終検査もしないといけないから準備してくるよ」
「はい」
そう言って櫂さんは出て言った。1人になった病室であの時のあいつの言葉を思い出してた。
『お前らは絶対に絶望させてやる!』
こんな内容だったはずだ。
(まさか、な)
周りが暗くなり街灯や家の電気がつき始めた夜、病院の駐車場にて櫂さんの車の前にいた。
「じゃあ光輝君良いかい?」
「はい。問題ないです」
荷物を持ちながらそう返す。結局夜まで家族は誰も来なかった。そのせいでどんどん嫌な予感が広がっていった。昼間の内に警部さん達がまた来たが進展は特になかったらしい。僕が立てた予想は結局話さなかったそうだ。僕もそれで良かったと思う。それと昨日言い忘れてた事で僕と愛美に護衛さんがついてるらしい。どうりでなんか病室の前に誰かいたなと思った。因みに愛美にはFBIがつくそうだ。まあアメリカの人も殺害されてたからな。まあそれはさておいていよいよ病院を出て櫂さんと家に帰る事になった。櫂さんの車に乗り込んだ。車の種類は分からないが蒼と白のスプライト入ってかっこいい車だと思う。
「それじゃあ行くね」
「はい」
そう返事して家に帰るのだった。
家の近くの駐車場に車を止めてこっからは歩く。まだ身体は痛いし重いがまあ距離は短いから大丈夫だと思う。本当は家と病院は割と近いからリハビリの意味も歩きでも良いって言ったんだけど却下された。護衛の人も車を降りたから歩き出す。ちょっとしたら家が見えてきた。しかし
「電気がついてない? 何で?」
光輝はふらふらな体を無理やり動かし走り出した。何度も転けそうになるが体幹を駆使して耐えながらインターホンの存在も忘れてドアを叩いて少し喉が痛いがそれさえ忘れて必死に叫んだ。
「おじいちゃん! お母さん! 皆開けて!」
しかし答えはなかった。鍵は愛美を助ける為に慌てて家を出て行ったから持っていない。櫂達も追いつきインターホンを鳴らすが返事がなく光輝は不吉な予感が加速した。
「光輝君鍵は?」
「ないです! 持っていかなかったんで」
「どこか入れる場所は?」
ないならもう無理矢理入るしかない。勿論全員出かけてる可能性だってあるが車もあるし何か少し変な匂いがしていたのもある。そしてその匂いは医者の櫂と警察官の護衛には馴染みになってしまう匂いだった。
光輝は急いで庭の窓に回った。光輝の家は1階に所謂リビングと祖父母の寝室と両親の寝室が繋がって割と広い家になっている。2階には姉の部屋と光輝の部屋がある。そして光輝は庭の窓から中を見れば·····
「え……」
光輝はそんな理解不能な声をあげた。光輝が見た光景は·····父と母であっただろうほぼ皮だけの死体だった。そんな非現実的な光景に光輝は呟いた
「おかあ……さん? おとう……さん?」
光輝は何故か開いている窓から入って生死を確かめようとした。櫂はこれ以上光輝に見せたら駄目だと即座に考え光輝の腕を掴もうとしたが光輝は無意識にそのホールドを避けて膝をついて父と母を触った。だが肉がなく·····骨が直接感じられる感触で·····そして筋肉の縮小のせいで飛び出ている目を見て現実だと知らせて·····
「あ·····ああ……あ」
「……! 光輝君他の方達は?」
と護衛の人が言って櫂は余計な事言うな! という顔をしたが光輝は反射的に急いで駆け出した。隣の部屋にいるはずのおじいちゃんとおばあちゃんの部屋に飛び込んだ。あったものはおばあちゃんだったであろう死体だけだった。状態はさっきの父と母よりも酷かった。元々筋肉がそんなに無かったから余計に酷く見える。光輝は今更のように口元を抑えて何かが込み上げてくるのを必死に耐えた。
「あ、あ」
光輝は目だけで祖父を探して部屋にはいないととぼとぼと櫂の制止を聞かずに2階に上がる為の階段の所にやってきて·····涙腺が崩壊した。感動などではなく大切な人達がいなくなったショックの涙でありこんな状況が訳分からない。最後に光輝が家族に会ったのは愛美を助ける為に晩御飯いらない! と言って飛び出した時のが最後だ。その時は皆元気だったのに·····。祖父はいた。3人と違って血だらけで倒れている。
「あ、あ。おじい……ちゃん」
光輝が話しかけたが返事は無く冷たかった。呆然と祖父を見ていたが
(お姉ちゃん!)
姉の部屋は上だ。犯人はもしかしたら自分1人の一人っ子だと思ってくれたかもしれない! と一縷の望みを賭けて階段をふらふらで登って残ってる力でドアを強引に開けた。だが·····希望の光景では無く·····両親や祖母と同じように変わり果てた姿になっていた。光輝はその光景を見た瞬間膝をつき頭を抱え床に叫んだ。
「ああああああああぁぁぁ!! 」
「光輝君!」
櫂が声をかける。今すぐここから光輝を離さなければ壊れてしまうと感じたのだ。だが光輝の小さな体のどこにそんな力が残っているのか引っ張ろうとしても全く動かない。姉の骸を見て泣き叫び·····徐々に目が変色し始めていた。だが光輝はそんな変化に気づかない。気づく余裕などある筈がない。猛烈な吐き気と劣悪な感情が体を支配している。櫂の声など届いてない。
(何で、何で何で何で!)
そう何度も自問する。だがそんなの分かる筈がない。何で自分の大好きな家族がこんな事にならなければならないのだ! 光輝は両手を握りしめそこから爪のせいで血が出てきているがそれにも気づかない。櫂は止めさせようとするが止めれない。そんな時光輝は呆然と立ち上がりとぼとぼと足取りが最早ゾンビのそれと同じで歩き出した。そして階段を降りた所でそれに気がついた。それは録音テープだった。光輝は制止を聞かずすぐ様再生した。
『ハイっ!! これを聞いてるって事はもう君はこの家に帰って来てるって事だね!? そんな君の為に良い事を教えてあげよう! ヒヒヒ! 今から君の家族を殺してくるよ! よく聞いててね!? 因みに今は3月2日午前2時だよ!』
2人が息を飲んで聞いている。俺は黙って聞く、がそれからは笠木·····このクズ野郎の声は聞こえず代わりに恐らく窓に空いてる穴を空けてる音が聞こえそれが終わったあとは鍵を開ける音が聞こえる。家はおじいちゃんとおばあちゃんが建てたって言ってたから防犯はザルだ。それが牙を向いた。そしてまずは何かが刺す音がして呻き声が聞こえた。位置的に多分母だろう。恐らく口を押さえられてるんだ。そして小さな呻き声が聞こえなくなった。
また刺す音がした。今度は父だろう。父も呻き声を出すが押さえられて大きい声で叫べず聞こえなくなった。
それから隣の部屋の襖を開けた音が聞こえそして今度の刺す音は小さかったから呻き声もそんなに大きくなかったがその時
『お前何してる!』
祖父の激昴の声が聞こえ布団から立ち上がった音が聞こえた。だがクズ野郎は慌てる素振りも無く
『あらぁ、起きちゃったみたいですねぇ? まあ良いでしょう』
『き、貴様ぁ!』
そう言って恐らく掛けていた真剣を取ったであろう音がした。俺が産まれる前からある真剣でおじいちゃんはよく手入れして隣からよく見ていた。
『おう、怖い怖い。低脳の奴らは直ぐに暴力的な手段に出るから困る』
自分の事は棚にあげてそう言う。自分が同じ事してる自覚は笠木には無い。自分がやれば正義となり反する者がやれば悪となる。それが仮面が外れた笠木の流儀である。しかし一周まわってダサい。それから何か自信があるのかやけに饒舌だ。
『しかし。私はもう負けませんよ? 貴方のお孫さんにボコボコにされた時のようにはいきません』
やはり根に持っていたらしい。
『何?』
そう言って真剣とナイフがぶつかりあう音が聞こえ場所を移動してるだろう足音が聞こえ恐らくおじいちゃんが階段前に来た時に会話が再開した。
『お見事ですねぇ。あの孫ありにして貴方ありって感じですね? ですが私は負ける気はしませんよ?』
そう馬鹿にしたように言ってゴソゴソと音がした。
『何だそれは?』
『低脳の貴方の為に教えてさしげましょう! これは今まで奪ったエネルギーを一部凝縮したものです!』
『な、なに!?』
祖父が驚愕した声を出す。
『まあ、貴方ごときに使うつもりはなかったんですがね。あなたのお孫さんの時は何時もは不意打ちで殺していたので使う必要もなかった、そもそも僕の身体が耐えられなかった使わなかっただけですがね? だから持ってなかっただけですが、想像以上に貴方お強いので使わせて貰いますよ?』
本来肉体が耐えられるか分からないが欲張らなければ本の少しでもパワーアップを果たす事が出来ると直感的に悟った祖父は
『させるか!』
『ふっ!』
キンっ! とそんな音が聞こえた多分クズ野郎がナイフを投げそれを真剣で弾いたんだろう。そして何かを噛む音がしそして
『ぐっ!?』
祖父の唇を噛み締めたような声が聞こえた。それはパワーアップさせてしまった自分への怒りかどう戦うかの思考が入り交じった声だったのかもしれない。せめて姉の麗華だけは殺させはしないと。
『ハハハハハ! 素晴らしい! 何だこのみなぎる力は』
『くっ!』
『キエェー!』
そんな奇声を上げながらドタドタと音がし
『かハッ!』
強烈な一撃だったのであろう。いくら鍛えていても年齢に伴う肉体の劣化は簡単には止められない。おじいちゃんは多分この一撃で……
『ふぅ、汚い血がついてしまったな。それに勢い余って殺してしまった。がまあいい、あとは小娘だけだ。まあ命乞いをして僕に従事するなら殺すのは勘弁してやろうと思うがな』
クックックと言いながら階段を上り始めただろう音がするが直ぐに
『あ、あんたは! な、おじいちゃん?』
そんな姉の声が聞こえた。
「おねぇちゃんにげて……」
そんな事を言っても2階にいる姉の骸が答えなのだから意味は無い。だが光輝はそう言わずにはいられなかった。そして笠木が階段を上がる音が聞こえた。
『隠れても無駄だよ?』
ダンダンと音がする。多分ドアを閉めたんだ、でも……
ダンっ!
常識外のパワーを手に入れた笠木には意味をなさなかった。
『ひっ!』
そんな姉の怯えた声を聞き光輝は拳をめいいっぱい握りそこからまた血が出てくる。怒りと憎しみと後悔と·····色んな感情が訳もわからず蠢いて……それでも録音は聞き続ける。
『ほう? 可愛いじゃないか?』
『あんたに褒められても全く嬉しくない』
『良いのかな? 僕にそんな口聞いて?』
『ぐっ!』
『選ばせてあげるよ。僕の女になるか……、死ぬか』
笠木がこんな事をしているのは光輝の当てつけであり自分の道を邪魔された事による復讐だ。もし姉が自分に従順になった姿を見せつければそれはそれで光輝は苦しむと考えたのだ。
「お姉ちゃん……」
『断固拒否するわ!』
そんな姉の祖父譲りの毅然とした答えが聞こえ苛立ちがともった声で言った。
『そうか、ならば死ね!』
姉は光輝と違って武道などやっていない。小さい頃から父親譲りの勉強の方がどちらかと言うと好きだった。それでも運動はしていたが女性故の非力さで止めることは出来ずに姉の苦渋の呻き声が聞こえ
『……こうきはい……きて』
そんな言葉を境に静かになってしまった。光輝は最早何も言わず口から血が出るほど噛み締め手にも血がついてきている。顔は下げられ櫂からはそんな光輝の様子は分からない。何を言えば良いのか全く分からない。病や事故で倒れ病院に運ばれてそのまま死んでしまった人達になら何度も立ち会った。だが今はそんな状況とは違いすぎる。光輝はまだ小一で死闘を終えて帰ってきたら家族全員皆殺しにされていたなんて·····何を言えば良いのか分かるはずが無い。
『ははは! あのガキも直ぐに殺してあの世に送ってやるから安心しろ!』
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殴って顔面ぶっ刺して殺す
『ははは! これであいつの家族はあいつ以外全滅した! これ程愉快な事はない! ねぇ聞いてる? 光輝君聞いてる? 無様に死ぬ家族の声聞けて良かったね? 僕の慈悲に感謝するんだよ? くくく、はははははは……は』
唐突に笠木の愉快な声が途切れ少し理解不能のような声を出した。そしてそれと同時に聞き馴染んでいる超えが聞こえた。
『はぁはぁ……、貴様だけはここで止める。光輝は絶対に殺させん!』
「おじい、ちゃん」
『グハッ! なっ、貴様、まだ生きて。クソジジイがーっ!」
吐血の音が聞こえ笠木は荒れ狂った
『がハッ! ぐっ!』
そしてまた静かになって
『はぁはぁ、クソジジイが! 僕の身体に穴空けやがって! はぁはぁ、早く治療しなければ……。だが、この録音はあのクソガキの為に残さなきゃな。ヒヒヒ!」
気持ち悪い声を出しながら重症を負ってしまったのが足を引きずりながらもレコーダーを床に置いた
『光輝君、君を殺すのは君のおじいさんのせいで時間がかかりそうだよ。でも安心してくれていい。絶対に殺しに行くから待っててね? 時間はかかってしまうだろうがね。でも君のせいで君の家族皆殺しにしちゃったよ? まあこれも君が悪いって事で。じゃあね、光輝君』
そしてドアの開閉の音も聞こえず音が何もしなくなった。どんな脱出をしたのか。少なくとも駐車場から家までの道には血痕などなかった。だがそんな事は今の光輝には考える余裕も無かった。
「··········」
「·····光輝君」
『··……こ、うき』
と、ぶっ刺されたせいなのかレコーダーをどうやら切るのを忘れていたらしく祖父はそんな事を確かめる余裕がある筈が無いから意地で言ったのかもしれない。
「!! おじいちゃんまだ生きて」
『こ、れがあの子の言ってた……事、なんだろうな。こうゆう……事か』
祖父がそんな事を言い始める。だが光輝には"あの子"など心当たりがない。祖父は家に居る事が多かったし姉と光輝以外の子供との接点など知らない。
「何の事だよわかんないよ!」
『こうき、ここで死んでしまう不甲斐ないおじいちゃん達を許して……く、れ。おまえは、いき……ろ』
それを機に何も聞こえなくなった。
「み、んな」
何も考えられなくなった。絶対的な心の痛みが体を貫き血が沸騰しているように体が熱くなり猛烈な憎悪の感情が迸る。頭を理解不能な顔をし抱え始め
「光輝く……」
「うあああああああああああああああああああああああああああああ!! 殺す! 絶対に殺す! 道ずれしても絶対に殺す! 」
慟哭が響き渡り光輝は涙しもう既に眼の色は変色を終えていた。この後光輝はショックで倒れてしまった。だが無意識なのか祖父の血だらけの真剣を握っていたのだった。
お疲れ様でしたm(*_ _)m。
では(^^)/